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異世界から日本に帰ってきたらなぜか魔法学院に入学 この際遠慮なく能力を発揮したろ  作者: 枕崎 削節


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123 筑波ダンジョン15階層

オークキングを前にしたブルーホライズンたちは……

 桜が開け放った階層ボスの部屋の扉をくぐると、そこには事前の情報通りにオークキングが待ち受けている。


 それはそうとして、聡史から「階層ボスを倒せ」という無茶振りされたブル-ホライズンは目の前に立ちはだかるオークキングの威容に完全に飲まれている。彼女たちが階層ボスに息を飲んでいるところに持ってきて、敵はそれだけではない。配下のオークジェネラルが2体と通常のオークが8体も並んでいる。



「な、なあ… 副会長が魔法で支援するとは言っても、これはさすがにヤバくないか?」


「5階層のボスだったゴブリンキングとは迫力が段違いね」


 どうやら一定のラインを踏み越えないと魔物たちは動き出さないのは大山ダンジョンのボス部屋と一緒。とはいえ、いくら脳筋といえどもこれほどまでの危険な相手ならば美晴にもすぐにヤバいと認識可能らしい。さすがにひとりで突っ込んでいくようなマネはせずに、隣に立っている渚と顔を見合わせている。



「なあ、明日香。ちょっとくらい手伝ってくれよ。同じクラスのよしみだろう」


「お昼ご飯の前に余計な力を使いたくないので、お断りします」


「私たちに余計な仕事をさせて、自分は楽をするつもりかぁぁ!」


「何と言われようと、デザートを食べるまで私は一切働きません」


 血も涙も友情もない明日香ちゃん。とことん自分の都合だけで生きている。


 あまりにひどい明日香ちゃんの態度を見かねたマギーがそっと聡史に目配せしながら…



「聡史、私が手を貸そうか?」


「いや、これでいいんだ。明日香ちゃんも全部わかっていてあんなことを言っているはずだ。たぶん」


 マギーの申し出にも聡史はとりつく島もない。さいごの「たぶん」というフレーズに力が篭っていないのは、明日香ちゃんの人間性を全面的に信用できないからだろう。


 それはともかくとして、聡史自身すべてはブルーホライズンのメンバーが成長するために越えなければならない壁だと考えているよう。


 このような状況に追い込まれて、美鈴以外は誰も手を貸してくれないと悟った真美はついに決断を下す。



「みんな、覚悟を決めて階層ボスに挑むわよ」


「「「「「はい」」」」」


 真美の指示でブルーホライズンは戦闘態勢を固める。相手が相手だけに全員が決死の表情。その時、後方で指示を出す真美の隣に美鈴が近付いていく。



「私の魔法を合図にして全員オーク軍団に打ち掛かってね」


「わかりました」


 真美が頷くと、美鈴は居並ぶオークに向けて魔法を放つ。



重力グラビティー足枷シンカー


 このところ美鈴が多用している重力魔法が放たれていく。その中でも最も初歩的な重力を2倍にする術式がオーク軍団を絡め取る。この魔法の一段階強力なグラビティー・プリズンだとオークたちが体を支えきれずに全個体が床に倒れ込んでしまうので、ブルーホライズンの経験にはあまり役立たない。そこで美鈴は相手がギリギリで体を支えられる程度の威力の魔法に留めている。


 

「ハンデを付けたから、これであなたたちも十分に戦えるはずよ」


「わかりました。副会長を信じます。みんな、行くわよ!」


「ヨッシャーー! こうなったら一気に畳み掛けるぞ」


 真美の声に合わせてブルーホライズンが一気に動き出す。彼女たちが警戒ラインを越えた途端にオーク軍団が動き出そうとするが、その足取りがやけにノロノロしている。身に圧し掛かる重力が2倍になっているせいで、明らかに足を前に出すのが精一杯な様子が見て取れる。



「チャンスだぜ! 手当たり次第に片付けろぉ!」


 先陣を切る美晴が1体のオークに突進する。盾を前面に押し出して体当たりすると、普段よりもズシリと重たい手応えが伝わってくる。オークの体重が2倍になっているのだから美晴の体当たりは簡単には通用しないはず。だが必死に体を支えているオークにしてみれば、立っているだけでもやっとのところに横から力が加わってしまっては堪ったものではない。体を支え切れずにその場に転倒して2度と起き上がれなくなる。



「明らかに動きが鈍くなっているわ。一気に攻勢に出るわよ!」


「いっけぇぇぇーー!」


 前衛の渚、ほのか、絵美に続いて、真美も両手に細剣を引っ提げて斬り込んでいく。その後方からは、千里がフィアーボールで盛んに援護を繰り返す。 


 オークジェネラルや下っ端のオークが次々に打ち取られていく中で、オークキングさえも美鈴の重力魔法の影響で身動きが出来ないまま立ち尽くすだけという状況。そこに千里のファイアーボールが立て続けに着弾する。



 ドカーン! ドカーン! ドカーン!


 3連発のファイアーボールでオークキングは大きなダメージを受けている。手にする剣はすでに保持できずに床に放り出して、両手と両膝を床について這い蹲る寸前で何とか留まっている見るも哀れな状態。


 

「全員で斬り掛かるわよ!」


「「「「はい」」」」


 ブルーホライズンの剣と槍が次々にオークキングに突き入れられていく。無抵抗のまま、オークキングは血の海に倒れて絶命していく。



「やったぜ…」


「勝てたぁぁ」  


「よかった、みんな無事ね」


 強敵との対戦の緊張感から解放されたブルーホライズンは床に座り込んで無事に討伐を終えたことにホッとしている。美鈴の援護があったとはいえ、格上の階層ボスをこうして打ち破った実感がジワジワと彼女らの胸の内に溢れてくる様子で、その実感が彼女たちを大きな仕事を達成したという表情へと変えていく。



「美鈴が与えたハンデのおかげで楽な戦いになったな。もうちょっと苦戦するかと思ったが、全員確実に力をつけているようだ」


「師匠、ありがとうございました」


「「「「「ありがとうございました」」」」」


 聡史の前に一列に並んでブルーホライズンが頭を下げている。こうして一つ一つ聡史が与える課題をクリアしていく彼女たちを、聡史自身温かい眼差しで見つめている。聡史に挨拶を済ませると、今度は美鈴の元に駆け寄るブルーホライズン。



「副会長、魔法の支援ありがとうございました。おかげでオークキングを討伐できました」


「私はちょっとだけお手伝いしただけよ。パーティーの協力で勝ち取った勝利だと誇るべきだわ」


 真美が美鈴に礼を言っている。だが美鈴は、あくまでもブルーホライズンの手柄だという態度を崩さない。その美鈴の元に、マギー、フィオ、マリアの3人が集まってくる。



「美鈴、今の魔法は何なのよ? 急に魔物の動きが悪くなるなんて、そんな術式見たことないわ!」


「私の眼にはどうやら重力を操ったように映りました。これほどのレベルで物理法則を捻じ曲げてしまう魔法なんて、どのような原理なのか興味が湧きます」


「凄い魔法ですぅ! 八高戦の時には手の内を隠していたんですかぁ?」


 三人が口々に美鈴の魔法を確かめようとするが、そうそう簡単に真相を明かす美鈴ではない。いかにもトボけているのがミエミエの口調でマギーたちに言葉を返していく。



「八高戦では使用できない属性ですからあの時は公開しませんでした。ダンジョンの中でしたら、思う存分力を発揮できます」


 どうやらマリアの話に乗っかったよう。美鈴は心の中でフィオの分析力に舌を巻いているので、敢えて彼女の話には触れないようにしている。


 ここで桜が話題を切り換える。



「さあ、階層ボスを倒したので、次の階層に向かいましょう。11階層はフィールドが広がっているらしいので、お昼ご飯にしますよ」


「そうですよ~。お腹が空いてきましたから早く行きましょう」


「いやいや、明日香ちゃんは朝から何もしていないですよね」


「歩いているだけでもお腹がすくんですよ~」


 桜が明日香ちゃんに向かって呆れ顔をしているが、ともあれ宝箱の回収を終えると一行は11階層へと降りていく。そこには大山ダンジョンの12階層と同様の広々とした一面の草原。



「凄いなぁ~! ダンジョンにはこんな場所があるんだな~」


「地下とは思えない雄大な景色ね」


「頭上に太陽まであるなんて、本物の自然の中みたい」


 初めてフィールドエリアに足を踏み入れたブルーホライズンのメンバーが感心した表情で眼前に広がる草原を眺めている。その時、桜の気配察知に触れるものがあったようでその表情が急に変わる。



「お兄様、ちょっとひとっ走り行ってまいりますので、バーベキューの準備を整えておいてください」


 そう言い残すと、そのままダッシュで草原の彼方まで走り去っていく。



「聡史、桜は急に飛び出して行ったけど、一体何をするつもりなのかしら?」


「食材を発見したんだろう。美鈴、この場でバーベキューの準備を始めるぞ」


 聡史はアイテムボックスからバーべキューコンロ一式とテーブル、食器類を取り出すと、美鈴とカレンがテキパキと準備を開始。



「こんなダンジョンの中でバーベキューなんか出来るんですかぁ?」


「桜ちゃんが準備しろと言っているんだから、美味しいバーベキューが始まるわよ」


 マリアが頭の上に???を浮かべているが、美鈴は一向に構うことなく準備を続ける。そして待つことしばらくして…



「お待たせしました。ロングホーンブルを20体ほど討伐してまいりましたわ。上質な肉が300キロほど手に入りましたから牛肉食べ放題です」


「呆れたわね。こんな短時間でロングホーンブルの群れを討伐してきたというの?」


 レベル100オーバーのマギーすら呆れる桜の所業… これがレベル600オーバーの力。


 美鈴とカレンがステーキの厚さに肉を切り分けて、バーベキューコンロの上に聡史が次々に載せていく。炭に落ちる肉の脂が香ばしい匂いを放つ。この場の全員のお腹の虫が盛大な音を立てるほど食欲をそそる香りが周辺に漂う。聡史のアイテムボックスには大量のステーキソースや焼き肉のタレが各種用意されており、その他にもキャベツやタマネギなど野菜類まで次々に取り出されていく。あっという間に本格的なバーベキューがこの場で開催と相成る。



「なんだか伊豆の旅行を思い出すなぁ…」


「そうね… あの旅行で私たちの運命は大きく動いたんだから、今考えれば思い切って参加してよかったわ」


 真美の脳裏には、夏の一泊二日の懐かしい記憶が蘇っている。あの旅行をきっかけにして聡史に弟子入りしただけに、ブルーホライズンにとっては大きな転機となる出来事として今でも鮮明に覚えている。


 そうこうするうちに美鈴から全員が待ちかねていたフレーズが…



「いい感じに焼き上がったから、好きなだけ食べてね」


「「「「「「「いただきま~す!」」」」」」」」


 こうして楽しい昼食のひと時が始まる。第4魔法学院の三人もダンジョンの内部であることを忘れてバーベキューを楽しんでいる。


 そしてたらふくステーキを口にした明日香ちゃんは…



「桜ちゃ~ん、食後のお楽しみはまだですか~?」


「明日香ちゃん、夕食まで我慢してください。まだ大して運動していませんからね」


「はぁ~… ガックリです」


 明日香ちゃんの肩がズドンと落ちている。この分では当分ヤル気を出さないであろう。エサがぶら下がるまではテコでも動かない態度を決め込んでいるのがあからさまな様子。


 そんな明日香ちゃんのどうでもいい落ち込みはマルッと無視して、桜が全員に提案。



「時間にも余裕がありますから、あそこに見える森まで足を延ばしませんか?」


 桜が指差す先には3キロほど彼方にこんもりとした森が見渡せる。



「いいわよ。12階層に下りていく階段はあっちの方向だから、森を通過していきましょう」


 マギーが桜の提案に頷いたので、一行は片付けを終えると森がある方向へと向かっていく。桜にはブルーホライズンにコカトリスの狩り方を教え込むという隠された目的があるとも知らずに… 


 森に入った桜は、軽トラックサイズの巨大なニワトリのお化けを手取り足取り教えながら狩っていく。すでに学生食堂へのオークの納入は頼朝たちに丸投げしてあるし、コカトリスもブルーホライズンに任せることが出来れば、今後の自分の行動が自由になるという思惑が隠されているのは言うまでもない。


 2時間ほどかけてコカトリス狩りをブルーホライズンがマスターしたのを見届けてから、桜は森を出て12階層の階段がある場所へと進んでいく。



 こうして午後の時間をかけて各階層を突破しながら、午後5時過ぎにいよいよ15階層へと到達する。



「ふえぇ~… お化けは嫌ですよ~」


 明日香ちゃんは美鈴の背中にしがみ付いている。この頼りない姿にマギーたちは「本当にこれで大丈夫なのか?」と残念なモノを見る表情。


 ブルーホライズンのメンバーも初めて目にするアンデッドが登場する不気味な階層の雰囲気にやや不安げな様子。


 だがここから一躍カレンの独壇場が開始される。



「ホーリーライト!」


 通路に登場してくるゾンビだろうがスケルトンであろうが、次々にカレンによって浄化されてその姿を消し去っていく。その効果はまさに圧倒的。まあ、天使の所業なのだからこれくらいは当然なのだが… とはいえこのカレンの活躍に目を丸くしているのは第4魔法学院の面々。



「回復魔法に加えて神聖魔法まで使えるなんて反則じゃないのよ!」


「おまけに、物理攻撃まで使用できるですぅ。絶対に敵に回したくないですぅ」


 どうやらマギーたち3人にもカレンの能力が理解できたよう。神聖魔法の使い手など海外を含めても10人もいるかどうかの貴重な人材。美鈴がいるだけでも聡史のパーティーの魔法戦力は強大なところに以ってきて、カレンの存在というのは対アンデッドに限定しても圧倒的としか言いようがない。


 こうして大した手間もかけずに一行は15階層のボス部屋に到着する。



「内部にいるのはリッチだな」


「ええ、そうよ。私たちの魔法では中々倒し切れないのよ」


 15階層のボスは大山同様にリッチという。物理攻撃が効果ない敵にマギーたちは苦戦していたそう。討伐は出来ないものの何とか扉をこじ開けて無事に撤退して戻ってこれたのは、マギーの高いレベルとフィオとマリアの二人が優秀な魔法使いであったおかげであろう。



「お任せください。リッチごときでしたら、あっという間に討伐いたしますから」


 カレンは自信たっぷりに宣言している。これが大言壮語に聞こえないのは、カレンの持って生まれた性格ゆえかもしれない。



「それでは、中に踏み込みますよ」


 桜がドアを押し広げると、内部にはやはりリッチが玉座に腰掛けている。



「美鈴さん、防御はお任せします」


「ええいいわよ。カレンは神聖魔法で仕留めないのかしら?」


「ワンパターンでは面白くないですから、今日は一味違う方法で討伐します」


 カレンが一歩踏み出すのを見届けると、美鈴は闇のカーテンを発動する。リッチが用いる程度の闇魔法であったら、問題なく吸収してしまう障壁がカレン以外のメンバーを包み込む。


 闇のカーテンが展開されている場所の数メートル前方に立っているカレンは「神聖魔法ではなくて別の方法」と口にしたが、果たして彼女が如何なる手段を用いるのかはこの直後に明らかとなる。



「覚悟なさい、光の剣よ!」


 カレンが両手を合わせてから手のひらを左右に広げると、その左手から眩い光で出来上がった剣が現れる。カレンは神の威光を纏った剣を構えると、一直線にリッチの元まで駆け寄っていく。



「$%&##+>***」


 リッチは迫りくるカレンに向けて闇魔法を放つが、天使の体は纏いつく闇を打ち払って何ら影響がない。



「成敗!」


「・・・・・・!!!」


 手にする光の剣をリッチの頭上から唐竹に振り下ろすと、リッチは声にならない声をあげてその体がボロボロに崩れ去っていく。



「なんなのよ?! 一体どうなっているの?」


「カレンさんは勇者なんですか? それとも聖女ですか?」


「やっぱり敵にしたくないですぅ!」


 第4魔法学院の三人はカレンが一刀のもとにリッチを倒した様子に有り得ないという表情でそれぞれが思うところを口にしている。ブルーホライズンのメンバーはこのカレンの討伐ぶりの真の意味が理解不可能で「師匠たちのパーティーならまあこんなものだろう」と見たままを受け入れている。自分たちとはあまりにレベルが違う存在だと彼女たちの中で割り切りが出来ているよう。


 こうしてリッチを討伐すると、ここでも宝箱が出現する。



「ちょっと調べてみましょうか」


 桜が箱を叩いたりしながら内部の様子を大まかに調べている。どうせ罠が仕掛けてあっても粉砕すればいいという実に大らかな調べ方なのだが。



「どうやら大丈夫ですね。むしろ罠が仕掛けてあったほうが面白いんですが」


 ちょっと残念そうな表情で宝箱を開けると、中から一振りの剣が出てくる。



「これはどうやら、アンデッドに有効な神聖属性を帯びている剣のようですね」


 誰の眼にも一目でわかる聖なる光を帯びた剣が一振り。聡史たちには今更不要だし、マギーたちは剣を用いる者がいない。したがってこの剣はブルーホライズンのほのかの手に渡ることとなる。



「何もしていないのに、私が頂いていいんでしょうか?」


「気にするな。予備の剣として腰に差しておくといいだろう」


「はい、ありがとうございます」


 聡史から手渡された剣を腰に差して、ほのかは嬉しそうな表情をしている。メインで使用している神鋼製の剣も中々上質ではあるが、属性は帯びていないのでその点では新しい剣に劣るかもしれない。ことにアンデッドに対する際はこの新しい剣がいい仕事をしてくれそう。


 こうして一行は、16階層へと降りていく。



「さて、そろそろいい時間ですから本日はこの辺にして、キャンプの準備に入りましょう」


 桜が発見した安全地帯に入ると、一行は本日の疲れを休めながら夕食の準備を開始する。もちろん明日香ちゃんが本日一番の輝きを放っていたのは言うまでもなかった。

 

16階層で一夜を明かした聡史たちは、さらに下を目指してダンジョンを進んでいきます。そして……

この続きは明日投稿します。どうぞお楽しみに!



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