第80章 ドンムール帝国 ~過去~
タウン島。朱色の龍、朱竜が低空飛行し、街を縦横無尽に駆ける。しかし、少年たちの活躍により、龍は封じられた。少年の名前は、ブレイヴ。仲間であるフューラーやレッグ、ミールと協力し、封石が輝いた。住民の避難は、陽光の国で新たに加わったメンバー2名、ガガンとアロナが安全に誘導させたことで、人的被害はゼロだった。
さらに、シュズ島へ上陸。朱竜の器が同行していたこともあり、緑色の龍、虯竜がすぐに現れた。タウン島での戦闘経験から、苦戦はしたが、こちらも人的被害はゼロで封じることに成功した。
一方、ケン達はニュージ島にて、黄色の龍、螭竜と戦闘を繰り広げ、こちらも人的被害を出すこと無く、封じることに成功した。
各チームが島々で活躍する頃、ドンムール帝国では燕計画からの新たな方法を模索していた。
「ノアシー、大丈夫か? ちゃんと寝ろよ。トップのお前がそんなんだと……」
ヤジルトが声をかけた。ここ最近寝不足のせいで、ノアシーの体調は益々悪くなるばかりだ。
「どうすれば、人々は感情を取り戻せるのか……」
大量の資料などを見直し、考え込むノアシー。
「その割には、グーヴ達の提案をことごとく却下してるそうだな」
「欠点が多すぎる……。ただそれだけの理由だが、大きな問題だ」
そこへ、ワイキが開きっぱなしの扉を一応ノックしてから、部屋に入ってきた。
「進展しないようだな……」
ノアシーは返答できず、ヤジルトは
「そっちは、どうなんですか? 例のアレ」
ワイキは、ヤジルトが聞きたいことを察し、
「ヨードリク・イジェストのことか」
「金持ち坊っちゃんからカナディアを」
「おい。最初に言っておくが、略奪婚なんて言うなよ」
ワイキが防衛ラインを引いた。それをわざと越えようとするヤジルトは、
「まさか、略奪できたんですか!?」
「おい! 正式なものだ」
ワイキを怒らせた。
話を聞くに、どうやらワイキはカナディアと無事に結婚できたそうだ。もしくは、これかららしい。ちなみに、ヨードリクは違う妻を見つけたとか。どうやら、ヨードリクは飽きやすいタイプか?
「ところで、ワイキさんはどのような用件で?」
ノアシーが用件を確認すると、
「いや、マグネを探しているのだが」
「マグネなら、ケンたちと島々を巡ってますよ」
と、答えたのはヤジルトである。
「そうか……。ならいい」
ワイキが退室してすぐ、ニルーナが入ってきた。
「どう? 進んでる?」
「見ての通りだ」
「そう……」
ニルーナは椅子に腰掛け、大量の資料に目を向け、一枚手にとった。
資料はヤジルトの目の前の机やノアシーの机及び付近の床にまで積まれ、挙げ句の果てには、廊下にも飛び出していた。だから、戸は開いたまま。
ニルーナは資料を置き、ノアシーの机で埋もれた一枚の写真を見つけた。
「懐かしい……」
と、ニルーナが言って同時にクスッと笑った。
「あっ、笑いましたね」
ヤジルトが細目でニルーナを見た。
「何度見ても笑えるよな」
ノアシーも手を止め、昔の写真に夢中だ。
写真には、ノアシーとニルーナが中心にいて、ハクリョやグーヴ、ワイキ、カナディア、マグネ、ナットらが並び、左端で転倒するヤジルトが写っている。
「セルフタイマーの時間設定。後から思えば、リモコンで撮影出来たが、それだと、こんな写真は撮れなかっただろうな。まぁ、もう一枚はちゃんと撮れてるが。飾るならこっちだろ」
と、笑いながらノアシーが言った。
燕計画は、燕のように国勢が冬を迎え、感情を失った人々を島々に選別して移住させ、感情というものがまた芽生え、国勢が春になればまた本土に戻ってくる予定だった……。しかし、国は変わり果て、ノアシー達は為す術がなかった……。
ノアシーは若くして、大臣の席についた。元々、燕計画を止める方針で考えていた。
その昔、ある日のこと。
ヤジルトとノアシーは、燕計画停止へと力をいれていた。しかし、どのようにすれば、混乱が起きずに終熄できるか考える日々で、時間だけが過ぎていく……
ニルーナは、すでに説明済みで言うまでもないが、ケンの姉である。マグネを連れてくるときに、派遣されたとある人物が気に入り、半強制連行。ノアシーとヤジルトがその派遣された人物、アレロダを誘拐罪で警察に身柄を渡した。
ニルーナは、島に帰還するまで時間がたっぷりとあった。その時間に、ノアシーに教えてもらいながら、観光などをしたそうだ。ニルーナはノアシーに、
「貴方と一緒に、いつまでもいたいものですね」
と、言ったのが全てのきっかけだ。
その後、嵐や竜巻等で船もヘリも出すことが出来ずに1年。
いつの間にか、2人の距離が縮んだ。
と、アルバムが物語っていた。
書類に目を通すのを忘れ、アルバムが気になっている……
「ノアシー……、書類を見なくていいのか?」
ヤジルトが忠告。ノアシーは気付かず……
*
さらに、龍の封印は進む。ブレイヴ一行が、イワハ島で白い龍、雲竜を人的被害なしで封じることに成功。当初、10の島と言われてどのくらいかかるか分からなかったが、このまま順調に行けば、出だしに時間がかかったものの、加速的に終わりそうだ。
*
バクフ島。ケン達は、新たな島へ上陸しようとしていた。
マグネの電話が鳴り、短く話をして電話を切ると、
「ハクリョから勇者様へ伝令してところ、大活躍みたいだぞ。すでに、3つの島で龍の封印に成功しているそうだ。こっちと並んだな。いや、イオを含めれば勝ってるか」
イオは首を傾げて
「勇者って、どなたですか?」
「人気の勇者と呼ばれる人がいて、だな。名前は、ブレイヴ。一言で説明するとすれば、主人公だな」
「まるで、俺らは主役じゃ無いみたいな言い方だな」
アキラがマグネに言うと、マグネはにやりとして
「何? お前ら、自分が主人公とか、思ってるわけ?」
その言い方にキレたアキラは
「やっぱ、この人嫌いだ」
そう言って、その場から離れる。
「まぁ、ケンは伝説の剱使いだからな。主人公としては、あっちの方が大活躍だけどな。特に、国王からの依頼をブレイブに奪われたらしいし……」
「あれは……、状況が状況だっただけに……」
ケンもマグネのペースに飲まれる。
そんな感じで笑い話をしていたのに、上陸して早々に、幕府の役人に密航者として捕らえられ、江都幕府トップの徳河 家竪の前にて尋問を行うと告げられた。
To be continued…
当初予定していた構成から急遽変更。ブログ版と内容は同じですが、扱う物語の順番を変更しました。
予定よりも第7部の話数が少なくなりそうかな。第6部よりも前で話をカットした結果、辻褄が合わないので、一部後回し。
龍の封印をする展開が短いのは、当時のまま。




