14 一回戦終了
「さあこれで一回戦の全試合が終了しましたが、レナンさん、どうでしたか?」
「そうですね、まずはアドリア候補ですが、やはり安定感が抜群ですね。次に当たるイオン候補は同じ南流ですが……うーん、やはり技量の差は否定できませんね」
「しかしイオン候補は何をしてくるかわからないところがありますよ」
「そこはちょっと恐ろしいですね。できれば双方命にかかわることのないように対戦してほしいものです」
「次にフィリル候補ですが」
「ええ、実際に戦うところは初めて見ましたが、これは噂にたがわぬ強さでした。あれは多分状態異常系の魔法を使っているんでしょうね。あの戦い方を続けるなら安定感はアドリア候補に匹敵するでしょう」
「マリエラ候補はいかがでしょうか。こちらも初めてご覧になったということですが」
「うーん、それなんですが……。実はマリエラ候補の以前の対戦の資料を取り寄せたのですが、どうやらその時と戦い方が大幅に違っているようなんですよ」
「ええ?それはつまりどういうことですか?」
「まだ何か隠し持っている可能性が高いです。というわけでこの二人の対決はまったく予想できません」
「二回戦第三試合はメリル候補対マイア候補です。この二人は似た者同士と言いますか、お互い武器なし、力対力、パワー対パワー、肉体と肉体のぶつかり合いになると予想されますが、レナンさんはどう見られますか」
「いやマイア候補はですね、あれで技術も高いんですよ。正統派の空道ですからね」
「一方のメリル候補ですが……」
「んん……。彼女に関しては私も判断しかねるところがありまして。あの体格であの速さあの力ということは何らかの肉体補助系の魔法を使っていると思うんですが、魔法の正体がまったく見当もつきません。私も兵士の指導をして長いのですが、ああいうタイプは初めてです。一応パワーは互角、技術の差でマイア候補に優位がある、ということにしておきましょうか」
「なるほど」
「さて、最後に同門対決を制したマキナ候補ですが」
「そうですね、彼女はフィジカル、テクニック、メンタル、いずれも高いレベルにあります。総合的な完成度で言えばアドリア候補やマイア候補にも引けを取らないでしょう。ただ、相手がですね……」
「いや先ほどの試合は驚きましたねー。いくら年少とはいえあんな選手がどこに隠れていたんでしょうか」
「実はですね、私は順当にカティア候補が勝つと思ってたんですよ。そしてカティア候補とマキナ候補であればどちらが勝つかと言えば、これは互角と見ます。そのカティア候補をまったく寄せ付けませんでしたからね。しかもどうやら底を見せていない」
「ではエリス候補有利と」
「私としてはそう言わざるを得ません」
ワァァァァ……。
背後から鳴りやまぬ歓声が届く。
試合を終えたカティアは入場口を引き揚げていた。
と、行く手に二人の人影が待ち受けていた。
「お帰りなさい」
アウラ・リダ・メルランド伯爵令嬢とマリエラ・リダ・イフタール伯爵令嬢だ。
カティアの実家は子爵家、伯爵と子爵とでは身分に差があるがこの三人は子供の頃から階級を超えての親友だった。
カティアは駆け寄ってアウラの様子を確かめた。
胸の骨を砕かれていたはずだ。
「アウラ、もう動いても大丈夫なのか?」
「ええ、もう平気。マリエラに治してもらったの」
マリエラは回復魔法のエキスパートだ。
「息ができなくて死ぬかと思った……」
「とんでもない相手だったな」
「カティアも残念だったわね」
「まあ子供相手じゃ本気では戦えないわね、カティアは。優しいもの」
「いや途中から本気出そうとしたけど何もさせてもらえなかったんだよ。最初から本気でも勝てなかったね、あれは」
「カティアがそう言うなんて本当に強いのね、あの子」
「これで残ってるのはマリエラだけだな」
「がんばってね、応援してるから!」
「あ、そうだマリエラ、あの子マジでヤバいから気をつけろ!多分決勝まで上がってくるぞ、あれは。お前のダメトレも届かないかもしれない」
「ええ、そうね。対策は考えないといけないけど……。その前に次の相手。それからアドリア様よ」
イオンに勝ってほしくはあるんだけど、とマリエラは呟いた。




