#03 今この瞬間とパラレルワールド
宇宙存在なる彼は、僕のことを友達として認めてくれた。とはいえ僕は、彼に対して敬語を使うのはやめないつもりだ。
それは彼への敬意もあるけれど、やはり僕自身が「今話しているのは僕なのか彼なのか」を判別しやすいからだ。
「あなたは僕の守護霊みたいなものですか?」
「そうだね。私のことを別の角度から見れば、守護霊と呼ばれてもおかしくない」
「じゃあ、生命体というよりも霊なんですか?」
「それは生命体をどう定義するかによるよ。生まれて死ぬのが生命体だとしたら、私には君の考えるような死が存在しないから、生命体じゃないのかもしれない」
「また、身の丈に合わない質問をしてしまいました」
「そういうのを繰り返しながら、人間は限界を超えていくんだ」
「僕も、あなたみたいに不安のない状態になりたいです」
「いつ、私が不安を感じていないと言った?」
「え、不安とかあるんですか?」
「ないけどね。ただ、不安がどんなものかは知っている。だから解消する方法も教えようか?」
「ぜひ!」
「今この瞬間に集中するのさ」
僕は彼に言われた通り、今現在に意識を向けてみた。
頭のなかに、どうなるかわからない未来に対しての不安がよぎる。でも、今この瞬間は何も起こっていない。
心のなかに、過去の失敗とそのときの嫌な感情がよみがえる。でも、今この瞬間は何も起こっていない。
今、感じられるのは、呼吸の音と、お腹のふくらみ・縮みだけになった。そして、ほんの少しの間だけ「今だけは絶対、大丈夫なんだ」という気持ちになれた。
「どう、わかった?」
「一瞬だけですが、安心できる感覚がありました」
「少しでもいいから、その感覚を理解することが大事なんだ」
「でも、結局なにも解決していない、と思ってしまいました」
「解決するかどうかというのは、考える必要はないんだよ」
「あなたがそう言うのなら、そうなのでしょうね」
いろいろと彼に聞いてみたいことはあるわけだが、あえて僕は俗っぽい質問をしてみた。
「あの、お金に困らない暮らしがしたいんですが」
「それならお金について学ぶことだね」
「即答かつ、宇宙っぽくもない正論ですね」
「私がお金を空中から出現させるとでも思ったの? 投資を勉強しなさい。知識は金なり」
そんなことを言われた後に、僕は何気なく自分のスマホを触っていた。すると、お金について解説する、わかりやすそうな動画などの情報が出てきた。
「こんな、面白そうなユーチューバーがいたんですね……」
「君が意識したから、今まで見えなかったものが見えるようになったんだよ」
「それって、よくいわれる引き寄せの法則ですか?」
「そうとも言える。言い換えるなら、君がパラレルワールド間を移動した、と説明するほうがわかりやすいかな?」
彼がまた小難しいことを言い始めたなと思い、僕は姿勢を正した。
「パラレルワールド、ですか。今いる現実と同時並行で、複数の現実が存在するってやつですか」
「そうだよ。パラレルワールドは無数に存在する。君の基準でいう幸せな世界もあれば、不幸な世界もある」
「できれば不幸な世界とやらには行きたくないんですが」
「じゃあまず、その考え方をやめることだね」
「その考え方って、どの考え方ですか?」
「ピンク色のゾウをイメージしてはいけない」
「え? ピンク色のゾウ?」
「ほらイメージしたよね。〇〇するなと言われても、人は〇〇してしまうんだ」
「確かに僕は、不幸な世界について考えていました」
「君の考えが、別のパラレルワールドに移動するきっかけになり得るんだ」
「ということは、幸せな世界をイメージすればいいってことですね」
「うん。そんな感じ」
宇宙存在は、僕のレベルに応じた回答をしてくれる。だから僕も、もっと質問力を鍛えていく必要があるのだろう。
パラレルワールド理論は、掘り下げて考えるとかなり面白そうだ。でも今はざっくりと、「イメージすることで世界を移動できる」ということだけでも記憶しておこうと思った。




