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黒雲の剱(旧ブログ版ベース)  作者: サッソウ
第5部 疑似未来篇
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第61章 文様印

 ”7年後の世界”で、ケンは考え込みながら走っていると、石に躓いて思いっ切り転け、蚊ぐらいの細い針が付いた小さなチップが落ちた。あのとき見たのが、印と呼ばれるものだったのだろう。

 ローズリーはさらに語り、時々、咳き込みながら

「現象は、グループAに起こりえる……。もともと、ザザアがオンブルの操作を行うにあたり、……多くの人を踏み台にして操作していた……。それも、印のシステムを利用したものだ。本来、印の存在を知っているのは、(あるじ)と呼ばれる者のみ。しかし、私が原因で、ザザアにその情報が漏洩し……、こんな事態になった……」

 ケンはローズリーの言い方が気になり、単刀直入で、

「こんなこと聞くのも、変かもしれませんが……、ザザアは、ローズリーさんにとっても、”敵”ですよね?」

「……すでに大罪を犯している私が言うのも、もう手遅れだが……、本当は、敵対関係のままで……、要注意人物としてマークするはずが……、いつからか、奴に利用されていた。正直……、いつからなのか、分からない……。ザザアからの直接関与がないこの世界だからこそ、私は自分の意識がある……。もとの世界に戻ると、再びザザアの支配下となる……」

 ケンは、疑わずに聞いているが、エナは半信半疑だった。でも、筋は通っている。だが、ローズリーを許さない人は多いだろう。特に、アキラやポルラッツ。この話を聞いて、「はいそうですか」とは言わないだろう。

「ちなみに、印は……、君たちにもある」

 突然のカミングアウトに、ケンとエナは慌てて首元を摩る。

「そんなことをしても、落ちない……」

「でも、いつ……?」

 ケンは、てっきりグループBということで、自分が対象外だと思っていた分、焦って聞くと、ローズリーは

「思い当たる節はあるだろう……。特に、記憶のない期間があれば、最後の記憶の後、処置されたと思うが……」

 そう言われて、思い当たる節がある。ただ、エナは思い当たる節がなく

「特には……」

「思い当たる節がなければ、生まれてすぐのことが多い……。そもそも、印は生体管理するために利用するものだ。無害であるはずが、ザザアによってハックされると……、支配下に変わる」

 ローズリーの話はとても恐ろしいことだ。ただ、生体管理するのは誰だろうか? 主しか知らないと言うことは、主が管理するためだろうか。しかし、ローズリーは先ほど、”上”と表現した。主よりも上がいるということだろうか。

 しかし、今は印の昔話よりも、どうやって回避するかが最優先だ。ローズリーは

「質問の回答に戻るが……、”ザザアのパンデミックに効果がある薬なのか?”という問いに関して、薬を打てば、印を無効化できる。本来、印は、生体情報を収集する機能であるが故に、かなりの神経を刺激する薬を用いる……。注射により、丸1日は動けないだろうな……。できれば、麻酔と併用した方がいいだろう……」

 そんな風に言われると、段々と怖くなってくる。ただ、他に策がない以上、我慢するしかないだろう。

 その後、薬が完成し、全部で20セットだ。多いか少ないかで言えば、少ない方だろう。接種場所をどこにするか考えていると、「別にここでいいだろ?」と、キヤマーク教授が。エナとケンは、最初は断ったが、キヤマーク教授が「心配するな。危ない橋なんて、結構渡っている。まぁ、自慢できるような話ではないけれどな」と。結局、キヤマーク教授の厚意に勝てず、研究室で1日おきに接種することになった。ローズリーが最初に接種し、丸1日後にローズリーの容体を確認後、ケンが特効薬を接種。さらに1日後、エナも特効薬を接種。

 残り17セット。薬品が余っていれば、もう少し作れたかもしれないと、キヤマーク教授は最後まで協力的であった。

 クガイダ大學の正門を抜け、バス停の前を通り過ぎ、橋を渡った先、最寄りのホームセンターの駐車場へ向かう。そこで待ち合わせているとのこと。大学の駐車場は、許可が無いと止められないため、やむを得ず、一番近い大きな店の駐車場で待機しているらしい。ちなみに、待ち合わせているのは、エナがこっちで知り合った人である。

「フィンっていう女性の人なんだけど、同い年の男性2人と一緒に、この時代では珍しく(つるぎ)を使って稽古をしているらしいの」

 エナが女性や男性という表現を使っているため、ケンは

「年上ってこと?」

「そう。20歳ぐらいかな。連絡したら、駐車場に車2台で待機してるって」

 この時代に住まう仲間であれば、心強い。ちなみに、最初に会ったのは、ルトピア中央病院である。エナが看ていた患者の1人が、イーネッタという青年。ボーリスと本気で闘って、誤って負傷したらしい。フィンによると、よくあることらしい。ちなみに、手首の捻挫である。

 フィン達の話をしていると、橋の真ん中に差し掛かる。後方から足音と気配がして、ケンが車椅子のハンドルから手を離して後ろを振り向き、敵だと認識して剱を構えるが、ワンテンポ遅く、敵の剱がクリーンヒット。ケンが橋の欄干から川に落ちる。

「ケン!」

 エナがケンの方を確認できず、腰の鞘から短刀を抜く。剱を使わないエナは、いつも使っている短刀を構えるも、ローズリーが

「薬品を優先しろ!」

 と、叫び、ローズリーは薬品の入ったケースをエナに投げる。さらに、車椅子のハンドリムを握り、敵であるボロックへ体当たり。ボロックは欄干から落ちる瞬間、剱をローズリーの顔面に向けて振り、技が直撃。

 騒動に気付いたフィン達が、駐車場から駆けつけたときには、ケンとボロックは川の中。ローズリーは深手を負い、車椅子から転げ落ち、エナはケースを片手にもう一人の敵と戦闘中だ。もう一人の敵は、ライクルである。

「援護します!」

 フィンが剱でライクルの攻撃に割り込む。ボーリスとイーネッタは、倒れた車椅子を起こし、ローズリーを車椅子に乗せる。その際、顔を見たボーリスは

「こりゃ、いてぇ……。かなりの深手だぞ」

「自分が病院まで送ります」

 と、イーネッタが車椅子のハンドルを持ち、駐車場の方へ向く。

「待て……」

 ローズリーは、負傷した顔を右手で押さえ、

「少女よ。薬を打て……。奴の目の色から、察するに感染者だ。ワクチンは即効性が期待できる。麻酔は後回しでいい……」

 目の色と言われ確認すると、注視すれば分かるほどの変化が起こっている。瞳の色が僅かながら赤と青色に変化し、瞬きの回数も少ない。戦闘に集中すると、こんな小さな点には気付かないだろう。

「分かりました。ありがとうございます」

「川に落ちた奴も同様だ」

 ローズリーはそれを伝えると、「もう大丈夫だ」とイーネッタに伝えた。その後、イーネッタは車に向かう前に、ボーリスに小声で

「最寄りのタットタウン病院に向かう。車なら10分ぐらいだ」

「分かった。こっちは任せろ。道中、気をつけろよ。場合によっては、襲撃もあり得る」

「その可能性は、あるな。気をつけるさ」

 イーネッタは、車椅子のハンドルを握って駐車場へ向かう。


To be continued…


ブログ版とは全く異なる展開が進んでいます。第2部のときは大きく路線から外れたので、今回はなるべく外れないように舵を取りつつ、一応 大きな出来事は予定通りかな? 登場人物が少ないので、保っているのかも。でも、そろそろ3人以外も出てくるな。

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