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2 越前領へ進軍中

お待たせしております。


またちまちま細かいやり取りになってしまった。


次こそちゃんと戦います……!!











 月日は、永禄十三年の四月。

 半兵衛が秀吉の元に来てからおよそ三年の月日が経った頃。


 私達は京という、前世でいうと京都にあたる場所にいた。


 信長様が己の目的のために足利義昭という人物をほぼ壊滅状態の室町幕府の新将軍に立て京へ上洛したので、我々織田軍もそれについている。


 私はと言うと、尾張に残ってと言われたものの、それは嫌なのでワガママを言って後追いという形ではあるがついてきた。信長様の許可もついている。


 無論変装して出歩くことも辞めていない。

 そう。変装生活で、今、実は一つ進歩したことがある。

 それは堂々と織田軍の一兵卒として参加できていることだ。


 最初は半兵衛にも内緒のまま変装して紛れ込んでいたのだが、半兵衛加入後の最初の戦でバッタリ遭遇したときにすぐにバレてしまって素直に参加している旨を白状した。


 大変驚いてはいたが頼れる(使える?)存在と認識したのか、むしろ協力してくれてこうして半兵衛傘下の一兵として紛れるように手筈を整えてくれた。

 そのおかげでこうして堂々と参加できることになった。


 あと、女であることや秀吉の妻であることから私に万が一のことがないように気を配ってもいて、ほんとに頭が上がらない。


 桶狭間の戦い生き残れたなら大丈夫な気もするけど、こういう気持ちが油断を招くので気を引き締めないとね。




 部屋の外から聞きなれた足音が聞こえてくる。

 この足音は夫・秀吉で間違いない。

 足音は私の部屋までまっすぐ向かっているようで、予想どおり聞こえ始めてからそう経たないうちに部屋の扉が開いた。




「ねね、ただいま戻ったぞ」

「おかえりなさい。 ……なにやら渋い顔をしておりますね」

「うむ。越前の朝倉義景に挨拶に来るよう信長様が何度も要請していたのだが、返事もなければ全く動く気配もない。これに信長様がご立腹でな、戦になるな」

「それは信長様怒りますね。戦になってしまうのも無理はありません。ですが、ここ近年上洛のために短い期間ではありますが、戦がありました。兵の士気が心配です」

「……まるで武将のようなことを申すな、ねねは。戦に出ているわけではないのに、よく分かっておるのぅ」

「うっ、ウフフ。私もあなたの役に立ちたいので日々勉強をしているのですよ?」

「可愛いことを言ってくれるな~! 愛しているぞ、ねね!」




 そう言いながら秀吉はニヤニヤと頬を緩めて私の肩を抱き寄せる。

 秀吉の前ではあまり戦のことについて私から意見することは今までしなかった。

 長年一緒にいるせいで少しずつ気が緩んでしまっているのだろう。

 これはまずい。意識しないとポロリしてしまいそうだ。




「戦になったらまたしばらくねねに会えないのう」

「まぁ。尾張に置いていこうとしたくせによく言いますね」

「愛する者には安全な地にいて欲しいものじゃ。万が一、戦に巻き込まれて死んでしまったら儂は生きることが辛くなってしまうぞ」




 実際参加してるんですけどね。

 しかも、戦績もあげようと思えばあげられるんですね。

 正体を追求でもされたら面倒だから自分ではなく、周囲のめぼしい人にあがるようにうまく立ち回っている。

 そんなことをしていたら、そこらの兵士には負けない自信が最近はついてきた。


 などと考えていると、頭を優しく撫でられる感触がした。

 顔を上げると、秀吉が真面目な表情でこちらを見ている。

 手つきは優しいのに、顔は真剣そのものだ。




「そういうわけで儂はしばらく帰れないが、くれぐれもなにかあったら自分の身第一に身を守るんじゃぞ、ねね」










「――て、藤吉郎様に言われたのに来たんですね」




 半兵衛はため息をついて、呆れた表情でこちらを見る。


 今、半兵衛の前に立っている私は秀吉の妻・ねねではなく、竹中半兵衛率いる部隊の一兵・はるである。

 この名前は、半兵衛の名前・重治からとった。

 特に意味はなく、咄嗟に考え付いたものなのだそうだ。



 私達は今、信長様の言うことに従わなかった越前の朝倉義景の元へ進軍している道中だ。




「奥さんが実はそこらの武将に引けを取らない立ち回りで戦えるなんて知ったらどんな反応するのかな」

「そんな武将並程の力はないですよ~。並みの兵士相手なら前より戦えますが、さすがに武将はね~」

「……とても姫とは思えない口調だし、あれみて武将に見えない人なんて絶対人を見る目ないよ」




 口調はこっちが私の素だから致し方ないね。


 さすがにまだ武将並に強いなんて奢ってはいないが、半兵衛がそう判じてしまう出来事がまさに私が変装していることがバレた戦・観音寺城の戦いである。









 観音寺城の戦い。

 永禄十一年、今から二年ほど前に起きた戦。

 信長様が足利義昭を連れて京へ上洛しようとしていた道中に六角親子との間で起きた戦で、結果としてはあっさりめな戦いだったのだが、そのあっさりに至るまでが少々難戦だったのだ。


 戦の火蓋をきった秀吉と信長様の家臣の一人である丹羽長秀の隊が、わりと苦戦を強いられたのだ。

 当時は秀吉についていたので、その場に私もいた。

 二人はそれぞれ別口から箕作城へ先陣をきったが、相手の守りが固くて味方部隊を崩されてしまった。

 奮戦時間はおよそ七時間で、味方兵士の疲労がすさまじかったので一人でも多く生きて戻らせるために立ち回ったのが、私。

 殿を務めるように、下がっていく味方兵士を横目で確認しつつ敵の攻撃を切って味方を逃がした。

 そこでバレた。

秀吉がこのまま一休憩とったら夜襲を決行すると言ったすぐあと、半兵衛に呼び出された。




「おねね様ですよね? 能力者同士は近いとわかるんですよ」

「あっ、それ忘れてた……」

「なんですか、あの立ち回り。それにそこらの味方兵士よりも戦えていることから考えてもここ最近始めたことじゃないですよね? しかもなんですかその気の抜けた口調。ほんとに姫ですか!?」

「そこは、あれだよ。能力者補正」

「ほかに何か能力が?」

「……昔から武術の鍛錬をひそかにしていただけです。趣味です」

「趣味でやってたことがどうして戦参加に!? 姫なら戦場から遠ざけられるでしょう!?」




 驚きが過ぎているのか、半兵衛もだいぶ冷静キャラが崩壊している。

 まだ前世事情を話していない以上、うまくごまかせる気もしないので「アハハ」と笑って流すことにした。

 そこから話す意志がないことを読み取った半兵衛は嘆息したのち。




「ほかにこのことを知っている人は?」

「妹のややは知っている」

「共犯者も立派に抱えているんですね。僕は少々あなたのことを見くびっていたようです。というか想像以上すぎて頭が追い付きません」

「驚きを提供できたようでうれしいよ」

「いつか絶対隠していること全部吐かせますからね。とりあえず戦場に出られることと武将並に戦えることは僕にとっては好都合です。あとで堂々と参戦できるように細工しておきます」

「えっ!? 協力してくれるの?」

「運命の変化を城や町でしか発揮できないのと、そこに追加で戦場が加わるのでは天と地ほどの差があります。僕は軍師ですから、使える者は最大限使いますよ?」




 不敵な笑みを浮かべてそう言い切る半兵衛はやはり軍師なのだなと肌で感じてまた恐怖した。








 そんな大層なことをしていたつもりはないのだが、半兵衛曰く。




「そもそも崩れかけていたあの状況で、みんな逃げ腰のまま下がったと言うのにあれだけ敵を睨みながら矢を斬って下がるただの雑兵がいてたまりますか。もし仮におねね様じゃなくても僕が雇用の誘いをかけますよ」




 だそうだ。

 確かに雇用の観点から見ればそんな人材がただの兵士だったら欲しいに決まっている。

 もう少し兵士らしくしていればよかったな。

 あ、そもそも能力者という時点で半兵衛には隠せないのか。




「ねねさ……治、そろそろ越前です。ここからは敵の領地ですよ」




 越前。

 前世でいうと大体福井県のあたりになるそう。




「……これが金ヶ崎撤退戦へ繋がる最初の一歩か」





 運命の歯車はすでに回っていた。


読了ありがとうございます。

ブクマ(新タイトルの件もあるのでオススメ)・ptぜひよろしくお願いいたします。


まだまだ更新遅くなります。

多分土曜日にここ更新となると思います。


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