11 一回戦第六試合「挑戦状」
アウラ・リダ・メルランドは十八歳になったばかりの伯爵令嬢である。
伯爵家もピンからキリまであり、領地経営に成功して伯爵の名に見合った実を持つ家もあれば借金漬けの名ばかり伯爵もいる。
アウラの実家はその羽振りの良い方の伯爵家である。
生来善良であった彼女は恵まれた家庭に生まれ育った自分の境遇に感謝し、ほんの子供の頃から世の中に対して何か貢献したいと願っていた。
といっても家の資産をどうこうする権利は彼女にはなかったので、もう一つ、持って生まれた恵まれた力の方を活用することにした。
正体を隠して町の治安を乱す悪人たちと戦うことにしたのである。
弱冠十二歳、衝撃の街角デビューであった。
人々は突如現れたこの正義の味方を「魔法少女プラム」と呼んで噂した。
まあ(一応『認識阻害』の魔法を使っていたとはいえ)若くてピンク髪で投げ技を使いこなす魔法使いなんて他にいなかったので当局には正体はバレバレであったが。
正直捜査活動の邪魔ではあったのだが、どちらかと言えば善行ではあるし、身分の高い相手でもあったので、警察は見て見ぬふりをした。
こうして町の人気者・魔法少女リリカルプラムは今日も平和を守るために戦うのだった!
……あれから随分月日が経った。
個人での活動に限界を感じていたアウラは思った──王妃になればもっと公的・積極的・大々的に慈善活動できるのでは?
それに一週間だけ年下の王子様も前から素敵だなと思っていた。
あの方の妃になれるならがんばれる。
マイア・スマルは二十歳、190cm115kg。
空道という総合格闘術を使う。
武器の使用が許可されている今大会、素手で参加しているのはマイアとメリルだけである。
同流派の女性でマイアに勝てる者はいない。
何なら男でもいない。
マイアは紫色の水着のようなコスチュームを着ている。
おかげで太い首、太い腕、太い胴、太い脚がはっきりわかる。
息も太く、声も太い。
おまけに態度も太い。
足にはごついブーツ、同色の皮の小手を前腕に巻いている。
マイアは肩まである髪を首と一緒にブンブン振った。
一方のアウラは156cm48kg。
そこらの女の子と比べても細身である。
明るい桃色の髪はストレートロング、桃色のドレスを着込んで桃色の杖を背中側に回して持っていた。
二人は開始線に同時に並んだ。
マイアは左足を前に右足を後ろに、七対三で後ろ足に重心を掛けた。
手は開手で左手が前である。
アウラは杖を構え直した。
「並べて見ると対照的ですねー。しかし体格差がありすぎます。危険では?」
「アウラ候補は強力な魔法使いですからね、そこは距離を保って戦うでしょう。それに彼女はあれで投げ技、というより崩し技を得意としています。接近戦もお手の物です」
「さあそれでは試合開始の時間となりました。両者どのような戦いを見せるか、注目です」
「始めぇッ!」
「たぁっ!」
試合開始と同時にアウラは『豪火球』の魔法を撃った。
マイアの巨体を飲み込むほどの巨大な火球が高速で飛ぶ。
もちろん当てるつもりはない、当たれば大やけどだ。
火球は目隠し兼進路を誘導するためのもの。
少し遅れて火球の左右に『大雷球』の魔法を置いている。
火球を回避した瞬間に雷球が直撃、気絶か麻痺で試合終了だ。
一方マイアは右正拳を体の横に引き──
「せいやぁッ!」
気合いと共にマイアが立っていた砂地は爆発した。
超高速で飛び出したマイアは自ら火球に突っ込み、突っ切ってその勢いのままアウラに正拳中段突きを叩き込んだ。
「あぅっ……!」
アウラの胸骨がグチャグチャに砕けた。
アウラはとっさに杖を捨てて腕を取りマイアの体勢を崩そうとしたが──その瞬間骨折部位に激痛が走った。
呼吸が止まり目の前が真っ白になる──アウラは天を仰いで崩れ落ちた。
そしてマイアは全身焼け焦げていたが立っている。
「勝負ありッ!」
「へぇ……」
あいつ、真っ直ぐ行ってぶっ飛ばした──
観客席から観戦していたメリルが声を漏らすと黒焦げのマイアと目が合った。
お互いニヤリと笑った。
同じコースで突っ込んで同じところに当てた。
今のはマイアからの挑戦状だ。
名前:アウラ・リダ・メルランド
年齢:18歳
称号:リリカル・マジカル・プラムレディ
身長:156cm
体重:48kg
地位:伯爵令嬢
職業:魔法少女
HP:320
MP:880
握力:28kg(利き手)
走力:100m15.66秒 10,000m40分17秒(いずれも魔法未使用時)
知能:89
装備:魔法少女みたいなピンクのドレス、ピンクの杖
特技:紅茶の銘柄当て。
メモ:ペットの猫の名前はモモ。




