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無限にヒトは夢幻する  作者: 雪時雨
プロローグ
4/9

魔法と科学

「敵の上空を取れたみたいね。地上の陽動部隊には感謝だわ。」


澄み渡った上空9000mに、強い意志を秘めながらも凛とした声が聞こえた。


見るとそこには、水色と灰色を基調とした迷彩柄の軍服らしきものを着込み、首には菱形の透き通った赤色の珠核、さらに胸には複数の金銀などに輝く勲章や航空魔導士を示す徽章や記章のようなものをつけている金髪の女がいた。

また、右腕にはおそらくただの個人的趣向で付けたであろう、ピンクと水色で構成された長方形のワッペンのようなものを付けていた。

さらに勲章や記章、ワッペンや珠核の色などに多少の違いはあれど、周りにも同じような見た目の人間が10数人いた。

そしてそれらの手には、それぞれそこそこの大きさの銃や銃剣や剣が握られていた。


「そろそろ陽動部隊の射撃が終わるため、上空からの奇襲攻撃、その後統制射撃を行い、敵の数がかなり減った段階で白兵戦に持ち込みます。今回は殲滅です。」


落ち着いた声をしながら、リーダー格らしき黒髪の男が他のメンバーに再度確認を行った。


他のメンバーと変わらず同じ服装をしているためあまり違いが判らないが、唯一目立つ点を挙げれば、黄色の珠核と、赤と黒を基調としたワッペン、さらに横長の口径で銃床がまぁまぁ大きい銃を持っていることくらいだろうか。


その言葉に対して他のメンバーが全員が頷き、了解の意を示した。


少し経って、先ほどの女が味方の攻撃がもう無いことを確認し、リーダー格の男を見て互いに頷きあった後、下降体制をとった。


「先導は任せてっ!!」


彼女はそう言うと、敵の死角になるルートを通りながら、かなりの速度で敵に向かって下降した。そして、彼女に続いて他4人も同じように突っ込んでいった。



そしてそれから約10秒後、沈黙を破った破砕音と悲鳴につながる。










「なっ!!」


思わず言葉にならない声を出しながら、リーパーは驚きを露わにした。


彼が驚いた理由は三つある。


一つ目は、地上からの攻撃に気を取られていたため、上空からの攻撃に対して不意打ちだったこと。

二つ目は、敵の主戦力が地上付近にあると思い込んでいたが、防御魔法を簡単に破壊したり、自分たちが咄嗟に認知できない速度で攻撃されたことなどから、空中にもそれと同等に近い敵戦力があるということ。

三つ目は、完全に物理貫通防御に特化していたため、上空からの魔導士の魔導刃攻撃に対して弱点と虚を突かれたこと。


「くそっ!!こっちが本命かっ!クソッたれめ!すぐ対魔法防御に切り替えろ!敵の主力は航空魔導士だ!!近接魔法戦闘に切り替えろ!」


悪態をつきながらも、頭をフルに回転させてすぐ打開策を打ち出し、仲間に指示を出す。

その表情には、死んだ仲間に対する同情や敵に対する怒りではなく、焦燥感がただあるのみである。


しかしリーパーを襲ってきた敵は追撃をしてこず、仲間を切り裂いた後、すぐさま垂直に曲がって魔法部隊から逃げるように散開する

そして、そリーパーの的確な指示を嘲笑うかのように、もしくは見計らったかのように、上空から純物理エネルギーの弾丸が降り注ぐ。

せっかく展開した多重対貫通防御を破棄してまで魔法防御に切り替えたが、その努力も虚しく、多くの魔法防御と人の命が散っていった。


それに対して今度は焦燥感ではなく、まるで自分が無力に踊らされているかのように感じ、敵への憎悪の方が勝る。


「いったいなぜそんな戦力が一瞬にして転送できたんだ!ふざけるな!」


そう吠えながら、すぐさま貫通特化の防御を展開する。他の生き残っていたメンバーも、今度はリーパーに言われずともすぐに同様の防御を展開する。


しかしそこは練度の違い、少ない時間の間にリーパーは4重の防御を、他のメンバーは3重の防御を張る。


これだけ見ても、リーパーの魔法練度と実力がわかり、リーダーの位置についているのも納得できる。そして、ほかのメンバーもそれに引けを取らない練度がある。

なにせ、この精鋭魔法部隊でなければ、1重はかろうじてできるか、そもそもすぐに頭を切り替えてきちんとした魔法防御を張れないかものが多いだろう。


リーパーたちは急いで展開したものの、今度は最低でも3重の貫通特化防御を張っているため、先ほどの攻撃が直撃して死ぬことはないだろうと考えた。

しかし油断はせず、先ほど奇襲をかけてきた部隊に対処するため、今度は風の攻撃範囲魔法と水の近接隠蔽魔法を準備しようとした。


敵の弾丸を耐えながら、魔法を準備して次の一手へつなげる…と思っていたが、その期待は儚くも先ほどと同様の弾丸によって散っていった。

弾丸を受けた仲間の方を見ると、先ほどはクモの巣状に魔法防御が割れ、そのまま攻撃を食らっていたのだが、今度は貫通防御が全体的にブレた後割れて、そのまま攻撃を食らい、体から煙を上げながら死んでいた。

しかし、弾丸を受けたもののうち全員ではなく、その中の半数は先ほどと同じで、二枚目までの貫通防御が蜘蛛の巣状に割れたものの耐えており、残りの半分が先ほど示したように、貫通防御がブレた後割れて死んでいた。


ますます状況がわからず、困惑するリーパーであったが、ひとまず水の近接隠蔽魔法は発動させた。

次に風の魔法を展開し、今だ目視できるほど近くにいる、先ほど突っ込んできた敵の部隊に牽制にでもなればと放った。

そして、次に本命の大火力風魔法を放とうとした時、再び弾丸が降り注いで、今度はリーパーの貫通防御に直撃した。

すると、弾丸が一番外側の防御に接触した瞬間に、弾丸がはじけ、それと同時に外から中へと防御がだんだん振動していき、一つ一つ割れていった。


1枚目が割れたときに、その様子を見て本能的に危険を感じたので、それと同時に隠蔽魔法を強制展開し始めた。

4枚目が割れると同時に隠蔽魔法の展開が間に合ったが、さらに咄嗟に手を前で組み、来るであろう攻撃に備えた。

その直後、体全体が激しく揺さぶられ、肌が焼かれるような感覚に見舞われた。

永遠とも思える苦痛の時間を何とか耐え、そのような不快が遠のいていくと、自分の腕が少し焼けていることに気づいた。


あまりの状況に、もはや思考停止しかけた脳は、それでも精いっぱいの力を振り絞って声にしようとする。


「な…んだ…これ…は……。」


彼にとっては長い時間の後、しかし一瞬で理性を取り戻したリーパーはすぐに頭をフル回転させて、状況分析を行う。


これはもしや振動属性の攻撃か!?先ほどと攻撃は同じだったように感じられたが、一体どういうことだ!?物理攻撃に複数の属性は入れられないはず…!

仮に振動属性だったとしたら、水属性魔法を展開したのは正解だったか…。もし展開してなかったら確実に死んでいただろうな…。

だが、先ほどの攻撃は俺が知っている振動属性だけではないはず…いったい何が起こったんだ…。


そのように思案した後、先ほどまで定期的にあった波状攻撃がないことに気づき、ふと上を見上げた。


すると、防郭を張りながら待機していた、先ほど突っ込んできた部隊は隊形を組み始めていた。

そしてリーパーは、目の前の隊形に見覚えがあった。今まで多くの航空魔導部隊と戦ってきたため、その経験はしっかり身についている。


敵が何をする気か理解した後、怒号にも焦りにも似たような声をあげて、他のメンバーに叫ぶ。


「クソッ!!突撃隊形かっ!!突っ込んでくるぞっ!全員魔法防御を全力で張りなおせ!」


しかし、こちらも部隊はすでに壊滅に近く、残っている人間もほとんどが満身創痍となっているため、聞いている人間は少ない。

リーパーを含めた何とか生き残っているメンバーは、最優先で対魔法防御を張り、他の魔法も随時展開していく。


ここでリーパーは疑問に思う。今までの徹底的な波状攻撃に比べて、今回敵が突撃隊形を組んでから時間が空きすぎている。


彼がそう思うのも無理はなかった。なぜなら、実際今までの敵の攻撃間隔は長くて15秒だったからだ。

それに比べて、突撃隊形を組んでからすでに30秒が経過している。


なぜ、そのような隙を敵に与える…!?余裕だからか…?舐めているからか…!?

ハハハ…戦場で舐めるとはいい度胸だ。かなり数は少なくなったが、それでも俺らは一国を代表する精鋭部隊。

そう簡単には死んでやらんよ。力に自惚れた己を呪うことだな!


そんなことを考えていると突撃隊形を取っている部隊に、別の部隊が降下してきて合流した。

その後すぐに、計15人、先ほどの3倍の数の人間が突撃隊形をとり、部隊に襲い掛かってきた。


そして、見事な軌道を描きながら、一人、また一人と確実に仕留めていく。


その洗礼された美しさと、確実に殺す虐殺性が入り混じった光景を見て、リーパーは、


言葉が出なかった。


体が動かなかった。


思考が働かなかった。



それでも意地で魔法を放ち、抗おうとしたした瞬間、



意識が切れた。









SF、ファンタジー、うーん。

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