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異世界から日本に帰ってきたらなぜか魔法学院に入学 この際遠慮なく能力を発揮したろ  作者: 枕崎 削節


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302 保護者達のダンジョン紀行 1

ダンジョン探索を計画する保護者たち、その動きは……

 聡史の家に美鈴とカレンがやってきた少し前の時間の二宮家。


 この日も朝からうだるような暑さが続いており、明日香ちゃんはエアコンが効いたリビングでゴロゴロしながらアニメ三昧。


 ちなみにクルトワと共に実家に帰った日の夜は、明日香ちゃんパパが張り切ってお土産に買ってきた1ダースのケーキをクルトワと4つずつ分け合って腹に収めるという放蕩ぶり。


 さらに輪をかけるように次の日夜は、再びパパさんが買ってきたアップルパイとママさんが買ってきた某アイス店のバラエティーパックをパクパクといった具合に運動などまったくしないままに好きなだけ食べて常日頃にも増す勢いで体重増加に余念がない。


 そしてこの日の午前中、弟の健太郎君(小学校6年生)がグダグダしている明日香ちゃんの元へやってくる。



「お姉ちゃん、夏休みの宿題を教えてよ~」


「フフフ、我が弟よ。宿題とは夏休みが終わるギリギリまでじっくり熟成しておいてから、切羽詰まった勢いで片付けるのが一番ですよ~」


「お姉ちゃんはいつもそんな調子で、夏休みの終わりになるとヒーヒー言っていたじゃん」


「私は良いんですよ~。無事に魔法学院に合格しましたから、これで人生勝ち組で~す」


「お姉ちゃんのバカ~! 朝からゴロゴロしている怠け者のお姉ちゃんみたいには成りたくないから、クルトワお姉ちゃん、宿題教えてよ~」


 ついに健太郎君は実の姉に見切りをつけたらしい。こんな役に立たな… ゲフンゲフン、頼りにならない姉よりも、まだクルトワのほうが力になってくれるのではないかと期待を寄せているのだろう。このような遣り取りを見るにつけ、明日香ちゃん同様クルトワのホンワカした人柄に、弟君もすっかり懐いている様子が窺える。


 そして健太郎君から何の気なしに宿題を差し出された側のクルトワといえば…



「どれどれ… ムムッ… に、日本の小学生はこんなにレベルの高い勉強をしているのですかぁぁぁぁ!」


 健太郎君から受け取った算数のドリルと漢字書き取りノートを見たクルトワの表情が絶望に染まっている。学習面ではEクラスでも下のほうのクルトワにとって、小学校6年生の問題はかなり高いハードルだったらしい。



「と、ともかく1問1問コツコツ解いていきましょう」


 魔王の娘は文明がはるかに発達した日本の社会を必死で学んでいる最中で、学習面で特に彼女に大きな負担として圧し掛かっているのは計算と漢字なのは致し方ない話。


 それでも頭を振り絞って小学生の宿題に必死に向き合おうとしている。



「クルトワお姉ちゃん、最初の問題はこれでいいのかな~?」


「どれどれ… た、たぶん合っていそうですね~」


 まったく自信なさげなクルトワは何度もヘルプの視線を送っているが、夏休みアニメ特集に夢中の明日香ちゃんはガン無視状態で一向に反応してくれない。仕方がないのでクルトワは健太郎君の解き方を必死で見て覚えて、少しずつ計算のやり方をマスターしていく。



 やがてテレビがCMに入ったところで健太郎君が明日香ちゃんに向かって…



「お姉ちゃん、ひとりでアニメなんか見ていないで手伝ってよ~」


 すると明日香ちゃんはおもむろに立ち上がって、文具類が仕舞ってある棚の引き出しから取り出した計算機をスッと差し出す。確かにこれで計算すればあっという間に答え一発だろうが、重要なのはそこではない。自分の頭で計算する過程を身に着けるのが大切であって、計算機が出した答えを丸写しで記入してもまったく意味がないことに早く気付いてほしい。


 健太郎君に計算機を手渡したまま、再び再開したテレビアニメに没頭する明日香ちゃん。こんな姉を持った健太郎君が不憫でならない。対してクルトワは、こちらも何とも自信なさげに弟君の表情を窺いながら逆に計算のやり方を教わっている状態。


 こんな調子で午前中は時間だけが過ぎていく。



「さて、そろそろお昼ごはんの時間ですよ~。何か食べるものはないですかね」


 12時になった直後に、明日香ちゃんはやっと重い腰を上げて台所に向かう。冷蔵庫を開けて中を確認すると、パート勤めをしているママさんがこの日は帰り掛けに買い物をする予定だったこともあって、庫内はスカスカな状態が目に飛び込んでくる。



「今冷蔵庫にあるのは、エリンギ、こんにゃくゼリー、セロリ、冷凍のタコ焼き、あとはサバですか… パパッと作れそうなのはチャ-ハンくらいですかね~」


「お姉ちゃん、絶対にやめてぇぇ!」


「明日香ちゃん、早まらないでくださいぃぃ!」


 健太郎君とクルトワの絶叫が台所の入り口から響いている。二人とも明日香ちゃんの料理の腕に絶大な信頼を寄せているのは言うまでもない。もちろん口に入れるのも不可能と思えるような未確認物体デブリを創り出す方に300万ジンバブエドル。


 そんな二人の反応がいかにも不服そうな表情で明日香ちゃんが振り返る。



「ええ~、チャーハンでは不満ですか?」


「お姉ちゃん、そこにある材料で、なんでチャーハンっていう答えが出てくるの~!」


「明日香ちゃん、とにかく落ち着いてください」


 必死で宥める弟君とクルトワに対して、明日香ちゃんがペロリと舌を出す。



「いや~、冗談ですよ~。『有り合わせの品でチャーハン』って言っておけば、なんだかデキる人に聞こえるじゃないですか」


 どうやら何のプランもないままに、ただ単に「パパッとチャーハンを作る」と言ってみたかっただけらしい。料理なんかこれっぽっちもできないくせに、見栄を張るのもいい加減にしろと言いたくなってくる。



「お姉ちゃんが『料理する』なんて言うもんだから、炒めたご飯に生焼けのサバが突き刺さっていて、トッピングにこんにゃくゼリーとタコ焼きが乗っかっている画を想像しっちゃったよ~」


「明日香ちゃん、とんでもない完成図が夢に出てきそうなんで、悪質な冗談はやめてください」


 悪夢の料理を想像してしまった被害者の二人はとってもゲッソリしたご様子。午前中を掛けて真面目に宿題に取り組んだご褒美が明日香ちゃん特製チャーハンなんて、これ以上のムゴイ仕打ちはないだろう。


 ことに健太郎君は涙目になりかけている。こんな奔放すぎる姉に振り回されるのは小学生には耐え切れないかも…



「ということで、私のお料理が食べたくなかったら、本日もファミレスに行きましょう」


「そうだよね。たぶんお母さんもお姉ちゃんがそう言うだろうと見越してなにも用意しなかったんだよね」


「明日香ちゃんの目的は最初からファミレスでしたか~。これは完全に一本取られました」


 実は昨日のお昼も三人でファミレスに繰り出していたという実績がある。めいめい好みのランチを食べてからお約束のパフェを注文してすっかり満足して帰ってきたので、本日もその再現を狙っていたらしい。


 自分の料理が食べたくなかったらファミレスに付いてこいなんて、明日香ちゃんならではの非常に姑息で狡猾な手口といえる。


 とまあこんな感じの実にダラけた生活を送っている明日香ちゃんと、それに付き合っているクルトワ。いや、クルトワは弟君と一緒に勉強している分だけ、まだ弁解の余地はあるかもしれない。


 そして次の土曜日…


 この日は明日香ちゃんパパとママが在宅しており、一般家庭の休日の一日といったムードで過ぎていく。だがこの日の夕食後、まさか一般家庭の在り方を根本から突き崩す事態が発生しようとは…


 食事を終えてデザートを食べている最中、突然明日香ちゃんパパが話題を振ってくる。



「明日香、父さんと母さんは明日秩父ダンジョンに行くんだよ。もちろん明日香も一緒に行ってくれるだろう?」


「お父さん、ダンジョンに何しに行くんですか~?」


「それは決まっているだろう。この歳にして冒険者デビューするんだよ」


「誰がですか?」


「父さんと母さんだ。実は楢崎さんや中本さんと一緒になって〔シニア向けダンジョン探索講習〕に参加してね。明日からいよいよ実戦を迎えるんだ」


「そうですか、頑張ってください。私は夏休みを満喫しますので、ダンジョンなんて絶対に行きませんよ~」


「お~い、明日香。それは冷たいんじゃないのか?」


 娘にフラれた形の明日香ちゃんパパは、助けを求める目でママさんを見ている。弟とクルトワは、今のところ静観の構え。



「それじゃあせっかくだから、明日のために私たちが用意した衣装を見てもらえるかしら」


「おお、母さん、ナイスアイデアだよ。今からちょっと着替えてくるから、三人の感想を聞きたいな」


 というわけで、明日香ちゃんの両親はいそいそと自分たちの部屋に向かい着替えをしてくるらしい。健太郎君はともかくとして、明日香ちゃんとクルトワの頭の上には大量の???が浮かんでいる。ダンジョンに入る服装というのは動きやすくて実用的なものと相場が決まっているにも拘らず、この両親は「衣装」という聞き慣れない発言を残している。一体どんな衣装なのかと考えてみるものの、二人とも想像がつかない。しばらくすると…


 

「フフフ、明日香、クルトワちゃん、健太郎、父さんと母さんがダンジョンデビューに向けて用意した渾身の一着を披露する時がやってきたぞ」


「さあ、私たちの晴れ姿をしっかりその目に焼き付けなさい」


 リビングに通じるドアの向こう側から、なんとも香ばしいセリフが聞こえてくる。そして急に開いたドアから登場したパパさんママさんに対して…



「その格好は何ですかぁぁぁ!」


「仮装行列のつもりですかぁぁぁ!」


「お父さん、お母さん、お願いだからヤメてよ~!」


 明日香ちゃん、クルトワ、健太郎君の三人が、静かな住宅街の一角ということも忘れたかのような大声を張り上げている。その原因を作ったパパさんママさんは…



「なんだ、三人とも父さんの忍者姿のどこが気に入らないんだ?」


「そうよ、私なんか魔法少女のコスチュームを自作したんだからね」


 両親の発言にある通り、パパさんは紺色の忍者装束でご丁寧に鎖帷子まで着込んでいる凝った格好。ママさんはピンクを基調としたフリフリの膝丈スカートに、ピッタリフィットのチアリーディングでも始めるのかと思わせるラメがキラキラしたノースリーブ。さらにダメ押しとばかりに、両手には二の腕まで伸びる長~い手袋まで嵌めている。もちろん衣装と同じようにキンキラのラメ入りなのは言うまでもない。手にするのはどうだと言わんばかりのマジカルステッキとくれば、子供たちから盛大なツッコミも已む無しか。



「一応聞きますけど、なんで二人ともそんな恰好をしているんですか~?」


「明日香、よくぞ聞いてくれた。実は父さんの職業は忍者なんだよ」


 いや、ステータスに正確に記載されている表記は〔ウッカリ忍者〕となっている。だからついウッカリして、このようないでたちを堂々と子供たちの前で公開するという特大のやらかしをしたのかもしれない。



「明日香、お母さんのこの姿を見てあなたは何も感じないのかしら? 私こそ真の魔法少女よ」


「お母さん、年を取った昭和のアイドルが、一番売れていた頃の衣装を頑張って着ているみたいだよ~」


 健太郎君は母親のこんな姿にショックを受けているよう。涙目になって正気を取り戻してほしいと訴えている。それにしても、小学生にしては何と的確なツッコミを入れるのだろう。これはこれで、もしかして将来末恐ろしい少年かも知れない。

 

 そして母親の発言を誰よりも信じたくないのは、もちろんこの人…



「なんでお母さんが魔法少女なんですかぁぁ! 私が魔法学院に入学して1年以上頑張ってもいまだに職業が無いのに、ポッと出のお母さんに憧れの魔法少女を取られてしまうなんて…」


 明日香ちゃんは弟君とは違って、魔法少女として母親に先を越された点に憤っているらしい。突っ込む点はそこではない気がするが…



「せっかく喜んでもらえると思ったのに、なんだか評判がいまいちだな~」


「健ちゃん、昭和のアイドルはちょっとヒドすぎじゃないかしら? あれだけ準備に時間を掛けたのにわかってくれないなんて… お母さんはとっても悲しいわ」


 いや、両親がこんなとっ散らかった衣装で登場してくれたら、子供から「ちょっと待て」という声が上がるのが当然ではないだろうか? その上これだけ子供からの不評を買っているにも拘らず、この両親はまだ自分たちの衣装について間違っているという認識を持っていないよう。とにかく誰かが早いうちにこの二人を正気に戻さないと、万が一にもこの格好でダンジョンに行った日には居合わせる冒険者たちの間で後世まで語り継がれかねない。


 ここでこれまで沈黙を守っていたクルトワが口を開く。



「ご両親とも、さすがにその格好はないですね。ダンジョン管理事務所の受付カウンターで『ふざけているのか!』と怒られて、出入り禁止になるのがオチですよ。その何とか講習で服装に関して説明があったはずです」


「ええ~、私たちは真面目に職業に合わせた姿になっただけなのに~」


「そ、そうなの? 魔法少女だったらこのくらいの格好は普通じゃないかと思っていたんだけど…」


 他人からの指摘は耳が痛いのか、ようやくここでパパさんママさん共にトーンダウン。さらに明日香ちゃんがダメを押しにかかる。



「そうですよ~。冒険者の皆さんは真剣なんです。そんなコスプレみたいな恰好でダンジョンに来る人なんかいません。どうしてもやりたいなら、1週間後にビッグサイトに行ってください」


 明日香ちゃん的には、毎年夏と冬の2回、有明方面で開かれるアニメ系の大きなイベントをおススメしているらしい。あっちの会場だったら、両親がこの格好で登場してもまあ何とか許してもらえるかもしれない。年齢的にかなり痛い物を見るような視線が集まる可能性が高いが…



「そうだったのか… ほら、ゲームみたいに職業に合わせた衣装が当然だと思っていたんだけど、どうやら違うんだな」


「せっかく頑張って作った衣装が無駄になっちゃったわ。明日香にあげるから着てみない?」


「絶対にお断りしますよ~」


 ママさんの提案をさすがの明日香ちゃんも撥ね付けている。どうやら魔法学院入学当時のお花畑だった頃から比べると、彼女も相応にダンジョンの厳しさを理解したのだろう。この1年の桜のシゴキは無駄ではなかったといえよう。


 ただこの衣装の件で判明したことがある。明日香ちゃんの両親は、やっぱり娘同様に頭のネジがどこかユルイらしい。こんな人たちで安全にダンジョンの探索を出来るのか不安が募る一方。そこで明日香ちゃんがようやく重たい腰を上げる。



「本当にしょうがないですけど、二人だけでダンジョンに行かせるのはさすがに不味いとよくわかりましたよ~。明日は私も一緒に行きますから」


「クルトワお姉ちゃんも一緒に行くの?」


 健太郎君はまたひとりで留守番になるのか心配顔でクルトワに話を振ってくる。



「私は残って夏休みのドリルでしっかり勉強しますから。健ちゃん、一緒に頑張りましょう」


「うん、クルトワお姉ちゃんがいてくれると、なんだか僕もヤル気が出てくるよ」


 ということで、クルトワは弟君と一緒に夏休みの宿題に取り組むことに。両親の付き添いは明日香ちゃんだけと決まる。


 明日は朝早く目を覚まさないといけないと気が付いた明日香ちゃんは、家族やクルトワを置き去りにしてその足で風呂に入ってグースカ寝てしまうのであった。





   ◇◇◇◇◇





 一方土曜の朝の楢崎家では、朝食を終えた聡史が父親を庭に連れ出している。妊娠中の母親の面倒は美鈴とカレンが買って出ているので、今は父親を鍛えることに専念できる環境。


 ということで、聡史による父親への鍛錬の時間がスタート。



「親父、これを手に取ってみなよ」


「なんだ、この剣は本物なのか?」


「いや、学院で訓練に使っている刃を潰した剣だよ。とはいえ当たったらシャレにならないくらい痛いから気をつけてな」


「わ、わかった。むむ、実際に手にするとズッシリとくるな」


「そりゃぁ金属製だからな。ということで、これで素振り開始だ。まずは上段から唐竹で30回開始」


「よし、頑張るぞ~」


 こんな雰囲気で始まった父と息子の訓練だが、30回の素振りが終わった頃には父親から泣き言が入っている。



「聡史、もう腕が上がらなくなっているぞ~」


「だらしないなぁ~。学院の1年生でも、毎日この3倍は素振りしているぞ。続いて袈裟斬り左右交互に30回」


 すでにヨレヨレになりかけている父だが、なんとか聡史に言われるまま剣を振り下ろす。とはいえフォームや剣の軌道は徐々にブレ始めており、このまま何回繰り返してもまったく上達に繋がらないことは明白。だが聡史はそれを承知の上で、敢えて父に剣を振らせている。


 その後も大きく踏み込んでからの左右の薙ぎ祓い、下段からの振り上げ等々… 標準的な素振りメニューをこなし終えた頃には、父親は虫の息になって芝生の上に大の字に転がる。



「どうだ、親父。生半可な覚悟では冒険者など夢の夢だとわかったか?」


「こ、こんなに辛いとは思わなかった…」


「それじゃあ、準備体操はこれで終わりな。木剣で俺と打ち合うぞ」


「た、助けてくれぇぇ!」


 弱音を吐く父親を立たせると、聡史は木剣を握らせて打ち合いに入る。ボロボロに打ちのめされる父親を見ながら「自身が剣道を始めた直後は立場がまったく逆だったなぁ~」などという感慨に浸りながらも厳しい稽古を強いていく。


 途中で何度も倒れて動けなくなった父だが、その都度口の中にポーションを流し込んで体力を回復させての繰り返し。こうして午前中いっぱい、聡史による指導は続けられていく。


 仕舞いには立ち上がる気力を失って芝生に転がっている父親。その情けない姿のままいさせるわけにもいかないので、聡史はガラス窓を開いて家の中に呼び掛ける。



「お~い、カレン。すまないが親父を回復してもらえるか?」


「まあ、お父様。ずいぶんヒドイ姿になりましたね。はい、回復」


 窓から顔を出してチョチョイッと右手から光を発するカレン。その光を浴びた途端に、父親のダメージと体力が一気に回復する。何があったんだとビックリしながら起き上がる父。



「聡史、急に疲労が吹っ飛んだぞ。一体どうなっているんだ?」


「カレンの回復魔法さ。怪我や疲労を元通りに戻してくれるんだ」


「それはすごいなぁ~。カレンさんは美人で優しいだけじゃなくって、こんな魔法も使えたのか」


「いいえ、大した術ではありませんから」


 謙遜しながら窓の中に入っていくカレン。あまり深く追及されるとボロが出かねないので、さっさとこの場から退場していく。



「親父、ダンジョン探索への見方は変わったか?」


「ああ、想像以上に厳しいんだと実感したよ」


「よかったな。もしこれでわかってもらえなかったら桜に訓練を任せるか、もしくはジイさんの道場に連れていく所だったぞ」


「聡史、それだけは絶対に勘弁してくれ。あのお義父さんだけは絶対にムリだ」


 どうやらこの父親も、聡史同様に怪物ジジイは苦手な様子。まあ、それが普通の感覚であろう。


 結局この日1日、カレンの力も借りながらの訓練は続いていく。かなりの詰込みではあったが、聡史が最低限目指す程度には父の剣術スキルのランクも上昇したので、これで良しとする。あとは明日を待つだけとなり、この日は更けていくのだった。





   ◇◇◇◇◇





 翌日、聡史は父が運転する車のリアシートに乗り込んで秩父ダンジョンへ。隣には美鈴が座っている。カレンは母親に付いてもらっており、家事一切を彼女に任せるのは申し訳ないので、今日だけは祖母が楢崎家に来てもらえるよう連絡を済ませてある。


 約束の午前8時前には管理事務所の駐車場に到着。すでに中本夫妻は到着しており、10分後には二宮夫妻と心配で付き添った明日香ちゃんも登場する。


 ちなみに闘武館の面々だが、桜が滞在する間に攻略のノウハウを吸収しようという目的で、本日も1時間前にカウンターで手続きを済ませてすでにダンジョンの内部へ。相変わらず学はあのジジイと一緒に行動しているらしい。どうか無事であってほしいものだと心から願わずにはいられない。



「おはようございます。今日からいよいよ本番ですね~。初日ということもあって、息子と西川さんのお嬢さんが応援に来てくれました」


「楢崎さんのお宅もでしたか。実はウチの娘も心配して付いてきてくれたんですよ」


「すいません、我が家の息子は先日から道場に泊まり込んでおりまして、今日も何をやっているやら私たち親にもサッパリわかりません」


 三家族のご挨拶が始まっている。最後に挨拶したのは中元夫妻だが、どうか安心してもらいたい。息子の学君もちゃんと秩父ダンジョンに来ているのだから。



「それよりも、楢崎さんの奥様は経過は順調ですか?」


「はい、このところ少々つわりで苦しんでおりましたが、お腹の子供は順調に育っていると検診で言われたそうです」


 すでに何度も顔を合わせている親たちが立ち話で盛り上がっている横では、その子供たちが…



「まあ、明日香ちゃんも来ていたのね」


「美鈴さんと桜ちゃんのお兄さんが一緒に来るとは思いませんでしたよ~。最初から知っていれば家でゴロゴロできたのに…」


「いや、さすがにあんな頼りない親だけでダンジョンに入らせるのは気が引けてなぁ~。桜がいればあいつに任せて俺は家で母さんの面倒を見ていたんだけど、一体どこをほっつき歩いているのやら」


 安心していい。桜も一時間前にはすでにダンジョンの内部に入り込んでいる。


 こうして一行は管理事務所に入ると、まずは諸手続きとプロテクターや盾の購入。その後、ミーティングルームに入って各々の特性の確認とフォーメーションを決めていく。



「それじゃあ、親父から順にステータスを開示してくれ」


「ああ、わかった」



 【楢崎 康史】  43歳 男


 職業       メタボ剣士


 称号       …


 レベル        1


 体力        39


 魔力        28


 敏捷性       27


 精神力       45

 

 知力        52


 所持スキル    処世術ランク4  剣術ランク4


 ダンジョン記録  …

 


「プッ…」


「ゲフッ…」


 美鈴と明日香ちゃんが吹き出している。やはり〔メタボ剣士〕が原因だろう。続いては…



 【二宮 徹】  41歳 男


 職業      ウッカリ忍者


 称号      …


 レベル        1


 体力        34


 魔力        18


 敏捷性       31


 精神力       35

 

 知力        48


 所持スキル    気配察知ランク1  忍び足ランク1


 ダンジョン記録  …



「ウ、ウッカリって…」


「お父さんの職業名が恥ずかしいですよ~」


 またもや美鈴と明日香ちゃんが… 気を取り直して次に行こう。



 【二宮 順子】  41歳 女


 職業       魔法少女(41歳 パート主婦)


 称号       …


 レベル        1


 体力        27


 魔力        58


 敏捷性       24


 精神力       45

 

 知力        42


 所持スキル    火属性魔法ランク1  魔法戦闘ランク1


 ダンジョン記録  …



「明日香ちゃん、なんかゴメン」


「美鈴さん、いいんです」


「いや、きっと明日香ちゃんはカッコ書きが付かない魔法少女になれるよ」


「お兄さん、こんな場所でつまらない同情はいいですから」


 明日香ちゃんはいまだに母親に先を越された点に納得がいってなくて内心相当にヤサグレているよう。だが、美鈴と聡史にはどうすることもできない。ちなみに魔法戦闘というのは、魔法使い系の人間が主に用いる魔法を主体にした格闘体系と定義されている。ひょっとして将来〔ティロ・フィナー〇〕みたいな大技が使用可能になるのだろうか?


 続いて…



 【中本 輝夫】  40歳 男


 職業       戦士


 称号       …


 レベル        1


 体力        67


 魔力        13


 敏捷性       48


 精神力       55

 

 知力        45


 所持スキル    気合い上昇ランク2  防御力アップランク2


 ダンジョン記録  …



「やっと安心できるステータスが出てきたわね」


「良かったですよ~」


 美鈴と明日香ちゃんがホッとした表情。元々中本家は一家揃って真面目で几帳面な性格。おまけに父親は大学までずっとラガーマンだったという過去を持つ。さらにその生真面目さからか、この4月から毎日のウオーキングやランニングを欠かさず、週に3回はジムで筋力トレーニングを行うなど体力向上に努めていたという。これならばパーティー防御の要を務めるタンク役が十分に務まりそう。


 続いて…



  【中本 芙美】  37歳 女


 職業        槍士


 称号        …


 レベル        1


 体力        37


 魔力        23


 敏捷性       43


 精神力       67

 

 知力        55


 所持スキル    槍術ランク5  全体指揮ランク1


 ダンジョン記録  …



「リーダーは学君のお母様で決定ね」


「槍の技能が高いですよ~。学君のお母さんは、何かやっていたんですか?」


「若い頃に薙刀を少々嗜んでいました」


 いやいや、これはかなりのスキルだろう。レベル1でこのスキルランク5はかなり破格。しかも指揮能力まで備わっているとなると、十分にパーティーリーダーを任せられそう。そういえば学の父親は180センチを超えるガッチリした体格。どうやら小柄な学は母親似か、それともまだ本格的な成長期が来ていないだけなのだろうか。


 ともあれこの数値を見て聡史の頭の中でこの保護者パーティーのフォーメーションが決定される。タンク役の学父には盾と短剣を持たせて、斥候を務める明日香ちゃんパパには大きめのナイフ。聡史の父には中型剣で、学の母には細身の槍に決まって、アイテムボックスから手に合いそうな武器を取り出す。明日香ちゃんのママさんには、魔法の発動をアシストしてくれる杖を手渡して装備は完了。


 明日香ちゃんパパには聡史がマンツーマンで付いて気配の探り方を指導しつつ、いよいよ一行はダンジョンの内部へと足を踏み込んでいくのであった。


聡史たちに連れられてダンジョンに入り込む両親たち。全員無事に探索できるのだろうか? そして先に入り込んだ桜たちはいかに…… この続きは出来上がり次第投稿します。どうぞお楽しみに!


それから、読者の皆様にはどうか以下の点にご協力いただければ幸いです。


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