第79章 こよなく愛す ~理由~
カルト島。メンバーは引き続き、ケンとアキラ、マグネ、イオ。さらに、アーリスを連れて、上陸。今回は上陸して早々に燭竜が出現した。
「前回の待ち時間が嘘みたいだな」
「グーヴの調査報告の通りだ。イオとアーリスが上陸したことで、共鳴したが……」
マグネは、懐中電灯を持つが、電池が切れていて点かない。落胆しつつ、バッグの中から電池を探す。
周囲を月が照らしていたが、時々雲で隠れ、辺りはさらに暗くなる。燭竜は橙色に近い色で、度々体の模様というか、ラインのようなものが光るようだ。
「ここの封石をまず探さないと……」
ケンが一歩踏み出す前に、マグネが
「カルト島の封石なら、ここにある」
マグネが電池と一緒に取り出した。
「何で……?」
「キョクホ島で足止めを食らっている間に、先回りして探しておいた。時間は有効的に使わないとな」
マグネの考え方は、至極真っ当ではある。故に、アキラとケンは何も言わずに封石を受けとった。
改めて、アキラが
「さっさとこの島もクリアして、次に行くぞ」
と、最初の島でかなりの時間が掛かったため、てきぱきと進めたい。これから戦闘開始かと思われたが、
「燭竜は、光属性だ」
マグネが唐突に新しい単語を言い、
「マグネさん……、属性って?」
何も知らないケンが問うと、
「……もしかして、属性を知らないのか?」
「はい……。属性って何ですか?」
ケンが、改めて問うと、マグネは
「属性ってのはな、要は好き嫌いや得意不得意みたいなものだ。人や動物、植物にはそれぞれ1人ひとり、何十、何百、何千……いや、それ以上もの属性のうち、1つ以上をもつ。例えば、今回は燭竜だ。燭竜は光属性だ。光は闇や悪に強く、白や影に弱い」
淡々と説明するマグネだが、「ちょっと待った」とアキラは止めて
「”何十”とかなら分かるけど、”何千”って、何だよ? もうちょっと絞れなかったのかよ?」
「そうは言われても、実際にそうなんだから、受け入れるしかないだろう」
「いやいやいや……」
アキラとマグネが揉めているなか、ケンの携帯に連絡が入った。連絡はエナからだ。雑誌の写真が添付されており、”ミケロラの店が雑誌に載ったって”という本文とともに。
写真は後で見るとして、燭竜との戦闘が始まる……
*
ミケロラ、20歳。手に職を付けることができず、發達の国を無一文で歩いていた。レストラン街を歩くが、レストランにさえ入ることも出来なかった。しかし、ある時、転機が……
ミケロラ、20歳。8月22日に、転機が訪れた。
老店舗の喫茶店、"サブレ"。そこは、ドヌー・ンドラが経営しているお店。そのサブレがアルバイトを募集しており、チラシを貼っていた。そのチラシを目にしたミケロラは、サブレに駆け込んだのだった。
ドヌー店長の面接をパスして、アルバイトとして働くようになったミケロラは、ドヌー店長から様々なことを教わり、アルバイトというより正式の店員に近い存在となった。
ミケロラが23歳のときだった。ドヌー店長が倒れたのだった。ドヌー店長をすぐに救急車で搬送して病院へ。病院の検査で、ドヌーは癌であるとの診断が。ドヌーは御年74歳。医学技術力は十分だが、癌の進行がかなりのステージまで進んでおり、手術しても成功するかどうかは五分五分、もしくはそれ以下だった。
ドヌーは化学療法つまり、薬を投与してもらっているが、ニテス医師が言うには、
「全力を尽くすが、回復までには至らないかもしれない……。しかし、薬を投与していれば病状が和らぎ、少しでも寿命も長くなるだろう」と。因みに、二テス医師がタクード医師の旧友だとは、誰が知ろうか。
ドヌーは入院生活を送る。ある日、ミケロラに
「君に店を任せることにした」
「ドヌーさん、そんな事言わないでください」
「いや、私はもう決めた。あとは、君の返答を待つだけだ」
「……」
「ミケロラよ。頼む」
「……他に、私に何か出来ませんか!? あなたに何か……」
「いいんだ。店を継いでくれさえすれば……。他に継げる者もいない以上……、店をたたんでも構わない」
「私は……」
突然告げられたミケロラは、どうすればいいか分からず、ドヌーが話を変え
「では、甘いものを作ってくれないか? 最期の食べ物。そうだな……、私の息子がパティシエをやっていてな。君と一緒に何か作ってくれないか?」
「息子さんですか?」
「あぁ、そうだ。しかし、私に反発して家を出ていった……」
「息子さんの御名前は?」
名前を聞いたミケロラは、一目散に病院を出て、息子がいる一流ホテルへ。ドヌーの息子は、モルート。モルートは有名なパティシエだ。そうなかなか会えないが、ドヌーの名を出すと、モルートとすんなり会えた。
モルートは昔、ドヌーと店について揉め、飛び出した。しかし、ドヌーが危ないと知り、病院へ。
「父さん……」
「モルート、ミケロラと私を驚かす甘いものを作ってくれないか」
それから、2ヵ月後の10月3日。
ケーキとパフェ、ドヌーが好んでいたモンブランを用意した。
ケーキとモンブランはモルートが作り、パフェはモルートに教わってミケロラが作った。
ドヌーは、全てを笑顔で食べ、
「美味しかった。ありがとう……」
そう言ってベッドで横になって数時間……。静かに息を引き取ったのだった。ニテス医師によると、いつ息を引き取ってもおかしくない状況下で、2ヶ月の間、生きることを頑張れたのは、ミケロラとモルートの料理を待っていたからではないか、と言っていた。
ミケロラは店を継ぎ、メニューに"ドヌー's パフェ"を加えて、営業再開。その後、さらに成長したモルートが店を継ぎ、ミケロラからバトンを受け取ったのだった。
ミケロラは、神託の国のギリシエ村に戻り、パティシエにはなろうとは思わなかったが、ドヌーが食べた後の笑顔が忘れられずにいた。それから数年経ち、ケン達と旅をした時、ファクトリーシティで思わぬ出会いがあった。立ち寄った喫茶店で、メニューの1つ"ドヌー's パフェ"を見つけた時、ミケロラが決心したのだった。(まずはパフェを)と。
この時があったからこそ、"パフェ専門店 ミケロラ"が誕生したのだった。もちろん、パフェ専門店にも"ドヌー's パフェ"があるのだ。
To be continued…
隔週なら今週じゃない? ってことで、火曜の21時に間に合いそうなので、更新しました。
今回は、ブログ掲載当時のままが多くを占めています。とはいえ、少しばかり変更はしてますが……
改修が少なければ、間に合うもんだな。ただここ最近、時間が無くてチェックが甘くなってしまうのはしょうが無いのか……?




