第74章 パワーの消耗
まだ剱を持って間もないころ。クーリック村で、ケンとアキラがマグネの教えで練習をしていた。
「違う、違う。持ち方が左右逆だ」
マグネは、ケンに注意して握りを訂正する。すると、ケンは
「前に、マグネさんが反対側から教えたから……」
「ホント、ホント。というか、マグネさんの持ち方が、そもそもおかしいし……」
アキラは、マグネの独特な持ち方を指摘したが
「そうか? こう持って……」
と、自覚はないようだ。それほど変ではないが、両手持ちしたとき、柄を握る左右の手がかなり離れている。教えるときは、くっついているのに。
「なんで、ケンに右手で握らせるんだ? ケンは左利きだぞ」
「そりゃあ、右利きだと教えやすいからだ。左利きだと、教え方が変わってくるからな」
マグネはそう言って、ケンを右利きで教えていた。結果として、後から利き手の左で扱えるようになるのが早く、両手どころか二刀流で扱えるようになったのだが。
*
旗が靡き、風は強いままだ。日差しが強く、自分達の影がはっきりと見える。バデポジットの影は、チルコルトへと伸びていく。バデポジット本体は、マグネと膠着状態のまま。ヤイバがバデポジットへ雷撃を仕掛けようとしたが、バデポジットは自分の影へと姿を消す。雷撃は空振りし、マグネがバデポジットの影に向かって剱を刺すが、影がそれを避けて、マグネの剱は地面に刺さっただけだ。
一直線の長い影に向かって、ケンは走りながら合成シルバーソードを振り被り、
「紫電一閃」
合成されたフラッシュソードの光に着目し、光の攻撃を放つ。合成シルバーソードが煌めき、その目映い光が影に向かって迫る。すると、一直線だった影は回避のため曲がる。光により、影が薄くなると思われたが、動く影はくっきりと見える。ケンはすぐに追撃のため、走りながらもう一振り。時間を稼げば、チルコルトへの攻撃を防げるだろうか。
「半輪白雷斬」
合成シルバーソードの先端から、半月状の白い刃が、白い雷を纏って、影が進む先の地面へ刺さる。動く影の先端には当たらなかったが、多少の進路妨害はできた。
影がチルコルトの前で止まり、そこからバデポジットの姿が現れる。影は移動手段。攻撃は剱を振り被り、武器を持たないチルコルトは顔を逸らす。バデポジットが振った剱は、間一髪で間に合ったケンの合成シルバーソードが防ぐ。
チルコルトへのダメージはない。しかし、ケンはなんとか防いだだけで、体勢が悪い。右膝を地面につけ、力で押さえ込まれる。マグネやアキラが駆けつけるまで、保つだろうか。
ケンは防ぐのが精一杯で、どうすべきか考えていると、バデポジットが後ろに退き、その直後何かが横切った。ケンはすぐに立ち上がり、合成シルバーソードを構え直す。バデポジットは、何かが飛んできた方を見て、2度目の飛来物を斬り落とす。
斬られて地面に落ちたのは、矢だ。余裕が出来たケンも矢が飛んできた方を見ると、ニルーナが弓を構えて3発目の矢を放つ。この強風の中、追い風に乗った矢は、外れること無くバデポジットの方へ。バデポジットは見切って矢を避ける。
射手のニルーナに救われたケンだが、そういえば射手に救われたのは初めてではない。あのとき……、そんな風に考えていると、バデポジットが動く。また影による移動だ。今度の標的はニルーナである。ニルーナは動く影に向かって矢を放つが、影はそれを避けながら、高速で進む。
ケンはバデポジット本体に向かって、白雷斬を繰り出すが剱で防がれ、アキラとハガネの攻撃も変形した剱が防ぐ。
影は次第に、ニルーナへと近づく。ニルーナは弓矢を扱うため、射線上に誰もいない。ケンとヤイバは、技を連発すればその分疲労が来る。すでに数回発動しており、少しでも気を抜けば、眩んで転倒しかねない。
ヤイバは、このままだと間に合わないと判断し
「限界とか考えてる暇はないな……」
走りながら剱を構えて、
「一発勝負……。迅雷風烈」
ライトニングソードを纏う雷のようなオーラが、ヤイバまだ覆い、体勢を低くして、急激に加速する。影の速度よりは早いが、向かい風と痛みに耐えながら、追いかける。影の速度は、直線ではないため、時速30キロぐらいだろうか。矢を避けながら進み、迅雷風烈で速度アップしたヤイバは、時速45キロぐらいだろうか。
影はニルーナの前で止まり、バデポジットが姿を現す。ヤイバは、まだ距離がある。痛みを我慢しながら、そのまま影に向かって、ライトニングソードを振り
「雷電落弾斬」
ヤイバの剱から、雷を纏った弾が急降下して、バデポジットを直撃する。バデポジットは一時的に電撃で行動不能に陥り、ヤイバは剱が届く位置になり、さらに追撃。迅雷風烈により、腕力も上がっているのか、バットのように振りかぶってバデポジットに当たると、そのまま数メートル飛んでいく。
ヤイバは前屈みになって息が切れ、大量の汗が。無理をしたため、かなり疲労している。ニルーナに心配されるが、返答も出来ず、バデポジットの方を見る。バデポジットは立ち上がろうとしており、
「パワーが尽きるまでって……、どれだけやればいいんだよ……」
ヤイバはしばらく戦闘に復帰できそうにない。立ち上がったバデポジットに、マグネが剱で顔面を叩き付ける。
「コイツ、斬れないな」
転倒したバデポジットが再び立ち上がると、ハガネとアキラが同時に攻撃。しかし、変形する剱に防がれて弾かれる。負けじと攻撃するも、何度も防がれる。
アキラとハガネがバデポジットと戦闘しており、ケンとヤイバは疲弊により戦闘に参加できず、ある程度回復するにも時間がかかりそうだ。マグネはニルーナを説得して遠ざけていた。
影に注意しつつ、ハガネはアキラを見て
「お得意の飛び道具は? どうせ持ってるんだろ」
「こんな硬いヤツに、弾丸なんて通用しないだろ……。無駄に消費したくはない」
「それもそうだな」
ハガネとアキラは、剱を振るい続けて、乱打による応酬を継続。伝説の剱を使わない2人はその戦い方で、時間と体力を削るしかない。
マグネが戻ってくるころには、バデポジットの動きが鈍くなり、アキラとハガネの振るう剱の矛先は本体に当たっていた。バデポジットの硬い体に当たる度に、剱が折れるのでは無いかと心配になる。
ついに、バデポジットの動きが止まり、その場に倒れた。
ハガネとアキラは、倒れたバデポジットに対して、動きが無いとしても、注視して剱を向けたまま、もしもに備える。最後まで気を抜けない。完全に倒したかどうか、まだ判断できない。
マグネがバデポジットの体を起こし、確認する間も気を抜かなかったが、
「どうやら、機能停止したみたいだな」
マグネは、バデポジットの眼球が白くなっているのを確認して、
「よくやった」
To be continued…
バデポジット戦が決着。次回は、さらにもう一戦。ストックが無い状況から、なんとか予定通りに更新できて一安心。このままいけば、第六部が12月に終わるかな。
さて、12月1日は全作品の同時刻更新日です。12月1日はブログの開設日で、自分の作品を初めてネットに公開した日なので、記念日として去年に引き続き、全作品が更新されます。
なお、本日より『路地裏の圏外 ~MOMENT・STARLIGHT~』が連載開始です。去年の『龍淵島の財宝』と同様に、『黒雲の剱』のキャラが登場です。そちらもよろしくお願いします。




