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三吉ターン:三杯の茶

いつもありがとうございます。

ぜひブクマ、ptよろしくお願いします。


今回は三成と秀吉といえばのあの、三杯の茶、ですよ!!







 石田三成へと逆行転生し、時勢が桶狭間の戦いがあった翌年であることを知った僕はその後もスローペースで情報収集をしていた。


 赤ちゃんである以上、そんなに派手な動きはできないし短時間家や親の元を離れるとそれだけで過剰な心配をされるのであまり自由に動き回れなかった。


 数年かけての情報収集と途中から親の方針で僕は近くの寺子屋へ通うことになり、この時代の勉強を始めた。

 前世の記憶があるので文字を習うのはそんなに苦労することはなく、あっという間に寺子屋一の秀才へと上り詰めた。

 元々勉強することは嫌いではない。

 前の親も僕に過剰な期待をして成績向上を常に求められていた。


 でも今の両親は前の親のような自分の望みを叶えるために息子に勉強をさせているのではなく、今を生き残るために勉強をさせているのでとても気持ちが軽い。


 そして、前世よりも学ぶことが楽しいと感じている。


 それを感じた時、少し三成へ転生したことを嬉しいと感じた。







 時は進み、天正二年。

 三吉が十五の歳を迎えた頃。

 世の情勢は、織田信長が浅井・朝倉家を滅ぼした翌年に当たる。


 いつもどおり寺子屋に学びに来ていた僕だが、勉強時間はとっくに終わっていた。


 今日は両親の帰りが遅いらしく、また兄も親に同伴しているのでそうなると家に一人になってしまい暇なので先生にワガママ言ってここに時間までいていいことになった。


 それでずっと寺子屋の中で本を読んだり、文字の練習をしていたら先生が寺子屋周辺を竹ぼうきで掃除しているのを見かけ、手伝いを申しでた。


 大体の落ち葉を集めたところで山道の方から足音がしたのでそちらを見ると、




「おお! お主、ここの者か?」




 見知らぬ男の人に声をかけられた。


 身なりと連れの雰囲気から察するにどこかに仕えている人みたいだ。武将であることは間違いなさそうだ。

 護衛みたいな人を連れているなら多少の地位にはいるはず。

 弓を持っているし、山の上から来たことを考えると鷹狩りに行った帰りと推測。




「はい。ここの生徒です」

「そうかそうか! わしは今鷹狩りから帰っている途中なんじゃが、喉が渇いてしまって、すまんが少しだけ休ませてもらうことはできんかの?」

「今、先生に確認して参ります。こちらで少々お待ちください」




 やはり鷹狩りの帰り。

 顔色から疲労が見えるな。

 僕は急いで先生の元へ駆け出した。


 そのとき僕は、残された男の人が寺子屋周辺をやたら観察していたことに全く気が付かなかった。




「先生、外に鷹狩りから帰る途中の武将様がいらして、一休みしたいと言っています」

「おやおや、それはお疲れだろう。佐吉くん、ここへ入れてお茶を用意してくれないかい?」

「承知しました、先生」




 入口に戻ると、声をかけてきた男の人が腕を組んで僕が集めた落ち葉を見つめていた。

 落ち葉をみてなにかあるのだろうか?




「あの、そのかき集めた落ち葉になにか?」

「お、ああ! ぼーっとしてすまんのう。いやなに、この寺子屋周辺にはここ以外落ち葉が見当たらないなと思ってな」

「僕が先程まで掃除していたからです」

「随分丁寧に掃除しとるんじゃな。結構結構!」

「ありがとうございます。先生が中へ入れていいと言っていました。お茶を用意しますのでどうぞお入りください」

「おお! 感謝する。ありがたい」




 その男の人は嬉しそうに言っていそいそと中へ入っていった。

 連れの護衛と思われる人にも「どうぞ」と促して中へ入れる。


 いつもみんなで学ぶ部屋に通すと、先生があらかじめ待機していたので先生に「お客様です」と紹介して預けると僕はすぐにお茶の用意をしに奥へと向かう。


 お客様、お疲れの様子だったからだいぶ移動してきたはずだし、飲み物が残っているようにも見えなかった。

それならかなり喉が渇いているはず。

冷たいお茶を用意していくのがいいと考えて用意しようとしたところで、ふと前世での記憶を思い出す。






 それは姉が同人イベントからどこにも立ち寄らずに直帰してきた日のこと。

 ゾンビにでもなったかのような表情と動きですごく不気味だったが、それだけ大変だったことがうかがい知れるので姉に関心を持っていない親を横目に姉の部屋へと向かった。

 部屋に入る前にノックしたが返事がないので問答無用で入ると、床に倒れている姉。




「ちょっと姉さん、大丈夫?」

「ダメ……飲み物切らした上に、最後釣り銭足りなくなって財布からだしたから金も足りなくて飲み物買えなくて……し、死ぬ……」

「今なにか持ってくるよ」

「さ、三杯の茶でよろしく」

「なにそれ」

「石田三成が秀吉に初めて会った時にやったやつ……ググって」




 それだけ言うと姉はもう口を開かず、腕をパタリと床に落とした。


 訳が分からない……と思いつつも素直に僕は自分のスマホを取り出して “石田三成” と “三杯の茶” で検索。




「寺子屋に立ち寄った秀吉に三成が出したお茶。最初に大きめの茶碗にぬるめの茶、次にそれよりやや小さい茶碗にやや熱めの茶、最後に小ぶりの茶……? お茶をより深く味わわせるための気遣い……って、そんなもの今すぐ用意できるか!!」




 一人でキレたあと、ため息を吐く。

三成みたいなことはできないが、代わりに大きさの違う三つのコップと常温のペットボトル茶を一本、ティーバッグでいつも作り置きしてあるお茶を持っていき、常温→常温冷茶混合→冷茶の順に出した。

姉の適当な発言を真面目に対応した僕に、姉は大笑いした。

 二度とやらない、とひそかに決意しようとしたところで、




「ありがと」




 そのお礼+いい笑顔をいただいたので、たまにはいいか程度に収まった。






 それを思い出した僕は、まさかあの客人が秀吉かと一瞬疑う。

 よくよく考えればサルっぽい顔をしていなくもないかもしれない。

 いやでも秀吉って天下統一する人だしもっと派手な格好していそうだ。

 全然そういう格好ではなかったし、ただの武将だろう。




「本物の秀吉に会った時に上手くやれるように一回試そう。この時代じゃ、冷蔵庫ないから冷茶用意する方が逆に面倒だし」




 あの客が秀吉である可能性を頭からなくして、僕は思い出した通りにお茶を用意した。




「失礼します。お茶をお持ちしました」

「おお! 感謝する。喉が非常に渇いててなー!」




 そういって客人はお茶を一気に飲み干してしまう。


 ん?この人、右手の指が六本ある。

 多指症を患ってるのかな。


 そんなことを考えているうちに客人の一杯目のお茶が空になって文台に置く。

そこにすかさず二杯目のお茶を僕は差し出した。




「用意がいいな。先程入り口でみた掃除ぶりといい、お主、いい小姓になれるぞ」

「お褒めに預かり光栄です」




 そう言って二杯目を飲みだす客人。

 一口、口に入れた時軽く目を見張ったような気がした。

 これは成功かもしれないが、まだ最後の一杯が残っている。


 二杯目が空になったのを見届けると最後の熱めの一杯を差し出す。

 それを受け取ってから客人は「ほう」と声を上げる。




「これはどういう気遣いじゃ?」

「最初にぬるめの茶で喉の渇きを鎮めてから、最後に熱い茶を飲むとお茶をより味わい深く感じることができます故」

「ほおお。お主、ほんとうにできた子じゃな。ぜひ儂の元へ来ぬか?」

「いえ、そんな。僕はまだ若輩で学ぶ者の身です」

「ふむ。ならば自信が少しでもついたころにでもぜひ来るといい。歓迎するぞ」




 どうやらのちの仕事先に宛がつきそうだ。

 もしかしたら三成の歴史から外れるかもしれないが一応雇い主となりそうなこの人の名前を聞いておこう。




「ありがとうございます。では行く宛がないときにぜひ」

「うむ! 待っておるぞ! して、お主はなんという」

「石田佐吉にございます」

「わしは羽柴秀吉じゃ」




 ――え?

 今、この人、秀吉って言った?


 驚いた僕は勢いよく顔を上げる。

 すると僕をしっかり見つめる秀吉と目があった。


 日本人にしては色黒肌でサルのような顔つき。

 戦国武将としては小柄な体つき。

 右手の指が一本多い、多指症を患っている人。




(この人が、秀吉)




 のちに天下統一を成し遂げる男。

 そして、僕が一生をかけて仕えることになる人。



 ……お茶、まさかの一発勝負だった。


明日更新、目指します!!

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