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異世界から日本に帰ってきたらなぜか魔法学院に入学 この際遠慮なく能力を発揮したろ  作者: 枕崎 削節


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117 階層ボスとの連戦

美鈴が大魔王として覚醒して……

 聡史たちの前には相変わらず外見は美鈴であっても中身は暗黒の支配者を名乗る存在が立っている。



「それで、ルシファーさんはこの先ずっと美鈴の中にいるのか?」


 つい今しがた起きたルシファー顕現にようやく頭の整理が出来て認識が追いついた聡史が、今後の美鈴はどうなるのかと心配する表情で尋ねている。聡史の質問に対して、ルシファーは飲み込みの悪い男だとやや呆れた表情を向ける。



「先ほども申したであろう。我にとってこの娘は現世に顕現する依り代である。それはこの娘が現世に生を受けた時点からの揺ぎ無き事実であり、それはこの先も相変わらぬ」


「ということは、このまま美鈴に代わってずっとルシファーさんが表の人格を務めるのか?」


「何たる戯言を申すのだ? 我が人の日々の営みに事細かに口を出すなど有り得ねわ。そのような細事に我を巻き込むでない。今回の如きこの娘の力及ばぬ場面には顔を出すものの、日頃は娘を通して我が力を行使するに決まっておろう」


 やや憤慨気味にルシファーが返答を寄越す。神ともあろうもの、いちいちひとりの人間である美鈴の日常には興味がないと言っている。専らその興味はルシファーが言うところの「祭り」と称される異世界との戦いにのみ費やされるのだろう。



「それじゃあ、美鈴は今までの美鈴のままでいるということなんだな」


「それはどうかは我にもわからぬ。今後我の意思がこの娘に干渉し何らかの影響を齎さぬとも言えぬ。ただしそれを含めてこの娘の人格の成長と言えようから些細な事柄に左右されるでない」


 その言は暗にルシファーの神格が美鈴に何らかの影響を齎す可能性を示唆しているよう。さらにルシファーは続ける。



「時に、そなたは神とも悪魔とも呼ばれる我を前にして些かも物怖じせぬ様子。人としてあらん限りの試練を乗り越えたようであるな。だがさらに恐るべきはそなたの妹。我の目からしても、なおその強さの底が見通せぬわ」


「フフフフフ、どうやら私の真の力を理解可能な存在が現れましたわね。神であろうが仏であろうが、前に立ち塞がる者はこの拳で打ち砕く! すべての世界の頂点に立つ最強の存在こそ、この桜様ですわ」


 やはり桜は桜としか言いようがない。相手が銀河を統べる暗黒の支配者であろうとも一向に気にした様子がないこの厚顔不遜振り。この娘の面の皮の厚さはあらゆる面で人類の限界をはるかに凌駕している。ただしその言の通り、現状自他ともに認める最強の存在であるのも間違いはない。これでもう少し自重や謙遜を覚えてくれたら言う事ないのだが…



「なかなか面白き娘であるな。我の前でこれほどの大言を吐いた存在は永き我の生でも2、3しかおらぬわ。ひとりはゼウスとか申して全知全能を誇っておったが、我がポリスの民に甘言を囁いただけで仲間内で争って滅びおったぞ。まあこれは隠された史実である故にオフレコで頼む」


「ギリシャ文明が衰退した裏には、ルシファーの暗躍があったのか…」


 人間の歴史とそこで信仰される神の栄枯衰勢に簡単に干渉可能なルシファーの力に聡史すら呆れている。それよりもルシファーの口から「オフレコ」というフレーズが出てきたほうが驚きかもしれない。銀河を統べる神であっても、あまり明らかにしたくない過去があるのだろう。


 だが逆を返せば今回はルシファーが持つ闇の力が味方になるともいえる。戦いは何も正攻法だけで勝てるとは限らない。異世界からの進攻に対して日本と地球のありとあらゆるリソースを活用して撃退せねば、この世界に未来がなくなってしまうかもしれない瀬戸際なのだから。これを予期したからこそ、ルシファーは美鈴の体に紛れ込んで現世に姿を現したのであろう。



「さて、我にしてはずいぶんと話が長くなってしまったようだ。何しろこの場には興味深い存在が集っている故にな。そなたら兄妹といい、天使といい、さらにはそこで目を回している娘といい、どうやらあらかじめ定められた約束に基づいてこの場に集ったのだな」


「それはどういう意味だ?」


「自ずと明らかになるのを待つがよい。終わってみれば自明の理となろう。それでは我はしばし娘の中で休むとしようか。さらばである」


 最後まで堂々とした態度を崩さずにルシファーは去っていく。同時に美鈴の意識が表層に浮かび上がって、彼女の人格が戻ってくる。



「……えーと、聡史君…だよ…ね?」


「美鈴、大丈夫なのか?」


「ええ、何とか大丈夫よ」


 自分の体に眠っていたルシファーが目を覚ましてこの場に顕現するというとんでもない事態を引き起こしながらも、なお「大丈夫」と気丈に振舞う美鈴がいる。面倒事を次々に背負ってしまう美鈴の性格ゆえに騒動を引き起こした自分の責任と自覚しているかのよう。



「美鈴の身に何が起きたのか自分で理解しているか?」


「ええ、自分が喋っているのを他人の目で見るような感じで眺めていたわ」


「それじゃあ、美鈴の体に生まれた時から潜んでいた存在もわかっているんだな」


「ええ、ルシファーだと名乗っていたわね。私の理解ではもっと率直に〔大魔王〕と表現したほうがしっくりくるわ」


 どうやら美鈴もこの場で起きた信じ難い出来事を彼女の目と耳を通して情報を得ていたらしい。一見するとこれまでと何ら変わらない美鈴であるが、聡史は最も気になっている件を聞く。



「ルシファーが美鈴の内部に存在するという事実が判明した結果、美鈴自身には何か変化はあるのか?」


「特にはないようね。元々いた存在が日の目を見ただけで、私自身には今のところ自覚できるような変化はないようね。たったひとつを除いて」


「たったひとつ?」


「魔力が急激に上昇したのが自覚できているわ。ああもう1個あったわね。魔法の原理のすべてが見通せるようになったみたい」


「ステータスはどうなっている?」


「確認してみましょうか。ステータス、オープン!」


 美鈴の手元にはステータス画面が浮かび上がる。



 【西川 美鈴】 16歳 女 


 職業    大魔王


 レベル    38


 体力    非表示


 魔力    非表示


 敏捷性   非表示


 精神力   非表示

 

 知力    非表示


 所持スキル  火属性魔法ランクMAX 風属性魔法ランクMAX 水属性魔法ランクMAX 雷属性魔法ランクMAX 土属性魔法ランクMAX 無属性魔法ランクMAX 闇属性魔法ランクMAX 魔力ブーストランクMAX 魔力回復ランクMAX 術式解析ランクMAX  



「魔法の総合商社だな」


 聡史が呆れた声を漏らす。



「天使の私でもこれだけ多数の魔法属性は理解不能です」


 カレンが目を見張っている。



「美鈴ちゃん、とってもいい感じですわ」


 ダンジョン攻略が捗ると、桜がニンマリしている。



「自分でも呆れたわ」


 最後に美鈴が自嘲気味に漏らす。これが気を失っている明日香ちゃん以外のパーティーメンバーの感想らしい。しばし沈黙が流れて、その後にカレンが口を開く。



「美鈴さん、その姿は元に戻るんですか?」


「ああ、これね… なんだかすっかりカレンと似たような立場になったわね。元の姿に戻るには… これでいいかしら」


 黒いドレスをまとい背中から翼を伸ばす美鈴の体が眩しい光に包まれると、ダンジョンを攻略している時にいつも着ている学院指定の演習着姿に戻っている。この様子を見たカレンが食い気味に飛びつく。



「美鈴さん! 一体どうやるんですか?」


「ああ、これはね…」


 というわけで、カレンはいちいち隠れて着替えるという面倒な手間を克服可能となる。これだけでもカレンにとっては朗報だろう。


 そして美鈴が元の姿に戻るちょうどそのタイミングで、白目を剥いていた明日香ちゃんが目を覚ます。



「うーん… なんだか美鈴さんが恐ろしい悪魔のようになった気がするんですが…」


「明日香ちゃんはまた夢を見ていたんですね。どこでも居眠りをする悪い癖は早く治したほうがいいですよ」


「なんだ桜ちゃん、そうでしたか! あれは夢だったんですね… って、二度も同じ手を食うかぁぁぁ!」


 どうやら明日香ちゃんにも薄っすらと真相がわかっているよう。夢で誤魔化すという手は通用しない。そこで桜は一計を案じる。



「そろそろ夕方ですねぇ~。明日香ちゃん、お腹が空いてきませんか?」


「はっ、そうでした! もうお腹がペコペコですよ~。今日はデザートのお代わりができますから、今からとっても楽しみです」


 すでに明日香ちゃんの脳内では甘~いデザートがダンスを踊っている。天使だろうが魔王だろうが、もうどうでもよくなっているのが明らかな表情。


 こうしてデビル&エンジェルは、スケルトン・ロードが座っていた玉座の前に現れた転移魔法陣によって1階層まで戻ってくる。


 そのままダンジョンの外に出て、美鈴の中のルシファーが目覚めたという大事件が起きたにも拘らず、パーティーメンバーは何事もなかったように学院へと戻るのであった。





   ◇◇◇◇◇





 ダンジョン攻略を急ぐ聡史たちは次の週末もダンジョンの深層へと踏み込んでいく。30階層のボスはすでにリホップしており、スケルトン・ロードとの再戦が始まる。


 置き土産である呪いの力で一時は体を乗っ取られかけた美鈴は、その目に復讐の炎を燃やしてスケルトン・ロードをギタギタに痛めつける。最後には、ひざまずいて命乞いをする魔物を見下ろしつつ闇の炎で焼き尽くしていく。これが無慈悲な大魔王の本性なのか?


 美鈴は討伐を終えてから「ああ、すっきりしたわ」という言葉を残す。大魔王の力を自由に振るえるようになって、彼女の戦い方は以前とは全く別物といえる内容。その様子を目撃した聡史の背中には大量の汗が流れる。



 このような経過を経て一行は次の階層へと進む。31階層にはお馴染みの枝分かれする通路は存在せずに、長い一本道がボス部屋に向かって通じているのみという構造らしい。


 桜を先頭にして内部に入ると、そこにはデュラハンが待ち構えている。


 首がない馬に跨っている鎧騎士の姿をしているが、自分の頭部を左手で小脇に抱えるアンデッド。もちろん肩の上には頭は乗っていない。



「俺が相手をする」


 珍しく聡史が自分から前に踏み出す。剣を持った相手とあらば、剣士としての魂が疼くのが当然であろう。だが、ここでカレンが一旦止めに入る。



「聡史さん、魔剣ではアンデッドには効果がありません」


「カレン、忠告ありがとう。だがこのオルバースはそこら辺に転がっている魔剣とは一味違うから、まあ見ていてもらいたい」


 自信満々で聡史はデュラハンが待ち構える場へと歩を進める。



「剣士か… 良い剣を手にしているな。不死身の騎士を相手にしてどのように戦うつもりだ?」


 デュラハンが小脇に抱える頭が喋っている。その様子を見ているだけで、明日香ちゃんは口から泡を吹いて倒れていく。



「まあ楽しみにしていろ。行くぞ!」


 聡史が素早く踏み込んでいくと、デュラハンが剣を打ち合わせてくる。


 ガキーン!

 

 互いの剣から火花が飛び散る鬩ぎ合いだが、聡史の剣がデュラハンを押し込む。馬上から剣を振り下ろすデュラハンの小脇に抱えた顔が驚きの表情を浮かべる。



「お前の弱点はわかっているんだよ!」


 聡史はデュラハンの剣を撥ね付けると、小脇に抱えている頭に向かって剣を突き立てていく。


 グオォォォォ!


 部屋に響き渡る絶叫を残して、デュラハンの体は消え去る。



「もう少し歯応えがあるのかと思ったら、大した腕ではなかったな」


 聡史はオルバースをアイテムボックスに仕舞い込むと、脇目も降らずに部屋の奥にあるドアに向かう。




 このような調子で、各階層ボスとの一発勝負が続く。


 32階層は、頭が3つある犬型の魔物ケルベロス。


 33階層は、ライオンの頭とヤギの体にヘビの尾を持つキマイラ。


 34階層は、蛇の頭を持つ女の姿をしたメデューサ。


 35階層は、人を石に変える魔眼を持つバジリスク。


 36階層は、炎の精霊イフリート。


 37階層は、ライオンの体に老人の顔を持つ人食いの魔物マンティコア。


 38階層は、翼を持つ大蛇リントブルム。


 39階層は、ラグナロックの先兵たる巨人スルト。


 このようなそうそうたる顔触れの魔物を次々に撃破して、デビル&エンジェルはいよいよ40階層を迎える。



「これだけ階層ボスとの勝負が続くということは、いよいよ次はラスボスかもしれないな」


「お兄様、腕が鳴りますわね」


 桜はダンジョン完全攻略を目の前にして早くも気合を漲らせている。



「聡史君、どんな魔物でも私が燃やし尽くすから、何も心配しないで」


 美鈴は、遠慮なく大魔王の力を発揮するつもりのよう。



「聡史さん、天使の力全開で頑張ります!」


 カレンはすでに変身を終えており、天使の姿になってラスボスに立ち向かおうとしている。



「お兄さん、疲れたからもう帰りましょうよ~」


 ドテドテドテドテッ!


 明日香ちゃんのヤル気のなさに4人が挙ってキレイにコケている。何でここまで来て帰るんだと、全員が明日香ちゃんにジト目を向けるのも已む無し。オチの担当としては満点の出来映えだろう。


 渋る明日香ちゃんを宥めながらも、ともかくデビル&エンジェルは通路の最終地点にある一際巨大な扉を開く。そこには…




「怪獣映画ですかぁぁぁ!」


 明日香ちゃんの絶叫が響き渡る。五人の視線の先には、黄金の鱗に身を包み、胴体からは7つの首が蠢く巨大なヒュドラが待っているのであった。



ついにダンジョンの最下層か? 待ち受ける巨大な魔物との戦いはいかに…… この続きは明日投稿いたします。どうぞお楽しみに!



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