108 魔物の大群との戦い
明日投稿の予定でしたが、早めに出来上がったので投稿いたします。
一旦学院の敷地に密集していた魔物の大群を掃討した聡史に司令部からの無線が飛び込んでくる。
「小型のドラゴンが多数出現した! 戦闘ヘリ攻撃開始! 対空迎撃部隊も攻撃を開始せよ!」
無数に空に羽ばたいてく小型のドラゴンの姿が聡史たちの目にも飛び込んでくる。空から攻撃してくるドラゴンは、地上部隊にとっては非常に厄介な敵となるので優先的に討伐する必要がある。
ブーーーーーーーーーーン!
攻撃ヘリのガトリング砲が超高速で回転して、毎分750発の猛烈な射撃を開始する。標的となった小型のドラゴンはたちまち撃ち落されて地に落ちる。
シュパーーン!
炎の帯を引いて地上から飛び出す対空ロケット弾が、必死で逃げようとするドラゴンを執拗に追尾してついにその体に命中する。
ドカーン!
夜空に火柱が立つ。燃え上がった炎と共に爆音が耳をつんざく。上空からはバラバラになったドラゴンのパーツが地面に落ちる。
約20体のドラゴンが飛び立ったかと思ったら、あっという間に掃討されて地に落ちていく。だがその間に、地上では再び夥しい魔物の群れが聡史が立っている魔法学院の敷地に向かって徐々に進出している。
「楢崎准尉、同じ攻撃を繰り返せるか?」
「あと1回ならば可能です。あまり多発すると、さすがに魔剣といえども内部から崩壊する恐れがあります」
「そうか、では今一度魔物を一掃してから屋上に戻ってもらいたい」
「了解しました」
聡史は再びある程度の魔物が集結するのを待ってから断震破を放つ。その結果再度魔物は一掃されて、敷地には倍の量の魔物の亡骸が横たわるだけの地獄絵図が出来上がる。聡史はオルバースをアイテムボックスに仕舞ってから校舎の屋上に飛び上がってくる。
「楢崎准尉、ご苦労だった。しばらく必殺技は封印して通常攻撃で魔物に当たってくれ」
「あと1時間ほどすれば、再び使用可能です。それまではお任せします」
「ああ、私と桜准尉が当面対処に当たる。フォローしてくれるだけで構わない」
このような会話をしている間にも、魔物は敷地内に真っ黒な塊のように広がる。20分ほど経過すると敷地内は魔物で埋め尽くされるが、聡史が展開した結界によってその前進が阻止されたまま。
「桜准尉、やってみるか?」
「フフフ、この私にお任せください」
絶対の自信を持った表情で桜が答えているが、聡史は嫌な予感を胸に抱いている。桜がこのような表情をする時はこれまで碌なことが起きたためしがないというのは周知の事実。そんな兄の懸念は一切顧みずに、桜は動きを開始する。
「はぁぁぁぁぁぁぁ… メガ盛り太極破ぁぁぁぁ!」
普段の太極破よりも数倍タメが長い分だけ、桜の右手に集まる闘気の量が桁違い。その大量の闘気が普段の3倍の速度で打ち出されていく。ご飯と肉が2倍になっているあの牛丼よりもさらに爆量。この上にはさらにテラ盛りまであるのだろうか?
ズズズズズーーーーーン!
周辺を埋め尽くす閃光と耳を覆いたくなるような大音響の後に巨大なキノコ雲が夜空に高々と湧き起こる。それはまるで小型の核爆弾がこの場で炸裂したかのような猛烈な爆発。
敷地を舗装してあるアスファルトは広範囲に捲れ上がって、地面を抉るクレーターを作り上げている。爆風で夜空に舞い上がった魔物の死体は、音を立ててボタボタと地に落ちて原形を留めない程に潰れている。
「いかがでしょうか? 大盤振る舞いで放ってみました!」
「味方まで吹っ飛ばすつもりかぁぁぁ!」
ドヤ顔の桜に聡史が心の底から突っ込んでいる。ギリギリでダンジョン入り口を固める部隊に被害はない模様だが、一歩間違うと大惨事を招く事態。これだけの猛威を振るっておきながら、まだまだ威力を引き上げることが可能な桜とは、真の意味での怪物に相違ない。
ともあれ、再び敷地に充満していた魔物は一掃されている。もう少し威力の加減に気を使ってもらいたいが、桜の一撃で間違いなく魔物は排除されたよう。というか、根こそぎ千切れ飛んでバラバラになっているという恐ろしすぎる光景が眼前に繰り広げられている。
「どれ、味方の援軍が到着したようだな。こちらに入り込んでくる魔物の数が目に見えて減っているようだ」
学院長の言葉通り、各地の駐屯地から駆け付けた増援部隊が続々と到着してダンジョンから出てくる魔物に砲撃を加えている。
加えてダンジョンから這い出てくる魔物の勢いが当初よりも減じており、どうやら集団暴走は峠を越えたかに映る。増援部隊を含む強化された火力で、ダンジョンから出てくる魔物の抑え込みに成功する手応えを誰もが感じている。
だがその安堵感は、長続きしない。
再びダンジョンから大きな地鳴りのような音が響くと、入口から恐るべき咆哮が聞こえてくる。その後に山肌が熱を帯びて解けるように崩壊すると、出来上がった穴から真っ赤な光が虚空に向けて一直線に伸びていく。
ギュオォォォォォン!
赤く光るブレスで山肌を溶かしてその内部から姿を現したのは、全長30メートルに及ぶ巨大なドラゴン。ドラゴンは長い首を巡らせて周囲を睥睨する。
「全軍、ドラゴンに火力を集中しろ!」
司令部の指示であらゆる戦車や戦闘車両、歩兵集団が、ドラゴンに向かって火砲を向けていく。
「まるで怪獣映画だぜ!」
ロケット砲を向けるある自衛隊員が呟いた一言がコレ。ゴ〇ラに立ち向かう自衛隊員そのものの光景がこの場に再現されている。しかもこれは映画などではない! 現実にこの場で起きている真夜中の悪夢。
ドゴーン! ドゴーン! ドゴーン! ドゴーン! ズガガガガガーーン! ドドーン!
あらゆる砲口から巨大ドラゴンに向かって砲弾やロケット弾が放たれてその全てが直撃するが、ドラゴンにはさしたる効果がない。それどころか怒りに満ちた顔を向けてゆっくりと翼を羽ばたかせる。徐々に宙に浮いた巨体はスピードを上げて夜空から地上部隊を攻撃する様子を見せる。
「ヘリ部隊! 有りっ丈のミサイルを叩き込め!」
ドラゴンの前方や側方に回り込んだヘリの編隊から合計20発以上のロケット弾が撃ち込まれるが、金属よりも固い鱗に阻まれて効果を為さない。
「ミサイルが効果ないのか! なんという化け物だ」
「弱気になるな! もう1回攻撃を繰り返すぞ」
さらに追加のロケット弾が一斉に放たれるが、やはり無駄撃ちにしかならなかった模様。だがヘリによる攻撃が繰り返されている間はドラゴンは防御に専念している様子で攻撃しようという素振りを見せていない。こちらが攻撃を加えるだけでもドラゴンを抑止する効果があるので、ヘリ部隊はミサイルやバルカン砲での攻撃を繰り返していく。そんな彼らの元に通信が入ってくる。
「こちら松島基地F2航空隊! 攻撃を開始するのでヘリは目標から距離を取ってくれ。繰り返す…」
夜空にマッハの轟音を轟かせて宮城県の松島航空基地を飛び立った3機のF2攻撃機が対空ミサイルを放つ。目標のドラゴンに正確に誘導されたミサイル計6発が命中するが、硬い鱗が衝撃を撥ね返すドラゴンには効果を発揮しない。だがここで諦めたら周辺住民にも大きな被害が出かねない。
「再度攻撃をする。標的ロックオン、ファイアー!」
再び6発の誘導ミサイルを発射していくが、F2航空隊の願い虚しくドラゴンは健在なまま。
その様子を校舎の屋上から目撃している聡史たちは…
「大佐、ドラゴンが宙にいるうちはこちらは有効な手立てがありません」
「楢崎准尉、そう慌てるな。あのドラゴンを地面に叩き落せばいいんだろう。私に任せるんだ!」
ニヤリと笑みを浮かべると、学院長はアイテムボックスからバズーカ砲を取り出す。
「ドラゴンを叩き落すには、一番弱い翼の付け根を狙うのが最も効果がある。覚えておけよ」
「大佐、これだけ距離が離れているのに当たるんですか?」
「私の腕をナメるな」
夜空を飛び回っているドラゴンに向かって学院長が慎重に狙いをつける。念入りにタイミングを計って引き金を引くと、ドラゴンの未来位置に向かって一直線の尾を引くように魔力弾が飛翔する。
ズガガガーン!
夜空に巨大な火の玉が浮かび上がると、悠然と飛び回っていたドラゴンの様子に明らかな変化が生じる。必死に翼を羽ばたかせようと足掻いているが、次第にその高度が下がっていくのが目に見えて明らかな様子。
「さあ、ドラゴン狩りの時間だ! 着地次第攻撃を加えるぞ」
「大佐、ドラゴン狩りは得意ですので私にお任せください!」
「桜、今度は威力に配慮するんだぞ!」
「お兄様、もう太極破は用いませんわ。私の裏必殺技とも呼ぶべき真の奥義をお見せいたします」
再び自信満々な様子の桜がいる。先程のようなあわや大惨事を招かないことだけを祈る聡史の表情が暗い。
宙を滑空するかのように旋回しながらドラゴンは徐々に高度を落としてくる。空から攻撃するどころか、ソフトランディングするのに必死な様子。安全に着陸出来る場所を必死に探しているよう。そのまま魔法学院の敷地に不時着を果たす。
ズザザザザザザザ!
優雅に舞い降りるなど程遠い姿でドラゴンは地面に後ろ足を引き摺りながら減速してようやく停止する。近くでよく見ると右の翼の付け根が折れかかっていて十分に羽ばたけなくなっているよう。さすがは学院長、あれだけの距離がありながらも狙い通りに魔力弾をピンポイントで命中させている。
(凄い人だ)
聡史は心の中でほとほと学院長に感心している。しかも学院長は口にこそ出していないが、魔法学院の敷地にドラゴンが不時着するようにタイミングを計っていた形跡がある。それゆえに念入りに狙いを定めていたのであろう。
「さあ、私ひとりで相手をしますわ!」
桜は大張り切りの様子。聡史にも学院長にも手を出させないと宣言している。これだけ張り切っているのだから桜に任せようと、学院長と聡史は一歩引いた場所で見守っている。
桜は二人にはお構いなくドラゴンが待ち受ける場所に向かっていく。対するドラゴンは近づいてくる小さな存在に胡乱な目を向けている。
「さて、久しぶりの大物狩りですね! これは腕が鳴りますわ」
オリハルコンの籠手をガツガツと打ち合わせながら、桜は気合を漲らせて… は、いなかった。むしろ心を静めて波ひとつ立たない湖面のような境地に至っている。
ギュオォォォォォン!
間近までやってきた小さな影を敵と見做して、ドラゴンは桜に向かって前足を伸ばしてくる。だが桜はドラゴンの単純な攻撃を掻い潜って、目の前から姿を消すようにいつの間にか横腹の辺りに移動している。
「まずは1発目!」
桜はドラゴンの最も柔らかい腹部を勢いよく蹴飛ばす。そのひと蹴りはかつて異世界においてトレーラーサイズのベヒモスを簡単にひっくり返した威力がある。
ギュオォォォォォン!
一瞬巨体が浮き上がるほどの衝撃がドラゴンを見舞う。驚きと痛みがこもった咆哮を上げたドラゴンは体を転換して桜の居場所に向き直ろうとする。だがその場にはすでに桜の姿はない。
ドラゴンが体を転換する動きに合わせて、桜は再びドラゴンの側方に取り付いている。
「それっ! 2発目ぇぇぇ!」
今度はさらに力を込めて蹴り上げると、ドラゴンの体はバランスを崩して横倒しになる。スピードに注目が集まる桜ではあるが、実はドラゴンを簡単に吹っ飛ばすパワーも持っている。
巨体が寝転ぶと起き上がるには時間がかかる。ようやく起き上がったドラゴンは自分の尻尾を追いかける猫のように巨体をグルグル回して桜の姿を追い求めるが、一向にその姿を目にすることはなく時折強烈な蹴りを食らって再び体が横倒しにされていく。
これには相当ドラゴンも頭にきたようで、ついに腹部に魔力を溜め始めてブレスを吐こうという体勢に入る。だが、易々とドラゴンにそんな攻撃を許す桜ではない。体側のギリギリを通ってドラゴンの視界に入るのを避けながら正面に回ると、腹部に向かって強烈な正拳を放つ。
ギュオォォォォォン!
ブレスを吐こうと溜めていた魔力が桜の正拳の影響で口から大量に漏れ出してしまう。まるで咳き込んでいるかのようにドラゴンは苦しそうにしている。ここまで一方的にドラゴンを翻弄する桜、さすがに大言を口にするだけのことはある。
「さあ、キメますよ!」
口から洩れた魔力で苦しそうなドラゴンに対して、桜は今一度精神を研ぎ澄ませる。その体が一瞬の静謐に包まれたかと思ったら、両手を軽く引いて掌打の構え。
「楢崎流真奥義、迷わず成仏波ぁぁぁぁぁ!」
打ち出された両掌からは強烈な闘気がドラゴンの体に打ち込まれる。この奥義は体の表面には一切の傷跡を残さずに、内部を振動によって破壊する真の必殺技。どれだけ硬い鱗に覆われていようとも、体の内部に浸透する振動までは防ぐことはできない。
ギュオォォォォォン!
絶叫を残してドラゴンは口から大量の血を吐き出す。力なくその首が垂れ下がって地面にドウという音を響かせて投げ出される。つい今しがたまで強烈なオーラを放っていたその巨体は四肢にも最早力が入らない様子。すでにドラゴンの生命は風前の灯火のよう。
「お兄様、首を!」
「わかった」
いたずらに苦しませるのは気の毒に思った桜が兄に介錯を促す。再びオルバースを抜いた聡史は、ドラゴンの首元に立つと一気に剣を振り下ろす。
ザシュッ!
首が切り離されてドラゴンは完全に息絶える。今回の集団暴走で最強の魔物はこれにて討伐される。残りは自衛隊でも軽く手を捻るように討伐可能な魔物しか残っていない。
「どうやら終わったな」
「かれこれ4時間近く経過しましたか」
すでに深夜の時間帯に差し掛かっている。ひとまずは個体サンプルのためにドラゴンの死体は聡史がアイテムボックスに仕舞い込む。この様子を見た学院長は満足そうに頷く。
「想像以上の働きをしてくれたな。さて、残りは自衛隊に任せよう。このまま司令本部に向かうぞ」
「「了解しました」」
こうして三人は、建設中の魔法学院を後にして司令本部へと向かうのであった。
果たして集団暴走はこれで終焉か…… この続きは明日投稿します。どうぞお楽しみに!
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