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無限にヒトは夢幻する  作者: 雪時雨
プロローグ
3/9

感情

「敵の魔導航空部隊がドンドン逃げていくな。あまり深追いはするなよ、罠の可能性もあるからな。俺たちの目的は時間までこの領域の確保だ。敵の進軍ルートを抑えて、到着した味方と一気に大魔法でズバンとすれば、さすがに陸上巡洋艦といえどもパックリ割れるだろうよ。」


そう少し余裕気に話すリーダー格の男は、黒を基調としたローブと黒紫色の帽子で身を包み、手には龍の頭をかたどった杖を持っている。

そしてその男の後ろには、女比率がかなり高い男女が混ざった集まりがあり、あっけなく敵が逃走したことからも、和気あいあいとしながら手持無沙汰そうにしている。

それら全員は空に浮かんでおり、戦闘が終わったためか、だんだんと高度を落とし、今は高度3000mくらいの位置にいる。


本来生身の人間は、2000m~4000mで酸素濃度が足りないため高山病を発症する。しかし、彼らは高度4000m以上で顔色一つ変えずに激しく戦闘を行っていた。

しかし、その状態では酸素濃度は通常の6割を下回り、必ず酸素不足となるはずなので、おそらく魔法か何かで酸素を補っているのだろう。


その集団のうち、1人のピンク色のふわふわコートを着た女が、大きく手を振りながら、リーダー格の男に歩み寄って話しかける。


「流石リーパーさんっすね。第8位階圧縮範囲魔法のビッグウィンドジェイルからの、第10位階重範囲魔法のマテリアルノヴァで敵のそこそこの部隊を一瞬で壊滅させちゃうなんて…。私たちはせいぜい第9位階魔法が限度なので、さすがオーノル王国を代表する精鋭魔法使いさんって感じっすね。」


その言葉に対して、少し嬉しさと、とりあえず目標を達成できそうな安堵感から、思わずリーパーの顔が緩み、その頬には笑いが浮かぶ。

しかし、そこはさすが一国を代表する魔法師。戦場で迂闊になってはいけないと、すぐに楽観的な考えは捨て、冷静かつ客観的に応答する。


「いやいや、君たちも初期偵察や隠蔽魔法をしっかりしてくれてたから、あれだけ効果のある奇襲ができたんだよ。ただ、敵が逃げたということはこの空域を放棄、もしくは増援部隊を送ってくることが考えられる。おそらく後者の可能性が高い。私たちの支援部隊もそれまでには間に合いそうだから、こちらの優勢は依然変わらないだろうが、いつ敵が来てもいいように、常時索敵魔法と防御魔法を展開していてくれ。」


「流石リーパーさんっすね!後のしっかり考えてるっす!うちらも、最後まで気を抜かないよう頑張るっすね!ただ、この機に追撃して敵の航空部隊を全滅させなくてよかったんっすか?」


そのピンクコートの女はさすが!とオーバーリアクションを取った後、絶好の機会を自ら逃したリーダーに対して純粋な質問を投げかける。


「先ほどもいったが、敵の罠の警戒をしてる。前回の大戦では、敵の追撃を積極的に行っていたかなり有名な部隊が、待ち構えていた敵の部隊に左右上下から奇襲をかけられ、全滅したという話が合った。そのため今回は、力を温存することもかねて、こうして安全策をとっている。」


再びピンクコートがオーバーリアクションを取りながら、話をつづけた。


「流石リーパーさんっすね!そういうことならわかったっす。まぁ、うちの魔法部隊はオーノル王国の中でも屈指の実力があるんで、うちの部隊がいなくなったら、きっと幹部らはどれほどうちの部隊が優秀だったかわかって、きっと私たちの宿舎に向けて足を向けて寝れなくなりますっすね!」


ピンクコート女の冗談に、リーパーは思わず笑ってしまったが、柔らかく若干訂正を加えながら、その冗談に言葉を返す。


「ははは。そうならないことを祈るばかりだな。それに、今でも十分足を向けて寝れてないと思うぞ?」


「うちの部隊は、リーパーさん含めてみんな優秀っすもんね!大丈夫っすね!では伝えてきますっすね。」


そう少し自慢げに話した後、索敵魔法と防御魔法の指示を伝えに行くためか、ピンコートの女は再び集団に入っていった。


そしてリーパーは一人になったためか、物思いにふける。


敵の航空部隊、おそらくローリェ権国は魔導主体なので魔導航空部隊は、確かに兵装を見た感じ魔法に対して相性が悪いような感じだったので、撤退はよい判断だった。

しかし、こちらの情報にある限りここの空域は、陸上巡洋艦やその他主要な砲熕兵装の移動ルート上にあるため、敵も死守してでも守りたい領域であったはずなのだが…

もしかすると、こちらの増援が到着する前に大規模部隊を送り込むことができる?いや、現状でそういった高速の兵器の情報はないし、第一大規模になればなるほど動かしにくくなるはずだ。

ではなぜそのような行動を…ゲートで来るにしても魔法反応で先に感知し、ゲートごと破壊できるし、高速で移動してきても必ずこちらの索敵網に引っかかるため、先手はこちらが取れるはず。

さらに言うと遠距離狙撃なども純物理の巡洋艦クラスでなければ、防御魔法を一発で貫通することはできないし…


そう思案した後、何かを思いついたのか、だんだんと顔の表情が曇ってくる。そしてついには、声を荒げて他のメンバーに指示を出した。


「早く索敵方法を魔法探知やレーダーではなく、振動探知に切り替えろっ!!敵は機械を使っててレポートする気だ!」


ここで気づくことができたのは、さすがオーノル王国の誇る一流魔法師といったところか。

しかし、他のメンバーは何を言ってるかわからないと言わんばかりの表情をし、なぜよりにもよって性能に劣る振動探知をするのか、と誰も理解できない状況である。

メンバー誰もが呆気などからしばらく硬直し、振動探知が行われないので、さらに焦ってリーパーは催促する。


「早くしてくれ!おそらく敵は、何らかの純粋な物理的手段を使って、瞬間移動してくるに違いない!タイラー共栄国の上のリーク情報にそんな話があった!」


仲間を動かすため懸命に説明をするが、その努力と天才的な気づきも虚しく、既に仲間の2人が頭と胸を打ちぬかれ、今まさに落ちかけようとしていた。

そして、仲間が2人もやられたこと、相手がいまだに発見できないことなどから、さらにリーパーの焦燥感が増える。


「ちっ!やはり敵はこの領域のどこかにいる!しかも、攻撃は物理属性だ!早く振動探知と防御態勢を整えろ!」


次の指示は、仲間がやられたこともあってかメンバーほぼ全員がすぐに聞き、焦りながらもすぐさま多重防御魔法結界が張られた。


しかし、その中でも死んだ仲間をかなり思っていたある1人は耳をかさず、手をわなわなさせながら、ぶつけようのない悲しみと怒りを言葉にあらわにする。


「あぁ…くそ…メ、メアリーが死んじまった…。クソ…クソ…クソックソクソ!!」


リーパーはそのメンバーの様子を見て、防御結界をまだ張ってないことに気づき、怒号にも似たような声で結界を張るように催促する。


「おいバカ!早く結界を張れっ!さもないと攻撃が当たって死ぬぞ!」


そのリーパーの言葉に我を取り戻したのか、そのメンバーは結界を張ろうとする。

しかし、行動が遅かったため、そのメンバーが結界を張っている途中に、先ほどよりかなり数が多い弾幕攻撃が襲ってきて、その人はもうすでに亡き人となった。


これにはさすがにリーパーも苦渋を隠し切れず、思わず言葉が漏れる。


「クソッ!戦場では感情的になるなとあれほど言ったはずなのに…」


しばらくは敵の弾幕攻撃が続き、先ほどの戦闘とは一変して、魔法部隊は防戦一方となった。初めのころとは打って変わって、メンバーの顔に余裕は一切ない。

そして敵の第三次攻撃によって多重防御魔法が8割削られた所で、味方からの索敵報告が入ってきた。


「リーパーさん!あそこにある樹木付近の振動数がおかしいです。人の有無は判別できませんが、樹木自体の振動数が他と比べて少し異常なのと、樹木付近の地面の振動自体がそもそもありません。」


そう言って、メンバーの一人の男が振動探知して得られた結果を、右手の人差し指にはまっている指輪からホログラム上に映し出して、リーパーへ見せる。

攻撃方向から大体の敵の位置は予測していたが、確実な情報が入ってきたことに対して、素直に嬉しく思った。

リーパーはよくやったと返したが、先ほどまで感じていた、焦燥感と知覚できないところから攻撃されるという尋常ない恐怖から、多量の汗をかいていた。

そしてほかの仲間への情報共有をし、その異常な樹木周辺へ最大火力を放つよう指示を出す。


「あそこの樹木周辺に、自分の持つ最大威力の魔法を放て!」


風雷炎氷水光闇…様々な属性の魔法が放たれて、それぞれの輝きを放ちながら目的地で威力を発揮する。

何も知らない人がその光景を見たら、さぞかしきれいだっただろう。

しかし、着弾と同時に周辺の木々や土を巻き込みながら爆発したため、きれいと言うにはあまりにもほど遠く、迫力がありすぎた。


「敵の魔法反応は…くっ、ないな…」


リーパーが簡易魔法探知を行うが、敵の反応がなかった。

そのため敵が死亡したかと思ったが、そもそも最初の状況から察するに、魔法反応を探知できない装備や魔法を行っている可能性があったため、リーパーは全く気を抜かず次の指示を出す。


「すぐに防御結界を張りなおせ!対物理の貫通に特化だ!さらに、念のため、敵がいた場所以外の全方位を3人一組で警戒しろ!すぐに攻撃魔法が放てるように準備しておけ!」


すぐに、撃たれた味方と、防御結界の壊れ方から敵の攻撃属性を把握し、的確な指示を出すあたり、やはりリーダーというだけある。


そしてリーパーは、味方が防御魔法を発動している間に国の重鎮から聞いていた情報を思い出す。

ローリェ権国は魔導戦力が尋常ではないと。最近は物理戦力の開発が著しいと。敵の精鋭戦力をつぶすためにあるようなω部隊があると。


ここでリーパーは思案する。こちらの魔法師の練度はかなり高く、索敵魔法もしっかりとした上位のものを使っているため、そう簡単には魔法反応を完全に遮断できるものではない。

だから、これだけ発見することができない敵はあまりいなかったし、そうなるとかなり厄介な相手だ…。もしかするとこれが噂のローリェ権国のω部隊なのか…!?



多重対貫通防御結界次々と張られ、迎撃態勢をとった。限りなく長く続きそうに思われた緊張した沈黙の時間だった。


だがそれはほんの一瞬後に、多数の防御結界の破砕音と悲鳴によって終わりを告げた。



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