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皆で果物を食べました

「知らない天井だ…」


幸運(究)スキルのもたらした恩恵を脳内フォルダに保存した俺は個人的に人生で言ってみたいセリフベスト10に入ってる某人造人間パイロットの名台詞を呟く、まぁ知ってる天井なんだけどね、ゼルさん家の天井でしょ?。


「あっ!リュウマさん気がつきましたか!?良かった〜、ゼルさーん!リュウマさん目が覚めましたよ〜」


ベッド傍の椅子に座っていたサヤカさんが叫ぶと台所にいたゼルさんがこちらに顔を向ける、生まれたままの姿だったサヤカさんはゼルさんが用意したであろう白いローブの様なものを身につけている、残念。


「もう!本当に心配したんですよ?いきなりたおれちゃうんですから!」


「えっ?あれはサヤカさんが酒瓶を…」


「『私は何もしてないしリュウマさんは何も見ていない』ですよね?」


ニッコリとした笑顔とは対照的な冷たい声でサヤカさんが囁く。

どうやらサヤカさんにとって裸を見られた事はタブーになっている様だ、お願いだから手に持ってる酒瓶を置いて下さい、凶器イクナイ。


「別に嫌じゃないけど私にも心構えが必要って言うか…」



小声で何やらブツブツ呟くサヤカさんを無視してチラリとゼルさんに助けを求めると目を逸らされた、俺は気を失う直前にとんでもないスピードで玄関から飛び出したゼルさんを目撃している、あれは速かった。


「目が覚めたか、酔い覚ましにリコの実を剥いたからこっち来て食え、サヤカ様もよろしければ如何ですか?」


そう言って何食わぬ顔でゼルさんは林檎の様な果物が盛られた皿を机に置く、皮がウサギさんになっている、この人女子力高いわ。


「あ〜!リコの実だ!私好物なんですよね、まさか死神になってまた食べられるなんて思いませんでした」


「リコの実はサヤカ様の愛された聖なる果物として国中に広まっております、どうぞ召し上がって下さい」


「いただきまーす、ほころでリュウマはんはどうしへこの世界に転生はれたかはかりまふか?」


リコの実を頬張りながらサヤカさんが訪ねてきた、実家のハムスターを思い出した。


「全くわからないんだよなー、あの後気づいたらジャングルにいたし、サヤカさんは心当たりない?」


俺もリコの実を一つ頬張る、少し酸味が強い梨のような味だ、瑞々しい歯ざわりも良い。


「うーんそれが全くないんですよね、私は爆発を起こす前のリュウマさんの部屋に戻れたし、破壊神の気配もなかったんであの世界はもう大丈夫な事は確かなんですが」


とりあえず元の世界は一安心な様だ、しかしそれなら何故俺は戻れなかったんだ?


「他にあり得る可能性だと他の神がリュウマさんをこの世界に呼んだか破壊神が核であるリュウマさんを自分のいる世界に引きずり込んだとかですかね?」


「破壊神は俺にはもう手出しできないんじゃ無かったの?」


「その点は大丈夫です、ただ破壊神は神って言っても意思や知性を持たない神なんですよ、善悪の概念も無くただ世界の核を壊すだけの存在です」


サヤカさんはズズーとゼルさんが入れたお茶を飲みながら目を細める。


「だからリュウマさんが私と契約した事もわからないんですよ、狙うことは出来てもリュウマさんに害を与えられないから心配しなくても大丈夫ですよ」


なるほど、破壊神が俺をこの世界に呼び込んだとすれば今の俺は鉄柵に入ってサメの水槽に投げ込まれた様な状態って事か。


「あの空間は世界の狭間にあるので神々が干渉しやすい所なんです、この世界の神に呼ばれたって事もありえますがそれなら私に何かしらの連絡がある筈なんですよね」


「こういった話は最悪のケースを想定して話を進めた方がいい、破壊神がリュウマの命を狙っていると仮定して考えよう」


俺達の話を聞いていたゼルさんが提案して来た。


「そうですね、私の霊力が戻ればこちらから上司や神界の神々に連絡を取れたりリュウマさんを元の世界に戻す事も可能なんですが」


「上司?」


「はい、私の所属している神界治安管理局の破壊神対策4課の課長です、因みに私は課長補佐です」


ふんす、と鼻息を鳴らし胸を張るサヤカさん、アホの子と思っていたが中々に優秀な様だ。


「神様の世界にもそんな組織があるんだ、その4課には何人位仲間がいるの?」


「…私と課長の2人です」


前言撤回、やっぱりちょっと残念さんだ。


「お前さん達中々に余裕があるな…俺は神界だの世界の核だの話のスケールが大きすぎて少し気後れしてしまうよ」


ゼルさんが疲れた顔で呟く。


「まぁまぁ、話を戻しますね、破壊神が俺を呼び込んだとしたならこの世界にヤツがいるって事になる、サヤカさんは破壊神の気配を察知できるんだったよね?」


「はい、破壊神は世界を移る時その力の大半を消費すると考えられています、この世界に破壊神が居るとしてもすぐにこの世界の核に手を出す事は出来ない筈です」


「それは良かった、俺は世界滅亡の危機だと思って気が気じゃなかったんだ」


ほっと安心した顔になるゼルさん、自分の生まれ育った世界が滅びるかも知れないと知れば不安にもなるだろう。


「ただ逆に力が弱った破壊神を見つけるのは難しいんですよね、さっきから探しているんですが今の所は反応がありません」


そういうとサヤカさんの髪の一部がどこぞの妖怪アンテナの様に逆立ちぴょこぴょこ動いた、そうやってると5割り増しでアホっぽいなー。


「私としては霊力が戻らないとリュウマさんの世界に戻れないし天界とも連絡が取れないのでこの世界の霊力の溜まり場に行きたいなーと思ってます」


「確かに今俺たちができるのはそれくらいしかないな、霊力って溜まり場じゃないと回復出来ないの?」


「ん〜少しずつ回復はするんですがそれを待ってると数十年は掛かりますね、私にとってはそう長くはありませんが生身の人間にとっては長い時間ですよね」


数十年は長すぎる、元の世界に戻る頃には寿命を迎えるかもしれないな。


「霊力って言うのは死んで行った人達があの世に逝く前に現世に棄てて行った力の事なんですよ、その力が信仰の集まる場所に溜まっていって私達天界の神のエネルギーになるのです」


「だから俺の世界で明治神宮に行こうとしていたのか、確かにあそこは都内有数の神社だからな」


まぁその前に全力で自分の欲求を満たしていたけどな、そう言えばあのクレープ代どこから手に入れたんだ?


「信仰の集まる場所ねぇ…、この国で1番だとやはり聖都カルイムズだろうな、ローネスト教の総本山がある都だ」


少し考えてゼルさんが呟いた。


「カルイムズですか〜、懐かしいな〜昔旅の途中で立ち寄ったんですよ、大きな都でした」


「ゼルさん、ここからカルイムズまでどの位で着くかわかりますか?」


土地勘が無い上にこの世界の交通手段も分からないので見当もつかない、ここは唯一今のこの世界の知識を持つゼルさんに聞くのが妥当だろう。



「そうだな…途中魔物の大量発生で関所や海路が閉鎖される可能性もある、運良く行けたとして1年位だろう」


思ったより長くかかるな、しかし今の俺達は他にやれる事が無い


「それに加えてお前さんとサヤカ様の素性がバレると貴族や教会と面倒な事になる、特に教会に知られるとカルイムズへ入る事すら不可能になるだろうな」


「ですね、でもステータスさえ確認されなければ大丈夫なのでは?」


「あ〜、リュウマさん確かにちょっとまずいかも、私の時代から制度が変わってなかったらバレずに行くのは多分ムリ、関所や船に乗る時に身分証明が必要な筈なの」


そりゃそうだ、関所の話が出た時点でもしやと思ったが確かに誰彼構わずノーチェックで通す筈がない、通すならば関所の意味が無くなるからだ。


「身分証明ってやっぱりステータスのチェックだよなぁ〜」


「そうだ、基本的にはステータスのチェックが一般的だ、しかし他の方法もない事は無い」


「えっ!ゼルさん他に方法があるの!?私の時代だと王族や貴族でもステータスはチェックされていたけど…」


サヤカさんの問い掛けにゼルさんニヤリとほくそ笑む。


「お前さん達、冒険者にならないか?」


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