第七話 日常と非日常
雄治の家を出て数時間、やっとの思いで家についた俺は、ベッドに寝転んだ。
頭の中では、雄治の話がエンドレスでループしていた。
「結局、親父の正体ってなんなんだ?」
と呟いてみるが、返ってくるのは沈黙だけだった。
つまらないことを考えるのは止めて寝よう。そう思い、電気の紐に手を伸ばす。
やけに体が重たい。そりゃそうか、この傷だもんな。
そうして、俺は夢の中へと落ちていく。
次の日、目を覚まし、リビングへと向かう。
なにやらいい匂いがしてきたが、たぶん隣の家だろう。
玄関に行き、新聞を取り、リビングに入る。すると、そこには……シェリムさんが居た。エプロン姿のシェリムさんに戸惑う。
「あ……おはようございます」
挨拶をされた。
この場合、どう返すべきなんだろう? なぜここに居る。とか、どうやってはいったのか。とかか?
「朝ごはんできてますけど……食べますか?」
ここで相手のペースに巻き込まれることほどまずいことは無い。
「いえ、学校に行かないといけないので。遠慮しときます」
そう言い終わってからよくよく考えると、今は夏休み中で、もちろん部活にも何にも所属していない俺は学校に行く意味が無いわけで。
かといって今さら訂正することもできず、どうしようかと悩んでいるとチャイムが鳴り響いた。
「あ、はーい」
大きな声で返事をし、シェリムさんは玄関へと走る。
おい、ちょっと待て。なんでシェリムさんが俺の家のことを全て取り仕切ってるんだ?
「ちょ、ちょっとシェリムさん……」
慌てて、静止する。シェリムさんは、怪訝な顔をしたが、俺は急いで玄関に向かい、ドアに手をかけた。
ドアを開けると、そこにいたのは雄治だった。昨日とは打って変わって、いつもの雄治だった。
「よう、刹那。お前シェリム隊長と同棲始めたんだってな」
おい、こいつは何を言っている? 何で知っているんだ?
「昨日の話の件もあるし、とりあえず中に入れてくれないか?」
雄治を部屋に通すと、気まずい空気が流れ出した。
この空気をどうしてくれるんだろうか。
「……では神奈少尉からだいたいの説明は受けているということでいいんですね?」
「……はい」
「まぁまだ、こいつは納得してないみたいですけど」
「しかたないでしょう。私も、今この立場で無い限り機関などという存在を信じろといわれても信じれません」
「……シェリムさん。機関ってなんなんですか? 俺には理解できません」
シェリムさんは、微妙に戸惑うような表情を見せた。がすぐに普段の表情に戻り、
「……詳しい説明をすると禁則事項に触れてしまうので、詳しくはできませんが、言ってみれば秘密結社のようなものです」
シェリムさんは、どこか遠くを見るような目つきで語り始めた。