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寧々子ターン:対面!織田信長!と……

ついに織田信長が登場します。

私なりのイメージ解釈も込めて書きましたので、ちょっと印象変わるかもです













「ようこそいらっしゃいました、信長様」




 義父・浅野長勝の出迎えの挨拶が聞こえる。

 私は今、信長様一行を出迎える客室で義母・ふくと妹・ややと並んで平伏していた。

 そのためまだ信長様の顔を拝んでいない。

 同行者の方の顔も、一切だ。


 現代でアイドルの出待ちをするファンのごとく、待ち構えたい気持ちはあったが無論そんなことをしたらほんとに首をはねられかねない。




「長勝、出迎えご苦労。みな、面を上げよ」




 信長様の許しを得られると、みな同時にゆっくりと顔を上げる。

 逸る気持ちを抑えているが、見たい気持ちが先走って目だけで、と目線だけ信長様へ向けようとしたとき、同行者の中に一人気になる人がいた。




(周りの人に比べて背が低いし、日にだいぶ焼けているのか肌も黒め。そして右手をあまり目立たぬよう隠すような動作……なんてこと)




 冷静に観察して証を立てようとしているが、直感は確信に満ちていた。


 その男こそ、のちの豊臣秀吉。


 天下統一を果たす男である。




(まさか今日が初対面になるなんて……! 信長様の元へもう仕官しているのだからこうなる可能性は十分あったのに信長様見たい欲望が勝ってすっかり頭から抜けていた!!)




 これはまずい。

 心の準備を一切していない。

 せっかくの運命の出会いだというのに、何も起こせない。


 己の重要イベントの発生に戸惑い、今度は信長様の顔を見ることを忘れてしまった私は俯いてしまい、今晩をどう乗り切るか、フルスピードで思考を巡らせていた。













 鷹狩りの帰り、近くに住む家臣の浅野長勝の城へ立ち寄った余・織田信長はもてなされた客間にいた一人の女に目がいった。


皆、顔を上げると余に気付かれぬよう配慮はあるが、大抵の者は興味の赴くまま、一瞬でも先に余を見る。

だがその者、余を見る前に連れにいたサルを見ているうえ、未だ凝視しておる。


 目も、これまで会った女たちとも違う気がするな。

 あれは余同様、普通ならざる者の目。

 さらに見目も悪くない。あれはこれから美人に育つ。

 それに、なにやら別の姿が見える気がするな。美しいことに変わりはないが、そこらの女とは違う育ちの気配だ。




「……見込みのある女だ」

「信長様?」

「長勝、あの娘はそなたの娘か?」

「はっ、妻の姉の子で、数年前に養女としてもらいました娘にございます」

「名は?」

「ねね、と申します」




 ねね。

 心地よい響き。よい名だ。

 ますます気に入った。少し話がしてみたい。




「長勝、あの娘を世の側へ」

「はっ」














 前世にて、あらゆる乙女ゲームをくぐってきた私・寧々子。

 戦国時代のカレを口説くものだってその中にはあった。作品も一個や二個ではない。

 描いてきた同人誌の数だって一冊や二冊じゃないというのに、この状況に直面してから全くいいネタが浮かばない。




「ほんとに参った。どうしよう、どうやって運命の出会いのセッティングを……」

「ねね? なにをブツブツ言っているのだ」

「義父上! 申し訳ありません。今、皆様に接待を」

「いや、お前は信長様に呼ばれたので信長様の側へ行きなさい」




 信長様に呼ばれた?

 まだ何もしていない、しかも顔も拝んでいないうちになぜ私が呼ばれているのか。

 疑問はあるものの、待たせるとまずいだろうと判断してすぐさま信長様の側へ向かった。

 近くに寄り、ゆっくりと座って一礼しながら挨拶をしようとしたところ、信長様から制止の手が入った。




「礼など良い。余はお主と話がしたい」

「は、はい」




 戸惑いながら下げていた頭を戻すと、信長様と目がバッチリ合った。

 そこで初めて、はっきり信長様の顔を見ることになった。


 キリっとした太い眉に鋭い目つき、整った顔立ち。この時代の人としてはヒゲも少ないし、少なくとも私の目から見ればイケメンだ。

 体つきが想像より華奢めなので、意外にそんなに恐ろしい印象を得ない。魔王のイメージよりは強引でやんちゃな王子という程度がふさわしい表現な気がする。まだ何も成し遂げていないせいなのだろうか。


 しかし目は、明らかに他の人とは違う。

 前世でもこんな先を見通すような人に私は会ったことがない。まぁ二十歳にも満たぬ人生だったので出会った人間の数も少ないと思うけど、それでもこの数年で見た人・出会った人にもいないタイプだ。

 やはり天下人になる人というのは素質を持っている者なのだろう。


 それにしても、尊い。

 今、織田信長が私の目の前に座っている。

 この事実だけで倒れそうなのに、これから会話交わすんですよ。




「余のことを凝視したかと思えば急に手を合わせて拝みながら涙するとは、神仏にでも会ったかのような反応をするな」

「実際そのような気持ちです。尊い」

「ハハハハハ! 余を尊いと申すか! ねねと言ったか。お主、面白い娘よの」




 信長様が楽しそうに笑っている。ああ、尊い。

 推しが元気に生きているだけでいいと思える人達ってこんな気持ちだったのかな。私も気分よく昇天できそうな心地。


 私の態度と言葉に相当気分を良くしたらしい信長様は私を引き寄せる。




「ああっ、そんな。私ごときが信長様に触れるなど」

「よいよい。余は今、とても気分が良い。それに……お主からは他の者と違う気配がする」

「!」




 言われてピシッと固まってしまった。

 いや実際、未来人なのでその発言は正しいのだが、まだ大したこと話していないうちに言われるなど、観察力がすごい。ほんとに末恐ろしい人だ。




「ちなみに、具体的にどこが違うと思われますか?」

「目だな」

「まぁ即答。でも信長様も他の殿方と違う目つきをしていらっしゃいます」

「では余たちはお揃いの目をしているわけだな、ハハハハ!」




 お揃いとか恐れ多くて「とんでもない!」というところだけど、嬉しそうに笑うので否定する気が失せてしまった。これがイケメンの笑顔。

 信長様の笑顔を再び尊いと拝み、涙している間に信長様は何かに気付いて連れの人達の方へ視線を向ける。

 動かしていた目を探し人が見つかったのか止め、目的の人へ呼びかける。




「サル!」




 探していたのは秀吉か。


 ……いや、待って。


 待って、運命の出会いにおいて最初の一言は肝心なんです。

 私はまだ何も決めていない。

 そういえば信長様、ねねさまと秀吉のキューピットやったんでしたっけ!?


 などと焦っている間に秀吉は信長様の前に近付いていた。


 誠に申し訳ないが、天下人三名の中で女たらしであった秀吉は女の敵! とまで思い込んでた人なので信長様に向けたような反応が私にできるとは思えない。

 でもやらないと、ねねとしての役割が果たせない。




(とりあえず、初めまして、の挨拶から!!)










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