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僕たちの戦場  作者: 悠城拓
3/5

ゲーム開始

 確か俺は自分の部屋にいたはずだ。学校帰りに葉月と透と一緒にショッピングセンターでゲームをし、地味に高めのアイスを買わされた後、葉月と家まで帰ったはずだ。部屋で今日の献立を考えているうちに寝落ちしてしまったのは仕方ないとは言えるが、なんで目を覚ましたらこんな所にいる。


 辺りを見渡す限り、ここは学校帰りに葉月たちと来たショッピングセンターの三階にあるフードコート。そして、俺と同じように今の状況をまったく読み込めてなさそうな人たちが電話を掛けたり、辺りをウロチョロしたりとしていた。他にも、まだ寝てるのか床に横になって気持ちよさそうに寝息を立てている人もいるが大体の人が起きて、状況を把握しようと必死に行動していた。


「あの、大丈夫ですか?」


 突然、背後から声を掛けられた。俺は突然声を掛けられたことに肩を微妙に震わすが、すぐに声のした背後へと振り向くと、そこには学校の制服に身を包んだ少女が心配そうにこちらを窺っていた。制服の特徴から同じ高校の子だろうと思ったが、俺自身人と関わるのは少ない方なので同学年なのか年上なのかいまいち分からなかった。


「あ、あぁ、なんとかね。それより一体どうなって……」


 声を掛けてきた少女に言葉を掛けようとした瞬間、天井に設置されたスピーカーからまるでショーでも始まるかの様な明るい音楽が流れ始めた。そして、音楽が流れてから数秒後、中性的で陽気な声が流れ始めた。


『あー、あー、マイクテスト。マイクテスト。本日はお日柄もよく……ってもう夜じゃん!誰かツッコンでよ!』


 いきなり流れ始めた音楽と声に今まで寝ていた人たちも徐々に起き始め、下から起きていた人たちはなんだなんだと謎の声に耳を傾けていた。


『はい!どうもー!『VS100』に招待された皆さま、まずはおめでとうございます!貴方たちは選ばれました!……って言っても何が何だか分かりませんよね。順番に説明をさせていただきますのでどうかお静かにお聞きくださいませ!』


 謎の声はそう言うと、一度咳ばらいをするように『コホン』と一拍おいてから話し始めた。


『えー、まず『VS100』とは基本100名で行われるバトルロワイアルゲームです。他にも個人同士やクラン同士のバトル形式もございます。バトルロワイアルゲームでは100名が殺し合うゲームです。制限時間は毎回変わり、ステージも毎回変わります。バトルロワイアルゲームではショッピングセンターなどの大型店舗や教育機関などの屋内施設で行われますが、個人同士またはクラン同士のバトルでは好きな場所を指定することも出来ます。もちろん屋内に限らず屋外も可能です。また、武器はアプリ内にある【SHOP】から購入するか、フィールド上にある道具を武器として扱うかの二種類です。状況において好きな方を選んでくださいね』


 スピーカーから聞こえた『殺し合う』という言葉に人々は困惑の表情と声をあげる。しかし、そんなことはお構いなしにスピーカーからは淡々とこのゲームの説明が行われる。


『そして、今回のステージはここ『ショッピングセンター』の全フロアでございます。フロア内にある物は全て使用可能です。また、アプリ内にある物を使用する事も可能です。制限時間は五時間。ゲーム終了条件は全プレーヤーの内、10人の生存が確定するか、制限時間である五時間が経つ、のどちらかのみです。ちなみに、ゲーム終了時に生存者が10名以上の場合はゲーム時のキル数の多い者から順位を付けさせて頂くため10位以内に入れなかった方は強制退場ということで死んでもらいます。……とまぁ、ここまでは『VS100 』というアプリ内のゲーム内容でございます。ここまでで質問などはありますでしょうか?』


 スピーカーからは変わらず陽気な声が流れるが言っていることはここにいる者たちで殺し合いを

行い、上位10位に入れという狂気じみたことだった。意味が分からなかった。なんで俺が知らない人たちと殺し合わなきゃいけない。


 しかし、そう思っているのは俺だけでなく、他の人たちも同じだった。もちろん隣にいた名前も分からない少女も信じられないと言って目尻に涙を浮かべていた。頭を抱える者、未だに冗談か何かだと思い、スピーカーに向かって罵詈雑言をぶつける者、泣き出す者など様々だった。しかし、この場にいる者たちのそれらの行動はすぐに終わった。スピーカーから流れた言葉によって。


『……うるさいなぁ。お前らはすでに選ばれちまったんだよ。この『VS100』という名のデスゲームに。選ばれちまった時点でお前らは絶対に逃れられない首輪を付けられた奴隷(ペット)なんだ。いつまでも好き放題、自由に、自分の思った通りの人生を過ごせると思うなよ。それでもこのゲームから出ていきたい奴は名乗り上げろ』


 中性的ではあるが、先ほどまでとは全く違う雰囲気の声がただただ自分たちの耳を刺激した。そして、そのスピーカーから流れた「出ていきたい」という言葉に俺の近くにいた男性を含め、数名の者がゆっくりと手を上げた。


『……6名、お前たちは出ていきたいんだな。なら、今すぐ出してやる』


それをどうやって確認しているのか分からないが、スピーカーから言葉が流れた瞬間、手を上げた者たちが一瞬にして血潮を上げ、悲痛の叫びとともに肉塊になった。


「……は?なんだ、これ……」


 突然の出来事に目の前で起こった惨劇が理解できなかった。俺の近くにいた男も全身から血を流し倒れていく。その最中、一瞬だが目が合った気がした。頬や服にその男性の者と思わしき血液を浴び、自身の身体が赤く染まったのが分かった。だが、一瞬の出来事にすぐに理解する事は出来なかった。


 その光景に誰かが恐怖の音をあげた瞬間、それは共鳴するかのように立て続けに起こり、皆その場から離れようと走り出した。しかし、どういうわけかフードコートから先は謎の壁が出来ており、誰一人として逃げることが出来ず、泣き叫ぶ者の声だけが聞こえる。そして、スピーカーから流れる声は全く変わらず淡々と言葉を続ける。


『こいつらみたいになりたい奴はもういないか?』


 誰かが言った。「狂ってる」と。しかし、そんな言葉などどうでもいいかのようにスピーカーから流れる声はまた陽気な明るい声に戻り、言葉を続けた。


『それではぁ!もうこれ以上質問もないようなのでゲームをスタートしたいと思います!では、皆さん!楽しんでくださいね!』


 スピーカーから声が聞こえなくなると同時に陽気なBGMが流れ始める。そして、そのBGMが流れ始めた瞬間、先ほどの声とは全く違う、無機質な音声が『これより転送を開始します』と言葉を発する。すると、すぐに周りにいた人たちの身体が淡く光始め、一人また一人と姿を消した。そして、それは自分自身も包み始めた。


「あ、あのッ!」


 自分の周りに集まる淡い光を見ていると、先ほど俺を起こしてくれた名前も知らない少女が俺と同じように光に包まれながら声を掛けてきた。


「な、何が起きているのかまだ理解できませんがお互いに生き残りましょう!」


 少女は不安な表情を浮かべながらそう言うと、俺が返事をする前に光とともに姿を消した。そして、俺も同じようにフードコートから姿を消した。

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