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作られたヒロインとひねくれた主人公のラブコメ

作者: R.I.Q

※短編のつもりで書いたのですが、短くまとめてオチをつけることが難しいと判断したので、好評でしたら続けるという形にしようかと思います。


※初作のため、文法の荒いところ、誤字などございましたら、コメントや報告から指摘頂けると幸いです。

白に包まれた部屋の中、私は目を覚ました。

辺りを見回すが、特に見覚えのあるものはない。


「……ここは、どこでしょう?私は……」


意識が鮮明になるにつれ、私の記憶がよみがえってくる。

私はかすかに消毒液の匂いがただよう病室の中、私の主治医と看護師数名に見送られながら、私はった......はずだ。


「と言う事はここは天国か何かでしょうか?......しかし、独り身がこんなに寂しいものだとは……」


そう、私は生涯独身で死んだ。そこに言い様のない寂しさがあった。

別に機会がなかったわけではなかった、告白だって数回された。それなりに美人でもあった。

しかしタイミングが悪かったと言うべきなのだろうか、私はそれを全て断ったのだった。

その理由は......


「なぜ、私に告白を申し出てきたのは皆……巨乳だったのでしょうか……スレンダーだったら……」


そう、私はスレンダー派という、死後になっては下らないーーその当時は相当重要でしたがーー嗜好しこうによって、私に交際を申し出てくれた女性をことごとく断ったのだった。

もしかしたら初恋だったかもしれない。もしかしたら人生で一度きりの恋だったかもしれない。

私はそんな彼女らの勇気、意志を単なる嗜好で台無しにしてしまったのだ。

私は今更ながら、数十年越しの後悔と自責じせきの念にとらわれた。もう死後なので、時は既に遅いが。


不意に、声が聞こえた。女性のものだろうか?


「■■■■様、こんにちは、私は《運命の女神》アフェロです。」


目の前に現れた()()はもはや人という枠に当てはめていいのか分からないものだった。


そんなもので判断しても正しいのか分からないが、外見的には18,9程だろう。20あるだろうか?長くウェーブのかかった、陽光のようなつややかにきらめくだいだい色の髪。

全てを見透かし、その者達に寵愛ちょうあいを恵んでいるのであろう暖かい眼差まなざしの碧眼へきがん

それらのパーツをもったその顔は、まるで人形や二次元、絵画の存在のように精緻せいちに整っていた。

人型として、存在として、それは完璧だった。

しかし、一つ残念な点をあげるとするならば、その体型だろう。モデル体型ーー所謂いわゆる出るところは出て、引っ込むところは引っ込んだ、起伏に富んだ肢体したいーーであることだ。

要するに巨乳だ。

その上に肌の大きく露出した、古代ギリシアの衣のようなものをまとったその姿は、見る人が見れば官能的だろう。しかし、私には顔の綺麗きれいな人にしか見えない。

巨乳だからだ。どうやらいくら反省しても、ダメなものはダメなようだ。


随分ずいぶん饒舌じょうぜつな割に、言ってくれますね……!」


心が読めるらしい。

アフェロと名乗ったそれは少し震えながら言った。

怒っているのだろうか?


「……ごほん、■■■■。あなたは生前の善行が認められ、来世にはあなたの望む運命が与えられることとなりました。」


ぜ、善行?

私は戸惑った。私は数名の女性の恋路こいじを踏みにじってしまったはずだ。それもただの嗜好で。


「いえ、あのまま誰か一人の告白を受けていたら、彼女達は今生のようには生きられなかったでしょう。」


心を読んでくれるって楽なものだな。

わざわざ言葉にする必要が無い。

というか……


「どういうことでしょうか?」


「あぁ、あなたは知らないのですね。では説明致しましょうーー


・初めて告白してくれた子、フラれた直後は傷ついたものの、私と会話し、触れ合った経験により自信をもち、明るく成長したこと。


・二番目の子、趣味嗜好で女性を振る姿に感動し、自身も隠していた趣味に生きることを決め、その道で大成したこと。


・三番目、最後に告白してくれた子、人生に投げやりになっていた所をフラれ、目を覚まして一流のキャリアウーマンになったこと。


ーーということが彼女達のその後にあったのです。」


女神はそう言った。

いや、ギャグ漫画ですか?私はそう思った。

そんなの絶対フラれる必要なんてないだろう。

そこまで成し遂げられたなら、フラれなくたってできたんじゃないだろうか。

そんな心を読んだらしい女神が言った。


「いえ、不可能でした。彼女達はあなたにフラれなければ、一人は引きこもって生涯を終え、一人は嫌いな仕事に果て、一人は娼婦しょうふ(たぐい)にでもなったでしょう。そういう運命(・・)だったのです。仮にあなたが告白を受けたら、彼女らはあなたに依存(いぞん)し、退廃たいはいした生涯を辿たどったでしょう。」


まだ自称だが、おそらく本物だろう運命の神様の言う運命って言葉はさすがと言うべきか、重いな。

しかし……それはそれでなんか悲しくなるな。

私と付き合うと不幸になるって言われてるみたいだ。

私が少ししょげていると、


「えぇ、そう言っているんですよ?」


笑顔で返された。

どうやら最初のがかなり心にキていたらしい。

やり返された。


「……ごほん、これで理解いただけたでしょうか?それでは、一つ願いを言ってください。」


今の私の願いはひとつだ。

考えることも無く私は言った。


「来世では、スレンダーの女性と幸せな生活を送りたい。そう思います。」


「……は、はぁ、分かりました。」


そうハッキリ言うと、少し引かれた気がした。


「す、少しじゃなくてかなりですけどね……」


そう言うと、気を取り直したらしい女神は深呼吸して最初の厳格な姿になった。彼女の周りが神聖な雰囲気ふんいきに包まれ、私の周りも同様の雰囲気になった。


「では転生を開始致します。もちろん、ここの記憶も生前の記憶も残りません。そして、来世でのあなたの運命は、スレンダー体型の女性と付き合い、幸せな生活を送るでしょう。ですが、場合によっては少し変わるかもしれません。それはあなた次第です。では、■■■■様、良き来世を。」


そう言うと同時、私の周りが強く発光し、光が辺りを真っ白に染め上げた。


「あっ、力を入れすぎちゃっ……た?」


女神が慌てた様に何事かを呟いていたが、私にはもう聞こえなかったし分からなかった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



目が覚める。春らしい暖かな風が吹く。

時計を確認すると、まだ6時すぎのようだ。

急に自己紹介をしなければいけない使命感に駆られたので、自己紹介をしよう。

俺は夕凪(ゆうなぎ) (ふみ)、今年から高校生だ。

好きなことは読書とゲーム、嫌いなものはトマトと運動。

割とオタク気質ではあるが、会話が苦手ということはない。

容姿は、友達曰く中の上だそうだ……喜んでいいのかは分からない。

好きなタイプはスレンダー!これは絶対だ。これから推測するに、おそらく前世も同じ嗜好だったが、生憎結ばれなかったのだろう。

でなければ俺がここまでスレンダーに執着することはないと思う。

……って、ここまで言う必要あったか?……まぁいいか。


「兄さん、朝食が出来ましたよ。」


部屋に妹が入ってくる。夕凪(ゆうなぎ) (ゆい)、俺の一個下だ。

妹は母親に似て美人だ。目鼻立ちは整っており、滑らかな曲線を描く、所謂モデル体型ってやつだ。

告白されたって話も聞くし、俺の身内贔屓では無いと思う。

まぁ俺には素っ気ないんだがな。いつも「そうですか。」とか「へぇ。」くらいしか返してこない。なんか兄としては寂しいものがある。


「ぼーっとしてないで、朝食ですよ。」


「わかった、降りるよ。」


そう行って、1階の食卓に向かう。両親は、基本ゆっくり目の仕事なので、朝は遅い、その為妹から朝食を用意しているのだ。

情けない話だが、弁当も妹に用意してもらっている。

ホント、彼女には頭が上がらない。


「はい、今日の弁当です。」


「いつもありがとうございます。」


妹様からの弁当を丁重に頂く、ありがたやー。

テーブルを見ると、サラダ、味噌汁に卵焼き、ウインナーに白米の簡素目な朝食が見えた。これでも俺は作れないので、せめて朝食ぐらいは作れるようになりたいと思う今日この頃。


「じゃ、今日も、」


「はい、」


「「いただきます。」」


二人揃って朝食を食べ始める。なんかこれを毎日やると気分がいいってんで、いつからかやり始めた週間だ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ごちそうさまでした。」


俺が先に食べ終わる。今日も美味かった。

単純だが味が混んでいて、流石だなと思う。

俺は自分の部屋に戻り、制服に着替えてまた下に降りる。

リビングでテレビをつけると、どっかの女優が有名俳優と結婚したとかの話になっていた。この女優は結構美形でスレンダーだったので気に入っていたため、少しショックだった。


「んじゃ、そろそろ学校行くな。」


食べ終わり、キッチンで洗い物をしている妹に声をかける。

本来これくらいは俺がやるべきなのだが、俺が皿を洗うと何故か割れてしまうため、妹がやってくれているのだ。

初めて洗い物をした時、妹に達観した表情で「これは才能ですね……」と言われたのはいい思い出だ。


「はい、行ってらっしゃい。」


外へ出て駅に向かう。時刻は7時すぎで少し早いが、本を読む時間も確保できるしラッシュは避けられるしいい事ずくめだ。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



二度、電車を乗り継いで学校に着く。

攻条(こうじょう)高等学校、偏差値中堅の進学校だ。

教室に入る、まだ生徒は(まば)らで静かだった。

席に着いて本を開き、静かに読む。

聞こえるのはテキストを走るシャーペンとページをめくる音のみ。

俺はこの時間が好きだから早く来ていると言っても過言ではない。


タッタッタッ


廊下から駆けるような足音がしたため、ふとそっちを見た。

知らない女子だった。茶髪で編み込みのミディアムヘアーに、大きな黒瞳(こくどう)の綺麗な顔立ちで俺の理想とする塩梅のスレンダー体型。


ピキーン!


その少女もどうやらこちらを見ていたようで、彼女と俺は偶然にも目が会い、俺は初めて運命のようなものを感じた。

そしてその一瞬だけ、二人の時が止まったように感じられたが、ふと我に返ったように二人はさっきまでの行動を再開した。


「なんだったんだ今のは……」


響かないように小声で呟いたその声に、当然ながら答えはなかった。


===============================


(な、なんだったんだろう……今の。)


日常のふとした瞬間だった。

何気なく私が隣のクラスの教室を覗いたら、窓際の男の子と目があった。その時だった。


(ピキーンって!ピキーンって!……こ、これが運命ってやつなのかな……)


頭に電流が走るようなあんな感覚、生まれて初めてだった。

その男の子はどこにでもいるような普通のーーより少し目立つ顔立ちの端整な少年だった。名前は知ってる、友達が少しだけ話してたことがあったから。


『私はあの子割とアリだと思う。』


『誰?』


『あのー、隣のクラスのさ、少しだけイケメンな子。えっとー、名前はー……そう!夕凪 文君!』


『夕凪……文?』


『そう、女の子みたいな名前だけどね、天風(あまかぜ)とか一条(いちじょう)みたいなバリバリのイケイケメンメン!って感じじゃないんだけど、なんかこう……顔がタイプ?みたいな。』


『へぇー。』


夕凪 文、ちょっと女の子みたいな名前だったから何気ない会話の中でも頭に残ってたあの名前。


(あの子が私の運命の人なのかな……)


それは私ーー月梨(つきなし) 奈緒(なお)が運命を感じた日だった。


===============================


運命(?)を感じたしばらくあと、もう大分生徒も増えてきて、俺の友達も登校してきた頃。


「なぁ夏希(なつき)、お前は運命って感じたことある?」


俺は友達である加賀(かが) 夏希にさっきのようなことをそれとなく聞いてみる。


「運命ぃ?マンガとかでよく見るピキーン!ってやつか?」


「そうそう、それ。それを現実で感じたことある?って話。」


……運命を感じる解釈は等しくこれ(ピキーン!)なようだ。

夏希は俺の話を怪訝そうに聞くと言った。


「ははっ、ねーよ。あれは漫画だからあるのであって、リアルで怒るもんじゃねーって。」


夏希は笑いながら言う。あまりにも信じようとしないその様子に、

次第に俺も、なんか深く考えすぎてたなと思い、忘れることにした。

どうせラノベの読みすぎで少しリアルと物語がごっちゃになっただけだろう。

俺はそう思うことにした。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



そんな日の昼休み。

俺はいつも通り妹様の作られた神の慈悲(弁当)を頂いていた時だった。


「あ、あのぉ……」


騒がしかった教室はその一声で水を打ったように静まり返った。

皆の視線につられて俺もドアの方を見る。

そこには、


「夕凪君って……いますか?」


今朝目のあったあの子がいた。

誰かが言った。


「いません。」


「いやいるわ!」


あまりにも自然すぎる存在否定に思わず突っ込んでしまう。

すると、その男子とその周辺が迫ってきて、


「なぜお前が彼女に呼ばれる……!」


「女神に呼ばれる……?有罪……処せ……滅せ……!」


「名前を口に出されるだけでも光栄だと言うのに、お呼ばれとはいいゴミ分だなぁ、夕凪ィ!」


???

なぜ俺は未だかつて無い殺意を向けられているのだろうか。

過激派もいればなんか上手くdisるやつもいるし。


「俺、なんかやっちゃいました?」


思わず俺はラノベネタを出してしまう。

因みにこれは無自覚チート主人公定番のやつだ。


「なんかやっちゃいました?(笑)じゃねえんだよォォォォォ!」


「ジーザス!なぜ神は彼を産んだのでしょうか!?」


「おま、あ、あの月梨様に呼ばれているのだぞ!これを大罪と呼ばずなんと呼ぶ!」


ただの日常以外のなんでもないだろう。

……あぁ、月梨っていたな。

いつだったか夏希が言ってたことを思い出す。


『いいか、お前は知らないだろうから教えておくぞ。この学年には女神と呼ばれる存在がいるんだ。』


『……は?』


『名前は月梨 奈緒、彼女は超がついても足りないくらいの美人で、かつ性格もいい。これはある生徒の目撃談なんだが、月梨は放課後に掃除とは別で廊下を箒ではいたり雑巾がけしたりしているらしい。それに休みの子がいたらどれだけ遠くてもプリントを届けに行くとか。お陰で彼女には【MOON】と呼ばれるファンクラブが存在するらしい。まぁ、他にも似たような感じで呼ばれる奴らもいるんだが、とりあえず彼女を知っておけばいい。』


なるほど、要するに彼らがその【MOON】って奴らなのか。

ふと夏希の方を見ると、驚きの色が見える。

まぁそうだよな、俺の知り合いならそうなる。俺も驚いている位だしな。夏希なら尚のことだ。

それまで俺とその女神に接点なんてミリもなかったのだからな。


(まさか彼女も運命みたいなやつを感じたのか?)


まぁこのタイミングに来るならそうだろうが。

どうやら女神様はメルヘンチックなようだ。

そんなことを考えながら、俺はこの騒ぎにおろおろとしている女神様の方に向かった。



まだまだプロローグのような感じですが、これだけでも面白い!続きが見たい!という人がいましたら、是非、下へスクロールして、星をタップして評価していただけると、嬉しいです。



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