第69章 碧海の神殿
「これは?」
ハクリョについて行くと、潜水艦があり、ケンは驚いた。そもそも潜水艦なんて知らないし、初めて見る。
「潜水艦というものじゃ。スピーディーを開発したダイナミックモノレール株式会社の協力で、非常時の避難に使うものじゃ。ザザアの攻撃が落ち着いたとは言え、国々は混乱状態。多くの建物や神殿も崩壊しておる」
ハクリョは潜水艦の中へ。ケンとアキラは周りを見渡したあと、顔を見合わせる。
「操縦は……?」
と聞いたが、ハクリョは答えずに潜水艦の中へ。
ケンたちは、特にそれ以上言わず、潜水艦の中へと移動する。中は、窓が無く、配管などで通路は狭いところもあるが、生活スペースは広かった。
操縦はどうやらハクリョではないみたいで、食堂で話が始まる。メンバーは、いつも通り、ケン、アキラ、ハガネ、ヤイバ、ニン、エナ、ジン、ミケロラ。ハクリョは最初に
「現状、国のトップは自国の対応で忙しく、各組織もそれぞれ対応に追われている。よって、いつものメンバーになったわけじゃな」
確かに、ケンたちよりも、もっと行くべき人はいるはずだ。しかし、ザザアの攻撃は完全には終わっておらず、各国のトップや組織のトップが離れるのは難しかっただろう。でも、僕らで良いのだろうか。
アキラが「いいですか?」と確認を取った上で、
「特にこれといって分からないまま、付いてきてるんですが、どこに向かってるんですか?」
「誰かさんが壊した、壁の外じゃよ」
当の本人も加担していたような気がするけれど、それはさておき、
「外壁の外にある碧海の神殿で、ある人物と会う予定じゃ」
「碧海の神殿……ですか?」
外壁の外にある神殿。ケンをはじめ、誰ひとり知らない神殿である。
「外壁の外にもあるなんて、考えもしなかったな」
アキラがそう言うと、ハクリョが一瞬、言うかどうか悩んだような表情をし、
「ここから先、お主たちには理解できないこともあるじゃろう。その1つとして、神殿はそのほとんどが政府が造った人工物である。この地にもともと存在した神殿は少ない。例えば、天地の神殿と天地の遺跡、火焰の神殿、光明の神殿なども人工的に建造した物である」
予想だにしないカミングアウトで、全員が反応できなかった。ハクリョはさらに続けて、
「時空間の神殿は、もともとこの地に存在しており、似たような神殿であれば、新たに建造して主が拠点として活動しておっても、怪しむ者はおらんじゃろ。そもそも、天地の遺跡は、到着することを想定しておらんし」
全員が置いてきぼりの中、ハクリョはさらに続けて
「ザザアは技を繰り出す前に、”髑髏戦慄”という言葉を発しておったが、大昔は髑髏島と呼ばれており、政府が手を加えるまでは、居住など到底できない島じゃった。ローズリーの持つ情報が、すべてザザアに流出していたのであれば、関連付けても強ち間違いではないじゃろ。考えすぎかもしれんが」
20分ほどで、潜水艦が碧海の神殿に到着した。
碧海の神殿は、海底洞窟内に建造された人工物である。ただ、神殿の装いは前面だけで、内部は廊下と左右にいくつかの部屋が並ぶ3階建ての施設だった。神殿と言うより、研究所みたいだ。施設内の空気は、地上と常時入れ替えを行っており、物資運搬用のエレベーターもあるらしい。
少し歩くとハクリョは、ドアの横にある指紋センサーに、右手の指を触れる。すると、認証音とともに、扉が開く。中には男がひとり。
「ワイキ、お客さんだ」
「誰だ?」
と、ワイキと呼ばれた男は振り向き
「なんだ、ハクリョか」
ワイキは白衣を着ていて、頭が殺風景だった。要は、アレだ。
「何年ぶりだ?」
ワイキは、ノートパソコンを閉じ、ハクリョの方へ。
「20年ぶりか?」
「おそらく、もっとだな。実際に会うのは35年ぶりか?」
「もうそんなに経ったのか……」
ここで疑問が出て、ヤイバが恐る恐る、
「失礼ですが、お二方は、おいくつになるのでしょうか?」
「……、ワイキ、お主はいくつになった?」
ハクリョがワイキに聞くと
「110?」
「お主が110なら、112か」
ワイキが110歳。ハクリョが112歳。年齢は西暦と同じで数え方であり、つまり
「えっと、長生きなんですね……」
と、ケンが返したので、アキラに打たれた。そうじゃないだろ、と。ハクリョは、癖なのか髭を触りながら
「お主たちにとって、壁の外の世界というか、ドンムール帝国は、あまりにも科学技術が発達して……、いや、発達し過ぎて、医療も同じように発達し過ぎた。だから、人は容易には死ねなくなり、長生きをしていった結果、100を越えてもピンピンしとる」
「ドンムール帝国……?」
新しい単語が次々と出てくる。そのたびに、ケンかヤイバが反応し、こぼれたところはアキラが質問する。なお、ハガネやミケロラ、ジン、エナ、ニンは、質問を3人に任せて、黙ったままだ。
「ドンムール帝国は、君らの島を含めた”オウウツ諸島”と、一応分類上としては大陸である”ナイガラ大陸”を領土とする帝国じゃな」
ハクリョの説明の後、ワイキがすぐに
「なるほど。”DEG”に、この子たちを連れていくってことか?」
と、付け足して質問事項が増える。ひとつひとつ聞くしかない。ケンが選んだのは
「デグっていうのは……」
「”DEG”は、ドンムール帝国政府のことじゃな。もっとも、そんな呼び方しているのが年寄りの少数派じゃから、覚えたところで本土では通じないじゃろうな」
ハクリョが年寄りというと、そうなんだろうな、としか受け取れず、それ以上は聞かなかった。Dがドンムール、Eが帝国、Gが政府という略称なのだろう。
オウウツ諸島には、島々がいくつかあるが、ほかに壁が存在する島は存在しない。なんとなく、自分たちの立場を理解しつつも、全容が見えず、そうなんだという中途半端な理解で終わってしまう。
理解が追いつかない会話が続くと思われたが、ワイキは
「で、例の剱が見つかったんだが、持って行くか? 見つけた後に、ハクリョから保管するように通達を受けなければ、DEGに送ってただろうな」
そう言って、ワイキが部屋の奥の方へ。数分して、持ってきたのは
「残念ながら、名称は分からないんだが……」
と言い、ケンたちに鞘に入った1本の剱を見せる。柄の部分には、碧色の宝玉が填め込まれている。おそらく、伝説の剱だろうか。
「伝説の剱かどうか、確かめるか?」
ヤイバが誰よりも先に提案した。伝説の剱の見分け方。それは……
「じゃんけんで負けたやつから、持てよ」
ヤイバの言うとおり、選ばれなければ、鞘から抜いた状態の剱を持てない。これだけの人数がいれば、全員が選ばれる確率は低い。
さっきまでの空気とは裏腹に、全員が表情を緩めた。ヤイバがいつもより大声で音頭をとり、結果……
「俺かよっ」
ヤイバが一発負け。ハガネは煽るように
「さっさと痺れろ」
ヤイバはハガネを睨んで、鞘から抜く。
「ライトニングソードに選ばれたぐらいだからな。こんなの」
ヤイバが言い切る前に、ヤイバの右手から剱が落ち、その場に蹲る。
「こいつ、一発で引きやがったな」
疑似未来のとき以降、ハガネのヤイバに対する当たりが強くなったような気がするのは、多分、気のせいじゃない。
今、こうやって何気ないことで笑っていることが、これからも不変であればいい。周りがいろいろと変化したとしても……
To be continued…
第六部へ。転換期を迎えるわけですが、それよりも、書き上がったのが前日なのでストックがなくてギリギリでした。なんとか間に合った。
第六部は、わりと覚えていないので、第六部のタイトルは中盤まで進んでから考える予定です。ブログ版から、いろいろとカットすると思われ。
引き続き、よろしくお願いします。




