寧々子ターン:もう一人の能力者
いつも読んでくださりありがとうございます。
短命であることにロマンをぶつけてみた所存です。
半兵衛から秀吉が信長様より先に死ぬと告げられた私・寧々子。
思考が停止したが、頭を回すように奮起させるために無意識に両手を持ち上げて頬を叩く。
なにか急死に至るピンチがあったかと記憶を巡らせる。
信長様のピンチだったら思い浮かんだが、秀吉のピンチは全く浮かばない。
どこだ。
どこにその可能性が。
「なにを根拠に、夫が死ぬと?」
「根拠は……あるようで、ありません」
そう言うと半兵衛は黙ってしまった。
これはどうしたものか。
私が行動してしまったことで歴史になにかしらの変化が現れてしまったのだろうか。
今のところ私が知っているところと特に違わないままに進んでいる。
しいて上げる問題はあるなら、私が男装をして戦場に出て戦っていることだろう。
しかし今のところ名前を聞かれることもなく、うまく紛れ込んでいる。
でも最近信長様に目をつけられているような気はしないでもない。
桶狭間の戦いの演説のとき、機敏に反応してしまったことが良くなかったかもしれない。
農民である秀吉を起用した人だ。
単純に優秀な人材を勧誘したいだけであろうし、何より私であることはバレていまい。
“ 寧々子 ”
急に頭に響く声。
この声は、本物のねねさまだ。
(これまたすごい久し振りですね、ねねさま。どうしたんですか)
“ この者、妾と同じ、能力者じゃ ”
「は?」
「え?」
思わず返事を口に出してしまい、それを半兵衛にバッチリ聞かれる。
しかしお構いなしに、急に現れたねねさまが話を続ける。
“ おそらく、そなたを見た時に異質な力を感じたのだろう。同じ者同士は本能で分かるのじゃ ”
(いや、私は分からなかったんですけど)
“ 能力持ちは正確には妾であるからじゃ。そなたは妾の術の一環故、そなたにはわからぬのだ ”
(それじゃあ、見つかるたびあなたに出てもらわなければ意味がないじゃないですか……というか、最初の時点で気付かなかったんですか?)
“ 同じ体に二つの魂がずっと起きた状態でいられるわけがあるまい。 普段の妾は眠りについておる。それをこの者が近づいてきた故、たたき起こされたのじゃ。とにかく問うてみよ ”
半信半疑だが、自分とどこかにいる弟が逆行転生しているし、ねねさまが能力者であるなら、同じ時代に他の能力者がいてもおかしくはないだろう。
半兵衛がさきほどから時々意図が読めない質問をしてきたことといい、その可能性は十分ある。
ねねさまの言う通り、大人しく聞いてみることにした。
「半兵衛殿も、能力者なのですか?」
「――ということは、やはりおねね様も?」
「そうでもあり、そうでもないです」
「僕の真似ですか?」
「うまく言えないのです」
本物のねねさまに能力はあるけど、私にはない。
これをどうやって言葉にしようか。
「ああ、でもよかった。初対面の時、感じたものは間違いではなかったのですね。ここまで話して全くの見当違いであったなら催眠術を施すところでした」
「さらっと恐ろしいことを……さすが軍師」
「おねね様はどんな能力を?」
これはなんといえばいいのでしょうか。
素直に実はねねは二人いるとかいうべきなのだろうか。
“ 妾が一度辿った歴史では半兵衛は信用できると思う。そなたは? ”
(私は竹中半兵衛が一番の推しですよ。そりゃあ信用しかありません。私が知る歴史でも半兵衛が秀吉を裏切るとかいったことは伝え聞いていません)
“ ならば話してよいのではないか? ”
(でも気になるのは先程の半兵衛の発言です。秀吉様が信長様より先に死ぬという話。私が知る歴史にそれはなかった。これはもしかしたら歴史に変化がでた可能性があります)
“ ふむ。前と同じ目で仲間を見ることは難しくなってきたか。悲しいが、それもまた致し方のないこと。そなたに任せる ”
最終決定は私がしていいらしいということになったので、違いすぎず、でも核心に触れない言葉を選ぶ。
「能力、と表現していいのか分かりませんが、私は時代の流れを知っています」
「見える、ではなく?」
「はい。ですが、それももしかしたら覆されてしまうのかもしれません。先程の半兵衛殿の発言を聞くと」
「ふむ。これはまたいずれ時間を設けてゆっくりと話したいところです」
続けて半兵衛が言葉を紡ごうとしていると、少し離れたところから軽快な足音が聞こえてきた。
この歩き方は間違いなく秀吉だろう。
「……秀吉様でしょうか? 足音が聞こえますね」
「当たりです。今日はもう部屋にお戻りください」
半兵衛の能力が知れないのは惜しいが、秀吉にこんなところを見られる方がまずいだろう。
そう考え、半兵衛の前から去ろうとすると逆に腕を引かれて引き寄せられた。
「えっ、半べ……」
「僕の能力は、未来が見えることです」
「!」
「見るだけなら問題ありませんが、変えようとすると代償が伴います」
それを小声で早口に私に伝えると、彼は足音とは反対の方へ静かに走り去っていった。
美しい顔をしているのに、力は男らしくて先程の腕を引く行為にドキドキしてしまった。
そのまま呆然と立っていると、やってきた秀吉に心配されたがそれは適当に流した。
以上が、半兵衛と出会ったときの出来事だった。
その後、秀吉が信長より先に死ぬ、という件についてタイミングを見つけて話すことができた。
半兵衛曰く、それは秀吉が初めて半兵衛の元を訪れた夜に見た夢らしい。
その夢を見た年から数年以内に、信長様が大敗する戦がある。
それのしんがりを、秀吉が受けることになるのだが、それによって死ぬそうだ。
そして、それは金ヶ崎撤退戦だった。
今の私にはもうすでに経験した戦で、もちろんこっそり参戦している。
信長様にとってこの撤退戦は、予測していない事態の発生により起きたことだ。
しかし私が知る歴史ではここで秀吉は死んでいない。
また、今現在も死ぬこともなく生きてこの長浜城主になっている。
つまり、だ。
半兵衛が、未来を変えるために代償を払い、その運命を阻止したのだ。
詳しいことはいずれ書く機会があれば記そう。
私が参戦するだけでも変わるのではないかと思ったが、運命というものはそう甘くなかった。
結果、私の力不足もあり、半兵衛は独断で代償を払って秀吉にかかっていた運命を払った。
金ヶ崎撤退戦は信長様だけでなく私にとってもその面で、自分を過信しすぎていると自覚した一件でもある。
逆行転生しただけで、未来で知りえた情報しか知らないなんの力もない人間なのにいるだけで歴史が変わるわけがないのだ。
それ以来、私は半兵衛とできるだけ連携をとってそういった危険な未来が来る可能性があるのであれば、私が未然に防げるよう手を打つことにした。
それを半兵衛も了承した。
半兵衛が変えようとすると、半兵衛が代償を支払うが、私や周囲の人間でそれを避けられるならば問題ないそう。
代償を払うより、人の手で防げるのであれば半兵衛のためにもなる。
余談だが、できるだけ自分が代償を支払うのを防ぐために半兵衛は軍師を目指したそうだ。
つらつらと長く説明してしまってすまない。
ここまで書いてきて、半兵衛が払う代償について全く触れてこなかったが、なんとなく見当がつく人もいるのではないだろうか。
やはり少々のファンタジー設定が付き物な物語ならばありがちな代償。
――寿命。
それが、半兵衛が払う代償だ。
次はまた三吉ターンへ戻る予定です。
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