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黒雲の剱(旧ブログ版ベース)  作者: サッソウ
第4部 扃鎖軍篇
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第54章 ”勝敗は決まっていた”

 フォルテが吠えている。ニンとフォルテの目の前には、甦生(そせい)台がある。蓋が閉じており、開けると

「中に剱が入ってた……」

 それは、いくつかの伝説の剱が合成されたであろう剱である。ただし、紛い物であるが。それでも、先刻のように、本物と同じように技が使える。

 ニンが取り出した剱を、誰が使う……? 誰に渡せば良い?

 アキラは、ザザア達の後方にある爆薬を、戦闘中に何度も確認した。同じく、ヤミナも気付いたようでカクゴウに

「やはりあの爆薬……、着火剤が見当たらないんですが」

「あの爆薬は、あくまでもパフォーマンスのひとつだと考えられるが、やつらが何を仕出かすか……」

 すると、ポルラッツが

「貴様ら、知らないのか……? 旧扃鎖の国で、兵器が開発されていた。俺様も実物は確認できてはいないが、アキラが証人だ。それに、裏付けるような証拠がいくつかある」

 自分の名前を呼ばれ、アキラは近づき

「俺が見たのは、戦車やミサイルだ」

「すでに、扃鎖軍の殲滅、侵攻時に、多種多様な爆弾が確認されている……。だからこそ、扃鎖軍が、かなりの範囲を吹っ飛ばすような、とてつもない威力の爆弾を完成させている可能性は否定できない。……敵、ザザアは凶悪だぞ」

 ポルラッツは、カクゴウにかなりの釘を刺した。

「選択肢はひとつしかない。貴様の考えを改めて聞こうか」

「ポルラッツの考えを受け入れるしかないだろう……」

「不満か? 恨むしかないだろうな。この選択肢しかない現状まで、対抗できなかった事実、貴様を含め、全員の力不足を」

 ポルラッツの棘のある言い方に、ヤミナは心配そうに

「カクゴウさん……」

「大丈夫だ。決着を付けよう」

 そこへ、ニンが紛い物の合成ソードを持って来た。アキラは、ニンに耳打ちで「カクゴウに渡せばいい」を言い、

 ニンは「これが甦生台にありました。ケンさん達は、すでに剱を持っているので……」

 カクゴウが「ありがとう」と受け取り、フェニックスソードの紛い物をヤミナに渡す。

 すると、周囲にいたオンブルが消え、巨大なオンブルにパワーが集まる。

「いいのか? ……こちらへ攻撃すれば、……後ろが爆発する……」

 ローズリーが脅しのように言ったが、ポルラッツは短く否定的に

「そんな火薬ごときに、いちいち反応するわけないだろ。全員、同時に撃て」

 指示もポルラッツが出す。これ以上ない、本気モードで、それぞれ、今いる立ち位置から放つ。

鏡花水月(きょうかすいげつ)」ポルラッツの持つウォーターソードの紛い物から、水のオーラが発生し、鋭く薄い鏡面のような水面に花と月が映る。やがて、花びらのように舞い、鋭く切り裂くように襲う。

「一刀流極烈斬(きょくれつざん)」カクゴウの持つ合成ソードの紛い物から、一筋の斬った半月がいくつも襲う。

火焰翔翺斬(かえんしょうこうざん)」ヤミナの持つフェニックスソードの紛い物から、炎の翼が現れ、鳥のように高く飛んで滑空しながら、襲う。

 カクゴウ達と同時に、ケン達も技を繰り出す。

烈火龍弾(れっかりゅうだん)」ニンは、フェニックスソードで、先ほどカクゴウが使った技を繰り出す。

雷電大文字(らいでんだいもんじ)」ヤイバは、ライトニングソードが纏う雷を、大文字のように繰り出し、

半輪白雷斬(はんりんはくらいざん)」ケンは、列車で繰り出したときの技で、合成シルバーソードの先端から、半月状の白い刃が、白い雷を纏ってオンブルを襲う。

 同時多発攻撃に迎え撃つ巨大オンブル。またもザザアと思われる声で、

「髑髏戦慄……」

 と聞こえた。技なのか……?

 巨大オンブルに同時に衝突した技。爆風と共に、煙が発生する。場所がバレるため、位置を移動しつつ、誰も喋らない。

 煙が晴れてくると、フォルテが大きな声で吠える。

 ニンが慌てて、フォルテを静かにさせようとしたが、視界が開けて、それどころではなくなった。

「愚かな……。所詮、鳥かごの中にいる我々は、常に力ある者の支配下にある。この偽りの世界など、我が終止符を打とう。伝説の剱も持っていても、全くもって操れていない。さて、夜明けの時間だ」

 先ほどの、髑髏戦慄と同じ声だ。

「あのときの……、軍事兵器……」

 アキラの頬を汗が伝う。目の前には、巨大なオンブルが消え去ったものの、巨大な爆弾が。

「我が研究していたのは、ただの爆弾だ。オンブルは、目的とは異なる副産物に過ぎない」

 ザザアは両手を広げ、笑い始める。もはや、狂気。

「あの巨大さ……どれくらいの威力がある?」

 カクゴウが考える前に、ポルラッツは

「考えるだけ無駄だろうな。時空間の神殿どころか、神託の国も消え去るかもな。いや、それ以上かもしれないぞ……」

「”勝敗の決まった戦い”って、そういうことかよ……」

 と、ヤイバ。

「では、みなさま。ごきげんよう」

 ザザアが手元のスイッチを押す。その直後、目の前が真っ白になった……


    *


 小鳥の囀り。木々の揺れる音。爽やかな風。雲に隠れた太陽が、顔を出す。

 ここは、図書館の中庭である。木の下で赤い本を読んでいた。本は、全部で12巻ある。その12巻目の最後の行には、

 ”伝説の剱使い達とザザアの戦いは、未だに勝敗が不明である”

 という一文で締められていた。

「……昔の勝敗が、本には書かれていないか」

 古い布を纏う人物は、そう呟いて、本を閉じた。勝敗はまだ変えられるのだろうか。

 本のタイトルは、”ガドライン国の歴史 ~伝説の剱使いの章~”。他にも、ガドライン国の歴史シリーズはあるが、気になったのはこれだけだ。ガドライン国は、發達の国や鶴歩の国、亀玉の国、山麓の国、陽光の国、杳然の国、鳩笛の国があった所に出来ている。神託の国や砂漠の国、離亰の国は海面上昇などで、海の底だ。

 布を纏う人物は、ある人に似ている。顔も隠しているので、はっきりとは分からないが、やはりあの人に似ている。……でも、そんなはずはない……。何故ならば、ガドライン国は、ザザアとの戦いから20年後に建国。そして、今、ザザアとの戦いから200年、つまり西暦で言えば100年もの月日が経っているのだから……。

 あり得ない……。でも、もしその人が本当にあの人なら、戦いは終わってなどいない……


To be continued…

物語は200年後の未来へ。

段々と現代的な展開が増えてくるかと思われます。

次回は、作者メモとしても使用している総集篇。

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