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異世界から日本に帰ってきたらなぜか魔法学院に入学 この際遠慮なく能力を発揮したろ  作者: 枕崎 削節


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363 マリアの嘆き

ちょっと短めですが、投稿させていただきます。マギーたちがやってきた魔法学院と別な場所では…

 マギーたちが魔法学院を訪ねる3日前、こちらは市ヶ谷のダンジョン対策室。



「室長、量子コンピューターオペレーションルームから報告のレポートが届きました」


「どれどれ、見せてもらおうか」


 岡山室長は数十枚に上る分厚い紙の束に目を通し始める。そこには弥生のアバターが集めた情報をもとに、AI知能が黒い貴族たちの相関関係や詳細な個人情報をわかりやすく記してある。


 その中身には当然ながらシスター・エレナの元にやってきた怪しげな男の正体やその背後関係、それにシチリア公爵がコンタクトを取ったカイザーなる人物のわかっている限りの事柄が記されている。


 約1週間ほどでこれだけの情報を集めたというのは、弥生がネットワーク内部に放ったアバターたちが現代社会においてどれだけ有効かという紛れもない事実を如実に表している。



「なるほど、私の想像通りだったな。どうやら黒い貴族というのは帝政ローマの元老院の流れをくむ貴族が約半数で、残りは神聖ローマ帝国から続くフランスやドイツ貴族の生き残りという訳か」


「室長、イギリスの貴族の名前が一切入っていないのはどういう訳でしょうか?」


「歴史の知識が足りないな。イギリスは国教会で、この書類にある貴族たちはカトリックだよ」


「ああ、そういうことでしたか。自分の不勉強を恥じ入ります」


 実はこの岡山室長、このレポートがもたらされる前からこの程度の話の内容を知っていたというのはちょっと驚くべき事実かもしれない。


 以前月面からやってきた使者と対面した折に自らを「ムー帝国以来の歴史を代々語り継いできた一族」と明かしたように、古今東西のありとあらゆる歴史の隠された部分まで頭の中に入っているという、何を隠そうとんでもない御仁なのだから。


 縄文時代の末期や弥生時代の日本人に海外の情報がどうやって入ってくるんだ? …という疑問を持つ方々も多いと思われるが、その頃から日本列島には渡来人の入植が活発化している。


 ひとつの例を挙げるとしたら、京都には太秦うずまさという地名がある。ここは映画村などがあってかなり有名な観光地になっているが、大元を正せば大陸から渡ってきた秦氏の本拠地とされる。


 ちょっと時代が下った唐の時代、都の長安には太秦寺という寺院が存在し、ネストリウス派のキリスト教やユダヤ教が公然と信者を集めていた。現在でも京都に残る広隆寺は、別名太秦寺とも呼ばれている。これらの事象に何ら関連性がないはずがない。秦氏が長安の太秦寺を京都にも建立したと考えるのが当然の流れとなる。


 このように渡来人のもたらした情報を丹念に組み上げながら、列島の外に関しても可能な限りの歴史を伝承したおかげで、こうして様々な角度から古代から続く貴族家系の実態を把握できているというべきだろう。



「だからイギリスの貴族たちは黒い貴族たちとは別口になるんだよ。もっとも彼らは彼らで大英帝国が世界中から収奪した富を元手に、黒い貴族たちに勝るとも劣らない権力を持っている。彼らはロンドンのシティーといいうある意味治外法権に等しい場所で金融界を操り肥え太っているんだ」


「厄介な相手が2グループ存在しているわけですね」


「まあ、そういうことだよ。さて、黒い貴族にしてもイギリスの連中にしても、彼らは経済的な権力によって世界の覇権を握っている存在だというのはわかっているかね?」


「はい、ロスチャイルドやロックフェラーを傘下に従えていると認識しております」


「ではそれだけで世界中の人間を完全に支配できると思うかね?」


「現状は彼らの思うままに世界を支配できているように感じますが」


「だが実際はそうそう上手くはいかないものだ。現に我が国は、黒い貴族やひいてはその裏側にいるレプティリアンに公然と反旗を翻しているではないか」


 岡山室長は「反旗を翻した」という控えめな表現をしているが、実際には米国内のレプティリアンの地下施設を完全破壊し、そこにいた住人たちを宇宙の果てに追放しているのだから、これはもう完全なる戦争状態に等しい。



「確かに室長の仰る通りです」


「ではレプティリアンはこのような事態を想定していたかどうかという点だが、君はどのように考えるかね?」


「我が国並びに銀河連邦の動きが早すぎて対応が後手に回っているように映りますが」


「ふむ、表面上はそのような見方が妥当だろう。だが、私はそう単純ではないと考えているよ」


「室長は『違う』と仰るのですか?」


 これまでの自衛隊並びに銀河連邦のレプティリアンに対する作戦行動は驚くほど順調に推移している。だが岡山室長の目には何か別のモノが見えているような気がしてならない。



「私は世界を完全に支配するためには経済と軍事と法律を同時に掌握する必要があると考えている。もっとも日本は銀河連邦の協力を得て経済と軍事において圧倒的な強者になったとしても、世界を支配しようなんてこれっぽっちも考えないだろがな」


「確かに室長が仰る経済と軍事というのは重要かと思いますが、法律の掌握とは一体どういった状況でしょうか?」


「第二次世界で敗戦後、日本はGHQから押し付けられた憲法によって戦力や戦争の放棄を強制されたではないか。支配する国に自分たちにとって都合のいい法律を押し付けるのはヤツらの常套手段だよ。列強に植民地化されたアジア、アフリカ、南米の国々は、白人にとって都合のいい法律に縛られて抵抗することすら封じられてきたんだ」


「確かにその通りです。しかも国民だけでなくて国家自体が法律に縛られて身動きが出来なくなるという、想像以上に効果的な支配方法ですね」


「まあ、そういうことだ。さて先般の世界同時緊急放送によって、日本は第二次世界大戦後に結ばれた条約をすべて破棄ないし凍結している。これによって日本は理論上は世界中を敵に回して戦争をしている状態に戻ったわけだ」


「はい、国民感情の手前、敵対国家への攻撃に関しては表向きは否定しつつ、水面下では完膚なきまでに叩きのめしておりますが」


 日本に攻撃を仕掛けてきた4か国連合は、いまだに内戦状態ないし地方勢力が独立を目指す動きを見せるなどといった混乱状態のさ中にある。


 唯一韓国だけが、在韓米軍の力を借りて押し寄せてくる北朝鮮からの略奪者たちを停戦ラインの向こう側に押し戻して、なんとか秩序回復のスタートラインに立っている状況で、ここ最近になってようやくひと息ついているところ。


 そして韓国以外の他の3か国は内戦の泥沼に足を踏み入れて、現在もにっちもさっちもいかない困難な状況が続く。例外的にイギリスに協力を求めた中国の広東省と香港だけがなんとか平静を取り戻しつつあるように見えたが、逆に内戦を恐れて避難してくる億単位の途轍もない数の人々の群れに頭を抱えているという別の困難な状況も聞こえてくる。


 日本の周辺国の現状はさて置き、岡山室長の話はまだまだ続く。



「政府はいまだに『日本は飛来してきたミサイルの迎撃を行っただけで、他国への攻撃を一切実施していないし、広範囲な他国全体を攻撃するような能力も持ち合わせてはいない』という簡単な声明を出しただけで以降はノーコメントを貫いているが、そんな言い訳が通用するほど他国の見る目は甘くはないだろうね」


「ということは、いつかは日本政府がとんでもない未来兵器を運用可能だという事実を公表する時がやってくるんでしょうか?」


「いずれはやってくるさ。おそらくその時は、日本と銀河連邦の友好関係も併せて公表されるだろう。さて、話がずいぶん横道に逸れてしまったようだ」


「申し訳ありません。自分の知識の足りなさのせいです」


「まあ、構わんよ。君はまだ若い。これから自己研鑽を積んで私くらいの年齢になった時に物事の見方がどのように変わってくるかが大切だ」


「ありがとうございます、自らに発破をかけて精進いたします」


「期待しているよ。さて、経済と軍事と法律を掌握する話だったね。法律についてはすでに述べたが、経済に関しては黒い貴族たちはいまだに世界の相当な部分で権力を握り続けているのが実情といえる。では軍事面はどうかね?」


「黒い貴族たちはアメリカ軍と軍需産業にかなり食い込んでいると思われます」


「まあ、それはそうなんだけど、この度その前提条件が大きく変わった。我々が派遣した楢崎大尉以下の特殊部隊がレプティリアンの居住施設を破壊したからね。これでアメリカはレプティリアンの支配から脱却する方向に向かっていくことだろう。さらに次期アメリカ大統領はあのジョーカー氏だ。彼は選挙中からDSとの戦いを声高に主張しているから、今後の米軍は黒い貴族の思惑には簡単に従うことはないはずだよ」


「ということは、黒い貴族たちは手足となって動く実働部隊を失ったということでしょうか?」


「完全に袂を分かつわけではないだろう。思惑が一致すれば、米軍も黒い貴族に協力する場合もあるかもしれない。だが、あのジョーカー氏のことだ。その際には莫大な対価を要求するだろうね。果たしてそんな法外な要求を彼らが飲めるかどうか」


「ということは、実質的に黒い貴族たちは軍事力を失ったに等しいと考えてよろしいのでしょうか?」


「確かにヨーロッパ中の軍事力を搔き集めてもたかが知れている。NATOというのは米国の強大な軍事力ありきの組織だからね。ところでレプティリアンたちはこのような追い込まれた状況を予測していたかどうかが、私にももうひとつ読めない部分として残っている」


「室長にも予測できない事象があるなんて、自分としてはちょっとした驚きです」


「私は千里眼を持っているわけじゃないからね。さあ、ここからは私の仮説だ。当たるかどうかという点では、自信は半々といったところだよ」


「室長が『半分自信がある』というなら、そのお話は傾聴に値すると思います」


「では聞いてもらおうか。この文書に登場する『カイザー』なる存在なのだが、この人物はアメリカの軍事力がアテにならなくなった際のレプティリアンたちにとっての保険ではないかと考えているんだ」


「保険ですか?」


「ああ、かつて古代オリエントを席巻したアレクサンダー大王のような個人としての強大な資質を所持する、レプティリアンや黒い貴族たちにとっての武力の象徴のような気がするんだ。おそらくカイザーの口振りからすると、何らかの方法で相当な力を身に宿している存在ではないかと思う。それこそ神殺しに匹敵するようなレベルでね」


「そんなとんでもない存在を用意できるものでしょうか?」


「レプティリアンにとっては何千年も時間はあったはずだ。その間に様々な遺伝に関する実験を人類に施して、ついに出来上がった最強の個体というのがカイザーではないかと考えている」


「恐ろしい話ですね」


「ああ、神への冒涜に値する非道な行為だよ。ダンジョンの創造で人類を混乱に至らしめ、その後地球全体を救う真の救世主としてカイザーを登場させる… レプティリアンたちにはそんな筋書きがあったのではないかとなんとなく思いついただけの話だ」


「確かに筋道は通っています。ということは、神崎学院長をヨーロッパにおびき出してカイザーの力をもって抹殺するという黒い貴族たちの目的がより鮮明になってきますね」


「まあ、そんな具合だから、本格的な作戦会議と行こうじゃないか。神崎学院長と… それから本橋のご老人を呼び出してもらえるか」


 あの岡山室長でさえも、ジジイの名前を口にする際に一拍の間が空いたのは紛れもない事実。それほどまでに怪物ジジイは自衛隊内部では扱いに慎重にならざるを得ない超VIPとして認識されているのだろう。


 こうしてこの日のうちにダンジョン対策室では2名の魔法学院の学院長を交えての極秘作戦会議が実施されることとなるのだった。




   ◇◇◇◇◇




 マギーとマリアが聡史の部屋で話をしている頃、魔法学院の学院長室では学院長が厳しい表情で書類に目を通している。


 だが、よくよく見ると学院長の雰囲気がいつもとは違うように感じられるのは気のせいではない。なんというか、厳しい表情の中にもちょっとだけ楽しそうな感情が伝わってくる。


 なぜかと言えば、今学院長が入念に最終チェックをしているのは3日前にダンジョン対策室で策定された黒い貴族殲滅に関する作戦書だからという理由に他ならない。


 どうやらこの学院長はアメリカに乗り込んだ際には別のミッションに従事したため、やや消化不良気味だったよう。だが今回は方々にターゲットが分散しているので、自分にも確実に大暴れする機会が巡ってくると内心ほくそ笑んでいる。


 どうやらその表情からすると、シスター・エレナやマギーの上官が危惧したようにヨーロッパの小国のいくつかは国家が消滅するのではないかという極めて物騒な考えが現実のモノのように感じられてくる。



「あとは人員の配置だけだな。これは本人たちの希望を聞いたうえで最終決定をしよう」


 学院長はひとつ頷いて書類をデスクの引き出しにしまうと、時計をみる。



「もうこんな時間か。それでは腹ごしらえをしてから、午後の話し合いに備えよう」


 ポツリとつぶやくと、教員用の食堂へと向かうのであった。




   ◇◇◇◇◇




 コンコンコン


「入れ」


「失礼します」


 約束の時間となって、聡史たちが学院長室にやってくる。もちろんマギーとマリアの同席も伝えてあるので、彼女たちの姿を見ても学院長は眉ひとつ動かさない。



「マギー中尉、それからセルビア人留学生のマリア君、遠い所ご苦労だった」


「神崎学院長、お忙しいところ失礼します」


「よ、よろひくお願ひするですぅ」


 マギーは過去に学院長との面識があるので多少の慣れがあるのだろうが、初対面のマリアは対面する人物から無意識に放たれるオーラに完全に震えあがっており、口から飛び出す言葉がすでに噛み噛みになっている。



「そう硬くならないでもいいぞ。さて、二人がここにやってきた用件を聞こうか」


 本当は市ヶ谷での作戦会議で大よその事情を知っているにも拘らず、学院長は何も聞いてないフリで二人から話を聞き出そうとしている。


 この様子に同席するデビル&エンジェルのメンバーも話の成り行きがどうなるのか固唾をのんで見守っている… 


 いや、違った。


 明日香ちゃんだけは昼食後の睡魔に襲われて、すでにまぶたが半開きの状態。学院長の前でこれほどまでに緊張感がないのはいかがなものかと思われるが、周囲はすでに諦め顔。あの学院長でさえも、すでに何度も見慣れた光景なだけに放置を決め込んでいる。明日香ちゃんの大物ぶりは留まるところを知らない。


 そんな明日香ちゃんを横目にしながら、マギーは「コイツ、正気か?」という表情を浮かべつつ、学院長に話を切り出す。



「実はマリアの元にセルビアのシスター・エレナから手紙が届きました。マリア、手紙を読み上げながら日本語に訳してちょうだい」


「わかったですぅ。親愛なるマリア…」


 マリアが最後まで手紙を読み進めていく。最後まで聞き終えると、学院長は意味ありげにひとつ頷く。



「いかにもエレナらしいな。何もかも自分ひとりで被って周囲に迷惑をかけないように気を使っているようだ」


「神崎学院長、やはりシスター・エレナとはお知り合いだったんですね」


「知り合いといえば、その通りだ。かつてシスター・エレナは私の前に敵として立ちはだかろうとしたが、私を見て一瞬で負けを覚悟して自爆攻撃を仕掛けてきた。もちろん力尽くで止めたがな。そして事情を聴くと、やはり今回同様に彼女は孤児院の子供たちを半ば人質に取られるような形で、否応なく私に挑まされたというわけだ」


「そんな話、全然知らなかったですぅ」


 マリアが驚いたように声をあげる。今から約10年近く前の出来事なので、当時すでにマリアも孤児院に籍を置いていたのは言うまでもない。



「だからこそ、その手紙からはエレナがひとりでなんとか解決しようという決意が読み取れてくる。あいつは他人のために喜んで命を投げ出そうとするからな」


「お願いですぅ! シスターを助けてほしいですぅ!」


 その言葉を聞いて、マリアが縋るような表情で学院長に頼み込んでいる。今のマリアはシスター・エレナのためなら悪魔とも契約するかもしれないくらいに追い込まれている。



「いいだろう。カレン、私の代わりにセルビアに行ってもらえるか?」


「はい、お母さん」


 カレンは母親の判断に絶対の信頼を置いているようで、ほぼ即決で返事をしている。これにはマリアが意外そうな表情で異を唱える。



「学院長は一緒に行ってくれないんですかぁ? シスターとはお友達なのに…」


「直々のご指名だから私もヨーロッパには足を運ぶが、エレナと孤児院を守る役目はカレンに任せておけば十分だ。マギー中尉、貴官も同行するんだろう?」


「はい、マリアを放っておけませんから」


「これで3名か。もうひとりくらい一緒に行動してもらうとしようか…」


 学院長はソファーに座るデビル&エンジェルのメンバーを順々に見渡す。中でも桜は「自分を指名しろ」とばかりに身を乗り出しているが、学院長の視線はその前を通り過ぎていく。そして…



「おい、その端っこでウトウトしている二宮力士長!」


「誰が力士長ですかぁぁぁぁぁ!」


 明日香ちゃん、睡魔に今にも負けそうなところから復活の雄叫びが学院長室に響き渡る。



「ふむ、『こう呼びかければ一発で目を覚ます』と桜大尉から聞いていた通りだな。二宮、カレンと一緒にセルビアに向かってもらうぞ」


 学院長から直々のご指名があったにも拘らず、明日香ちゃん的には現在それどころではないよう。



「桜ちゃん、なんてことを広めてくれたんですかぁぁぁぁ! この責任はどう取ってくれるんですかぁぁぁぁ!」


「まあまあ、明日香ちゃん、そんなに興奮すると体重が増えますわ」


「興奮と体重にどんな関係があるって言うんですかぁぁぁぁ!」


 明日香ちゃんのボルテージが上がりまくり。よほど「力士長」の件を腹に据えかねているよう。しかも肝心のセルビアに渡航する話がまったく耳に入っていないのが丸わかりで、桜もどこから説明すべきか頭を悩ませている。


 しばし間をおいて…



「明日香ちゃん、よく聞いてください。明日香ちゃんはマリアさんやカレンさんと一緒にセルビアに行ってもらいます」


「セル… それは一体どこなんですか? 紳士服かなんかを売っているんですか?」


「それは背広屋ですわ。そうじゃなくって、マリアさんが生まれた国に行ってもらいますの」


「えぇぇぇぇぇぇ! そんなのイヤですよ~。私にとっては2学期が終わったら冬休み中家でゴロゴロするのが年末年始の正しい過ごし方なんですから」


「年末年始に限らず、毎日ゴロゴロしているじゃないですか。そしてブクブク太っていくのがオチですわ。明日香ちゃん、それよりもちょっとお耳を…」


 桜は明日香ちゃんの耳に口を近づけてそっと囁く。



「マリアさんの育った場所は孤児院ですわ。日本で箱買いしたお菓子を持って行って子供たちと仲良くなれば、毎日食べ放題ですわ」


「桜ちゃん、私、行きます! いいえ、行かせてもらいます!」


 桜の口車にコロッとノセられる明日香ちゃん。よくも毎回コロコロ騙されるものだと感心してしまうレベル。とはいっても明日香ちゃんにも言い分はあるだろう。おそらく異世界で孤児院の子供たちに慕われたというあの嬉しくも楽しい経験が、日頃の明日香ちゃんにしては考えられないこのような反応をさせたに違いない。



「よし、二宮も納得したようだな。明後日には成田から出発するから準備を整えてくれ」


「あ、明日香ちゃんは本当に大丈夫なんですかぁ? なんだか不安になってくるですぅ」


「ひょっとして私って、あんな人に負けたの?」


 マリアは得も言われぬ不安を隠そうともしないし、マギーは言い様のない憤りを感じているのも無理はない。それにしても学院長の人選は、確かにこれで良いのか疑問が浮かんでくる。



「それではセルビアに渡航する4名は部屋に戻っていいぞ。カレン、来客をゲストルームに案内してくれ」


「はい、わかりました。マギーさん、マリアさん、どうぞこちらに」


「桜ちゃん、さっそく売店でお菓子を買い込んできますよ~」


 不安顔が消えないマリアと、いまだにモヤモヤが残った表情のマギーはカレンに連れられて学院長室を後にする。もちろん急にテンションマックスになった明日香ちゃんも一緒。


 4名が出ていったのを確認すると、おもむろに学院長が口を開く。



「さて、セルビアに渡航する表向きのメンバーは決定した。ここから先は裏側のミッションのレクチャーになる。全員自分の役割をしっかりと頭に叩き込んでもらいたい」


「なんだかおかしいと思いましたわ。やはり学院長は何か企んでいましたのね」


「ああ、楢崎弥生特士がいい仕事をしてくれてな。色々と情報は集まっていた。今回は私を含めて全員出撃となるぞ。ああ。それからちょっと手が足りないから本橋のご老人にも声を掛けてある」


「またおジイ様の面倒をみるんですのぉぉぉぉぉ!」


 桜の魂の絶叫が学院長室に響くのであった。



先陣を切ってセルビアに出発するマギーたち。当然ながら明日香ちゃんがトラブルを引き起こさないわけもなく… この続きは出来上がり次第投稿いたします。どうぞお楽しみに!


最後に皆様にいつものお願いです。


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