第65章 リバレーン宮殿
ジンから聞いた話によると、ニンとともに行動していたが、例の”ザザアの意志を継ぐ者”、つまり感染者と戦闘になり、無惨にやられた。途中、ニンを逃がそうとしたが、ニンは逃げずに共に闘うことを選択した。だが、不死身の感染者に勝てず、ジンが深手を負ったショックで、記憶喪失になったことが考えられる。ただ、ケンと一緒に、目を覚ましたジンに会いに行くと、ニンの様子が変わり、兄の名前を呼んだ。ニンはジンと再会したことで、記憶が戻ったみたいだ。そして、何度か診察を受け、問題は無いと告げられた。
エナとニンがレストランに着くと、なにやら盛り上がっているテーブルがある。どこの誰かと思えば、知っている人たちだ。立ち上がった2人が黙って着席したのが、入口近くから見えた。
「ああいうのと、同じ仲間だと思われたくないんだけど……」
エナはそう言って、レストランの中に入るのを躊躇うと、ニンは
「でも、あんな感じで皆が楽しそうにしてるのは、随分久しぶりな気がする」
「そうかもね……」
確かに、年単位で色々あった。こんなに楽しそうにしていた頃、最後はいつだっけ……?
エナとニンは、店員に伝えて、盛り上がっているテーブルへ。
「盛り上がるのは良いけど、周りの迷惑にならない程度にね」
と、エナが注意すると、ヤイバとハガネが何か言いたそうだが、先にケンが
「ニン。もう大丈夫なの?」
「うん。心配かけて、ごめんなさい」
「ニンが、元に戻ってよかったよ」
ケンとニンが話す間、ハガネとヤイバはエナの方を見ていた。エナは、視線に気付いて笑顔で返すと
「エナも、ローズリーと会ったのか?」
ハガネがそう聞くと、エナは
「感染したボロック国王が殺そうとしてたから……。見て見ぬ振りはできなかった」
今度は、ヤイバが
「ワクチンは、ローズリーが協力したって、本当なのか?」
「本当だけど。情報源が2人にとっては、”敵だから”って理由で、認めたくはないんだろうけど……。現に、感染したヤイバも、今やこの通りでしょ?」
エナがそう言うと、2人は黙り込んだ。丁度、エナとニンのドリンクが運ばれ、「お料理は、もう少々お待ちください」と店員が言って離れる。
まだ頼んでいないと思っていた、ミケロラは
「もう頼んでたの? 流石ね」
すると、エナは
「入口で頼んだんだけど。誰かさんの大きな声が聞こえて、同じ仲間だと思われたくないから、躊躇ってた」
そう言って、エナとニン、ミケロラだけが笑った。
「で、次の話はしたの?」
エナがケンに何処まで話したか聞くと、ケンは「この後の話は、これから」と言って、
「で、ローズリーから聞いた最後の情報。リバレーン宮殿。そこに、ザザアと関わりのある物があるらしい」
「リバレーン宮殿って、たまにニュースで言ってた建物?」
ミケロラは鞄から、今朝買った新聞を取り出す。コンパクトに折りたたまれており、何回か広げて
「ここに書いてあるけど」
と指を指す。新聞には、取り壊しを行おうとする政府側と、それに反対する一部市民が抗争している写真が、デカデカと載っていた。ミケロラは、新聞に載っていた情報をもとに
「確か……、歴史のある建物であるリバレーン宮殿の取り壊しを行うきっかけは、宮殿に薬物乱用者が増えて、大規模な突入捜査が行われ、違法の薬品が大量に見つかったから。見つかっただけでなく、その薬品を使って、これまた違法な薬品の密造や密売が明らかになった。って言うのが、表向きの理由だけど……」
「その言い方だと、別の理由があるってこと?」
と、エナはミケロラに聞いた。リバレーン宮殿のことについては、エナやケンも情報がない。あくまでも、ローズリーが発言した名称と病院で見たニュースの情報ぐらいしか無い。ミケロラは、トーンを落とし、
「風の噂で……、反政府組織の兵舎がリバレーン宮殿の地下にあるから、政府は建物を壊したいっていう理由みたい」
ミケロラが言ったワードから、ケンはある可能性を考え
「ローズリーは、ザザアの本拠地があるって言っていた。それが、その兵舎だとすると……。アキラ達は、そこにいるんじゃないかな?」
ジンは、ケンの考えに乗り、
「たとえ、反政府組織がザザア軍でなくても、ありえそうだな。この世界は、ザザアが介入できないようだし、反政府組織に紛れ込んでいる可能性は、十分に考えられる」
ジンは、ヤイバとハガネの反応を見た後、さらに続けて
「ケンと俺で、リバレーン宮殿の周辺を捜索する。その結果から、作戦を考えるのが良さそうだな。ヤイバとハガネは、一旦、頭の中を整理して、今すべきことを考えられるようになったら、俺たちと合流だな」
つまり、冷静に現状を考えられるようになるまで、戦力外ということだ。ハガネは「……ちょっと、頭冷やしてくる」と言ってレストランの外へ。ヤイバも同じように。
敵と認識していた相手。そう簡単にはレッテルを剥がせないのかもしれない……。
*
リバレーン宮殿の周辺は、思ったよりも観光客や住民がいた。どうやら、24時間緊迫した状態ではなく、数日に1回。それも2時間ほど、反対運動が行われるぐらいで、その時間以外は、治安が保たれていた。そして、
「4日間の調査結果、反政府組織はザザアとは無関係であることが分かった」
ジンがメモした紙切れを見ながら、全員に報告する。ちなみに場所は、ミケロラの部屋の中である。外で話す内容ではないため、ここが選ばれた。
「で、長い説明は全部省いて、結論から言うと、何人か感染者を目撃した」
ジンがそう言い切ると、ヤイバが「ちょっといいかな?」と言って
「……素朴な疑問だけど、感染者って、どうやって判断したんだ?」
確かに、感染者だと判断するには、瞳の小さな変化ぐらいだ。それをどう確認したのだろうか。
それについては、ケンの口から
「感染者かどうか、一発で分かる方法がある」
「負傷させたってことか?」
ハガネは、異常な回復速度の観点から考え、そう言ったが、
「もっと簡単。正直、確認できなければ、それも考えたけれど……、もしも感染者ではなかった場合……」
ケンは負傷させることに関して、最後の手段だと考えていた。ジンは、別の観点から、負傷させることを見送った。負傷させて、相手や周囲に気付かれると、面倒だ。特に、例の反対運動で警備が強化されており、現場を目撃されると、警察に捕まるだろう。それ以外にも、負傷させるにはリスクが高い。
「だから、ジンと僕は、この4日間で、リバレーン宮殿の周辺で知っている人物を探した。周辺で見かけるどころか、リバレーン宮殿への出入りも確認した」
ケンの説明でヤイバは納得し、
「なるほど。感染者だと分かっている人物か」
ケンは頷いて
「昨日、ボロック国王様の姿を確認した」
To be continued…
反政府組織って単語がでてきますが、疑似未来の世界でしか登場しないので、説明することはそんなに無いかと。




