表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒雲の剱(旧ブログ版ベース)  作者: サッソウ
第5部 疑似未来篇
66/91

第62章 水中戦

 体が重い。服が水を吸って、浮上が難しい。でも、戻らないと、息継ぎをしないと……。川の流れは、速すぎず遅すぎず。なんとか川から顔を出すと、橋から100メートルほど離れている。流されている。

 欄干から誰かが落ちる。ケンは、空気を吸って再び潜水。この前の豪雨で、一時期は濁って、かつ増水していたが、今はある程度クリアに見える。

(落ちたのは……国王様!?)

 助けに行かねばと思ったが、流されて近づけない。すると、ボロックは、こちらに気付き、剱を水中で振る。

 ケンはすぐに助けるという選択肢から、川の流れに身を任せて少しずつ岸を目指す。このまま流れされると、2キロほどで海だ。


 一方、エナとフィン、ボーリスはライクルとの戦闘を継続。3対1のため、有利なはずだが、向こうは息切れを知らないのか、休む暇無く攻撃がくる。さらに、その一撃が重く、すぐに決着が付かない。

「このままだと、(あたい)たちの体力が持たない……」

 エナはケースを片手に、攻撃が来れば防ぐことを繰り返し、ケースを開けられない。フィンはすぐに、

「ボーリス、あいつをしばらく止められる!?」

「接近戦になれば、多少はできるかも」

「なら、その間にエナちゃんはワクチンを準備して。私があいつの意識を()らせるから、ボーリスは、そのときに接近して」

 フィンの指示で、各自スタンバイ。

 戦闘で分かったこととして、相手は感染中に傷を負わない。負わないというか、脅威の早さで自然治癒している。かすり傷が、いつの間にか治っており、とても信じられない。

 フィンはライクルを引き離し、1対1へ。その隙に、エナはケースからワクチンを取り出し、ボーリスは死角から接近戦への準備を。

 タイミングを見て、ボーリスが仕掛け、ライクルと接近戦へ。ライクルが後ろに下がろうとするが、ボーリスは剱を交差させたまま、そのまま押し切って逃がさない。フィンは、硬直状態のライクルの足を引っ掛け、転倒させる。

 転倒したライクルは、ボーリスとフィンに抑えられて、身動きが取れない。ただ、時間との闘いだ。エナはライクルの首元に、ワクチンを打ち込む。ライクルが激しく抵抗するも、数分で気絶した。

「もう放しても、大丈夫?」

 フィンはエナに確認し、

「大丈夫だと思う」

 そう言われて、手を放し「疲れた……」と呟いた。ただ、ボーリスは、手を放したあと、

「もう一人は……?」

「助けに行かなきゃ……」

 エナは欄干から川を見るが、ケンの姿は見えない。


    *


 イーネッタは制限速度いっぱいで一般道を走る。赤信号で1度止まったが、それ以降は信号は少なく、円滑に走れている。たまに右折の渋滞があるが、その時は左車線が空いており、予定通り病院に着けそうだ。バックミラー越しにローズリーを見ると、かなり衰弱している。病院の正面玄関ロータリーに到着後、イーネッタはローズリーを担ぐと病院の中へ。病院の関係者が気付くと、すぐに担架を用意して、ローズリーを集中治療室へ。


    *


 どのぐらい流されただろうか。川幅がどんどん広くなる。河口まであとどのくらい……?

 疲労困憊だが、ボロックの攻撃が続き、浮上と潜水を繰り返し、合成シルバーソードでなんとかするけど、あくまでも一時的な処置で、根本的には何も変わらない。

 水中で剱が交わる。剱だと、この水中では殺傷能力が無いため、技だけ注意しなければ。

 何度目かの浮上で、前方からボートが。ケンは右手を挙げると、ボートに乗っている人が手を振る。船には、警戒船という文字が書かれている。どうやら、少し先の橋桁工事のために、この辺りを旋回しているようだ。河口近くで大きな橋の建設を行っており、造りかけの橋桁がいくつかある。

 ケンは、潜水してボロックとの距離を見て、警戒船に乗る警備員から救命浮き輪を受け取る。船は、ケンを救出後、岸辺へ。ケンは、川を見るがボロックの姿は見えない。

 シェーズ船長は大きめのタオルを用意し、ケンはお礼を言って借りた。さらに、警備員のブラウが近くの自販機で温かいお茶と珈琲を買ってきて、「どっち飲む? 冷えるだろ」と、ケンを気遣う。

 たまに、警備員のブラウが待つ携帯電話が鳴り、なにやら会話をしているが、おそらくケンのことを報告しているのだろう。

 しばらくすると、土手に車が一台止まり、エナ達と合流した。ケンは車に乗ってすぐ、疲労で気付いたら寝ていた。


「ケン、起きて」

 エナの声でケンが目を覚ました。ケンが事情を聞く前に、

「ローズリーの容体が急変したって」

 そう言われて、ケンが飛び起きると、車の天井に頭を打ち、完全に目が覚めた。

 タットタウン病院。ローズリーの治療は終わっていたが、かなり衰弱していることが見て分かった。ベッドに横たわるローズリーは、ケンに気付き、

「少年よ。私はもう長くない……。だから、これだけは伝える……。リバレーン宮殿へ向かえ」

「リバレーン宮殿ですか……?」

 この世界に来て、何度、その宮殿の名を聞いただろうか。歴史ある宮殿の取り壊しについて、国民と政治家が揉めに揉めているとも報道されていた。

「そうだ……。リバレーン宮殿が、ザザアの本拠地に当たる……」

 まさかの情報に、ケンは

「えっ……、でもザザアは……」

「知っての通り、ザザアはここにはいない。だが、別のものがある……」

「別のもの、ですか……?」

「おそらく、私を助けるような優しい君たちでも、許せないようなことだ……。私は、ひとつだけ心残りがある……。ザザアと斃してくれ……。奴を野放しにしてはいけない……」

 それを最期に、ローズリーは息を引き取った。看護師が心肺蘇生を試すが、息が戻ることはなかった……。医者によると、寿命とのことだ……


To be continued…



「水中戦」というタイトルながら、そこまで水中戦をしなかった……。

さて、ローズリーが寿命により死去。リバレーン宮殿には何があるのだろうか。

第5部もすでに折り返しです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ