表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒雲の剱(旧ブログ版ベース)  作者: サッソウ
第7部 封石篇
89/91

第83章 虹霓の剱 ~雨上がり~

 昨夜から降っていた雨が上がり、泥濘(ぬかる)んだ地面に出来た水溜まりに、青空が映り込む。爽やかな風が吹くと、若葉からは雫が落ちる。空には虹が架かる。

 クーリック村の復興は順調に進み、ケンとアキラ達をはじめ、多くの人が協力して、思い出の道場を復活させた。新築で木々の香りを感じる。なお、道場の設計は、亡きルティスによるものだ。

 セーミャと久しぶりに会い、島々を巡った話で盛り上がった。完成を祝したパーティに、ヤイバが遅れてやってくると

「前は、もう少し広かった気がするが?」

 アキラは、ヤイバにジュースを注ぎながら

「前も今回も、同じ設計だぞ」

「増築した方がいいんじゃないか?」

「そんなことないよ。この広さで十分だよ」

 ケンがそう言いつつも、アキラはわざとコップの縁ぎりぎりまで注いで、

「そんなことを言うなら、出禁だな」

 そんな冗談交じりに乾杯をして、ヤイバが本題を話す。

「情報屋から仕入れた話なんだが、黎明劔隊(れいめいつるぎたい)が復興活動している中、逢魔劔隊(おうまつるぎたい)が水面下の活動に切り替えているって話と、炎帝釖軍(えんていかたなぐん)の解体の話、扃鎖軍(けいさぐん)の元領地の話がある」

 黎明劔隊は、カクゴウとヤミナをトップする光明劔隊の片割れである。逢魔劔隊は、ローズリーが死亡した後、ポルラッツがトップとなっていた。

「3つの話は、密接に関連するんだが……。まず、逢魔がポルラッツの指示で、炎帝と対峙したらしい」

「それ、いつの話だよ?」

 そんな話は聞いたことがないため、アキラが時期を確認すると

「時期的には、島巡りを始めたころだろうな」

 それなら知らないのも無理はない。

「炎帝を狙ったのは、ポルラッツが何かしらの情報を手に入れて、対処する必要があったからじゃないかと……。臆測みたいな情報しかないが……」

「本人から聞ければ、一発だろうな。ただ、どこにいるか……」

 アキラはそれほど重要視せずに、聞き流す。

「炎帝が解体した理由は、逢魔による侵攻と内部抗争って話だ」

「内部抗争?」

 ケンが聞き返すと、ヤイバはジュースを注ぎ直して

「それが、逢魔の持っていた情報かもしれない。たぶんな」

 先ほどから黙って聞いていたセーミャだったが、

「たぶんとか。臆測とか。情報屋から仕入れた割には、曖昧な内容だけど、大丈夫?」

「大丈夫。自分の目で確かめるから」

 ヤイバは自信満々に言うが、セーミャは呆れてため息をついた。

「それと、扃鎖軍の元領地の話で……。なんでも、捕虜収容所があるとか。それも、宮殿の地下と言われていて、近々、国王が勇者と伝説の剱使いに依頼を出すらしい」

 それを聞いたケンは、飲んでいたジュースが気管に入って()せる。アキラとセーミャが「おい、大丈夫かよ」「ケン、大丈夫!?」と気遣い、ようやく喋れるようになったケンは

「そんな話、聞いてないんだけど……」

「だから。近々依頼があるらしいぞ」

 言うまでも無く、勇者とはブレイヴのことであり、伝説の剱使い

とはケンのことである。

 静かになって気付いたが、段々と外が騒がしく、いろいろな人の声が耳に入る。

「なんか、外が賑やかだな」

 ヤイバがそう言うと、3人は互いに顔を見て表情だけで会話して

「ヤイバ、今の話?」

 アキラが外を指さしながら確認すると、ヤイバが頷いた。

「情報屋から仕入れた情報なんだ。期限が切れる前に使わないとな」

「じゃあ、今日来るって知ってたの?」

「15分ぐらい前に、道端で知った」

 ヤイバは笑顔で言うが、3人は黙って重い腰を上げて道場の外へ。ヤイバは、そのまま置いてきぼりだ。


 外に出ると、異様な人だかりができていた。ケンたちは、しばらく待っていると、少しずつ人が離れてなんとなく状況が見えてきた。

 アキラはボソッと「握手会とサイン会だな」

 セーミャは心配そうに「大変そう……」と。

 ケンは落ち着いた頃を見計らって、人だかりに近づくと

「ちょっと待って」

 と、サインや握手対応を笑顔でこなす、勇者ブレイヴ。ケンは頷いて、もとの位置までバックする。

「人気者って大変そうだな」

 と、いつの間にかヤイバが外に出ていた。おそらく、ヤイバがクーリック村に向かう道中、ブレイヴと偶然会い、情報屋から聞いた話を確認し、先に到着したのではないだろうか。ブレイヴが会う人会う人に丁寧に対応するため、到着が遅れた。あっていそうな推測だが、別に興味ないことなので、確認はしなかった……。


    *


 神託の国、宮殿。復興作業などで護衛隊や国王のスケジュールも合わなかったらしく、ブレイヴとケン、アキラ、ヤイバの4人だけで宮殿の地下へと進む。ブレイヴが「ここだ」と言い、壁を観察してレンガの一つを押し込むと、新しい通路が現れた。

 ケンとアキラが驚いていると、何故か事情をしていたヤイバが

「護衛隊に紛れていた扃鎖軍のメンバーを拘束して、場所を吐かせたらしい」

「なんで、ヤイバが知ってるの?」

「ブレイヴから聞いたから」

 と、ブレイヴが喋る暇を与えない。通路の先は、階段になっており、ランタンで照らしながら奥へと進む。

「かなり深いな」

 どのくらい下ったか分からないが、階段の先は左右に延びる廊下があり、どちらも突き当たりまでは見えない。

「どっちに行こうか?」

 ケンが3人に聞くと、右の方から衝突音が響く。

「なんだろう?」

 4人は、全員一致で音のした右方向へ進む。しばらく進むと、鉄格子の扉があった。錠は掛かっておらず、さらに進む。すると、広い部屋に到着した。ランタンで部屋の周囲を照らすと、鉄格子があり、

「まるで牢屋だな」

 ブレイヴがそう言うと、すぐ近くから衝突音が。ランタンで再度、部屋を照らすと、何かが衝突して鉄格子が壊れる。

「誰だ!」

 ランタンに照らされたのは、人間ではなかった。2つ大きな牙を持ち、狼や狐、獅子、狩猟豹(チーター)等の複合だろうか。部分部分似ている。さらに、大きな牙の片方が折れている。

 その姿を見て、ブレイヴとケンが剱を鞘から抜こうとしたが、ヤイバとアキラが正面に立ち、2人が同時に剱を構える。まるで、2人は手を出すなと言わんばかりである。ケンは不思議に思い、

「アキラ? ヤイバ?」

 アキラとヤイバは、ケンの問いかけなど聞こえておらず、

「こんなところにいたとはな……」

「道理で、会わなかったわけだ」

「「キバ!」」

 2人は同時に怪物の名を叫び、駆け出す。


To be continued…


セーミャが久しぶりの登場です。いつ以来だろう……?

前回、第七部をこの話で終えようとしてましたが、キバ登場回も第七部に含めることにして、1話プラスします。総集篇Ⅶはその後で。


さて、『黒雲の剱』に関して、色々と考えた結果、ブログ版が最後まで到達していないのですが、新作を始めようかなと思い、執筆を開始しました。レギュラーの一部キャラはそのまま、時代や世界観を大幅に変更して、新しい『黒雲の剱』をスタートさせる予定です。何気に設定は引き継いでいたりしますが。

新しい『黒雲の剱』スタートにあたり、本作『黒雲の剱』はタイトルを『黒雲の剱(旧:ブログ版)』に変更予定です。新しい『黒雲の剱』と同時並行のため、こちらは月一とかになるかと思いますが、第八部を展開する予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ