8 満身創痍の体
本日もこちらを更新!
ちょっと今週は番外編のみ更新になるかもです。
また、続編も共に日間ランクイン中です。
嬉しい話です( ;∀;)
史実では秀吉を襲う山賊を合流しかけていた浅井軍へぶつけ、浅井・朝倉軍の合流を阻止して秀吉への弊害もなくした寧々子。
そこで初めてねねさまと体の入れ替わりを体験。
全力で動いているようで実はペース配分を行っていた寧々子の体を全力で使い、今度こそ本当にボロボロの体になってしまう。
自分で使ったわけではないのに、自分が苦しい思いをしていることを「解せぬ」と思いつつ重い体を引きずりながら走って味方が籠城戦を繰り広げているであろう金ヶ崎城へと向かっていた。
そして、目前まで城が見えるところに辿り着いた。
「はぁ……はぁ……着いた……」
“ おつかれじゃ ”
「ほんとにね……ゼェハァ」
あ、やばい。気を抜いたらまじで寝る。
そう、すぐに考えてしまうくらいギリギリで稼働している寧々子の肉体。
早く戦を終わらせないと秀吉の命どころか、寧々子の命が削れてしまうのではないかというほどだ。
「うーー、ちょっと休憩……」
「お・ね・ね・さ・ま?」
「ひやあっ!?」
休憩するために人目につかなそうな草陰に寄って地に腰を落ち着けた瞬間、眼前ににこやかな黒い笑みを浮かべた竹中半兵衛が現れる。
「は、半兵衛!? なんでこんなところに!?」
「それはこちらのセリフですねぇ? 僕は前線で藤吉郎様を守りながら戦えとお願いしたはずなんですが、何故か後方に突然現れたかと思いきや謎の言葉を僕に残した後また城方面に戻り? 僕も後を追って戻ったら城にはあなたの姿はなく、探してきてみたら地に腰を落ち着けて一休み。なるほど? 僕が視た未来視の話、忘れました?」
どうやらだいぶ激おこぷんぷんなご様子の半兵衛。
早口に寧々子を責め立てる言葉をつらつらと並び立てて次々と罪状を読み上げる。
「え、ちょっと待って。最初と最後は分かったけど、途中の謎の言葉を残したって何かな」
「僕が聞きたいんですが。覚えていないのですか?」
私に身に覚えがないということは犯人は間違いなくねねさまだ。
寧々子は脳内からねねさまに語り掛ける。
(どういうことかな、ねねさま)
“ 金ヶ崎城付近をそなたが通り過ぎたあたりから、半兵衛が後をつけておった故に忠告を少々 ”
(私達のことって話していいことなんですか!? いいのだとしたら、まずいかなと思って隠すためにした気遣いと努力を返してください。相手は秀吉や信長様よりも推している武将なんですよ!?)
“ その理屈はよう分からぬ。しかし半兵衛は軍師である。そうおいそれと話すのも進めぬ。信用はできると思うがな ”
(それはどっちだ。ねねさまの理屈も理解できません! とにかくまだ話さない方がいいってことでいいですか!?)
“ うむ ”
寧々子は若干イラっとしつつ、うまく言い逃れできるように言い訳を考える。
いや、もうこれは知らないふりを通せばいいのでは?
バッチリ接触して話しかけているみたいだけど、ねねさまの言い方的には隠し通せと言っているわけではないのだから、のちの布石として利用すべきでは。
よし、知らないふりだ。
「覚えていませんね。ちょっとここに来るまでの記憶が曖昧というか」
「……」
半兵衛から疑いの眼差しを受けるが、私自身は本当に何もしていないので疑問返しをするかのような表情を浮かべて対応する。
そこに嘘はないと感じ取ったのか、半兵衛は私の眼前にあった自身の顔を引かせて考える人のポーズをとる。
「多重人格の可能性があるのか? それなら能力の隠し事に何か複雑な面が見えるのも納得が……」
などと独り言をブツブツ呟いている。
どうやら寧々子を多重人格と仮定してなにか考えているようだ。
まぁ、厳密にいえば違うが、人に説明するにはちょうどいいのでその多重人格案は今後があったら積極的に使っていこうかなと寧々子もひそかに思案した。
「て、説教をしている場合でもなかった。もうすぐ僕が視た光景の時になってしまう。城へ行きますよ!」
半兵衛が視たという秀吉の死へのカウントダウンがもう始まっていたようだ。
半兵衛の急かし行為にすぐに「はい!」と反応できたらよかったのだが、寧々子はもはや満身創痍である。
「半兵衛。やっぱり急がなきゃダメだよね?」
「やっぱりもなにも急がないとまずいです」
「うんうん。じゃあ背負ってくれ」
「はい?」
寧々子のワガママ発言に半兵衛は戸惑いと苦笑いを混ぜた複雑な表情を見せる。
寧々子も自分は何を言っているんだろうと一瞬冷静に己へとツッコミを入れるものの、ほんとうに力尽きていて動くのがしんどいのだ。
ここぞとばかりに今、寧々子が入っている肉体は美人なねねさまのものなのでその美貌を生かして潤んだ瞳を半兵衛に向けて懇願するように見つめる。
その寧々子の小悪魔的攻撃は半兵衛の心に一ミリたりとも響かなかったが、このままここに満身創痍な主の嫁を置いていくことはまずいと考えて苦渋の決断とした。
「――わかりました。途中まででもよければ」
「た、助かる。ありがとう」
本気のお礼を言われたので「まぁ、いいか」と軽く息を吐いて寧々子を背負うために背を寧々子に向けてしゃがむ。
しかしこの半兵衛の気持ちは寧々子が背に乗った段階で撤回される。
「…………おも」
「ちょっと!! 乙女相手にそういうこと言わないでくれるかな!?」
城の中へ着き、半兵衛はゆっくりと寧々子を下ろす。
城内にいた味方が背負われていた寧々子に怪我があるのかと心配して駆け寄ってくる。
最初に前線にいたこともあって着ている鎧はボロボロだし、傷もちらほらあったので怪我人であることに間違いはない。
寧々子は駆け寄ってきた味方にそのまま甘えて応急措置を行う兵のいる場所まで向かった。
「――意外にも怪我人はさほど多くないな」
“ 妾の知る歴史でもこの戦における織田軍の被害は少なかったと聞いておる。皆、優秀な者たちばかりなのだろう ”
「これだけずっと奮戦状態にあってそれならほんとに優秀だね」
救護担当の兵士が寄ってきて傷の具合を見る。
大した傷ではないのは自分でもわかっているので軽く塗り薬をいただくと、寧々子はすぐざま秀吉のいるところへ向かう。
秀吉は城の前線で、味方への指示を絶え間なく行っていた。
近くに先程まで寧々子と共にいた半兵衛もいる。
ふと、一人の兵士が秀吉へと駆け寄ってくる。
「木下殿、朝倉軍は大分追い返したようですが、援軍として現れた浅井軍がすぐそこまで迫っております」
「次から次へとご苦労なことじゃのう」
「しかし浅井軍は突然現れた山賊に襲われて足止めや一部盗難を受けたそうで、隊は乱れ、装備もバラバラになっている模様」
「ほうほう! 天が織田軍に味方したのじゃな。賊とは不幸であっただろうに。じゃが、わしらにとっては好機。動けるものを城の前に集めよ! 浅井軍を食い止める!」
伝令は「はっ!」と返事をすると、すぐさま味方へ通達しに走る。
朝倉軍が落ち着いたと思ったら、今度は浅井軍か。
賊を当てて疲弊させて、どうやら一部兵士は鎧もはがされたようだがそれでもこちらへ来るとはその意気込みたるや。
浅井長政は根気強い男であるようだ。
「ねねさま」
半兵衛が再び寧々子へ声をかけてくる。
周りに聞こえないようにするためか大分小声だ。
「ねねさまは藤吉郎様の護衛で。それだけ疲弊しているなら囮は無理でしょう?」
「まだ囮させるつもりだったのね。無理だね」
「前線には普通に他の味方にがんばってもらうことにします。その代わり、絶対に守って」
「――わかった」
どこまで耐えられるか正直わからないが、秀吉に死なれてはこれからの歴史に大いに変化がもたらされるだろう。
それは寧々子にとっては困る。
「さて、やりますかね」
ボロボロの体に鞭を打つようにパンと一叩きして、寧々子は再び戦場へ身を置いた。
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ブクマ・pt、ありがとうございます!
引き続きよろしくお願いします!
寧々子の疲れてるなという感じが伝わればいい回




