三吉ターン:おねね様へ接触せよ!
数日ぶりです!お待たせしました!
コソコソなにかをやるのはいつの時代もどの年齢でもきっと楽しいと思うんですよ。
秀吉様の居城・長浜城。
平馬が得た情報を元に、次なる目標ができた僕は秀吉様の小姓をこなしつつおねね様へ接触する機会を伺っていた。
僕が今就いている仕事「小姓」とは、戦がなければ現代でいう秘書のような役割を担う。
戦があるときは主の盾となるのが主な役目なので知識だけでなく、武芸も鍛えなければならない。
僕は特にこれまで知恵をつけることにばかり注力していたので武芸はあまり明るくない。
そのため平馬に頼み、仕事終わりに毎日稽古をつけてもらっている。
小姓の仕事をしながらでも、勤務以外の時間でも、おねね様へ接触を図る機会は十分あった。
そのはずなのに。
「全く会えない……」
昼休憩を平馬と共にとりご飯を食べながら僕はため息もセットに吐き出した。
それを聞いた平馬も神妙な顔でうなずく。
「俺もだ。お前が来る前に一度遠目に見たことがあるだけで、ちゃんと会ったことはない」
「わりと秀吉様がねね様に会いに行くんだけど、絶対不在なんだよ。秀吉様は数回に一回はなんとか会えているみたい。でも会いたいときにいないとグレちゃって他の女の所に行くんだ」
「ぐれ、ちゃって?」
「拗ねてる、みたいな意味」
僕の突然の現代語に興味がそそられたのか会話の問題点がズレて、他の言葉はなにかないのか? とウキウキした顔で聞かれる。
現代語なんて長く付き合っていけばそのうち出るからその都度聞いてと流し、再び僕はため息を吐く。
「どうしたもんかな」
「こうなったら最終手段だな……。夜、忍び込む」
「……ねね様の部屋に!? それはまずいよ」
「だが秀吉様でさえ、昼間会いにくい人物にこれだけアタックして会えないのだからこれしかないのでは!?」
「たとえやるにしてもそれにはもう一つ弊害がある」
「やや姫か」
やや姫。
ねね様の実妹で、現在は育ちの家・浅野家の跡継ぎを得るために婿養子として尾張の一武将・安井重継の息子を迎えて結婚している。
この姫、結婚したというのになぜか未だにねね様にべったりらしく、この長浜城に共に暮らしている。
一応旦那公認のようで、秀吉様にとっても義理の妹なので秀吉様は歓迎している。
しかしこのやや姫、秀吉様には敬意を示すがなぜか僕と平馬が訪ねると、猫のように「フシャァァァァ!!」と毛を逆立てて警戒を露わにする。
初対面でその態度を取られたのでなにかする前になにかしてしまったようなのだが、何が原因かさっぱり分からない。
僕より先に小姓になっていた平馬がなにかしたのかと思ったが、特に記憶にないそうだ。
「おねね様の部屋へ行くと絶対いるから……。仲いい姉妹ってこんなものなの?」
「二人は昔から特別仲が良いのだと前に秀吉様から聞いたことがある。なにやら妹の一方通行ぎみでもあるそうだが」
「そりゃ片方が熱ければ、もう片方は冷めるでしょう。僕はそんなに姉弟を想ったことはないな」
こちらでできた兄弟とは別段普通の関係だったし、前世の姉も最初は喧嘩ばかりだったけどそれも年を重ねたらなくなり、むしろ最後らへんは尊敬するところもあった。
今となっては姉がいればもう少し簡単にこの時代に馴染めたのではと思わざるを得ない。
「ならば忍ぶまではいかず、偵察に行かないか?」
「結局同じじゃん。平馬、僕より頭いいはずなのにバカなの?」
「面白いだろ?」
「いや、そういうことじゃ――」
とはいいつつも、このままでは埒が明かないので最終的に平馬の提案に乗ることになる。
その日の晩。
ねね様の部屋があるあたりの庭に忍び込み、草陰から部屋を見つめる。
「……ここからでほんとに見えるの?」
「これ以上近づくのはまずい。やや姫にバレる可能性がある」
「姫なんだよね??? 戦国時代の姫ってみんなそんなにめざといの?」
「あの姫が特殊なのだ。そもそもおねね様が女人として風変わりなのだから妹が少し特殊でもおかしくはない」
血がつながっているだけでそういう言いがかりをつけられてしまうのも可哀想だなと軽くやや姫に同情する。
それからしばらく部屋周辺の様子を見ていたが、人が出入りすることもなければねね様が部屋にいるのかも疑わしく、何の音沙汰もなかった。
眠気もだいぶきておりこれは解散した方がいいかと考えていた所だった。
突然、ねね様の部屋と思しきところの戸が勢いよく開いた。
それに二人同時に驚いて「ビクッ!」と肩が跳ね、バレたのかと焦って身をより低くして地面とくっつく。
中から出てきたのは、一点を大きく凝視している女性だった。
「あれは……おねね様!」
平馬が確信したように告げる。
部屋から現れた、平馬曰くおねね様であるその女性は薄着で髪も束ねずに風に遊ばせたままにして何かを待つかのように一点を見つめていた。
「なにかを、待っている?」
「これからなにか来るのか?」
その問いに答えるかのように、月明かりが差し込んでいた地面に一部陰りが出る。
ハッとして、僕たちは首を揃えて塀の方を向く。
塀の上に、誰かが立っていた。
曲者である可能性も考慮して持ってきていた刀に手を添える。
塀にいた人物は軽々と飛び降り、華麗に着地するとおねね様へとゆっくり歩を進めていく。
影が濃すぎて未だ全貌が見えない。
男性か女性かもいまいち判別がつかない。
部屋にあと数歩となったところでその人物が頭に手を添え、何かを取る仕草をした。
とれたのは……髪。
カツラをつけていたようだ。
それを外した拍子に中の髪を止めている紐が取れたのか、縛られていたらしい髪が風になびいた。
さらに部屋から現れたおねね様の前に立つ。
そのとき、体の向きが少し変わり、月明かりがその人物の全貌を照らした。
「――え?」
「おねね様が……二人……?」
そこには、同じ顔と異なる着物を着た女性が二人、立っていた。
続きは明日更新予定!
一度寧々子ターンに戻ります!




