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▲お題に合わせて・ツイノベ・掌編

【800文字小説】君と、宇宙の果てまでも。

 きっと気のせい。考えすぎさ。自分でそう言い聞かせるのが習慣になっていた。


「花びら、ついてる」


 髪に触れた瞬間、感じる拒絶。一拍遅れた微笑み。


「あ、ありがとう。杏の花、初めて見た。きれいね」


 僕は感情を排除して、うっすら残る違和感を無視した。

 なかったふりをし、向けられた笑顔だけを都合良く受け取る。

 君の目に映るのは僕じゃないね。

 何に見惚れていたか、もう知ってるよ。

 だけど僕を愛しているふりをしていたいのは、君も同じ。

 気付かぬままでいたい。麻痺し、鈍感でいられたらどんなにいいか。


 君の視線を独占している男が振り返る。


「電話だ。先行ってて」


 男は耳を塞いで背を向けた。

 ここは花見客で騒がしい。

 君は、親を追う幼児のような寄る辺ない表情で、男の背中を見送り、僕に向き直った。 


「話があるの」


 なんて思い詰めた顔をしてるんだ。

 今、君の潤んだ瞳に映るのは確かに僕一人。

 だけど、胸にいる人は違うね?


 夢を見ていたかった。

 ずっとずっと君の心にいたいと願う。

 真実なんて受け止めたくない。


 言い淀んで空を仰ぐ君の白い頬に、涙が伝った。

 そういえば、昔から君はよく空を見上げていたよね。


「信じられないくらい、きれいな日」


 僕の喉は、張り付いたように声一つ出ない。


「別れてください。……って言おうと思ってた。わかってたでしょ? ずっと。でも、とても言えない」


 通話を終えた男が戻ってきた。頬を濡らす君の肩を抱く。


「花が散ったら、星に帰るんだ。俺たち」

「触わるな」


 君は命令口調で男の手を払い除けた。男は、はっと敬礼する。君の目には思慕など欠片もない。


「星?」

「ええ。彼は部下なの。最初は偵察だった。侵略のための。ベタでしょ。でも……この星は美しいね。何より、あなたがいる」


 君の瞳に映るのは満開の杏と、僕だ。紛れもなく。

 くだらない思い込みで、勝手に絶望していたのが恥ずかしい。


「別れるもんか。何があっても」


 空を見上げた。

 現実は、僕の頭の中を軽く超える。

投稿後から、ちょっと改稿しています。

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― 新着の感想 ―
[良い点] これ800字で終らせるにはもったいなすぎるんじゃ。 ここから宇宙編でも防衛編でも作れそう。
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