第40章 進む先
陽光の国。町外れの雑木林にある倉庫。しかし、今は使われておらず、廃墟と化している。昼間だというのに、倉庫の中は光が差さずに、かなり暗い。
「カクゴウ、貴様は俺様の敵となるのか?」
ポルラッツは廃れたコンテナに背を凭れ、カクゴウに問いかけた。カクゴウは、ポルラッツの方を見ずに
「ポルラッツ、お前は何をするつもりなんだ?」
「……そりゃ、ザザアへの復讐だ。ヤツは、他の誰かが許したとしても、許せない」
「犠牲を出してもか?」
「犠牲がなんだ。戦いに犠牲は付きものだ。どんなに頑張ったところで、何らかの犠牲は発生する」
「ポルラッツ、お前は……何人の犠牲を出した?」
「聞き捨てならないな。ザザアやローズリーが殺した人数は、もっと多い!」
「私は、ポルラッツのことを聞いている。他の人数と比較するな」
「……カクゴウ。じゃあ、逆に質問してやるよ。貴様は何人の命を救った?」
ポルラッツの問いかけに、カクゴウは答えない。ポルラッツは、少し前へと歩き、
「戦いは、新たな戦いを生む。平和には繋がらない。貴様はそう言った。しかし、戦わなければ解決しないことが多いのが現状だ。一方的に、話し合いだけで解決しようと悠長にしていれば、気付かないうちに、色んなものを失うぞ……。奪われるんだよ。何もかも。仲間も地位も、家族も思い出も……。それまでの当たり前を相手に奪われていく。それでも、貴様は戦わぬと言うのであれば、俺様の邪魔をするというのであれば、貴様を敵と見なす。逢魔劔隊と完全に敵対する。わざわざ光明劔隊を解体したのに、貴様は、まだ邪魔をすると言うのか?」
ポルラッツは鞘から剱を引き抜く。
「闘わぬとは、言わせないぞ」
「それでも、ポルラッツと戦う必要などない」
「貴様……」
カクゴウは、一向に戦おうとしなかった。ポルラッツは、カクゴウのその態度に次第に戦意を失い、呆れてコンテナを殴り斬る。錆れたコンテナが鈍い音を響かせ、崩れる。
*
ジャギラの目の前には、巨大な軍事兵器があった。潜入して1週間。予定よりも早く見つけた。ミサイルや戦車。ただ、扃鎖の国と陽光の国や神託の国の間には深い谷がある。唯一陸続きなのは、4分の1にまで国土が減った離亰の国だけだ。深い谷を、戦車はどう渡るのだろうか。注視すると、奥に輸送機らしきものが見える。それで運ぶのか?
「こんなの見たら、他国が黙って見過ごすわけないよな……。戦争になるぞ」
ジャギラは、アキラの偽名である。ハンスは、光明劔隊で使っていたので。別の名前を考えていたが、潜入した時に名前を聞かれて、咄嗟に答えたのがこれ。ザザアとアキラが混ざったような簡単な名前だ。予定していた名前と違うが、致し方ない。
ジャギラ(アキラ)は、暗号化できる無線で、ポルラッツにこのことを報告する。
「どうやら、扃鎖軍は大国と戦争できるぐらいの戦力があるみたいだ」
「厄介だな。逢魔劔隊と扃鎖軍との戦いから、規模がでかくなり、他に邪魔される恐れがある。そうなると、目的が遂行できないな。ザザアがいずれかの国に連行された場合、手が出せなくなる。討つなら、早く行動せねば」
ポルラッツの声は、ノイズのように所々聞き取りづらいが、アキラは、この1週間で多少のノイズなら聞き取れるまで慣れていた。最初の苦労していた時期が、遠い昔のようだ。
「潜入は、まだできそうか?」
「正直、隠密に動いているつもりだけど、かなり大胆な移動だから、もうバレてると思う。それが分かった上で、泳がせてるような感じがするな。直感だけど」
「ならば、準備ができ次第、突入指示を出す」
ポルラッツは、各隊へ出撃準備の指示を出す。開戦までまもなく……
*
發達の国の国王様は、ケンの問いに対し、
「残念なことに、ここから新鋭の国と古豪の国に行くことは出来ない。まず、国境には頑丈な門がある。現在は閉門であり、ここから北へは進めない。ただし、ブレイヴは別だがな。彼らは、新鋭の国と古豪の国の和解に、全力を費やしてくれている」
と言われた。そのため、ケンは神託の国に戻ってこれからの行動を練ることにした。アキラや逢魔劔隊の所在も分からず、バトルロイヤルは終了した。
国王様に、神託の国に戻ることを伝えると
「戻るのであれば、昨日開通したモノレールを使うと良い。座席はこちらで確保しよう」
断る理由もなく、お言葉に甘えて、ケンは現在ローギル駅にいた。発車は10時。砂漠の国を横断し、神託の国まで2日で結ぶ夜行列車である。
駅の広告には、『發達の国から、国々を跨ぐモノレール、スピーディー。ついに開通! さらに、山麓の国と陽光の国に向けて、延長工事に着手! 發達の国、ダイナミックモノレール株式会社』と書かれている。同じ広告は、何枚も貼られており、いくつかバージョンがあるみたいだ。というか、昨日開通ならば、まだ始発は終点に到着していないのか。長距離移動のため、発着の本数は少ない。
15番線のホームでスピーディーが出発を待っている。スピーディーを見るために、多くの人々やカメラマン、記者、ニュース番組のスタッフやキャスターなど、乗らない人の方が明らかに多い。
ちなみに、15番線なのは、在来線からの連番であるから、数が多いのである。
ケンが躊躇していると、国王の使いがケンを見つけて、
「君の席を確保してますよ。この切符をどうぞ。では、またお会いできるのを楽しみにしております」
と。ちなみに、發達の国の国王は、2回目のテープカットに来ていた。新しい車両ごとにテープカットするらしく、数日はかかりそうだ。
モノレールは6両編成。食堂車が1両。運転室の車両とモーター車両が、それぞれ1両ずつ。残りは寝台車である。ケンは、個室1つ丸々。4~6人用のため、かなり広く感じる。果たして、普通に買うといくらなのだろうか。プレミア付きで、高騰してそうだ……。
ケンは、到着まで落ち着ける時間として、宝玉と新たな剱をベッドに置く。宝玉は、宝玉内部の核を取り出して合成し、宝玉に埋め直すとジュエラーに説明されたけれど、工程を見てても理解できなかった。たぶん、1つの宝玉に3つの宝玉の一部を移植したんだろうと、その程度の理解だ。専門的なことは分からない。
新たな伝説の剱は、シルバーソードとフラッシュソード、ウォーターソード、ゴッドソードが合わさった。剱の重量や大きさは変わらないし、見た目も混ざった感じで、宝玉を填めない限りは、その威力のパワーアップは確認できないだろう。さて、この合成した剱を何て呼ぼうか。決まった名前がないので、仮の名前として、しばらくは、合成シルバーソードで表記する。
合成シルバーソードで、4本が1本になった。単純に、日頃持つ剱の数と重さが減ったのは、動きやすいし管理しやすいので嬉しい。
伝説の剱は、今分かっている範囲で、ライトニングソードをヤイバが、フェニックスソードをニンが、スィールソードをローズリーが持っている。残りの本数は不明。
伝説の剱の収集は、まだまだかかりそうだ。そもそも、そんなに沢山いるのか? そんな疑問も湧くけれど、旅の目的としてあったほうがいい。アキラの救出は、結局居場所が分からないまま、時間だけが過ぎていく。あまりにも情報がなさすぎる。
モノレールは、砂漠の国に突入する……
To be continued…
隔週更新中ですが、意外とギリギリ。
このあたりは 書いたのが昔すぎて、記憶にほとんどないな。
扃鎖軍との戦い後の展開は、重要なので覚えてるけど




