#04 君もこの世も幻だ
宇宙存在から何度か瞑想を教えてもらった僕は、今日も言われた通りにやってみた。
集中力が続かなくて5分も保てない瞑想ではあったが、効果がないわけでもなかった。
同時に気づいたのが、瞑想自体が宇宙存在とつながるための有効な方法だということだ。
「ごきげんよう。今日も元気にメディテイションしてるかい?」
「……なんですかそのノリは。瞑想をカタカナ言葉にしたことで中途半端にわかりにくいじゃないですか」
「英語のほうが賢く感じられるだろう?」
「気のせいです。それに、英語を習得しようとして何度も僕は挫折してるんです。もうやめてください」
このように、会話からほとんど得るものがないように思える場合もあるが、なるべく僕は記録していくつもりだ。
「瞑想するときは、自分の今の感情にも気をつけるといいよ」
「感情、ですか。それ前にも言ってました?」
「以前、思考を観察しようと言ったことはあるな。今は感情の話をしている」
「思考と感情は違うんですか?」
「考えるのが思考で、感じるのが感情。いや、まてよ。感じるのは感覚か」
「日本語って難しいですよね」
「では、感覚と感情の違いはわかる?」
「えっと、感覚というのは、まぶしいとか何か聞こえるとか、暑いとか痛いとか」
「では感情は?」
「感情は、嬉しいとか心配だとか、腹が立つとか」
「どっちが先にくるかわかる?」
「うーん、暑い、だから腹が立つ……あ、わかった! 感覚のほうが先ですね」
「ご名答。つまり、まず感覚があって、その次に感情がくる。ついでに言うと、感情の次に思考がくるんだ」
「……なるほど。で、それがわかるとどうなるんですか?」
「君なんて、感覚とか感情とか、思考が集まったものを君だと思い込んでいるだけなんだよ」
「そんな……。じゃあ僕っていったい、なんなんですかね」
「幻、だよ」
というわけで僕は、幻みたいな存在に幻だと言われてしまった。
僕自身も幻にすぎない。この言葉は、なんとなくだけど真実のような気がする。
とはいっても、僕はリアルに「しんどさ」や「不安」を感じている。
そういうのを全部、幻だと言われたところで、言葉遊びの領域を出ていないのではないだろうか。
「もう一歩、踏み込むんだ」
彼からそう言われた気がするが、何をどう踏み込んだらいいのだろう。彼には申し訳ないが、僕にはまだ理解できない。
「この苦しさをなんとかしてください」
「なんとかしようなんて、思わなくていいんだよ」
「じゃあどうすればいいんですか」
「ただあるがままでいなさい」
あるがまま、という言葉は好きなんだけれど、なんでもかんでもあるがままにしておいていいのだろうか。
このままじゃいけない、なんとかしなければと僕が思うと、彼はこのままでいいんだよ、なんとかなるんだよと言ってくれる。
あとは僕が、いかに彼を信頼できるかどうかが問題だということ。
「ところで、あなたには僕の未来とかが見えているんですか?」
「仮に私にそれが見えているとして、君は教えてほしいのか?」
「いやです」
「では未来など気にしなくていい」
宇宙存在なる彼には、今の僕にはわからないことも、全部わかっているんだと思う。
彼は僕の「目覚め」を後押しするために、メッセージを送ってくれていると言っていた。
僕は眠ってないし、目覚めているよと思ったけれど、もっと深い、魂レベルの「目覚め」のことらしい。
「せかすつもりはないけれど、目覚めるか目覚めないか、決めるのは君だよ」
「そんなこと言われなくても、僕はもう目覚めてますって」
「違う。君は今、夢のなかにいるんだよ。夢のなかで目覚めていると言ってるだけだ」
「……映画のマトリックスみたいな感じですね」
「そうだ。私はその映画のモーフィアスみたいに、君に赤と青の薬を差し出している」
「だとしたら、夢から覚めるほう……赤い薬を飲むしかありませんね」
もしかして、宇宙存在の外見ってモーフィアスみたいなのか? と思ったけれど、今の論点はそこではない。
僕は、想像上ではあるけれど、彼からもらった赤い薬を飲んだのだった。




