第43章 伝説の剱の持ち主
伝説の剱は持ち主を選ぶ。アキラは選ばれなかった。ケンやヤイバ、ジン、それにニンが扱えたのに。ハガネは自前の剱を使っており、扱えるかは不明。ミケロラも不明。ただ、ミケロラの場合は、剱が認めても本人が拒否しそうだ。
ローズリーとアキラが、どちらも自前の剱同士、交錯する。戦闘は、3階の研究室へ。ローズリーの剱はやや長く、リーチは大きいが、その分、周囲の棚や机までもを斬る。アキラは、障害物となる机や棚をわざと倒して、妨害する。その結果、フラスコが割れる音がして、化学反応で発火。さらにイスや研究資料と思われる紙に引火。忽ち、周囲は火が広がる。
アキラは、真っ向勝負せずに逃げを優先。タイミングを見て、ポルラッツへ無線でやりとりしようと考えるが、その隙が見当たらない。
一方、ポルラッツは
「どこもかしこも、機械の人形ばかりだな。ゼルがある程度倒したとは思うが、まだこんなにも残っているのか。まるでゾンビだな。いや、どちらかといえば、うちのゼルのほうがゾンビか?」
無線が鳴るが、応答できる余裕が無い。機械の人形が次々と襲ってくる。やっとの思いで、無線を切り替えると、ナードからだった。
「どうした? まだ予定より早いぞ」
「黎明劔隊がもうすぐ到着しそうです」
「指令班に任せていたはずだが?」
「指令班からは、自分達の力量不足だったと報告が上がっており、お手上げのようですね」
「そうか。何事も経験だ。もう少し頑張ってみろとでも、伝えといてくれ」
「承知しました。ただ、すでに城内に侵入している可能性もあります」
「面倒だな……。墜とす前に追い出すしかないな。かと言って、扃鎖軍に悟られるわけにはいかない。やっぱり、面倒だな……」
*
逢魔劔隊の防衛班を突破し、城内を駆ける。ゼルやメルードの戦闘をすり抜け、階段を上る。複雑な城内。元々、陽光の国の中枢機関であったこともあり、入り組んだ構造なのだろう。あちらこちらで戦闘が展開しており、音や声で探せるような気はしない。頼りになるのは視覚ぐらいだ。アキラは、どこにいる?
次の階に上がると、煙が充満している。火災だ。奥の方で火の手が見える。さらに、奥でガラスの割れるような音が聞こえる。それに、壁にぶつかるような音も。体勢を低くして、煙の少ない下の方を見ると、誰かが戦いながらこちらに来るようだ。
戦闘の会話を聞いて、懐かしく感じる。すでに、あの日から数ヶ月、いやそれ以上が経過していた。情報も無く、居場所が分からなかった。笑顔での再会だなんて、言えるような状況じゃないのは分かっている。でも、嬉しかった。
だけど、事態は深刻だった。煙の向こうは見えないけれど、アキラが劣勢なのが伝わってくる。相手は誰だ? ザザア?
7年後のあの世界で、アキラと自分、そしてセーミャがいなかった。その理由は、その世界のヤイバが話さなかった。ハガネが敵だった。その原因が7年以内に訪れる。一人でいたときに、何度も頭をよぎった。もし、自分がいなくなるような原因として考えられること……。誰が最初に斃された? アキラか、自分か、それもセーミャか? 誰かが斃されて、その復讐で死んだのか? もしくは、共倒れだろうか。少なくとも、封解の書がここ最近、何も示さない。そのときが来たとき、封解の書は示してくれるのだろうか。
ケンは、合成シルバーソードを鞘から抜き、構える。煙との距離は十分ある。
煙の向こうで剱が交錯する音がする。ドンっと鈍い音がして、煙の向こうから、アキラが飛ばされて体を打つ。
「アキラ! 相手は!?」
懐かしいケンの声に、アキラは唇を切って出た血を手の甲で拭い、
「ローズリーだ。あいつ、俺を蹴り飛ばしやがった」
どうやら、さっきの鈍い音は蹴り飛ばされた音だったようだ。アキラはなんとか立ち上がろうとするが、何故か力が出ない。その様子に違和感を抱いたケンは、心配して
「大丈夫?」
「なんか、力が入らねぇ」
すると、煙の向こうからローズリーが出てきて、二人に剱を見せるような素振りをし、
「さっき、この剱が掠めたからな。体に毒が回るのも時間の問題だな」
ローズリーの持つ剱には、毒が塗られていた。その剱がアキラの頬と右脚の太ももを掠めたみたいで、そこから毒が侵入したのだろうか。
麻痺して思うように動けなさそうなアキラだが、なんとか立ち上がる。ローズリーは、それを見届けて
「あまり動くと、その分、毒が巡るぞ」
それを聞いて、ケンはすぐにローズリーへ攻撃を仕掛ける。合成シルバーソードには、宝玉が填められており、威力は未知数だ。
大きく一振りして、それ自体が外れたとしても、まるで三日月状の刃形のようなものが、衝撃波のように飛ぶ。通常ではあり得ないことが、発生している。これも、伝説の剱の力なのだろうか。
アキラの持つ無線から、ポルラッツの声で「逢魔劔隊、全軍撤退! 速やかに撤退せよ!」と響く。
ケンは合成シルバーソードを右下から左上へ大きく振り、剱の先端から半月のような白い刃が、白い雷を纏って正面へと飛ぶ。白雷斬である。ローズリーは避けずに、全てを浴びる。すると、ローズリーが液状化して、蒸発する。
「人じゃないのか……?」
その光景を見て、我が目を疑った。ローズリー本人が人ではなかったのか、それともローズリーの偽物だったのかは分からない。
ひとまず、最優先はアキラの救護だ。ケンは、ついに痺れて動けなくなったアキラを背負い、城からの脱出を急ぐ。ひとつ下に降りると偶然ヤイバを発見。ヤイバがこちらに気づき、
「ケン! 急げ、こっちだ」
ケンはさらに足を速める。ヤイバは、背負われたアキラを見て、事情を大体把握した。呼吸が乱れているし、顔色も悪い。
「ここから十数メートル、曲がり角が幾つかある。その後は直進で出られる。……大丈夫か?」
ヤイバの問いに、ケンは答えなかった……。正しく言えば、答える事が出来なかった。ヤイバの言葉が、ケンには届いていなかったのだ。ケンは、軽い混乱を起こしていた。
「出口だ!」
外に出ると、逢魔劔隊が砲台を撃つ。さらに、飛行船から爆弾を墜として、城を攻撃開始。城が徐々に崩れていく。砲台や爆撃による攻撃はあくまでも逢魔劔隊によるもの。離亰の国としては、黙ってみている。それが、表向きだけなのかどうかは、分からないが……。
さらに馬鹿でかい大砲が数十人の力で前進し、砲撃する。逢魔劔隊による爆撃により、翌朝になって扃鎖の国は制圧された。煙が舞い上がり、城は跡形もなく崩れ、巨大な穴が出来た寂しい場所となった……
To be continued…
人ならざるものが多いな。
大きな砲台は、橋が落ちてるのにどうやってもってきたのだろうか?
離亰の国がこっそりバックアップしてる説……




