三吉ターン:赤ん坊とは
いつもありがとうございます。今日は予約となっております。
とうとうきました弟ターン!
一言で言おう。ひどい。
「おぎゃあああああああああああ!!」
寧々子が秀吉と結婚をする一年前、桶狭間の戦いのあった年。
近江で、その命は産声をあげていた。
その命は、のちに石田三成と呼ばれることになる男だった。
(僕が石田三成……石田三成……)
赤子は生まれた途端、絶望していた。
なぜなら赤子の中身は、逆行転生してきた寧々子の弟・三吉であったからだ。
僕の記憶にある石田三成のイメージはよくない。
頭はいいようだが軍師としては力不足で人望がない。
結構重要な発言してる人の話こそ聞かない。
家康に対してやたら執着があって目の敵にしている。
最後落ち武者狩りに遭って結果家康に見つかり処刑された。
以上だ。
そんな人に生まれ変わっていいこととはなにがあるのかぜひ教えて欲しい。
ということを、生を受けて一年経った赤子の姿で、遠い目をしながら考えている。
僕、全然赤ちゃんぽくないな。
「正継様、佐吉、兄と違ってあまり泣かないわ。大丈夫かしら」
「ううむ、大人しい気質なのだろうか。時々遠い目をすることもある故、赤子ながらにこの世を悟り、憂いているのやもしれぬ」
「それはすごいことだけれど、赤子で世界を悟るなどもったいない気もしますわ」
少し離れたところで、僕を産んだ両親が僕を心配した会話を交わしているようだ。
やはり赤ちゃんらしく振舞わないといけない。
……早速、下半身に違和感がある気がするし。
「エッエッ、えぅああああああああ!!」
「なんてお話をしていたら泣き出したわ」
「まるで我らの言葉がすでに分かるかのようだ」
ごめんよ、新・父、新・母。
言葉わかるんだ。
親の言葉はわかるけど、本物の赤ちゃんのことが分からない。
前世でたくさんいろんなことを勉強してきたのに赤ちゃんになれなんて課題はなければ、そんなに深く赤ちゃんの生態について調べたことはないし興味もなかった。
姉さんは一つ知ったら、それに関連する事柄を連想ゲームのように辿って知らなくてもいいような知識まである人だった。
それを見習って授業で赤ちゃんのことがでたら関連ワードとか生態を調べるべきだったかもしれない。迂闊だった。
僕は親にバレないように目の端に悔し涙を浮かべ、下の着替えが終わった頃には意識を沈ませていた。
次に目を覚ましたときは夜だった。
きっと本物の赤ん坊はここで夜泣きでも起こすに違いない。
しかし起きている間、僕の面倒を見てばかりで疲れているだろうしそんなことはしない。
それに、今が情報収集のチャンス。
僕は赤ん坊とは思えぬ動きで布団から音が立たないように飛び起きて、ハイハイで移動し部屋をこっそり出る。
生まれてすぐはさすがに何もできなかったので一年を無為に過ごしてしまったが、一歳になった今、多少動ける。
とても赤ん坊らしくない。
向かったのは家で書物が多く集められている部屋だ。
多くと言っても書斎というレベルではない。棚も大きくないし、頂き物の本を収納しているような感じだ。
正直、足りない。
姉ならまだしも、僕は石田三成についてさほど詳しいわけではないので自分が生まれた段階で情勢がどれだけのことになっているのか知らない。
生まれた時の親の発言から、今が戦国時代であることと自分が三成に転生したことだけ把握はできている。
しかし三成が生まれた年になにがあったとか他の誰が何してたとか分からない。
ああ、姉さんいたらどれだけイージーな人生、もとい三成生だったことだろうか。
本を漁ろうとすると、近くに開きっぱなしの書物が文台にあることに気付いてそちらへ近づく。
「おぎゃっ(これはっ!?)」
父・石田正継の日記のようだ。
人の書いてあるものを覗くのはあまりよくないが今は致し方ない。
どれどれ。
「んーー(基本は自分の日常の話か。僕が生まれてからは僕の成長過程が書いてある)
うっ!?(ん? これは、桶狭間の戦い、か?)
あぅう!(間違いない! 今川義元、織田のうつけに討たれた、衝撃、みたいなことが記されている!)」
でもそこから大分ページがあるから、おそらく一年ぐらいは経過していると考えられる。
これが知れただけでもありがたい。
……ん? 外が少し明るくなってきたようだ。
部屋に戻ろう。
僕は文台から身を引き、再び音が立たないようにハイハイで素早く寝室へ戻った。
明日はこの年らへんの諸侯の動きとこれから起こると思われることを調べよう。
では、おやすみ。
僕は再び意識を手放した。
書きながらツッコミの人ほしいなって思いました。
あと、赤ちゃんわからないわぁ……。




