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2 家康をお迎え

本日はまたまた大盤振る舞い、二話更新です!


そして、あの有名な武将が……!







 浅井長政の居城・小谷城の城下町を焼き討ちした二日後。


 徳川軍も無事、この合戦場へ現れた。

 まだ合流は成されていないものの、信長は先に竜ヶ鼻へ布陣した。




「このまま家康の合流を待ち、合流後に包囲している南の横山城を攻める。全軍、無闇に動くことは許さぬ。時を待て」




 信長の指示により、織田軍は徳川軍待ちとなった。



 そして、開戦間近のこの状況で寧々子は現在どこにいるのかというと。




――戦場を走っていた。




「なんで私が家康様をお迎えに行かなくちゃいけないんだ」




 城下町焼き討ちから後退後、すぐに秀吉の元へも知らされた家康到着の報。

 これを聞いて半兵衛がすぐに家康を迎えにいくようにと命じてきたのだ。




「私が行ったところで何も役に立たないぞ、多分。元々無事に合流する歴史だったはずだから、行かなくても問題ないのでは!?」




 などと不満を口にはするものの、半兵衛のご期待通りに戦場を駆け続ける。


 実は前回の金ヶ崎撤退戦までは己の足で走りまわっていたので体力の消耗が激しかった寧々子だが、今回から安くはあるが馬をいただけることとなった。


 手配してくれた半兵衛にありがたいと感謝を感じたのは数秒で、これでもっと動き回れますね、とより人使いを荒くしていく姿勢を見せたのでやっぱり返上しようかと一瞬考えたりもした。



 馬なのでそう経たないうちに徳川の軍勢が見える地までたどり着く。


 こちらの姿を視認できたのか、徳川軍が警戒の構えを見せる。

 何の報せも送っていないので、当然の動きである。


 しかし急に人混みが誰かを通すように割れていく。

 開いた道を馬で歩を進めて現れたのは、徳川軍大将・徳川家康である。




「そこの馬、止まりなさい」




 寧々子あての忠告のようだ。

 言われた通り、馬を止めてその場にとどまる。


 家康はそのまま一人で馬を寧々子の元へ寄せていった。




「……竹中半兵衛殿より、戦前に書状を受け取っています。あなたが半兵衛殿直下の兵士・はる殿ですね」

「左様にございます」

「それでおねねさま。お一人でなぜこちらに?」

「お待ちください、家康様。なんで正体知っているんですか」

「ほんとにおねねさまなんですね。半兵衛殿から聞きました」




 なんてことしてくれるんだ、半兵衛――!!


 この前、半兵衛に言われて家康へ接触したときにごまかしたというのに!
















 それは、半兵衛の元を訪れた帰りのことだった。

 急に家康へ接触しろと言われてどうしようか悩みながら歩いていた所。




「ねねではないか?」




 突然後ろから聞きなれた声で話しかけられた。


 織田信長である。




「信長様! 金ヶ崎よりの撤退、お疲れ様でした。ご無事でなによりです」

「うむ。サルから聞いたのか。仲が良いようでなによりだ」

「フフ、これも信長様のおかげです」

「ところで、一人で何をしておる? 供もいないようだが」

「あ、半兵衛が少し体調を崩したと聞いてお見舞いへ。いつも旦那様がひどく頼ってしまっているのでもしや負担になってしまったかと」

「ハハハッ、なるほどな。夫の配下へ、わざわざ自ら足を運んで労いに行くとはほんとにできた妻であるな、ねねは。サルにはもったいないくらいぞ」




 めちゃくちゃ褒められて「大したことではないですよ~」と口にしながらも照れる。


 ふと、信長の背後に誰かいることに気付き、顔を見ようと試みる。

 それに気づいた信長が気を利かせて後ろにいる人を前に出してくれた。


 その男性は信長様より背が低く、色白の肌をしていた。

 蘭丸や半兵衛のようなはっきりとイケメンという枠ではないが整った顔立ちをしている。あと、雰囲気が常に落ち着いているように見受けられる。




「すまないな、ねね。紹介が遅れた。こやつは余の盟友・徳川家康だ。家康、こちらは余の友・ねねだ」

「すみません、ご挨拶が遅れました。徳川家康です」

「いえ、こちらこそぶしつけにお顔を拝見しようとしてしまって申し訳ございません。木下藤吉郎の妻・ねねにございます」




 ――なんたる幸運。

 どう接触しようか悩んでいた徳川家康とまさかの対面を果たすとは。

 信長様の友達であることにこれまで以上に感謝しなくては!!

 というか、よくよく考えれば戦国の三英傑と呼ばれる二人が揃っていると言うだけでもとてもおいしい状況すぎないだろうか?

 私、明日死ぬのかもしれない。



 幸運が訪れたことにテンションが上がる寧々子はそのまま気持ちが表情に出てしまう。

 久しぶりのオタクのテンションというオプション付きだ。


 それにいち早く気付いた信長がムッと顔をしかめる。




「ねねは家康にも興味があるのか?」

「はい! それはもう!」

「ほう……。余と初めて会った時に、涙で頬を濡らしていたおぬしは家康にもそのようにするのか」

「えっ、信長殿。それはどういうことですか……女人を泣かせるなど」

「余が悪いみたいに言うな。ねねは余が天下人となる前よりその素質を見抜き、余と会ったことで感動したのだ」

「ええ!? それはすごいですね」




 ふふん、と鼻をならして誇らしげに言う信長を家康がキラキラした純粋な瞳で見つめる。

 どうやら家康のすごいという褒め言葉に、調子をよくしたようだ。ちょろい。


 そして、これが、幼馴染。

 尊い。


 ありがとう神よ……と寧々子は呟きながら静かに手を合わせた。


 寧々子の謎の行動に気付いた信長が「おお!」と満足そうな声と笑みを浮かべて寧々子の肩を抱き寄せる。

 信長と寧々子といえばこれ、みたいな形ができかけていた。




「ねね、見舞いの帰りということはこのあと特に用事はないのだな?」

「はい、そうですが……」

「では我らに付き合え」

「信長殿!?」

「どちらかに行かれるのですか?」

「ねねと同じように、兵を労りに」




 そういわれて織田・徳川軍兵士が休息をとっている箇所に見回りに共に行くことになった寧々子である。


 休息場に訪れると兵士だけでなく、織田や徳川の家臣たちがちらほらいた。

 二人はすぐに話しかけられてみるみる囲まれていくのでそれを一歩離れたところで待機して人が引くのを待とうとした。


 ふと、遠目に見える武器庫が気になり、一人で武器庫へ近づく。

 中へ入ると、刀、槍、弓だけでなく、旧式と思われる量産された銃が置いてあった。


 普段は槍や弓を使う寧々子に、銃は新鮮なもので少し興味をひかれた。




「へぇ、これが銃か」

「――無闇に触らぬ方がよいかと思いますよ」




 一人でいたはずなのに急に誰かに話しかけられて驚いた寧々子は「ひゃっ!」とかわいらしい声をあげる。

 振り返ると、家康が一人で立っていた。




「びっくりしましたわ、家康様」

「それはこちらもです。女性は、武器になど興味を示さぬどころか恐怖するものだと思っておりましたが、ねね殿はそうではないのですか?」

「なるほど、確かに普通の女性ならばそうなのでしょう。しかし私は武将の妻ですから」

「……それだけですか?」

「そうですねぇ。他にあげるなら自分のためでしょうか。このご時世、女性が刀をとることもありましょう」




 疑惑の目を向けてくる家康に、寧々子は思っていることをそのまま伝えた。

 本当に、自分が、戦場で、使うことがあるかもしれない代物なのだ。




「……嘘はついていないようですね」

「おや、分かるのですか?」

「これまでいろんな大人の思惑の上を歩いてきたもので、多少は。さぁ、あまりここに女性はいても怪しまれるでしょう。信長殿の元へ戻りましょう」

「はい」




 家康の申し出に素直に従って、武器庫を出る。

 そのまま並んで信長の元へと戻ろうと言う道中で、家康はおもむろに口を開いた。




「ねね殿は、戦場に出たことがありますか?」

「えっ!? ……いいえ」




 急に心臓に悪い質問をされて焦る寧々子だが、即座に冷静になって女性として当たり前の回答をする。


 すると再び家康が問う。




「では、もし、ご自分の住まう城ができたとして、そこに敵が押し寄せて攻め入られ戦場と化した時、あなたは刀を取れますか?」




 その問いに、寧々子は自分の知る歴史と想像が重なる。


 秀吉の死後、この人と豊臣家は敵対する。

 最後は大阪城へ攻め入る。

 そこにねねはおらず、秀吉の側室である淀君が息子・秀頼と共にとどまる。

 ねねは、徳川家康の元へ身を寄せていたはずだ。


 そのとき、城にいるのがその側室ではなく、自分だったら。




「迷いなく、取りますね」




 これが、寧々子の答えだった。

 答えを出した寧々子の瞳は強い意志に溢れていた。


 家康は軽く目を見開くが、それを隠すかのようにすぐに元の落ち着いた表情へと変化した。


 ――何気ないやり取りであったが、このやり取りは家康の中にとどまりつづけ、のちのねねへの対応を決める判断基準の一つとなる。












 などということがあったのだが、そのときに戦場に出てないと答えたのになぜ今、知らないうちに半兵衛にバラされているのか。


 これは後で、半兵衛にきつく聞かねばなるまい。


 とにかく今は、信長の元へ急がねば。




「なんで知ったのか、道中でお聞かせください。ともかく信長様がお待ちです」

「ええ。しかし、ただでは通さないようですよ」

「え」




 家康が寧々子の肩越しに何かを見ていることにそこで気付いた寧々子はバッと勢いよく後ろを振り返る。

 そこには、朝倉軍がいた。

 数は決して多くなく、ほんとに一瞬邪魔をしにきただけかのような人数だ。


 やはりどれだけ戦の流れ知識はあろうと、実際細かいところまでは分からぬものだと改めて痛感する寧々子である。




「まずは、この軍勢を片付けてから参りましょう」

「ええ」




 二人は、自分の獲物を構えた。


読了ありがとうございます。

ブクマ・ptよろしくお願いします!


ついに徳川家康と接触ですね!!

明日もまた二話更新目指します。もしかしたら、早めの更新になるかもです

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