第51章 奪還と阻止
陽光の国、南部。黎明劔隊の仮設本部。
「鳩笛の国の消滅を確認……。生存者は見つからなかったそうだ……」
諜報班からの情報を聞いたカクゴウが、そう言った。
「まさか、島ごと消えたとはな……。他の国にも、同様の攻撃をされると、僅か数分で陥落するだろうな」
ポルラッツはそう言いながら、報告資料を捲って流し読みをする。
「扃鎖軍の狙いは何だ?」
「カクゴウ、そんな考えだから、後手に回ってるんだろ。ヤツらはこの国々を、全て壊す気だ。鳩笛の国を消滅させたのは、音楽がキーになっているからだ、と報告書に書かれている。推測としては良い考えだ。逢魔劔隊は、音。つまり特定の周波数でオンブルを倒せないか調べている。理由探しは後にしろ」
ポルラッツは報告書を閉じると、ヤミナに渡す。受け取ったヤミナは、
「仮に、扃鎖の目的が殲滅だとしたら、ここ数週間は戦力が減っているみたいですよ」
カクゴウも、それが気に掛かっていたようで
「ヤミナ。実際、戦力はどのくらい減っているんだ?」
「報告によると、6割減。ローテーションで防衛できるようになったと。この状態だと、陽光の国は安全だと思われますが」
ポルラッツは、別の報告書を眺めながら
「雷霆銃族は音沙汰無し。炎帝釖軍は、このところ話を聞かない。雷霆銃族はまだしも、炎帝釖軍の本部は陽光の国にあるだろ? 本拠地のある国ぐらい、防衛するために出てくると思うが」
「そういう逢魔劔隊だって、このところ話を聞かないけれど?」
ヤミナがポルラッツに向かって言うと
「ゼルが活躍しているだろ? 表で動き回っているのは、黎明と扃鎖ぐらいだ。他は、その後ろで上手くやってるんだろうな」
「で、いつまで黎明劔隊と一緒にいるつもり?」
ヤミナは、ポルラッツに対してかなり棘のある言い方だ。
「俺様も、好きでここにいるわけではない。ここ数年は、こうするのが最善だと思っている……」
意味深なポルラッツの発言に、カクゴウとヤミナは顔を見合わせる。ポルラッツに声をかける前に、ポルラッツの持つ無線から声が聞こえてくる。ポルラッツは、無線を持ち、
「ナードか? どうした?」
「先ほど、本部に伝言があったのですが……」
「伝言……? どういう内容だ?」
「それが……、名前はなくて。内容は、緑の文字で任務遂行完了とだけ……」
「そうか……。完了したのか……。分かった。伝言は速やかに焼却してくれ」
ポルラッツは、無線を持った右手を下ろすと、カクゴウ達に背を向けたまま
「カクゴウ。時空間の神殿の復旧状況を教えてくれ」
「時空間の神殿ならば、外装の復旧を終えている」
「時空の狭間も戻っているのか……」
「そうだ。それが何か関係あるのか?」
と、カクゴウ。明らかにポルラッツの態度が変わった。
「寄るところがある」
そう言って、ポルラッツは仮説本部をあとにする。
(任務遂行完了の紙。おそらく送り主はヤツだ。とんでもないことをしでかしたぞ……。3年前に現れたヤツが頼み込んだこと。ゼルの貸し出し。バトルロイヤルの仕組みを知っていたからこそ、それを使って成し遂げたのか……。しかし、両方となると、どうやったんだ……? いや、あまり考察するのはやめておくか。本人から聞けば早い。言うかどうかは分からんが……。さて、部隊編成だ。意気消沈のあいつらを連れて行かないとな)
*
10日後。クーリック村近辺。すでに逢魔と扃鎖との戦闘が始まっており、指揮はポルラッツが出していた。
「扃鎖をこのまま押し切って、時空間の神殿へ突入する。何か説明が必要か?」
ニンが手を上げて
「大所帯で良いんですか……?」
メンバーは、ポルラッツ、カクゴウ、ヤミナ、ジン、ニン(+フォルテ)、エナ、ミケロラ、ヤイバ、エナ、ハンフリー、アンリ、レクト、ライクル。
「封解の書って、知ってるだろ。それ以上、説明が必要か?」
エナが小さく手を上げ
「黎明は動かないの?」
「汚れ仕事は、逢魔が担う。黎明は陽光の国の防衛に尽くすだけだ。寧ろ、そっちから人員を割くわけにはいかない」
「ポルラッツ、やはり説明してくれないか?」
「カクゴウ。貴様に説明したところで、納得しないだろうな。だから、説明はしない。そんなに知りたいなら、張本人を問い詰めろ」
ポルラッツは咳払いをして、
「作戦は、奪還と阻止。奪還というのは、時空間の神殿だけではない。扃鎖からの国土奪還。そして、アキラたちの奪還。阻止は、ザザアとローズリーによる計画。計画の詳細は、直接問いたださなければ分からないが、殲滅だと思われる」
「確認だが、本当にいるんだろうな?」
ヤイバが確認のためにそう言った。一時期戦力外だったヤイバが、前線に復帰した。アキラたちの奪還。”たち”という表現に、ヤイバ以外もポルラッツに聞いたが、ポルラッツは行けば分かるとしか答えてくれなかった。
「黎明のメンバーは、カクゴウに指揮を任せる。生憎、逢魔の指示だけで精一杯だからな」
「ところで、なんでミケロラも選定されたの?」
エナがミケロラを指差しながら聞くと、
「医療班の人手が足りないからだ。エナ1人だと、間に合わないかもしれないからな。かといって、医療班を各地に送っている現状、こっちに回すのは難しい」
「負傷するのがありきってこと?」
「怪我ですめばいいが、ここから先、少しでも手を抜くと死ぬぞ」
ポルラッツは、ナードや各小隊に指示を出す。ポルラッツが突入後は、指令班に引き継ぐため、その後の指示も出しているようだ。
ハンフリーは、カクゴウとヤミナに
「隊長。我々はどのように行動すればよろしいですか?」
「時空間の神殿は、入口と渦中の場所以外を守る必要はないだろう。突入後は、しばらく入口の防衛を行い、こちらに合流する。ルートはすぐには変わらないが、時間が経過すると空間が変化するだろう。突入後は、ハンフリーに一任する」
「承知しました」
ハンフリーは、アンリたちと突入後の流れとそれぞれの立ち回りといった認識を合わせる。
しばらくすると、ポルラッツが
「準備はできたか? 突入するぞ」
戦いの舞台は、時空間の神殿へ。
To be continued…
またもや、舞台は時空間の神殿へ。
時空間の神殿のスペックが高いので、戦闘の舞台になるの多いですね。
4部もそろそろ終わるかな。




