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黒雲の剱(旧ブログ版ベース)  作者: サッソウ
第5部 疑似未来篇
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第56章 記憶について

 ポルラッツは、サンドイッチとフライドポテトを食べながら、

「他に、憶えていることは無いのか?」

 ケンはオレンジジュースをストローでくるくる混ぜながら、自分の記憶を巡る。ストローにより、オレンジジュースの中で、氷と沈んだサクランボがくるくると回る。

「アキラに会ったのは、山麓の国で……」


    *


 山麓の国。ケンは、ブレイヴ一行がハガネを攻撃していたのを見かけた。

 ケンは、もちろんハガネを助けようとするが、ハガネの様子がおかしい。すると、背の高いレッグが、「そいつは、ザザアなんだ!!」と。「そんなはず……」と、ケンは反論しようとしたが、言い切れなかった。理由は分からない。

 ハガネを攻撃するブレイヴ一行。それを止めることが出来ないケン。そこへ、アキラが現れた。アキラはハガネに急接近して、かなりの間、喋っていた。でもその会話は聞こえなかった。それくらい小さな声でやりとりしていた。


    *


「おそらく、俺の意識が戻ったのもそのときだと思うな。ただ、アキラに何て言われたかは分からないが……」

 そう言って、ハガネはコーラを飲む。

「つまり、ザザアの詳細は、そのあとアキラから聞いたって事か?」

 と言い、ポルラッツは、フライドポテトをお皿に数回当てて、塩を少し落とし、ケチャップを付けて食べる。

「アキラからと、ハガネから」

 ケンがそう言うと、ハガネは

「中継地点にされていたからこそ、ザザアの持つオンブルの仕組みが分かったわけだ。勝手に踏み台にしやがって……」

 ポルラッツが店の時計を確認すると、次の話として

「真相は分からないが、逢魔劔隊の情報のひとつにこんな話がある。ケンがザザアの部下として、オーガックを殺そうとした話、貴様は憶えているか?」

「えっ……?」

 驚いた声が出たのは、ケンではなくヤイバだった。ヤイバの持つスプーンから、オムライスのお米が、お皿にこぼれ落ちる。

 ケンは黙り込む。5年間のこと。忘れているが、言われて思い出そうとするとなぜか鮮明になっていく。忘れていたのが不思議なぐらい……

「憶えてはないけれど……、オーガックさんと再会したときに、酷く怒られた気がする。ニンと一緒に行ったときだけど……」


    *


 オーガック製鉄所。ケンとニンが、新しい鎧の相談に行くと、

「お久しぶりです、オーガックさん」

 ケンが挨拶すると、オーガックは勢いよく立ち上がり、

「貴様! また、殺しに来たのか」

 予想外の言葉に、ケンとニンが顔を見合わせる。

「3年前、お前は俺の命を奪いに来るどころか、ここ一帯の住民を!」

 オーガックが激怒し、ケンを外へ追い出そうとする。ニンはすぐに

「待って! ケンさんは、記憶が無いんだ」

 と、必死に説得させるが無駄のようだ。ケンは、ニンを止め、

「いいんだ、ニン。記憶や意思が例え無くとも、オーガックさんが言うようなことを、僕がやったのなら……、謝罪しきれない……。オーガックさんの方が事実なんだ……」


    *


 沈黙が訪れる。ケンは、その沈黙の中、

「ポルラッツ……、確認したいことがある。さっきのザザアの意志を継ぐ者って……、もしかして……」

 ポルラッツは珈琲を飲み終え、

「貴様がそう思うなら、その可能性もあるだろうな。ただ、断言は出来ない。顔を見たわけではないし、ザザアの科学力は未知数だ。……知っているか? このガドライン国の南、元々神託の国などがあった地面は海の底だ。200年で、ここまで海面上昇するだろうか。爆弾が一帯を吹き飛ばし、海水が流れ込んだとも考えられる。ただ、まだ負けてはいない」

 そう言って、席を立ち、

「じゃぁな。俺様は、先に行く。今度会うときは、あの戦いの最中で」

 伝票の上に、お札をおいて店を去る。

 ポルラッツが店を出るのを見届けた後、ヤイバがスプーンを咥えたまま

「やっぱ、ポルラッツって敵かどうかよく分かんないよな」

「で、意志を継ぐ者に心当たりがあるのか?」

 ハガネがケンに聞くと、ケンは

「……たぶん、おそらくなんだけど……、ザザアの意志を継ぐ者って、アキラかもしれない……」

「それはあり得ないだろ? 現に、アキラって……」

 と、ヤイバが否定した。伝説の剱が持てないとは、言い切らなかったけれど、もごもごと言った

 すると、店員がイチゴパフェを持って来て、テーブルの上に置く。3人とも、あれ?って思いながら誰かが指摘するだろうと、テーブルに置かれるパフェを見る。女性店員は

「こちらはサービスになります」

「パフェが……?」

「はい」

 3人同時にある結論に至る。

「ここの喫茶店……もしかして?」

 と、ケンが少し笑う。ヤイバはメニューを指差し

「俺は、メニューでなんとなく感じたけど、考えるのやめた」

 ケンとヤイバは、厨房の方へ行くと、予想は大当たりだ。

「ミケロラ、こんなところで何してるの……?」

「久しぶり」

 と、ミケロラ。ミケロラは、店長に気に入られ、アルバイトではなく正規雇用らしい。ミケロラの提案で、ここ最近の売り上げが1.5倍になったらしい。それを聞いた2人は、

「もしかして、ミケロラが一番勝率高いんじゃね……?」


To be continued…


ミケロラさん、凄いね。知らない世界に来て、1ヶ月で正規雇用ですよ。貢献してるし……

ちなみに、通貨は昔から変わってないらしいです。200年も経ってますが。

レートは変わりそうだけど、それも同じらしい。


追記。2箇所、誤字修正しました。

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