3 正体
本日は夜に予定があるので夕方更新しようとしていたのですが、予約投稿の存在を思い出し、大体いつもどおりの時間です!!
竹中半兵衛に命じられて徳川軍をお迎えに行った寧々子。
お迎えに行った先で徳川軍に警戒されるも、大将である徳川家康のとりなしで警戒は解かれ、二人は二人だけでお話する。
しかしそこで寧々子が一兵士の治ではなく、木下藤吉郎の妻であるねねだということがバレていることが発覚。
バレている理由を聞こうとしたところで、朝倉軍の妨害に遭ったのだった。
馬上で敵を迎え撃つ構えを揃ってとった寧々子と家康。
家康は後ろに控えていた自軍にも攻めの指示を下すと、後ろから徳川軍が朝倉軍を攻める。
朝倉軍の数が少なかったので、あっという間に徳川軍が制した。
織田軍も精鋭揃いであるが、徳川軍もなかなかの精鋭ぶりである。
「すごいですね、あっという間に」
「みんなすごい家臣たちばかりですし、兵一人一人も苦楽を共にした者が多いですから」
寧々子の称賛に家康は嬉しそうにしながら答える。
ほんとに仲間を大事に思っているんだなということがひしひしと伝わってくる。
「大事なのですね、みなが」
「ええ、私の、徳川の宝です。長らく私の人質生活に付き合ってくれたので、たくさん苦楽を共にしています。それ故、僕ももう二度と皆に辛い思いをあまりさせないようにしなくては」
長く人質生活を送らせてしまったことをここまで申し訳なさそうに思う武将もなかなかいまい。
家臣である以上、ついてくるのが当然と思う愚かな武将もいる時代にこんな素敵な主に出会えた徳川家臣たちは幸せ者だろう。
こういう人柄だからこそ、まだ未発生ではあるがのちの三方ヶ原の戦いでも味方に命懸けで送り出され、支えられていくのだろうなと思う。
徳川家康について、一つ賢くなったように思う寧々子であった。
場を制した徳川軍を後ろに率いながら、寧々子は家康と並び会話を交わしながら織田軍の布陣する竜ヶ鼻へと向かった。
「それで、なぜ私のことを?」
「戦前、半兵衛殿に少しお話する機会がありまして。そのときにねね殿が半兵衛殿を見舞った話を思い出して、親交があるのだと考えて半兵衛殿にねね殿の印象を伺ったのです」
「半兵衛が私に抱く印象ですか。なんと?」
「 “ あの方は急に何をしでかすか、実は他に何をしているのか、分からない人。扱いやすいのか扱いにくいのか、判別つけがたい ” と申していました」
「……褒められているわけではないのでしょうね」
「そうでしょうか? 私は最大の称賛であると思いますよ。少なくとも軍師をする人間にそこまで言わせるねね殿を一瞬で尊敬しました。しかも半兵衛殿は軍師の中でも切れ者ですし、そんな方にそこまで言わせるなどなかなかできることではありません」
まるでひねくれものの褒め方ではないか。素直に、すごい人です、と言えないのだろうか。
むしろ、半兵衛の言外の意味を好意的に受け取った家康殿の人の良さたるや。
やはり戦国を終わりへと導いただけの人である。
考え方が違う。
「それを聞いた時に、ふと武器庫で銃に触れていたねね殿の姿が浮かび、それをそのまま伝えたところ、 “ それはあの人が戦える人だからですね ” とさらりと」
「いやいやいや! さらりとしすぎでは!?」
「僕も最初、何を言われたのか理解するまで時がかかりました。驚きましたが、木下殿は農民出身だと伺っているので、やはり武家の出の者とは違い、いろいろ苦労されてその道の上で戦いを知ることになってしまったのかと胸を痛めました」
なんて、いい人なんだ、徳川家康殿。
どうやったらそんないい人思考になれるのでしょう。
桶狭間の戦いに興味津々で物見遊山気分で戦に乗り出し、一度後悔したけどそのまま参加を続行して、いろんな戦に常連かのごとくひっそり参加してしまっている、全く想像がつかないどうしようもない経緯で覚えた戦い方だというのに。
家康の言葉に思わず寧々子は涙が零れそうな心地になる。
「でも、これは私と半兵衛殿、二人しか知りません。信長殿や木下殿含めて他の者には言っておりませんし、今後言うつもりもありません。安心、というのは難しいかと思いますが、半兵衛殿とも約束したので」
「それならいいのですが」
それは状況が変わった時にも配慮してもらえるものなのだろうか。
木下藤吉郎が豊臣秀吉となる前にも、家康とは一度衝突しているし、今後を思うと悩ましいことである。
しかし寧々子が家康の弱みを何かしら知っているわけではないので、取引とすることもできない。
困るなぁ、と考えていたところ、それを察した家康が少し何かを思案した後に提案をもちかけてきた。
「では、ねね殿も私の秘密を一つ、抱えてもらいましょう。これなら取引になりますし、安心では?」
「……確かにそうですが、それで家康様はよろしいのですか?」
「はい。逆の立場だったらと考えると、これが一番いいのかなと思います」
「誠に、お人柄がよろしいですね。家康様は」
寧々子の称賛に「えへへ」と嬉しそうに照れる家康様。
正直に言おう。
可愛い。
ほんとにこれが、自分より年上の男子なのか。
夫・秀吉とは十以上差がある寧々子だが、家康とは大体五、六歳の差なので夫より気軽に接しやすいというか、友達感覚に感じる。
あの信長が盟友としているのも、少し頷けるほどであった。
これは年上から好かれるやつだ。
「では僕の秘密を教えますね」
「あ、はい」
「一度だけしかいいませんので、聞き逃さないでくださいね。これ、あまり自ら教えていないので」
やたら念入りに言われて少し気圧されるものの、コクコクと勢いよく首を縦に振って同意の意志を伝えると、家康はふわりと笑ったあと。
「私は、神様、なのです」
――何を言われたのか、よくわからなかった。
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二話連続更新ですので、また一時間後にもう一話あります!




