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三吉ターン:初めての友達

のちの大谷吉継との出会いです!!

結構早い段階で出会っていたんですね。


吉継とは長い付き合いになるし、最後までいい人なのでこういうのもありかなと思いました!









 三杯の茶の一件から数日が経過していた。

 僕は羽柴秀吉から勧誘を受けたにも関わらず、未だに寺子屋で学ぶ日々を送っている。


 今日は勉強の時間が早く終わって解散となったが僕は自習がしたくて残っていた。

しかしずっと机に張り付いているのも体に悪いので、先生に申し出てまた寺子屋周辺の落ち葉掃きをしている。



 もう少し前世で姉からでも石田三成のことを詳しく聞いておけばよかった。

 などと後悔しても転生してしまった以上どうしようもない。



 史実通りの道を歩むなら仕官しにいくのが正解なのだが、僕は別に出世したいとはあまり考えていない。

 こうして平和にいろんなことを学び続けているだけでいいので戦などもってのほか。


 このまま何もせずただの農民として田を耕して稲を刈り、学ぶだけのスローライフでも送ろうか。


 そんなことを考えていたとき、再び寺子屋に誰かが訪れた。




「旅の者にござる。失礼だが、少し休ませてもらいたい」

「おお、あなたは……どうぞ中へお入りください」




 今回は偶然入り口近くにいた先生がすぐに客人へ対応した。

 それ故、僕はその客人の顔を見ていない。

 どうやら先生が知っている人のようだし危険はないだろうと判断し、僕はそのまま掃除を続けることにした。


 それから数十分が経過した頃だろうか。




「お前が佐吉か?」

「えっ」




 掃除がひと段落し、中へ戻って一休みしようとしたとき中から現れた人に声をかけられた。

 先程来た客人だった。




「はい、そうですが」

「そうか。丁寧な仕事をしている、落ち葉がほとんどない」

「細かいところまでちゃんと掃除しろと姉……家族に躾けられたので」

「それはいい家族だ。大事にするといい」




 危ない。

今の僕に姉はいないので間違っても教え込んだのが姉だなんていえない。


 言い直したことを気に留めている様子はないので大丈夫そうだ。




「あなたは?」

「俺は大谷平馬。今は秀吉様に仕えている」

「秀吉様に……!」

「先程、ここの和尚に先日秀吉様が立ち寄り、お前を勧誘したと聞いてな。どんな人物か気になった」

「そんな大層な人ではないですよ、僕は」




 三杯の茶だって、きっと史実の三成は秀吉に気に入られたくてやったことだろう。

 けど僕は秀吉に気付いていなかったし、たとえ知っていても史実に沿おうとしただけで出世するつもりなど毛頭ない。

 もしかして追い打ちで勧誘しにきたのだろうか。




「お前は出世したいとは思わないのか?」

「あまり。僕は農民生活しながらこうして勉強している日々が性にあっています」

「……もったいないな。学んだことを生かそうとは思わないのか?」

「え?」




 言われたことが一瞬理解できなくてポカンとしてしまう。

 僕の様子に平馬さんも驚いた様子だ。




「なんだその反応。何か目的があって勉強しているわけではないのか?」

「目的……? いや、僕はただ学ぶことが前より楽しいので学んでいただけです」

「前? 昔は嫌いだったのか?」

「あっ、いや」




 ああああ! また素で言ってしまった。

 前世の記憶があるなんて普通じゃないんだし、隠さなきゃいけないけど嘘をつくのが元々苦手なところが不利に働いている。




「……出会ったばかりで隠し事があるのは当然だが、お前はなんか他とは違う部類のものを感じるな」

「ソ、ソンナコトハナイデス……」

「嘘をつくのが苦手だな?」

「うっ」

「人にはあまり言えないことか?」




 前世の記憶がある上に実は今より未来の人なんです!


 なんて言えるわけがない。

 しかしこの人をごまかせる気がしない。

 うわー、めっちゃ見てくる。


 もしこの人が三成にとって大事な味方であるなら口止めして打ち明けるのもアリだと思う。

 でも僕、大谷なんて人、全然知らない。




「信用しろ、などと言う人間が一番疑わしいものだ。だからそこまで言うつもりはないが、正直そこまで態度全面に出ているのを見逃せと言うのも人間としては難しいな」

「人間として、ですか。己の好奇心を人間すべてがそうであるかのように言うんですね」

「お前は目の前に挙動不審な奴がいたら、それを見逃すのか?」

「……状況にもよりますが、見逃しはしません」

「それと同じだ」




 そう言いながらフッと平馬さんは笑った。

 ここまで言われては隠すのがばかばかしくもなる。




「親にも先生にも言っていないことです。誰にも言いませんか?」

「それは相当な隠し事だな。わかった。命をかけるとしよう」

「そこまでしろとは言いませんが、あまり知られても困るので」




 そういうと僕は平馬さんを寺子屋から少し離れた、町を一望できるところに誘って全てを打ち明けた。


 自分には前世の記憶があること。

 その前世は今よりも何百年も先の未来の人であること。

 自分が、未来では有名である武将に生まれ変わっていること。


 ほんとにすべてを話した。


 頭がおかしいと思われるか、笑われることぐらいはされるかと考えていたが、平馬さんは決してそんな反応をしなかった。

 衝撃を受けているようだったけど、すべて真面目に聞いてくれた。




「――なるほど。なぜ家族と言い直したのだろうと思っていたが、今と前世で家族構成が異なったのだな」

「そこ、気に留めてない反応だったから大丈夫かと思っていましたがやっぱり気にしていましたか」

「むしろそれと合わせてその挙動不審さを気にしたんだ。だがまさか未来人の生まれ変わりとはな」

「誰にも言わないでくださいね」

「分かっている。して、お前はどうしたいんだ?」

「え?」




 さっきから虚をついてくる質問ばかり投げかけてくる人だ。




「お前はさっき学ぶことを前より楽しいと言った。つまり前世で生きていた時よりもこの時代で生きることを楽しいと感じたわけだ。それで、楽しんでいるこの時代で何をしたいんだ?」

「僕がやりたいことなんてできませんよ。その有名な武将に生まれ変わった以上、その人と同じ運命を歩まなくてはいけないでしょうから」

「そうだろうか? 俺はむしろ逆だと思う」

「逆?」

「そういう流れを変えるために、お前が呼ばれたんじゃないのか? その武将として」




 平馬さんの言葉が僕の心に深く刺さる。


 僕は、自分が石田三成であると分かった時から彼が歩んだとおりの道をなぞらえて生きなくてはならないと勝手に思い込んでいた。


 前世でも親が決めている、望んでいるとおりの道を歩むことを強要されていた。

 だから決められたレールの上を歩くことに抵抗がなく、何も考えていなかった。



 確かにこの時代に、自分の望みごとだけを押し付けてくる親はいない。

 石田三成と同じ運命を歩め、なんて言われていない。

 決められたレールなんてここでは存在しないんだ。



 唐突に、前世で途中から親に反抗し、親の押し付けを蹴っ飛ばして自分のやりたいことに全力を尽くしだした姉の姿が浮かんだ。




“ 三吉、あんた、それでいいの? ”




 いつだったか、両親の仲が悪くなって一緒にいるようになったときぐらいに姉が勉強漬けの僕にそう問いかけた時があった。

 僕は、ただそうしたら親が喜ぶと信じていた。

 僕が成功すれば、両親の仲もよくなり、姉が自由であることも許してもらえるかもしれないと思っていた。

 それだけで勉強していた。がんばっていた。持ちこたえていた。



 でも、それももうしなくていいのだ。

 ここでは僕は自由だ。




「――平馬さん」

「ん」

「ありがとうございます。僕は、少し真剣に自分のことを考えようと思います」

「……そうするといい。今、すごく良い顔している」

「そうですか?」

「ああ。いい男の面構えだ」




 一度も言われたことがなかった褒め言葉に、胸が熱くなる。


 「そろそろ戻りましょう」と促すと、最後に「あ」と何か思い出したかのように声をあげてこちらみ見てくる。




「名前、ほんとはなんと申す?」

「そんなこと知ってどうするんですか」

「どうもしないが、俺たちは重要な秘密を共有する友となったわけだ。ならば名前くらい聞いてもよかろう?」

「友……僕と平馬さんが?」

「そうだ。嫌か?」




 嫌なわけはない。

 正直に言おう。

 僕は前世において友達ゼロ人だった。

 転生してから嬉しいこと尽くしで涙が出そうです。




「……いいえ。嬉しいです。友達いなかったので」

「寂しいことを言う奴だ。どんな生活をしていたんだ。そのうち詳しく聞かせてもらうぞ」

「はい、そのうち」

「して、名は?」




 僕はそこらに落ちている木の枝を一つ拾い、しゃがんで地面に前世での名前を記す。

 平馬さんもしゃがんで僕が書き終わるのを待っている。




「音は今と一緒です。

 両親が一度ずつ、合わせて二回受験を失敗しているので三度目の正直だと成功への願いをのせ、

 運が向くよう吉をつけて、


 三吉。


 それが僕の本当の名です」


本名を教えたあと寺子屋までの戻り道で、「受験」とはなんだ? と聞く平馬とそれに答える三吉という、平和な姿が私の中で浮かびます。


ブクマ、ptよろしくお願いします。

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