表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

#01 だんだん会話できるようになってきた

 彼の言葉を、僕はだんだん聞けるようになってきた。


「君の準備が整ってきた証拠だよ」


 彼は地球外生命体だ。生命体といっても、肉体は持っていないらしい。性別の概念もないようだが、なんとなく男っぽいので僕はその人のことを「彼」と呼んでいる。


 彼はほんとうに存在するのだろうか。僕の妄想が生み出したものにすぎないのかもしれない。


「私は君の思考のなかに情報を送っているんだ。それを言語化するのは君の役目だよ」

「それがなかなか難しいんですよね」


「完ペキな言葉にしようとしなくてもいいんだよ。そもそも完ペキな言葉など存在しない」

「なんか小説の冒頭みたいですね」


「あと、別に敬語を使わなくていいよ」

「それもわかるんですが、僕自身が、僕の言葉なのかあなたの言葉なのか、区別しやすいかなと思いまして」




 こんなふうに、僕は少しずつだけど、彼と会話する練習をしてきた。


 彼からのメッセージを僕なりに翻訳する作業は、少なくとも僕自身を救うことにつながっている。


 そして、彼とのやりとりを小説のような形で文章化することで、読む人に何が得るものがあればいいと思う。


「それでは、何かありがたいお言葉をいただければと思います」

「無茶ぶりはやめてほしいな。私は全能の神とか、そういうのではないんだから」




 彼についての情報は、これから少しずつ記していこうと思う。


 今のところ、彼は精神生命体であり、年齢は地球人の感覚でいうと何千歳とか、何万歳とからしい。とはいっても、老人じみている感じはしない。


 今のところ、僕の脳の処理能力では、この程度の説明しかできない。


 彼は自分のことを「私」といい、僕のことを「君」と呼ぶのだけれど、これは彼が情報として送ってくる「なんか」を、僕なりに言語化しているにすぎない。


「君が私と対話することは、君自身のなかにすでにある答えを、思い出すことにつながるんだ」

「……そうなんですね」


 わかるような、わからないようなことを言ってくる彼なのだった。




 ところで、彼には「名前」のようなものがあるのだろうか?


「名前? あるといえばあるし、ないといえばない」

「つまり、それはどういうことですか?」


「掘り下げてくるのか。その時その時で私はどう呼ばれるか変わるんだ。呼び方は君が自由に決めればいいよ」

「そんなこと言われても、いい名前が思い浮かびません」


「では今は、私のことは仮に『宇宙存在』とでも呼んでおけばいいさ」


 というわけで、これから僕はその「宇宙存在」に、様々なことを教えてもらうことになるのだった。




 僕は宇宙存在とのやりとりを、ゲーム感覚で楽しむように心がけた。


 彼のほうは、やっと僕のほうから反応が返ってくるようになったと喜んでいる。


 というのも彼は永い間、僕にメッセージを送り続けていたのだけれど、僕がほとんど気づいていなかったらしい。そう思うと何だか申し訳ない気持ちになってくる。


「今まで気づかなくって、本当にごめんなさい」

「別に謝ることはないよ。私のメッセージに気づくかどうかというのは、努力でどうこうできるものでもないし」


「努力が関係ないとなったら、なぜ僕は急にあなたと会話できるようになったのですか?」

「それは成り行きというしかないな。あるがままでいれば、なるようになるのさ」


【#02に続く】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ