第1話
猿に転生する話です。ただそれだけ。
古今東西、転生物では沢山の種族が出てきたと思う、生物だけに留まらず無機物にまで転生するらしい。
『何故、そんなことを言うか』ですって?どうやら私も類に漏れず転生したご様子なのです。取り敢えず、順を追ってお教えしましょう。
私こと紅葉木葉は、前世では所謂【超能力者】と呼ばれる存在でした。何の能力かは、今は放って置きましょう。そして、私は、死ぬ前は女子高生というものをやっておりました。高校2年生です。ぴちぴちです。さて、そんな私の死因ですが、クラスメートに心臓を一突きされたことによるものでした。いえ、普通の包丁などで刺されたのでしたら、これでも私は【超能力者】の1人なのですから再生可能でした。私を刺したクラスメートは、何処から入手したのか魔術的意味合いの込められた【擬似神槍『ゲイ・ボルク』】を持っていました。そのクラスメート……百地胡桃さん……は、私が高校の生徒会が終わり、帰る途中の電灯の下にいました。私は、不審に思い声を掛けた途端、ゲイ・ボルクを投げられて心臓を一突きされました。まあ、私の意識が落ちるまでの間に、「私からあの人を奪ったアンタが悪いんだ。」と言っていたので、きっと彼氏さんが別れた理由が私だったとかそういうのでしょう。これまた迷惑な……。そして、目が覚めると、目の前に猿が居ました。ええ、猿です。決して猿顔の人とかではありません。私が猿に驚き、自身の手を見るとこれまた驚きました。猿の手でした。
まあ、こんな感じです。まあ、私は一晩寝たお陰で落ち着きました。さて、昨日、今日で少し分かったことが有ります。どうやらこの世界、私がいた世界とは違う様です。私の周りにいた猿の子供達も赤子から一晩だけでもう活動できそうなサイズに成長してます。私は、その様な生物を知らないので多分異世界です。ん?年上猿が何か言っていますね?ふむふむ、纏めると、
「お前ら、自分の飯は自分で取って来い。」
という事の様ですね。では、狩りにでも出ましょうか。あ、その前に武器を作らなくては、私はそう思い、巣である洞窟から出て木の枝を探し始めました。おや?この枝は良さそうですね。そこにある石ころで表面を削って形を整えて……完成しましたね。枝剣と呼びましょう。
《解析終了。能力「光操作」を習得しました》
《解析終了。能力「土操作」を習得しました》
《解析終了。能力「光合成」を習得しました》
《解析終了。能力「硬石化」を習得しました》
ふむ、どうやら前世の超能力も持って来た様ですね。あ、私の超能力は、【解析者】と呼ばれるもので、見た、聞いた、知った、触れた、感じた、食べた物事の性質を解析して能力化するという能力です。まあ、強い超能力では有りますね。はて、そういえばこの様な時、ステータスと言えばステータスが見れるのでしたよね?
「……ステータス。」
私がそう言うと、半透明のボードが出てきました。
《ステータス》
名前;モン麗
種族;幼体猿1/10
スキル;「悪知恵LV1」、「器用LV1」、「繁殖LV1」、「尾LV1」、「爪LV1」、「登攀LV1」
超能力;「解析者『光操作』『土操作』『光合成』『硬石化』」
あ、スキルなんて代物があるのですね。ふむ、意識すると確かに有りましたね。ああ、ちなみに私の今世の名は、モン麗らしいですよ。モン爺が言ってました。さて、狩りにそろそろ行きますか。私はそう思い枝剣を蔦で腰に巻き付けると、木を登り、枝伝いに木々の間を移動しました。ウキー。
しばらく移動していると、木の根の方に兎に角の生えた生き物を発見しました。ふむ、仮名【一角兎】と呼びましょう。少しの間観察して動きを見ましょうか。
《解析終了。能力「逃げ足」を習得しました》
《解析終了。能力「脚力増強」を習得しました》
《解析終了。能力「角撃強化」を習得しました》
《解析終了。能力「気配感知」を習得しました》
《解析終了。能力「擬態毛」を習得しました》
ふむ、大分動きが分かってきましたね。よし、行きますよ。そい。私はそう思い、枝から飛び降りながら兎の首に真っ向斬りを放ちました。一撃で兎は首と身体が別れましたね。やりました。
《レベルが上がりました》
レベルも上がり、食料もゲットです。む、枝剣、血塗れですね。毛皮剥がしのついでに川辺で洗いますか。私はまた枝経由で川辺に移動しました。
はい、川辺にて無事毛皮は剥がせて舐めして毛皮ゲットしました。何枚か集まれば服が作れそうです。石と石を叩き合わせて……。
《解析終了。能力「火操作」を習得しました》
はい、これで何処でも火が出せますね。あ、そうでした、枝剣もナイフ代わりに使ったので洗ってしまわないとですね。ジャブジャブ。
《解析終了。能力「水操作」を習得しました》
《解析終了。能力「引力操作」を習得しました》
おや?「引力操作」、随分時間掛かりましたね。まあ、「引力操作」はかなり便利なので嬉しいですけどね。取り敢えずは、「引力操作」を使った引力バリアを周囲に展開しておきましょう。保険は大切ですからね。さ、ご飯にしますか。「土操作」で竈を作り、上に石を乗せて、間に枯れ木を詰めて「火操作」で火を起こして石の上に肉を敷けば焼き肉の完成ですね。もぐもぐ。焼き肉ウマー。
《解析終了。能力「草判別」を習得しました》
《解析終了。能力「穴掘り」を習得しました》