死神はポニテでした
中野区のマンションでタバコの不始末によるガス爆発、住民と見られる男性の遺体を発見、その他に死傷者なし。
何もない空間に浮き上がった映像は俺の部屋で起こった爆発事故のニュースを映し出していた。
「つーか何これ?夢?」
「夢じゃないですよ〜、色々考えたけど楽に逝ける様に爆発事故にしてみました」
隣を見ると先程のセーラー服を着た女の子が立っていた。
「まぁまぁ立話もなんですしお茶でも飲みながらお話ししましょうよ?」
そう言った女の子がパチンと指を鳴らすと何もない空間にソファーと机が現れた。
「ほらほら座って座って」
ソファーに座った女の子がバンバンと自分の横に座る様に促してきた。
「えーっと、俺まだ何がなんだか理解出来てないんだけど」
「それを今からお話ししますね、さぁさぁ」
言うと女の子は俺の手を引っ張り強引に自分の横に座らせた。
ヤバイ、今まで気が動転して気付かなかったけどこの娘すごく可愛い。
真っ黒で艶ある髪をポニーテールにまとめて透き通る様な白い肌、身長は俺より頭一つ分低いくらいかな?少し細めの体系だけど出るところはそれなりに出てる、顔は美人というか可愛い系だ。
セーラー服を着てるって事は高校生?
だとしたらこの状況は非常にまずい、何もない空間でソファーに現役JKと2人きり、世間様に見られると間違いなく死んでしまう、社会的に。
「まずは自己紹介しますね、私はサヤカ=ブラネスカ=ローネスト、ブラネスカ王国の元第一王女で死神歴は210年です、これから末永くよろしくお願いしますね。」
そう言うと満面の笑みを俺に向けてくれた。
死神歴210年って事は年齢的な問題は大丈夫だな、良かった。
ん?なんか今変なワードが色々と聞こえた様な。
「あの〜、良かったらお兄さんのお名前も教えて貰えませんか?」
俺の顔を覗き込む様にサヤカさん?が話しかけてきた。
「ああ、ごめんちょっと考え事してた、俺は中村竜摩、歳は27歳、九州出身で大学から東京に出てきてそのまま就職、仕事はゼネコンの下請けで現場監督をやってるよ。趣味は映画鑑賞かな?就職してからは忙しくて全然映画館にも行けてないけど。」
「なんて呼べばいいですか?ナカムラさん?リュウマさん?」
「呼びやすい方で呼んでもらっていいよ、っていうか俺は死んじゃったの?」
「はい、私が殺しました、タイムアップ直前で破壊神の気配を察知してみたらリュウマさんを見つけて、本当に危なかったです。」
やっぱり部屋でのガス爆発は夢じゃなかった、つーか殺した相手にニコニコしながら私が殺したって何?この子サイコパス?
「あ!まず謝罪するべきでした。いきなり殺してしまって本当にすみませんでした」
そう言うとサヤカさんは深々と頭を下げた。
「えーっと言い訳と思われると思うんですけど私がリュウマさんを殺さなくてもすぐにリュウマさんは破壊神に殺されてました、あの世界の核だったみたいなので」
「破壊神?核?なんで俺がサヤカさんやその邪神ってのに命を狙われる事になったか教えて貰える?」
あっけらかんと俺を殺した事を告げたサヤカさんに怒りは湧いてこなかった、というかサヤカさんに殺されて良かったと思える安堵感?のような感覚を覚えている自分が不思議だった。
べ、別にドMって訳じゃないんだからね!
「はい、まずは破壊神っていうのは名前の通り破壊する神の事です、今回破壊神が壊そうとしたのはリュウマさんの住んでいた世界そのものでした。」
うん、予想通りなんかすごいファンタジーな話になってきた。
「世界そのものを壊す為にはその世界の核を破壊神自ら破壊しないといけないと言われてます。」
「その核が俺だったって事?」
「その様です、世界の核を察知する能力は私達死神にはありません、幸い破壊神の気配を感じとる事はできるので今回は破壊神がリュウマさんを殺す直前で先回りできたってわけです。」
「今回はって事は破壊神に滅ぼされた世界もあるって事?」
「はい、残念ながら…」
そういうとサヤカさんは俯いてしまった。
「でもリュウマさんの世界は救われました、その世界が無事な場合死神によって命を奪われた人間の死は無かった事にできます。」
「つまり俺は生き返れるって事?」
「その通りです、そして破壊神は1度死神が手をつけた核に対しては手出しができません。」
「あー良かった、つまりは何もかも元通りって事か。」
「はい、この度は本当に申し訳ありませんでした。生き返った後はお詫びとして最大級の神々の祝福がもたらせられますので順風満帆な人生になると思いますよ。望んだ事は全部現実になるって位強力な祝福って話です。」
「マジか!なんか凄い得したんじゃないの俺?これで億万長者、一生ぐーたら生活も夢じゃないね!」
結局俺は何も損せずに神々の祝福?ってのが貰えるみたい、いや〜急に人生バラ色になったねこりゃ。
「ちなみに前回生き返った核の方はその世界で一番大きな国の国家元首になってハーレムを築いたそうですよ。」
「夢が広がるね〜、じゃあ早速生き返らせて貰えるかな?」
「かしこまりです、後私はリュウマさんの奥さんって事でいいですか?それともまず恋人同士からにします?」
ん?またなんか変な事言ってるよこの子。
「まだ言ってなかったですけど私達死神は一度命を奪った相手が生き返る場合、自らの全てを相手に捧げる事になってます」
「全てを捧げる…」
つまりサヤカさんとあんな事やこんな事、夜の運動会や夜のプロレスごっこなんかも…
「はい、全てです」
俺の邪な妄想に気づいてか少し恥ずかしそうに目を伏せるサヤカさん
「いやいや、幾らなんでもそりゃあ重いって、サヤカさんだって好きでもない男と一緒になるって嫌でしょ?」
「全然そんな事ありませんよ、これでも私神様ですから寿命は長いってか無限なんです、リュウマさんの世界の寿命って長くても100年とかでしょ?そのくらい私にとっちゃあっという間ですよ。」
「あ、祝福でも不老不死にはなれないんだ」
「不老不死って生物としての理から外れてますからね」
「そりゃそうか、残念だけどしょうがない」
「それに私リュウマさんの世界に憧れてたんですよ、原宿?って所でクレープ?っていうのたべてみたいです」
目をキラキラさせながらサヤカが鼻息を荒くしている。
「まぁサヤカさんが一緒にいていいって言うなら俺としても嬉しいよ」
「じゃあ決定ですね、細かい事はリュウマさんの世界に戻ってから考えましょー」
「よし、これからよろしくなサヤカさん」
「こちらこそ、リュウマさん」
お互い見つめ合い握手を交わす、改めて可愛いなと見とれてしまう。
「ではバラ色の日々にいざ出発!」
サヤカさんがそう叫ぶと俺の視界は光に包まれた。