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黒雲の剱(旧ブログ版ベース)  作者: サッソウ
第1部 再出発の旅篇
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第9章 遅い返事

 リャク村に着いてすぐに長老探しを開始。時間が(さぞ)かしかかることだろうと思っていたが、長老を見つけるのはとても簡単だった。何故なら、村の人口が29人と余りにも少なかったからだ。こんな人数で書物の管理なんて出来るはずがあろうか。 

「長老、実は折り入ってお願いが」

 ヤイバが言い切る前に

「ん?」

 どうやらダルク長老は耳が遠いようだ。

「"黒き鳥"について知ってますか!?」

 ニンが大声で聞いた。

「"黒き鳥"か……。それは太古の昔、三人の剱使いが伝説剱・レジェンドソードで怪物を撃退したという話がある。大地を震わせ、大波を起こし、野山を焼き払い、大勢の人々の命を奪った怪物の名だ。この話が有力……だが、ある組織が報告したものにもう一つある。25年前、3人の剱使い"ポルラッツ"と"カクゴウ"、そして"ヤミナ"がレジェンドソードである"ライトニングソードや"シルバーソード"、"フラッシュソード"、"ゴッドソード"、"フェニックスソード"などで怪物を撃退した。そして、風山(ふうざん)に怪物を封印した」

「後者の方が鮮明ですね」

 ケンが言うと、ダルク長老は

「後者は私の息子が情報屋をしていてな。その息子が手に入れた情報なんじゃ」

 どう考えても明らかに、後者を信じるだろう。しかし、25年前は最近……。何故、覚えていないのだろうか?

「記憶を抹消したか?しかし、こんな使い方して、一体、何に……」

 ハガネがそう呟いた。しかし、まだそれが正しいとは限らないのだ。臆測(おくそく)でしかない。そんなことをして、何の利点がある?

「情報屋か。書物、関係ないな」

 アキラが頬を掻きながら呟いたのが聞こえたのか

「時代は常に流れておる。書物がすべて正しいとは限らないし、その逆も然り。周知の真相と実の真相は異なることが多い。どちらも真実となる場合もある。故に、いつなんどきも情報は大事なのだ」

 ダルク長老の言葉に、誰も何も言わなくなった。結局は、自分たちで探さなければならないのだ。

「人から得る情報は徐々に装飾されていく。信憑性は落ち、小さな飾りであった嘘が大きくなり、次第にそちらが周知の真相となる。実の真相がつまらぬものや拍子抜けするようなことであればあるほど、その事柄を彎曲(わんきょく)させて相手へ話すなど、もはや当然のことのようである。真実はそう容易く得られるものではない。情報を見極め、己を信じて進むしかほかなし」

 何とも言えない空気が漂う。そんな中、ケンは

「黒き鳥と伝説の剱について、たとえ信憑性が低くても構いません。教えてください」

「今から話す内容には、真っ赤な嘘が含まれているかもしれぬ。すべてを鵜呑みにせず、見極めることが大前提であることは忘れるな」

 ダルク長老はそういって、いくつかの情報を教えてくれた。だが、それは明らかに嘘であろうと思われるものから、本当であるかもしれない情報まで。所詮は、"かもしれない"としか言いようがなかった。

 話が一通り終わった頃、外でこれまで聞いたことがないような短い爆発音が轟く。いわば、銃声である。

「何だ!?」

 ケンらが慌てて外を見ると、後ろ姿で雷のようなマークが見える。

「雷霆銃族。元窃盗団の集まりじゃな」

 ダルク長老の言うとおり、遠くに雷霆銃族に属す者が8人ほどある民家を囲んでいる。

「あの家には誰が!?」

 ケンが慌てて問うもダルク長老は、

「空き屋ではあるが……」

 もし空き家に人がいれば大変なことだ。ケンが長老の家から飛び出そうとすると、ハガネがドアの前に立ち

「無謀だ」

「でも」

「飛び道具に敵うわけないだろ」

 剱と銃。相手になるわけがない。

「この家に来ることも考えられる。2階に上がり、洞窟を進め」

「長老はどうするの!?」

 セーミャが心配すると

「いざというときは、避難出来るように考えておる。そうしなければ、こんなに長生きもせんわ。趣味で洞窟をいくつも作っておるからな」

 さらっと凄いことを言った気がするが、今はそれどころではない。2階に上がると、大きな横穴があった。ご丁寧にも立て看板で”火焰(かえん)の神殿へと続く道”と書かれていた。

 階段の下から、長老が誰かを呼ぶ声があり、ケンが振り向くと

「お前さん、これを持って行きなさい」

 そう言って託されたのは一冊の古書だった。

「これが役立つときが来るであろう。ただ、……そのときが来ないことが一番なんじゃがな」

 ケンはアキラ達を追うように洞窟へ。


 洞窟の距離は想像以上だった。本当に長老が自分で掘り進めたのか疑問に思う頃、後方で銃声が何発か聞こえた。

セーミャは耳を押さえて座り込み、アキラは足を止めた。

 それを見かねたケンは

「ヤイバ達は先に行ってくれ。後から追う」

「ごめん……」

 セーミャが謝るが、ケンとアキラは優しく声をかけた。それが一層セーミャに重く責任を感じた。足手まといになってるんだ、と。

 重い足取りと空気が漂う中、アキラは

「ケン、お前なんか変わったな」

「急に何だよ」

 2人の会話を邪魔しちゃいけないとセーミャは相槌さえ打たず2人の少し後ろを歩く。

「一騎打ちのことは当時知ってた」

「遅い返事だな……」

 ケンはアキラと顔を合わさない。道場で再会したときの会話が今になって返ってきた。

「あの時、何を考えていたんだ?」

 アキラの言う"あの時"は、どのときか。いずれにせよ、ケンは無言だ。

「修行していた時から思っていた……。お前、変わったなって。今でもカクゴウに復讐したいと思ってるのか?」

 アキラはその質問を半分自分にも問いかけるような言い方だった。

「昔はだけど、……だけど、一騎打ちのとき……復讐するどころか勝つことに必死だった。カクゴウは強いよ」

 セーミャは、このときアキラが唇を噛みしめていたの見てしまった。アキラの両親と妹はかつて光明劔隊に殺された。ケンが復讐をやめたとしても、アキラはどうだろうか。

 少し間があった。その間をケンはどう捉えたのか。それらの返事は、さらに時間がかかりそうだ……。

 神殿の入り口まで、終始無言であった。入り口近くで

「あっ! 来たよ!」

 ニンとミケロラが3人をお出迎え。ヤイバとハガネは何故か周囲の岩を一カ所に集めていた。

「伝説の剱、あったよ」

 ニンが指さしたのはほぼ頭上だった。ヤイバは岩を剱の丁度真下に運びながら

「フェニックスソードだ。おかげで気づかずに神殿を一周したよ」

 頭上5メートルはあるだろうか。天井にやや斜めで突き刺さっている。

「2人も手伝ってくれ。何か当てて落とすと衝撃で欠ける可能性と何より剱が落下するんだ。危ないだろ。仕方なく、積んでるって訳だ」

 ヤイバは適当な大きさの岩を見つけては運ぶを繰り返し、ハガネは崩れた壁の一部を程ほどの大きさに砕いて運ぶ。半分、投げてるけど。

 地味な積み上げ作業は思いの外時間がかかった。ケンやハガネが上ろうとすると、岩がすぐに崩れてバランスを崩しやすく登り切れない。見かねたニンが、ミケロラの抑止を振り切り、全員が

「危ない!」

「やめておけ!」

その声も聞かず、崩れやすい岩山を登り、フェニックスソードの柄を掴む。その瞬間、大きな音を立て、崩れていく。ニンは剱を掴んだまま宙ぶらりんになると、天井から抜けて落ちる!

 ケンとアキラ、ヤイバ、ニン、ミケロラが動くも崩れ落ちる岩が邪魔で足止めをくらい、最も近かったハガネが

「こっちに来い」

 とは言っても、ニンは空中ではどうにも出来ず、ハガネが前走り込み両腕でニンを受け止め

「足場がっ」

 受け止めらたかに見えたが、その直前直後にハガネの足場が崩れて後ろへ仰け反る。

「あとは自分で着地しろ!」

 ハガネは、キャッチしきれていないニンをそのまま投げるような形へ。

「おい!」

 投げられたニンを見て、ヤイバがダイビングするが

「痛い!」

 土埃が収まると、倒れたヤイバの背中の上に、ニンが仰向けにフェニックスソードを抱えて倒れている。ハガネは瓦礫に半分埋まりかけだ。3人とも意識はある。

「セーミャ、救急箱を頼む」

 ケンはそう言って、ハガネの救助へ。アキラはヤイバとニンの方へ。ミケロラはセーミャの手伝いに。

「本人が一番分かっているだろうから言わないが、その剱はお前の責任で持っとけよ」

 ハガネはそう言うが、セーミャに傷口を包帯でグルグル巻きにされており、何とも言えない。「おい、巻きすぎだろ」「念のため」とだけセーミャ。

「あんまり無茶しないでね」

 ミケロラがニンの鼻に絆創膏を貼りながら言うと、ニンは素直に「ごめんなさい」と謝った。

 アキラは少し笑いながら

「え? 今のって"あんまり無茶"レベルなのか? 十分無茶レベルだろ」

「僕らがやろうとしてたことに変わりはないし、何よりこうなることは積む前から分かってたことだしさ……」

 そう言って、ケンの方がニンに謝っていた。


To be continued…

相変わらず、殆ど加筆修正してない話は、当時のままで展開が早くなるな、と。

章タイトルを、漢数字から算用数字に変更しました。

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