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無限にヒトは夢幻する  作者: 雪時雨
一章 仮想世界と現実世界と
6/9

ギルド

様々な建物や木々が並ぶ中、カッカッカッとコンクリートを蹴って、全力で走る茶髪の男性がそこにいた。


「やべぇ、帰って少し寝たら遅れちまった…怒られるかな…?」


どうやら、彼は何かの用事をすっぽかして時間に遅れているらしい。

慌てて走りながらも、行き交う人とはぶつからないようしっかり避け、ついでに恨み言を言う。


「くそぉ!こんな時に転移魔法が使えたら便利なのに~~!覚えてない自分が恨めしい!」


しばらく走った後、彼は何かに気づいたのか歩みを止め、おもむろに手を前に突き出す。


「あっ、そうじゃん!飛んだ方が速いじゃん!何やってるんだ俺…」


そう言うと、手のひらに魔法陣が展開され、それが完成した瞬間、彼の体が宙に浮いた。

そしてそのまま、全速力で目的地へ飛んで行った。



部屋の中には、奇麗や模様のカーペットや白い電光板、黒い木のテーブルがあり、いくつかに固まって10人ほどが座っていた。そこでは和気あいあいと雑談を行っている。

また、立っている他の人は、次々と部屋を出ていき、各々の目的地へ去っていく。

さらに、現在はイベント中や戦争中でないので、みんなが性能よりも見た目重視の思い思いの服装をしている。


そして、雑談をしているうち1人の女性が、ある人物を見つけると席を立ち、金色の長髪をたなびかせながらずかずかと歩み寄ってきて、今にも胸ぐらをつかみそうな勢いで言葉をかけた。


「もー、遅い珠希くん。他の人は集まってて、もう話し合いは終わったよ!さっき解散した後、ゲーム内で会う時間を確認したじゃん!いっつも遊ぶときとか、ゲームで待ち合わせするときは時間を破るんだから!」


そう言いながら香はぷくっと顔を膨らませて、遅れてきた人物を睨みつける。

どうやら、さきほど4人で遊んだ後に解散する時、夜ゲーム内で会う約束をしていたらしい。

さらに念のため、ケータイのメッセージにも約束時刻が送られていたことを、珠希は思い出した。それだけ、ゲーム内では重要な案件だったのだ。

そうとあっては、遅刻した珠希自身が悪い。

しかも理由が寝坊とあってはなおさらだ。遅れた理由は言わずに、素直に謝罪するのが吉だろう。

そう考えた珠希は、少しばつが悪そうにしながらも、やや軽い感じで謝罪をする。


「悪い悪いって『アリス』さんよ。あといくらギルド内とは言え、プレイヤー名で読んでいただけませんかね…?」


「あ、そうだった。失礼したわ。『ストロマとライト』さん。」


自分もミスをしたためだろうか、若干香の動きと表情が穏やかになった。


どうやら、香のプレイヤー名は『アリス』、珠希のプレイヤー名は『ストロマとライト』というらしい。


しかしそれはそれ、これはこれ。話はまだ終わってないといわんばかりに、香は先ほどの話を続ける。


「さっき大規模イベント終了後のミーティングと慰労会が終わったばかりよ。私何回も言ったでしょ?遅れるなって。『大トロ』ちゃんも言ってやってよ!」


よっぽど腹の虫がおさまらないのか、同じリア友である朱音のプレイヤーネームを呼び、援護射撃を求めた。


いきなり名前を呼ばれた朱音は、えぇ、そこでなぜ自分に振る?というような感じで、ピンクのポニーテールを揺らしながらあたふたする。


「そ、そうだよ!これが生物実験だったら膨大な時間とお金の浪費だよ!それこそ本当に時間厳守は大切!」


いきなりふられたため、なんだかよくわからない例えをだした朱音であった。

しかし、それが珠希には通じたのか、心当たりがあるのか、さっきよりもばつが悪そうに話す。


「その件に関しては申し訳ないといいますか、なんといいますか…すみません!ハハハ…!『パルム』!すまん!」


座っている朱音と、香の近くまで寄ってきていた冬樹を見て、申し訳なさそうに謝る。

それに対して、こういう時、普段は珠希の味方をしてくれる冬樹であったが、香と朱音に少し便乗してやろうかと思い、いじわる気味に責める。


「まぁ、俺もギルドマスターの立ち位置だから一応言っとくが、ω部隊に参加していたのにそれじゃあ示しがつかないなぁ。まぁ、今回のイベント終了後のアップデートで、新しくオープンされたパン屋の一番高いパンをギルメン全員分勝ってきてくれたら許さないこともないなぁ。あ、飲み物もついででな。」


それを聞いて珠希は、「え、まじかよ。」と割かし深刻な声のトーンで返す。さらに普段は味方してくれる冬樹が意地悪を言うので、これはもうだめだと諦め、必要な金額の大まかな計算をする。

計算結果がまぁまぁ大きい金額で、しかし今回のイベント報酬でもらえるであろう中から、無理のない範囲の金額を設定しているあたり、冬樹の計算高さが身に染みてわかる。

いや、飲み物も含めるとそれ相応の金額になることに気づき、やはり冬樹は少し意地悪しているのであろうとわかった。

それを理解した珠希は、さらに声のトーンを落として「わかったよ…買えばいいんだろ。買えば。」と口から言葉を漏らす。

加えて、その冬樹のキャラの黒い髪ともかけて、「ブラック上層部かよ」と悪態をつく。

しかし、自分でしでかしたことが自分に戻ってきただけなので、そこはあまり珠希も文句は言えない。ギルマスの冬樹が言うならなおさらだ。


するとその話を聞いていた男が立ち上がり、4人の会話に参加した。


「じゃぁ、私と一緒に首都の公営ギルド本部に報告に行く際に、ついでに買いましょうか。」


そのように、結構大柄な金色の髪をした男は、優しい顔をしながら話しかけてきた。その顔には見覚えがある。なぜならその人はアイと同じく、初期のギルドのころからのメンバーであったからだ。

もしかして、助け舟かと期待しながら珠希がその話に乗っかる。


「『ふぁるこうぃんぐ』さん!一緒に買ってくれるんですか!」


若干媚びを売ったようなキラキラとした目をしながら、珠希は気持ちで訴えかける。もちろん一緒に割り勘してくれることを期待して。


しかし予想とは違い、手を横に振りながら苦笑いすると、こう話した。


「いやいや、買うのは『ストロマ』さんだよ。僕は買うのをついていくだけだよ。もともと私の予定は、本部にギルドの活動とイベント結果を報告しに行くだけですし。」


『ストロマとライト』が言いずらいためか、若干名前を短くして『ふぁるこうぃんぐ』は話をする。


確かに、『ストロマとライト』は知らない人からしたらなんのことかわからないだろうし、そもそも長くて言いづらい。


この『ふぁるこうぃんぐ』は普段は紳士的な男性プレイヤーなので、もしかしたら憐れんで、割り勘してくれるかもしれないという天文学的希望を珠希は抱いていた。

しかしその希望もあっけなく打ち砕かれ、珠希はうなだれる。


その様子を見て若干言い過ぎたかなと冬樹は反省しながら、珠希をなだめる。しかし、罰は罰なので撤回はしない。


「まぁまぁ『ストロマ』、そう落ち込むなって。約束通り買ってきてはもらうけど。それと、『ふぁるこうぃんぐ』さんは報告よろしくお願いますね。」


冬樹はふぁるこうぃんぐの方を向き、そうお願いした。

それに対して、ふぁるこうぃんぐも快く返事をする。


「もちろん。まぁ、私もギルド本部に会いたい人がいるので、結局報告もついでになるんですけどね。」


それでも、ギルマスから本部への直接の報告を頼まれるのは、それだけ信頼されているということである。ギルドの古参メンバーの名は伊達じゃない。

ふぁるこうぃんぐは話を続ける。


「では首都ロータルトに行ってきますね。恐らく戻ってくるまでゲーム内で2時間くらいかかるでしょう。それまではゆっくりしていてください。」


リアルとゲーム内では進む時間が異なるため、間違いが起きないようにしっかりと説明をして、その場を去っていった。

珠希もそのあとに付いていき、二人の背中が見えなくなった。


話の流れ的に、ふぁるこうぃんぐが戻ってくる時には冬樹がいないといけないような流れになっている。

これは、ギルドメンバーが本部へ報告するときに、大規模イベントで国家がもらった報酬がその活躍度に応じて分配され、直接もらう仕組みになっており、そのギルド報酬をさらにギルマスである冬樹が受け取って、どのような用途に使うかやどう分配するかなど考える必要があるからだ。

その報酬はギルド内でしか開くことができないため、ギルドに報酬保持者がいる必要がある。もちろん、一度取り出したらそれはアイテム化されるので、その制限はなくなるのだが。

そしてさきほどふぁるこうぃんぐが言っていたように、その報告と報酬を受け取るのに要する時間は2時間かかるのだ。今彼らがいる町は首都からかなり離れている地域であるし、手続きにも時間がかかためそれほど時間がかかり、その操作を行うのはややめんどくさい。

そして、首都に用事があるふぁるこうぃんぐが、ついでに用を頼まれて報告と報酬の受け取りをするということなのである。

ちなみに、個人へのイベント報酬はそれを介さずに受け取ることができるため、それぞれ互いにどれくらいの報酬を受け取ったかは把握できない。




2人が去った後、やや手持無沙汰になった冬樹たちであったが、朱音の言葉でその隙が埋まった。


「ギルド内の処理はもうすぐ終わるから、それが終わったらみんなで外に出かけない?世界樹…は遠すぎるから無理として…、この町や周辺とかどうかな?もしかしたらアップデートで何か面白いものが追加されているかもしれないし。」


さすがは、アウトドア派の人間。やることが終わったら外へ出ようと冬樹と朱音を誘った。


しかし、なぜアウトドア派の彼女が、大規模イベント中にバンバン外へ出ず、開発ばかり担当をしているのか。

彼女曰く、自分はゲームがあまり得意な方ではないので、直接戦闘をせず、みんなの手助けができるポジションがいいと。

実際、The Loadの初期には、前線でも一緒に戦っていたのだが、なかなかうまく周りについていけてなかった。本人は面白明るくふるまっていたが、少し気にしていたらしい。

しかしやっぱり外に出るのが好きなのか、安全なダンジョンやフィールドでの採集採掘は基本的についてくる。


「私はもちろん暇だしいいよ!パルムくんもギルド処理が終わったら一緒に行かない?」


普段の香がゲームで過ごす方法と言えば、NPCと一緒にダンジョンに潜るか、訓練場で武器の試験運用をするか、名声ポイントを稼ぐために他のプレイヤーをキルしに行くかの基本どれかだ。

しかし、2時間だとダンジョンに潜るには短い時間であり、武器の試験運用だとあまりにも短すぎる時間なのである。そして、プレイヤーキルはどのくらい時間がかかるかわからないので、その選択肢は考えない。

さらに、リアルで仲のいい友人の誘いもあってすぐその誘いに乗った。そして、まだ結果を聞いてない残りの1人に勧誘をする。


「もちろんいいよ。アップデートも気になるし。」


もちろん、冬樹も特に断る立裕もないので快く承諾した。

周りを見渡すと、他のギルメンはさっきの話の途中にみんな去っていったのか、その部屋には冬樹たち3人と、アイしかいなかった。

そして朱音は、暇そうにしていたアイに声をかけ街の散歩へ誘う。


「あっ!アイさんもたぶん暇だよね!ねぇねぇ、一緒に散歩に行かない?」


すると、何か操作の途中だったらしいが、アイはその手を止めて、月のように透き通った銀髪をたなびかせながら朱音の方を向いた。

そして、綺麗では表しきれないような美しい声で、その言葉に対し返答した。


「皆さんが行くのでしたら、1人でここに待つのは寂しいですし、是非一緒に行かせもらいます。ただ、もう少し待っていただけると幸いなのですが…。」


少し申し訳なさそうに眉を上げるその表情は、他の人が見たら思わず悶絶していたであろう。

しかし、たびたび顔を合わせ、会話をしていた朱音たちは、少し顔を赤らめる程度でその顔を見つめ、承諾の意を話す。


「いいよ別にそのくらい!どうせパルム君も事務処理があるし、どっちにしても時間は少しかかるから。」


朱音は快くかつ元気よく反応してくれたのをほっとしたのか、とても美しい笑みを浮かべて安堵する。


「ありがとうございます。では、少し待っていてくださいね。」


その様子はちょっと大げさな気がしないこともないが、それでもその美しい顔と声と仕草で上書きされるため、特に違和感は感じずにそのまま時が流れる。



これだけ美しい女性プレイヤーが、難しい理論を利用したりあんな凶悪な兵器や考えるんだから、世界って広いんだなぁ…。


そう冬樹は思い、早く出かけられるようにすぐさま事務処理に取り掛かった。



活発なギルドのマスターって結構大変なんですね…

自分はあんまりMMOとかしたことないんで、よくわかりませんが。

「「「「じゃぁなぜVRMMOにしたのかっ!!」」」」(セルフ突っ込み)

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