第75章 驪龍
バデポジットを倒してまもなく、マグネの携帯電話が鳴る。マグネは、通話の相手がワイキであることを確認すると
「こっちは片付いたぞ」
「驪龍がそちらに向かっているとの情報が。航空交通管制からの情報を、ナット大佐とタリップ少佐が確認し、レーダーの情報から行き先はそちらだと」
マグネは、ケンやヤイバ達の様子を見て
「連戦するような力は無いぞ。応援は?」
「あまり期待できないかと……」
「はぁ? こっちは命かけて戦ってんだぞ?」
「そう言われましても……。現状は市民の避難誘導を優先していて……」
「もういい。そっちに残っているメンバーを派遣しろ。軍が期待できないなら、戦える官僚なんて、たかが知れてる」
マグネはそう言って、電話を切った。マグネが言ったメンバーとは、ジン達のことである。
マグネが電話を切ったため、ワイキは不快そうな表情をした。ハクリョはそれを見て
「マグネ少将に、嫌味でも?」
「そりゃ、もう……」
ワイキは息を大きく吐き、自分を落ち着かせて、
「緊急要請です。至急、戦える人はマグネ少将の場所まで駆けつけてください。ケン達が戦闘で疲弊している中、新たな標的との戦闘になりそうです」
「俺が行く」
そう言って、ジンが立ち上がる。ハクリョは
「すまんのぉ。もうすぐ、中佐が駆けつける故……」
「中佐ですか?」
「お主らもよく知っておる人物じゃよ」
ハクリョはそう言って、ジンを見送った。場所の案内はワイキが。すると、ニンが追いかけようとして、
「ニン、待って!」
と、エナが抑止するも、ニンはそれを振り切る。エナは已むなく、追いかける。
ミケロラは立ち上がって、
「私もあの子達を追いかけます。あの子達に何かあってはいけませんから」
「そうじゃな。ここにいても仕方あるまい」
ハクリョもミケロラとともに、応接室を出る。
驪龍と呼ばれる龍が、上空を旋回する。
「伝説のドラゴンのうち、1体。驪龍だ……」
マグネはケン達を集め、作戦を考える。チルコルト代表は、すでに避難させて、ヤジルト中将達に任せている。
「伝説のドラゴンって、何ですか?」
何も知らないケンが聞くと、
「太古の昔、グリン島のグリンマウンテンを住み処としていた。ヤツが吐く”黒煙の霧”には気をつけろ。毒とかそんな生温いレベルじゃない」
毒よりも強力なものとは一体……。マグネはさらに、
「グーヴ中尉の報告だと、一週間前にグリンマウンテンが噴火している。原因は、誰かがグリンマウンテンの地下洞窟で開発をして、事故で大爆発したらしい。爆発と噴火で、研究員諸共、何の研究だったかも残っていない。どっかの民間企業や組織的なものだとしても、何も残ってない以上、調べようがない」
「どうすれば、止められるの?」
ケンの質問に、マグネは頭を掻いて、
「分からん。そもそも驪龍は、伝説の存在。前例がないし、驪龍に関する文献も無い。伝説に関して考えられることとしては、二択だな。本物か偽りか」
「それは、作り話ってことか?」
ハガネが、”偽り”という表現に関して意見すると
「現に、こうやって目の前に現れている時点で、伝説がどうあれ、現実だと受け入れるしか無いだろう」
驪龍や伝説の話について、今議論しても仕方ない。どう動くか考えなければ。
「相手は、遥か上空だぞ。どう戦う?」
アキラが全員に対して、投げかけると
「落とすしか無いだろ」
と、マグネが即答した。ただ、どうやって……
「もうすぐノアシー元帥の指示で、大砲を撃つ。それに、大将からの情報で、中佐がこっちに向かっている。空中戦は、中佐に任せて、落ちたところを攻撃する」
空中にいる間は、手出しが出来ない。驪龍が旋回をやめると、口から炎が見える。どうやら炎を吐くつもりらしい。
驪龍が炎を吐く直前、大砲の音がして砲弾が数発、驪龍に直撃。爆発して煙が上がる。驪龍は咆哮して、そのまま落ちてくる。
「落ちてきたぞ!」
マグネは落下地点を予想したが、攻撃は中断。ケン達もマグネが走らないので、その場に留まった。
「中佐が来た。近づけば巻き込まれるぞ」
「中佐……?」
マグネの言う中佐とは、一体誰なのか。マグネが向く上空を見上げると、逆光で眩しくて見えづらいが
「まさか……」
ケンは目を疑った。逆光で暗く見えるのではなく、もともと黒い色をしている。黒き鳥が上空にいる。ケンよりも先にアキラが、マグネに対して
「中佐って、逢魔劔隊のクロバー……なのか?」
「驪龍との戦いは、一旦クロバー・ホワトレス中佐に任せて、対策を練るぞ」
マグネが少し離れるため、ケン達も一時的に下がる。確か2歳下だから、14歳にして中佐の少女。黒き鳥の姿で、驪龍と戦闘が始まった。街の上空で繰り広げられる、巨大な怪物同士の対決は、かなり迫力があり、映画でも見ているようだ。
ただ、驪龍の放つ火炎の弾丸が街に降り注ぎ、一部では炎と黒煙が上がる。マグネが、注意する必要があると言った”黒煙の霧”は、まだ見ていない。
どうすべきか悩んでいると、ケンはふと思い出したように、封解の書を取り出した。だけど、封解の書はこれまで、いざというときにはあまり当てにならず、何でも無いときに発動することが多い。コントロールできた試しは無い。期待せずに、封解の書を開くと真っ白なページが多い。パラパラと捲ると、読めない文字が浮き出てきた。
「何か書いてる……」
しかし、読めない。封解の書に書かれた文字が読める人は、対象者のみ。それ以外の人は、何が書かれているか読み解けない。ならば、誰か読める人がいないかと、ケンは 封解の書をアキラ達に見せ、「読める?」と聞いた。期待とは裏腹に、誰も読めない。一体、誰に対して示しているのだろうか……
To be continued…
忘れた頃に出てくる『封解の書』。あまりにも自由度が低く、使えるのか使えないのかよく分からない代物です。
クロバーの年齢は14歳ですが、戦魔盗賊団こと現在の雷霆銃族から逃げるために、"セツナの歯車"を使って時間を移動しており、年下だけど生まれはクロバーの方が先の可能性がありますね。ヤミナと一緒に暮らしていた時期もあるので。
ちなみに、大将とか中佐とかあるけれど、あくまでも呼び名だけらしく、命令系統や指示はこの通りでは無いみたいですね。フラットなもよう。




