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黒雲の剱(旧ブログ版ベース)  作者: サッソウ
第5部 疑似未来篇
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第68章 進み出す時間

 ケンが特訓している頃、アキラ達のところにハクリョがやってきた。

 アキラはハクリョと会ったことがあるようだが、他のメンバーは知らないため、自己紹介の後、

「もとの世界に戻る準備をしている、と聞いてやってきたわけじゃが……」

 ちなみに、ここにいるのはアキラとヤイバ、ハガネ、エナである。ジンとニンは、外出しており、ミケロラはお店で働いている。ちなみに、ハガネが珍しく1人で行動していないのは、ザザア戦での作戦を毎晩のように協議しているからだ。

「生憎、ケンはずっと出てますよ」

 アキラはケンに用があると思い、そう言ったが、ハクリョはどうやら逆のようで

「いや、それを分かった上で、お主達に相談に来た」

「相談ですか……?」

「相談と言うより、報告という言い方が正しいかもしれんが……。ザザアの爆弾に関してじゃが……」

 ハクリョが自身の考えを話すと、それを聞いた3人は、言葉を失った。少しして、アキラが

「それだと、ハクリョさん、あなたが……」

「ケンがここにいない時に、それを聞いて正解だな」

「ハガネ!」

 ヤイバが撤回しろという意味で、ハガネを睨んだ。

「あくまでも、緊急事態のときじゃが。おそらく、ポルラッツも策を用意しておるようで、それの幇助(ほうじょ)といったところかの」


    *


 時空間の神殿は、海面から5メートルぐらい出ていた。海底までの深さは分からないが、見上げていた塔をこんな風に見ることになるとは。

 船を接岸して、時空間の神殿の入口へ木材で橋を架ける。順番に時空間の神殿へ。中では空間が歪んでおり、外観からは想像できないほど広い空間になっている。知ってはいるが、やはり慣れない。不思議な未来も、これでお別れだろう。永遠と続く2月29日から解放されるだろう。まもなく、止まっていた時間が進み出す。果たして、勝てるだろうか……

 時空間の狭間は、1つしかなかった。迷うことはない。深呼吸して、中断した戦いへ。


    *


 ついに戻ってきた。僕らの世界。時空間の神殿で、残された時間は僅か。ザザアは見当たらない。巨大な爆弾がカウントを進める。

 突如、後ろから強い風が。振り向く時間も無く、ケン達の頭上を黒い影が遮る。

 爆弾を掴むのは黒き鳥。クロバーだ。さらに、ハクリョやカクゴウ、ポルラッツが爆弾の奥にある装置を稼働させている。

「クロバー! 転送装置の中に投げ込め!」

 ポルラッツが叫ぶと、クロバーは足で掴んだ爆弾を転送装置へ投げる。転送装置から激しい火花と稲妻が走り、目の間から巨大な爆弾が見えなくなった。

 安堵しかけた瞬間、外から花火よりも遥かに大きい音が響く。

「……いいのか? (あるじ)の職を失うんじゃないか?」

 ポルラッツがハクリョに言うと

「お主に心配されるようなら、すでに失脚かもしれんの」

 短時間で起こったことに、ケン達は見ることしかできなかった。ただ、何かしようとしたのはケンだけで、全員が何もしなかった。

「俺らは、作戦通りに何もしなかったけど、こんな短時間だと、動けないな」

 アキラがそう言ったため、ケンはアキラの方を振り向く。すると、アキラは

「ザザアがいない場合、俺たちは大人達の邪魔にならないように動くなと。不本意だが、仕方ないだろ」

「一応、ケンが動き出したら止める予定だったけどな」

 ヤイバはそう言い、今度はハガネが

「転送装置の存在とクロバーの突入。ポルラッツの作戦だ。カクゴウとハクリョがその案に乗った」

「ヤミナさんは、クロバーのことで、この作戦は聞かされなかったみたいだけど。確かに、クロバーに爆弾を運搬させるって聞けば、ヤミナさんなら反対したと思うけど」

 と、エナも事情を知っている。確かに、黒き鳥がクロバーの姿に戻ると、ヤミナが一番に駆けつけて、クロバーのことを心配して抱きしめている。

「爆弾の転送先は、神託の国の南、海の端だ。人が一番少ないというか、いないところだな」

 ジンも知っている。どうやら、ケンだけ知らないみたいだ。

「なんで、みんな知ってるの……?」

 すると、アキラがケンの肩に右手を置き、

「ケンが3週間抜け駆けしてる間に、ハクリョさんから聞いた。猛特訓するのはいいけど、作戦会議に出なかったお前の失態だな」

 「うっ」と、何かが心に刺さった気がした。ケンは、アキラが目覚める前に、ガドライン国の広大な森で、特訓を始めており、全く知らなかった。


 当時、ケンはかなりの覚悟を決めていた。

(僕は、自分の力不足で諦めた時、アキラが「そりゃ、勝てるさ。クーリック村で一二を争う僕らの実力と、伝説の剱が持つ神秘の力を掛け合わせたら無限大だろ」と言ってくれた。過大評価だと思ったが、それでも一緒に強くなろうというアキラの姿勢に、背中を押された。今まで、色んなもの見てきた。勝った時より、負けた時が多かった。まだまだ力不足だ。記憶がない間は、ザザアの配下にいた。剱の特訓。何年ぶりだろうか。自分は強くならなきゃ)

 夜空をひとつの流れ星が流れ、気を引き締めて猛特訓を3週間行った。失った時間の分、少しでも取り戻せたらと。


 だけど、結局、特訓の成果は披露できずに終了した。

「貴様ら、何を終わった気でいる。まだ終わってないぞ」

 ポルラッツが言うとおり、ザザアは行方不明。扃鎖軍の侵攻はどうなったのだろうか。

「それに、ザザアの爆弾の威力なら、おそらく壁の一部が崩落するだろうな」

 ポルラッツの想定通り、爆発の威力は凄まじかった。爆発周辺は、かなりの爆風を伴い、さらに壁の一部が燃えている。壁は崩落し、外との往来が可能となった。しかしながら、この暗闇だと船の往来は、朝にならないと厳しいだろう。外は夜である。


    *


 その頃……。ドンムール帝国の首都ルイジド。とある酒場にて。

「ご報告いたします。ザザルト・アーデス・ダグラストが死亡した、という情報が入ってきました。また、ガルドシア・ダグラストが不穏な動きをしていると。現在、諜報班を向かわせていますが、南の中継地点が派手に壊されたとのことで……」

 隣の席の男の報告に、

「ついに、このときが来たか……」


To be continued…



物語は、第五部 疑似未来から、第六部へと進みます。

ブログ版と大きな流れは変わりませんが、毎話最初から書いているので、物語がいろいろ変わっちゃいましたね。"疑似未来"は『小説家になろう』版のみで、ブログ版は"もしかしたらそうなったかもしれない未来"でした。

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