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異世界から日本に帰ってきたらなぜか魔法学院に入学 この際遠慮なく能力を発揮したろ  作者: 枕崎 削節


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114 26階層

魔族の謎を解くために、聡史たちはさらに深い層を目指して……

 夕方になって各パーティーは転移魔法陣を通って1階層へ戻ってくる。



「ふー、オークの討伐にだいぶ慣れたな」


「最初はパワーに驚かされたけど、慣れてくると上手くあしらえるようになったぜ」


 やや疲労を感じながらも男子たちは大きな達成感を得ている表情。それだけではなくて今日1日でレベルが3つ上昇しており、いよいよ20が目前となっている。


 先輩格に当たるブルーホライズンのメンバーはそんな男子の様子を温かい目で見ている。だがよくよく見ると6名編成のパーティーのはずだがひとり人数が欠けている。その時美晴は男子の盾役に取り囲まれている最中。



「美晴、なんであんな簡単にオークの突進を受け止め切れるんだよ?」


「ガハハハ、まず何はなくとも気合いが大切だな。絶対に後ろに通さないという気迫を前面に押し出して立ち向かうといいぜ」


「そうか… やっぱり何事も気合いなんだな」


「ボスの教えと一緒だ。気合いがあれば何でもできるというのは本当だな」


「よし、俺たちも気合いをパワーアップしていくぜ」


 美晴を筆頭にして揃いも揃って脳筋たちが集まっているので、全員が妙に納得した表情で「気合い」というフレーズに力を込めている。これで話が通じるんだから脳筋というのは単純に出来ている。


 こんな感じで自販機の飲み物で喉を潤しながら反省会などをしていると、デビル&エンジェルが外へ出てくるのが目に入ってくる。カレン以外の全員がベンチから立ち上がって一列になって出迎える。



「師匠、お帰りなさい!」


「ボス、お帰りをお待ちしておりました」


 ブルーホライズンのメンバーは親しみを込めた挨拶を聡史にしているのに対して、男子たちは直立不動で桜に一礼する。これは兄妹の教育方針の違いであろう。



「カレン、お守りを頼んですまなかったな。男子たちはどうだった?」


「最初から危なげなくオークを倒していました。もうちょっと慣れたら男子だけでも十分5階層で活動できそうです。信長君のリーダーぶりもなかなか板についてきました」


「カレンさん、それは当然ですわ。私が直々に鍛えているのですから信長も多少は成長しているのです」


 聡史とカレンの会話を横からぶった切るように桜が強引に割り込んでくる。この娘は自分が常に会話の中心にいないと気が済まない性格をしている。それにしても、よくもまあ桜とカレンは二人して頼朝の名前をこれだけ間違うものだ。カレンの場合は桜が「信長」と当然のように呼ぶからそのまま信じ込んでいるだけなのだが…


 

「桜ちゃん、それよりもコカトリスは十分集まったんですか?」


「カレンさん、あそこで美鈴ちゃんと明日香ちゃんがヘバッているでしょう。森中を虱潰しに歩き回って1週間の必要な量を確保しましたから、明日は深層に向かえそうですわ」


「それは何よりですね。最下層がどうなっているのか、私もこの目で確かめたいですしね」


 カレンも魔族の件に関しては関心を寄せている。異世界からの侵略阻止のために心を天使にして戦う所存のよう。


 だがグッタリとベンチに座り込んでいるこの二人は、魔族の件を明かされていない分だけ本日の理不尽なまでの強行軍に苦情を申し立てている。



「桜ちゃん、もう無茶苦茶ですよ~! 足が棒のようになって一歩も歩きたくありません」


「本当に今日は疲れたわ。たぶん30キロ以上森の中を歩いたんじゃないかしら」


 レベル35になった明日香ちゃんと美鈴がこれだけヘバッているのだから、桜がどれだけパーティーを引き摺り回したか理解できよう。だが桜は魔法の呪文を口にする。



「明日香ちゃん、学院に戻ったら晩ご飯とデザートが待っていますよ」


「さあ帰りましょう! 今日は体重を気にしないでご飯もデザートも食べ放題ですよ~」


 思いっきり元気な姿でスクッと立ち上がる明日香ちゃん、ここまで現金にできているとは逆に感心してしまう。



「さあ、美鈴も立ち上がるんだ」


「聡史君の腕に摑まらせて」


 こうして美鈴は聡史にもたれ掛かるようにその腕に摑まる。聡史と触れ合っていれば疲れてはいても表情がニコやかになる。やはり美鈴もかなり現金な性格のよう。


 こうして全員がこの日の収穫を抱えて学院へと戻っていくのだった。






   ◇◇◇◇◇






「「「「「「「「「「カンパ~~イ!」」」」」」」」」


 桜がうるさいので、学院に戻ると全員が食堂に直行している。この日のアタックが成功したことを祝して、みんなでジュース入りのグラスを合わせる。異世界では毎晩冒険者ギルドで繰り返されるお馴染みの光景がここでも再現されている。


 ことに初挑戦の5階層でオークを倒したことによって自信を深めた男子生徒の表情がいつになく明るい。このところ訓練で桜に追い込まれて意志のない戦闘マシーン化していただけに、久しぶりに人間らしい心を取り戻したよう。


 この様子は当然ながら周囲の目を引いている。上級生たちは自分たちに追い付いてきた後輩を「ヤルじゃないか!」という目で見ているのに対して、同学年の生徒の表情には羨望とやっかみの感情が混ざっている。実は他のクラスの1年生もEクラスの活躍に刺激されて、ここにきてダンジョンの新たな階層に何度もアタックを繰り返している。


 だがそのたびにゴブリンメイジの魔法やアーチャーが放つ矢に苦戦して撤退を余儀なくされているのが実情。その主な原因は防御の軽視にある。ブルーホライズンやEクラス男子には必ず盾を持った壁役がいる。聡史や桜がそのような方向に育成したのだから当然だろう。壁役のおかげで魔法や矢を防いでこちらが攻撃に移る余裕を生み出している。


 その点において1年生の他のクラスのパーティーは苦戦している。もちろん彼らもバカではない。盾持ちを何とか育てようと努力をしている。だが聡史や桜のような上級者が直々に鍛えるのと違って、通常の訓練では時間が必要となる。


 だが問題は時間だけではない。最前線で自身を犠牲にして壁となる縁の下の力持ちを志願する生徒が少ないというのも難しい問題として立ちはだかっている。重要な役割だとわかっていても、やはりトドメを刺す剣士や槍士になりたいと多くの生徒は考える。損な壁役など誰も率先してやりたくないのは人情であろう。







 こうしてこの日は終わりを告げて翌日の朝を迎える。



「さあ、下の階層を攻めますよ~!」


 普段に輪をかけて大量の朝食をとった桜はいつもにまして絶好調。新たな階層に挑むとあって顔がテカテカに光っている。



「桜ちゃん、今日もいっぱい動いて夜にはデザートを思いっきり食べましょう!」


 昨夜心行くまでデザートを味わった明日香ちゃんは、こちらも顔がツヤツヤしている。


 この二人を先頭にして、デビル&エンジェルは2日連続でダンジョンへと向かう。



 転移魔法陣で一気に25階層に降り立つと、一直線にボス部屋へ…



「空斬刃ぁぁ!」


 ズシーーン!


 聡史が放った真空の斬撃がギガンテスの巨体を両断する。地響きを立ててギガンテスの体は左右に分かれて倒れていく。



「それでは26階層に向かいますよ」


 桜を先頭にして階段を下りていくデビル&エンジェル。降りた先には直立したトカゲのような魔物が集団で姿を現す。



「これはレッサードレイクと呼ばれる地竜の小型種ですね。集団で獲物に襲い掛かる習性がありますから、1体見掛けたら周囲には30体いると考えて間違いないです」


「ゴキブリと一緒か!」


 戦う前からドヤ顔の桜の説明に、横から聡史が突っ込むいつも通りの光景が繰り広げられる。



「桜ちゃん、そんなことよりもいっぱい近づいていますよ~」


 明日香ちゃんが心配する声を上げるが、それは杞憂に過ぎない。まだ明日香ちゃんのセリフが全部終わらないうちに戦闘体制に移行した桜が…



「こうすれば簡単に倒せますから」


 魔物の目にも映らない素早い動きで通路を移動しながら、桜はレッサードレイクに拳を叩き込んでいる。本人は散歩でもしているような気分なのだが、桜が動く所たちまちレッサードレイクの体が爆発するように弾け飛ぶ。


 合計13体をあっさりと倒した桜は戦う前と同じドヤ顔で戻ってくる。



「ほら、簡単に倒せたでしょう」


「「デキるかぁぁぁぁぁ!」」


 お約束の美鈴と明日香ちゃんのハモリも健在な模様。ここまでの一連の流れはもはや様式美といえる。このままではグダグダな展開になりそうな予感を感じた聡史が、美鈴に適切な方法を示す。



「美鈴は、そろそろ闇魔法を試していいんじゃないか」


「えっ、聡史君、本当にやっていいのかしら?」


「通路に次々現れるから残らず消し炭にしてやれ」


「わかったわ」


 こうして美鈴の出番がやってくる。



「ダークフレイム!」


 火炎放射器のように美鈴の右手から黒い炎が迸る。通路に現れたレッサードレイクは炎に焼かれて真っ黒な炭に変わっていく。これが闇属性魔法の恐ろしさだといえよう。相手の防御力とか耐性を一切無視して甚大なダメージを与えるので、見かけ以上に威力が大きい。



「聡史さん、次は私にもやらせてください」


 今度はカレンが自ら申し出てくる。昨日は頼朝たちの付き添いで一切能力を発揮していないので、カレンにしてみれば天使になって初の実戦となる。



「いいだろう、威力の加減に注意してくれ」


「はい」


 強い意志を込めた返事と共に、パーティーの先頭に躍り出たカレンがレッサードレイクに立ち向かう。正面からやってくるのはのは5体、カレンはやや視線を落としてまま立っている。そしてその顔を上げてカッとレッサードレイクを見つめつつ、その口から魔法名が飛び出していく。



「ホーリーアロー!」


 ズバズバズバズバズバズババババーーーーン!


 通路が真っ白な閃光に染まる。あまりにも強烈な光の奔流で通路が一時的に純白の光で溢れ返る。



「えーと… 桜ちゃん、今何が起きたんですか?」


「カレンさんの神聖魔法が炸裂したんですよ。通路の魔物を全部貫きながら5本の矢がそのまま直進して、最後は一番奥の壁に突き当たって爆発しました」


「魔法が魔物の体を貫くなんてアリなんですか?」


「普通はないですよ。それにレッサードレイクは体を覆う鱗が硬くてなかなか魔法が通用しないんです。丸焦げにした美鈴ちゃんも大概ですが、魔法で貫いてしまったカレンさんもどうやら規格外の存在になったようですね」


 桜の話を聞いている明日香ちゃんは、なんだか安心したような表情を浮かべている。何かしら自分に都合のいい考えがありそう。



「桜ちゃん、それでしたら二人に任せて私はずっとお休みでいいですよね! あんな小型の恐竜みたいな魔物とは戦いたくないですよ~」


「丸投げを決め込まないで、ちょっとぐらいはヤル気を見せろぉぉぉぉ!」


 清々しいまでの人任せ振りに桜は顔を真っ赤にして突っ込んでいる。さすがは明日香ちゃん、自分に利がないと本当に動きたがらない。どうにか昨日食べた分のカロリーをこの場で消費してもらいたいのだが、このままでは大して消費しないままカロリーをお持ち帰りになってしまいそうな予感。


 だがここで颯爽とお節介を焼きに登場する人物が登場する。もちろんその名はカレン。



「明日香ちゃん、大丈夫です。私が攻撃力アップの補助魔法を掛けますから、レッサードレイクなんか簡単に倒せます」


 これはいつか来た道… カレンの強引なセールストークはまだまだ続く。その態度はまるでアパレル店員のごとくに。



「しかも今なら万一死んでも私の力で復活できる大サービス中です!」


「絶対に嫌ですぅぅぅ!」


 明日香ちゃんが断る気持ちもわかる。これはさすがにカレンに非がある。



「まあまあ、明日香ちゃん。この場で勇気を見せてくれたら、今日の夜もデザートのお代わりを大目に見ますよ」


 ピクッ!


 明日香ちゃんのデザートレーダーが敏感に反応している。過去何回騙されようとも「デザート」しかも「おかわり」という言葉には勝てない明日香ちゃんがここにいる。



「そ、それじゃあ、ちょっとだけ頑張っちゃいましょうかね」


 すぐにノセられる明日香ちゃん、実に扱いやすい。



「それでは、攻撃力アップ!」


 カレンが魔法を掛けると、明日香ちゃんの体が白く輝きだす。


 実は明日香ちゃんもカレンも気が付いていないが、ランクMAXまで到達したカレンの補助魔法は大元の能力を2倍に引き上げている。それだけならまだしも明日香ちゃんの両腕に嵌められている体力アップの腕輪は、カレンの魔法と同様に体力を2倍にする効果をもたらす。つまり現在の明日香ちゃんは4倍界王拳状態。

 


「明日香ちゃん、前からゾロゾロ来ましたよ」


「デザートのためだったら何でもしますよぉぉぉ! それっ!」


 明日香ちゃんが4倍速で動いている。1体目のレッサードレイクが反応する前にトライデントを突き刺して、返す槍で2体目を屠る。連続攻撃で3体目と4体目を倒して、最後の1体の胴体の真ん中にズブリ!


 こんな鮮やかに動く明日香ちゃんなんて、桜ですら初めて目の当たりにしている。



「やりましたぁぁぁぁ! 今夜もデザート食べ放題ですぅぅぅ!」


 派手なガッツポーズで心の底から喜びを表す明日香ちゃんであった。


4倍速で動く明日香ちゃん、ちょっと想像できないですが、デザートが懸かれば本気を出します! この続きは金曜日に投稿します。どうぞお楽しみに!



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