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黒雲の剱(旧ブログ版ベース)  作者: サッソウ
第7部 封石篇
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総集篇Ⅶ

 驪龍(りりゅう)戦から、すでに2ヶ月が経過。2ヶ月もあれば、イオと何度も話をして、打ち解けてはいるけれども、想定よりも長い日々をキョクホ島で過ごしている。

 キョクホ島に向かう前、ヤイバ達は復興を手伝うため、先に島へ帰ることにした。つまり、島々の龍に関しては、ケンとアキラ、イオ、マグネの4名だ。ただ、マグネは通常の仕事と平行しており、常にいるわけでは無い。度々、本土へ戻っている。


 髑髏島。ザザアによる被害が大きく、多くの国が壊滅的になった。島を大きく囲う壁は、爆弾による破損以外、損害は無い。復興作業は、自国の被害も大きい發達(はったつ)の国が先導していた。国も支援し、ダイナミックモノレール株式会社が、モノレールのスピーディーの復旧と延伸工事を行い、各国の物流経路を整える。モノレールのため、積載量に制限はあるものの、モノレール用の貨物車を牽引して、物資を運搬しているとのことだ。

 単独で修行をしていたハガネのもとへ、エナが来訪し、復興の協力を話す。しかし、ハガネが拒否するため、ヤイバから聞いた伝家の宝刀を抜く。

「モッゼ長老からの命令」

「それをどこで聞いた」

 モッゼの名前を出す手段をどこから聞いたのか。ハガネはそれを問うが、エナはしらけて

「ううん。本人から」

 知らないフリをした。ヤイバといい、ハガネもモッゼ長老には頭が上がらないようだ。それも、かなり……。


    *


 キョクホ島。8日前に、アキラとケンは許可を得て、神社の宝物庫を探し、封石を見つけた。封石かどうかのジャッジは、イオの力でできることが分かり、準備は出来ていた。

「あの蒼い龍は、”朝虹(あさにじ)”って呼ばれていたらしい」

 5日前に、マグネが龍に関して、旅館で説明していた。

「龍には、それぞれ別名で”虹”という意味の言葉が当てられている。昔の人が、まるで大きな虹に見えたと、文献に残っていたらしい」

 マグネの情報は、すべてグーヴ中尉の調査結果である。だから、聞いた以上のことは知らない。

 龍へ直積的な攻撃をすること無く、半時間ほどで蒼い龍”朝虹”が落ち着き、ケンが封石を蒼い龍に近づける。すると、驪龍ときと同じように、光に包まれた。封石に吸い込まれた光。気付けば、器となる少女が倒れていた。

 青龍の器は、アーリスという女の子だった。旅館の女将が手当をし、旅館の空部屋へ運んだ後、ケンが呟くように

「これって、毎回1人ずつ……」

「そういうことだろうな……」

 おそらく、同行者が増えることになる……。アキラも苦笑いだ。


 ミケロラ、20歳。8月22日に、転機が訪れた。

 老店舗の喫茶店、"サブレ"。そこは、ドヌー・ンドラが経営しているお店。そのサブレがアルバイトを募集しており、チラシを貼っていた。そのチラシを目にしたミケロラは、サブレに駆け込んだのだった。

 ミケロラが23歳のときだった。ドヌー店長が倒れたのだった。

「甘いものを作ってくれないか? 最期の食べ物。そうだな……、私の息子がパティシエをやっていてな。君と一緒に何か作ってくれないか?」

 ケーキとモンブランはモルートが作り、パフェはモルートに教わってミケロラが作った。ドヌーは、全てを笑顔で食べ、

「美味しかった。ありがとう……」

 そう言ってベッドで横になって数時間……。静かに息を引き取ったのだった。ニテス医師によると、いつ息を引き取ってもおかしくない状況下で、2ヶ月の間、生きることを頑張れたのは、ミケロラとモルートの料理を待っていたからではないか、と言っていた。

 ミケロラは店を継ぎ、メニューに"ドヌー's パフェ"を加えて、営業再開。その後、さらに成長したモルートが店を継ぎ、ミケロラからバトンを受け取ったのだった。

 ミケロラは、神託の国のギリシエ村に戻り、パティシエにはなろうとは思わなかったが、ドヌーが食べた後の笑顔が忘れられずにいた。それから数年経ち、ケン達と旅をした時、ファクトリーシティで思わぬ出会いがあった。立ち寄った喫茶店で、メニューの1つ"ドヌー's パフェ"を見つけた時、ミケロラが決心したのだった。(まずはパフェを)と。

 この時があったからこそ、"パフェ専門店 ミケロラ"が誕生したのだった。もちろん、パフェ専門店にも"ドヌー's パフェ"があるのだ。


 カルト島。メンバーは引き続き、ケンとアキラ、マグネ、イオ。さらに、アーリスを連れて、上陸。今回は上陸して早々に燭竜(しよくりゆう)が出現した。

 タウン島。朱色の龍、朱竜(しゅうりゅう)が低空飛行し、街を縦横無尽に駆ける。しかし、少年たちの活躍により、龍は封じられた。少年の名前は、ブレイヴ。仲間であるフューラーやレッグ、ミールと協力し、封石が輝いた。住民の避難は、陽光の国で新たに加わったメンバー2名、ガガンとアロナが安全に誘導させたことで、人的被害はゼロだった。

 さらに、シュズ島へ上陸。朱竜の器が同行していたこともあり、緑色の龍、虯竜(きゅうりょう)がすぐに現れた。タウン島での戦闘経験から、苦戦はしたが、こちらも人的被害はゼロで封じることに成功した。

 ケン達はニュージ島にて、黄色の龍、螭竜(ちりゅう)と戦闘を繰り広げ、こちらも人的被害を出すこと無く、封じることに成功した。


 各チームが島々で活躍する頃、ドンムール帝国では燕計画からの新たな方法を模索していた。

 燕計画は、燕のように国勢が冬を迎え、感情を失った人々を島々に選別して移住させ、感情というものがまた芽生え、国勢が春になればまた本土に戻ってくる予定だった……。しかし、国は変わり果て、ノアシー達は為す術がなかった……。


 さらに、龍の封印は進む。ブレイヴ一行が、イワハ島で白い龍、雲竜(うんりゅう)を人的被害なしで封じることに成功。当初、10の島と言われてどのくらいかかるか分からなかったが、このまま順調に行けば、出だしに時間がかかったものの、加速的に終わりそうだ。


 バクフ島。上陸して早々に、幕府の役人に密航者として捕らえられ、毒竜との戦闘ではマグナが負傷した。封印に成功するも、

マグネは、本土に入院。次のパニニア島では、ケンとブレイヴ達による連携で、前回の反省を生かしつつ、七色竜、虹竜(こうりゅう)を封じた。

 これにて、9つの島の龍を封印した。最後は、自分達の故郷である髑髏島である。


 トニックが自身の命を引き換えに、産んだのがフォルテだった。通常、数匹産むといわれているが、産まれたのはフォルテだけだった。フォルテは、次第にニンの言葉を忠実に守るほど、成長していた。危険を伴うため、旅に同行する回数は少なかったが、最近は一緒に過ごしている。ヤイバによると、何かあれば、ニンをフォルテが守るほど。そんなフォルテが、龍の器であった。

「龍が何かを言ってる……」

「龍が?」

 ケンが確認するとイオは頷いた。ケンはイオの隣に移動して、イオの肩に手を置く。それを見たハガネは

「何やってんだ?」

 それに答えたのはアキラだった。

「あれで龍と会話ができる。まぁ、それが出来ると知ったのは、1個前のパニニア島のときだけどな。あとは、イオの成長もあるし、場数を踏んだからかもな」

 しばらくすると、龍が光に包まれ、器であるフォルテの姿に戻った。もはや定番となった上空からの落下は、ブレイヴがキャッチし、怪我はなかった。

 一連の流れを見たハガネは

「驪龍のときは、ボロボロだったのに、スムーズにいったな」

「ハガネ。簡単に言うけど、いろいろ大変だったからな」

 アキラが苦労したことをアピールするが、ハガネは「そうか」とあしらった。


 昨夜から降っていた雨が上がり、泥濘(ぬかる)んだ地面に出来た水溜まりに、青空が映り込む。爽やかな風が吹くと、若葉からは雫が落ちる。空には虹が架かる。

 クーリック村の復興は順調に進み、ケンとアキラ達をはじめ、多くの人が協力して、思い出の道場を復活させた。新築で木々の香りを感じる。なお、道場の設計は、亡きルティスによるものだ。

 セーミャとも久しぶりに会い、島々を巡った話で盛り上がった。そんな場で、ヤイバがある情報を話す。 

「情報屋から仕入れた話なんだが、黎明劔隊(れいめいつるぎたい)が復興活動している中、逢魔劔隊(おうまつるぎたい)が水面下の活動に切り替えているって話と、炎帝釖軍(えんていかたなぐん)の解体の話、扃鎖軍(けいさぐん)の元領地の話がある」

 黎明劔隊は、カクゴウとヤミナをトップする光明劔隊の片割れである。逢魔劔隊は、ローズリーが死亡した後、ポルラッツがトップとなっていた。

「3つの話は、密接に関連するんだが……。まず、逢魔がポルラッツの指示で、炎帝と対峙したらしい。時期的には、島巡りを始めたころだろうな。炎帝を狙ったのは、ポルラッツが何かしらの情報を手に入れて、対処する必要があったからじゃないかと……。臆測みたいな情報しかないが……」

「本人から聞ければ、一発だろうな。ただ、どこにいるか……」

 アキラはそれほど重要視せずに、聞き流す。

「炎帝が解体した理由は、逢魔による侵攻と内部抗争って話だ」

「内部抗争?」

 ケンが聞き返すと、ヤイバはジュースを注ぎ直して

「それが、逢魔の持っていた情報かもしれない。たぶんな」

 先ほどから黙って聞いていたセーミャだったが、

「たぶんとか。臆測とか。情報屋から仕入れた割には、曖昧な内容だけど、大丈夫?」

「大丈夫。自分の目で確かめるから」

 ヤイバは自信満々に言うが、セーミャは呆れてため息をついた。


 国王からの調査依頼で、ブレイヴとケン、アキラ、ヤイバは、宮殿の地下へと進む。すると、牢屋のような場所に出て、何かが衝突して鉄格子が壊れる。

「誰だ!」

 ランタンに照らされたのは、人間ではなかった。2つ大きな牙を持ち、狼や狐、獅子、狩猟豹(チーター)等の複合だろうか。部分部分似ている。さらに、大きな牙の片方が折れている。

 その姿を見て、ブレイヴとケンが剱を鞘から抜こうとしたが、ヤイバとアキラが正面に立ち、2人が同時に剱を構える。まるで、2人は手を出すなと言わんばかりである。

「こんなところにいたとはな……」

「道理で、会わなかったわけだ」

「「キバ!」」

 2人は同時に怪物の名を叫び、駆け出す。

 怪物は、ヤイバとアキラを見て躊躇無く襲いかかる。ヤイバとアキラは、襲いかかる爪を剱で弾き、真剣な眼差しで怪物から視線を外さない。

 ヤイバとアキラの健闘により、落ち着いたと思われたが、キバに不穏な動きが。アキラとヤイバは、気付いていない。 

 ケンが咄嗟に叫ぼうとしたとき、一瞬既視感を覚える。同じようにヤイバが余所見をしたあと、何かが襲った。それを自分が見ていた。ただ、それがキバでは無いのは確かだ。ケンは既視感で自分の世界にいたが、首を横に振って我に返り、

「ヤイバ、まだだ!」

 ケンの叫びに、ヤイバとアキラがこっちを見てからキバに気付くが、このままだと間に合わない。怪物の大きな口、鋭い牙がヤイバの方を襲う。ケンはシルバーソードを鞘から抜き、白雷斬により、怪物の大きな牙がひとつ折れ、倒れる。折れた右の牙は、床に転がる。

「ごめん……。手を出した」

「いや、俺が過信してた……。というよりも、自分がなんとかすべきだと思ったことが間違いだった……」

 ヤイバは、ライトニングソードの力を出した影響で、体力を大きく削り、その場に座り込む。

 アキラとヤイバは黙り込み、倒れた青年のキバを見る。いつの間にか、人間の姿に戻っている。アキラはキバの容体を確認し、少し安堵した。

 一方、場を離れていたブレイヴが戻ってくると、生存者は誰1人としていなかったことを、ケンにだけ告げた。怪物化したキバによるものか、扃鎖軍(けいさぐん)によるものか分からない。しかし、老若男女の多くの亡骸があったそうだ。


 意識を失ったキバは、ルトピア中央病院へ搬送された。アキラとヤイバは付き添いで。多くの亡骸については、ケンとブレイヴが国王へ報告し、キバやアキラ、ヤイバには伝えなかった。国王様も、亡骸について身元を確認するまで公表せず、秘密裡に調べるそうだ。

 それから時が過ぎ、ザザアと扃鎖軍による被害から復興する各国だが、それは束の間の平和であった……


<第84章までに登場したキャラなどの紹介>

 77章までに登場したキャラについては、追加情報があれば記載。


・青龍

 別名は朝虹。器は、アーリスという女の子。


・燭竜


・ドヌー・ンドラ

 ミケロラが20歳前半にお世話になったアルバイト先の店主。老店舗の喫茶店で、名前は"サブレ"。癌により他界。


・モルート

 ドヌーの息子。昔、ドヌーと店について揉め、飛び出した。ドヌーの店はミケロラが継ぎ、メニューに"ドヌー's パフェ"を加えて、営業再開。その後、さらに成長したモルートが店を継ぎ、ミケロラからバトンを受け取ったのだった。


・ミケロラ

 パティシエにはなろうとは思わなかったが、ドヌーが食べた後の笑顔が忘れられずにいた。それから数年経ち、ケン達と旅をした時、ファクトリーシティで思わぬ出会いがあった。立ち寄った喫茶店で、メニューの1つ"ドヌー's パフェ"を見つけた時、ミケロラが決心したのだった。(まずはパフェを)と。この時があったからこそ、"パフェ専門店 ミケロラ"が誕生したのだった。もちろん、パフェ専門店にも"ドヌー's パフェ"がある。 


・朱竜


・虯竜


・螭竜


・ワイキ

 カナディアと無事に結婚。


・雲竜


・徳河 家竪

 江都幕府のトップ。


・舞花

 10歳の少女。農民。両親が、役人に殺され、現在は叔母の家で生活。毒竜の器だった。


・藐禰僧侶

 マグネ本人。


・虹竜


・ダルク長老

 趣味の掘鑿で偶然にも源泉を引き当て、リャク村が温泉街へと変貌していた。


・フォルテ

 トニックが自身の命を引き換えに、産んだ子犬。通常、数匹産むといわれているが、産まれたのはフォルテだけだった。次第にニンの言葉を忠実に守るほど、成長していた。龍の器だった。


・キバ

 宮殿の地下にある牢獄に閉じ込められていた。ヤイバの入手した情報によると、炎帝釖軍と対峙したらしい。


・逢魔劔隊

 ローズリーが死亡した後、ポルラッツがトップとなっていた。


・亡骸

 怪物化したキバによるものか、扃鎖軍によるものか分からない。しかし、老若男女の多くの亡骸があったそうだ。考えたくはないが……もしかすると、その中に……。



総集編を作るのに、時間がかかりすぎだな……。一体、何日かけてるのやら。

さて、いつかやらねばと後回しになってましたが、12月1日の全作品同刻更新に向け、なんとか間に合いました。本作は、最後まで書くつもりですが、他作品を優先しており、第八部はかなり後になるかなと思われます。

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