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黒雲の剱(旧ブログ版ベース)  作者: サッソウ
第5部 疑似未来篇
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第64章 仲間への情報展開

 数日後の2月29日。ヤイバが目を覚ましたのだが、ハガネと何やら揉めていた。

「ヤイバ! 何、考えてんだ!?」

 と、ヤイバの胸倉を掴み、ハガネが怒ってる。

「ニンの記憶を戻すには、これしか無いんだろ」

「朝っぱらから、そんなに騒いでどうしたの? 近所迷惑なんだけど……」

 と、エナが朝ご飯の支度をしながら2人に言った。ちなみに、ご飯は交代制で、今朝の担当は、エナとミケロラである。

「ヤイバが、死んだジンを生き返らすって言ってるんだぞ」

「それしか方法が無いんだろ」

 と、ヤイバ。エナは、お味噌を溶いたお玉杓子を前に突きだし、

「ちょっと待って! 何で、ジンが死んだことになってるの!?」

 しかし、ハガネはエナを無視して、

「たとえ、ジンを生き返らせても、ジンが死んだという事実には変わらない。それを知ったニンはどうなる!? おそらく、悲しむだろうな。ヤイバ、ニンのことも考えろ」

 エナは、仲間の心配をするハガネを見て、

「……何だかんだ言いながら、ハガネもニンのこと、心配なんだ」

 と言ったが、少し考えて、顔を左右に振り、

「だから、何で死んだことになってるの!? 重傷だけど、生きてるよ。ルトピア中央病院で」

「……はぁ?」

 ヤイバとハガネがハモった。ちなみに、ケンは昨日から、ジンの所へ行っている。なお、ジンは昨日、目を覚ましたばかりである。

「ちなみに、ニンもケンと一緒に行ってるけど」

「え?」

 またもや、ヤイバとハガネがハモった。そして、双方が殴るフリをフェイント混じりに何度かして、突如ゴールがなくなった争いは終わった。


 ルトピア中央病院。中庭。患者さんや看護師さんが、散歩している中、人気の無い木陰のベンチにジンとケンが話し込んでいた。なお、ジンの隣には松葉杖がある。なお、ニンは診察中で、ここにはいない。

「ケン、その話は誰から聞いたんだ?」

 ジンは松葉杖を右手に持ち、ベンチから立ち上がる。

「ローズリーだ。この世界で、僕とエナだけが会った」

「信じがたい話だな……。それに、情報源がローズリーからか……」

 ジンは、その情報源を聞いても、特に言わなかった。ケンは座ったまま俯き、

「だからこそ、言えなくて……。ハガネやヤイバ、ミケロラ、ニン、誰にも、まだ言えてない」

「アキラは?」

「アキラは感染している……。ライクルとヤイバも元感染者だけど、特効薬で回復したよ……。でも、アキラが正気になっても、言えないと思う……」

「じゃあ、ケン。聞くが、どうすれば言えるようになる?」

「それは……」

「すでに、ローズリーは死亡している。確かに、ケンからの話を聞いても、ローズリーに対する、人それぞれの固定観念を変えるのは難しいだろうな」

 ジンはケンの意見を理解した上で、さらに続けて

「でも、だからといって、それがケンも認めた事実なら、ちゃんとその事実を仲間に伝えるべきじゃないか? 都合の悪いようなことであったとしても、仲間がその事実を受け入れるかどうかは、その先の話だろ? 別に、情報源は言わなくてもいい。ただ、信憑性は疑われるだろうな」

「じゃあ、ジンなら言う?」

「言うだろうな。ケンが言わなくても、この話を聞いたからには、ヤイバやハガネから聞かれたら、言うだろうな」

 ジンにそう言われると、言わないわけにはいかなくなる。複雑な心境のケンを見て、ジンは

「仲間って、そんなもんか? そう簡単に壊れるようなら、その程度だった、ってことだろうな。ハガネとヤイバなんて、それぞれの言い分が合わなくて、よく喧嘩してるだろ。ニンから、よく聞いたよ。自分に自信を持て。仲間をもっと信じてやれ……」

 ジンに言われ、ケンは小さく返事した。


 ジンとケンは、ニンがいる診察室へ向かう。どちらも喋らず、会話はなかった。診察室の前に、ヤイバやハガネ、ミケロラがいた。

 ハガネが気付き、ジンに向かって開口一番

「ジン。お前、ヤイバが勝手にお前のこと殺してたぞ」

 すると、ヤイバは慌てて、

「ハガネも、ジンが死んだと思ってただろ!?」

「こら。病院で、そんな言葉はやめなさい」

 と、ミケロラがすぐに注意して、2人はそっぽを向く。これほどまで分かりやすく、喧嘩するとは。事情を知らないケンは、ちょっと笑った。で、勝手に死んだことにされたジンは

「まぁ、半分死んでたもんだが……」

 と、否定せず。すると、診察室の扉が開き、エナが

「静かにしないなら、外へ!」

 と、全員を病院の外へ。

 だけど行き先に悩み、別病棟のレストランへ。お昼ご飯である。

 全員がメニューを選んだ後、ケンとジンは目配せして、

「大事な話があるんだけど……」

 と、ケンは印について語った。途中で、ヤイバが質問でケンの話を遮りそうになったが、ジンが右手をヤイバの方に出し、ヤイバと目が合うと首を横に振って制止させた。

 ケンが情報源に関すること以外を話し終えると、丁度、頼んだメニューが届いた。

 ハガネは頼んだカツ丼を食べつつ、

「なるほどな。印によるコントロールか……。辻褄は合ってるな」

 ヤイバは、チャーシューメンの麺を啜り、

「で、エナとケン達が協力して作り上げた、例のワクチンを打てば、その呪縛から解放される訳か」

 ミケロラは、パフェではなくドリアを食べており、ヤイバが2度見、いやそれ以上、確認のためにミケロラの方を見た。

「ワクチンは、大学教諭の協力があったとしても、なかなか作れないと思うけれど、そんなに凄い人だったの?」

 ケンは、生姜焼きを掴んだ箸を止め、ミケロラの質問に答える。

「大学の教授の人は、確かに凄い人だった。でも、情報無くしては作ることができなかったと思う」

 と答えると、ケンは生姜焼きを食べた。今度は、ジンがカレーを食べつつ、

「まぁ、ケンから先に聞いたんだが、情報源を聞いたら、ハガネとヤイバは驚くだろうな。決して、口に含んだ状態で聞くなよ……」

「ジン。それは、含めってことか?」

 ヤイバがそう言うと、ジンは

「お前らが吹き出すと、損害を受けるのは対面の俺らだからな」

「で、誰からこんな重要なこと聞いたんだ? ポルラッツやカクゴウが知ってるなら、もっと前から対策してそうだし、ハクリョという爺さんか?」

 ハガネが、ハクリョを爺さん呼ばわりしたことに、ケンは注意しようと思ったが、先にヤイバが

「あんまり、上の人について変な呼び方すると、怒られるぞ」

 ヤイバの言い方に、ケンは1人の人物を思い出した。多分、ヤイバはモッゼ長老とのやりとりで、過去に怖い目に遭ったのだろうか。ケンは、情報源について、単刀直入では言わず、

「この世界だと、ザザアによる影響が出なかったらしい……。僕らも、実際にこの世界で会って、戸惑ったぐらいに違いがあったから……。情報は、逢魔劔隊(おうまつるぎたい)の最高指揮官、ローズリーから聞いた」

 すると、ヤイバとハガネは予想通りの反応を示した。吃驚し、立ち上がって「どういうことだ」とか、「なんで、あんな奴に」と叫んだが、ケンは黙り、ジンも喋らなくなり、ヤイバとハガネはそのあとの言葉が続かない。何か言おうとしても言えなくて、着席した。


To be continued…



ミケロラはいつもパフェばかり食べてるわけではないみたいです。あと、みんな頼んだメニューがばらけてる。ここの病棟のレストランは、メニューが豊富なのかな。仲間への情報展開というタイトルですが、ケン以外でも、まだ展開されていない情報ってありますよね……

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