10 一回戦第五試合「それが私のサガなのよ」
大会二日目は一回戦の残りの四試合が行われることになっていた。
この日の一試合目、一回戦第五試合はメリルとネルリ・フォローの対決である。
「さあ衝撃のデビューを飾ったメリル候補ですが、一回戦の相手はネルリ候補です」
「彼女は不思議な戦い方をしますね。予選以前の公式戦への出場経験はなし、ただし非公式の地下試合の常連との情報も入っております」
「何をしてくるか読めないところがありますね」
「まあネルリ候補としましても本来当たるはずだったキアラ候補を研究していたでしょうからね、対戦相手の変更は辛いところです」
「条件は五分、両選手の入場です」
まずはメリルが入場、少し遅れてネルリが闘技場にやってきた。
ダルそうに開始線へと向かうグラデーションの入った紫の髪が目を引いた。
ネックレスは安物、ピンクの文字が入った黒いシャツは短くてへそが見えている。
袖の余ったカーディガンを着崩して、短いスカートはパンツが見えそう。
素足に底の厚いロングブーツを履いている。
メリルとはまた違った意味でトーナメント出場者とは思えない服装だ。
ネルリの実家は王国各地にいくつものホテルを経営する富豪である。
ネルリは平民とはいえお嬢様として何不自由なく育ったが、十五歳の時に悪い友達に誘われてギャンブル場に足を踏み入れたのが運の尽きだった。
ギャンブルの狂気にドハマリしたネルリは競馬やルーレット、カード賭博はもちろんのこと麻雀パチンコチンチロリン、バカラに花札手本引きまで手を出してその友達をドン引きさせた。
資金調達のために十七歳の頃には家財を持ち出して売りさばくことを覚え、二十歳の時に店の売上に手を付けてとうとう勘当されてしまった。
だって、ヒリつきたいんだもん……!
それからはねぐらを渡り歩いてギャンブルで生計を立てる生活を送っていたが、先日ついにイカサマがバレて取っ捕まってしまった。
もちろんちょっと筋の悪い相手、しかも多額の借金を負っている相手だったため、これまでの人生を他人の好意をいいことに楽チンに生きて来たネルリも今度ばかりは見逃してもらえなかった。
「なあネルリちゃんよ。これまで大目に見て来たけどな、さすがにもう庇いきれんわ」
とネルリを床に正座させてそのヤクザの親分は言った。
「他のモンの手前もあるんでな。借金返し終わるまで体売るか闇試合で戦い続けるか、好きな方選んでな」
さすがのネルリもこの時だけは悩んだ。
(どっちが楽かなー、ウリかな?でも奉仕すんのめんどくさいんだよなー)
悩むネルリの耳に王太子妃選考会の噂が聞こえて来た。
ピコーン!
王妃様になれば借金も払ってもらえるし一生贅沢というかギャンブルし放題なのでは?
一発逆転のチャンスが目の前に転がっていた。
ネルリ好みのスゴイ勝負だ。
急に人生が開けたような気がした。
そしてネルリは親分に断りを入れて地方予選に急遽参戦、破竹のごとく勝ち進み今ここに立っている。
これまでで最高の舞台である。
五万人の観衆が自分を見ている。
注目が全部自分に集まっている。
ヒリヒリする。
うわーヒリヒリする。
ネルリは高揚していた。
「始めッ!」
試合開始の合図と同時にメリルは前回と同じようにダッシュ、感覚が極限まで高まったネルリは人間の限界を超えた反応で『ファンブル・ランブル』、相手も自分も次のアクションを絶対に失敗する魔法を使った。
そして指を鳴らす──カスッ、失敗。
これで相手だけが次の行動を自動的に失敗する。
攻撃を失敗させてカウンターにつなげるルーチンがネルリの必勝パターンである。
「あ」
ゴガッ!!
魔法の結果メリルは寸止めを失敗した。
メリルの右ストレートはネルリの胸の上部にまともに命中。
ボキボキッ……胸骨の砕ける音と共にネルリは跳ね飛ばされ、地面で一回バウンドして闘技場の壁に当たり、跳ね返って落ちた。
「ヒフミじゃん……」
うつ伏せのネルリは一声だけ残して気絶した。
「アハ、ごめんねー」
「あーっとこれは交通事故!またも一瞬で決着です!」
「いやーあのパンチには当たりたくないですねー」
「ネルリ候補、大丈夫なのでしょうか……。担架で運ばれて行きます」
白目をむいて泡を吹くネルリは係員たちに慌てて回収された。
名前:ネルリ・フォロー
年齢:22歳
称号:背水リスクテイカー
身長:155cm
体重:51.5kg
職業:宿なしギャンブラー
流派:我流
HP:555
MP:444
握力:33kg(利き手)
走力:100m11.11秒 10,000m30分30秒(いずれも魔法未使用時)
知能:88
装備:ギャル系、ナイフその他隠し武器多数
特技:『ギャンブル・ポケット』亜空間に隠したナイフ・カード・サイコロなどを現実のものとすり替える魔法。
メモ:勢いで結婚したことがある(が、すぐ離婚した)。




